拓也は、緊張の糸が切れたのか、真っ赤に腫れた尻を曝したまま…、"10人の母親達"の前で号泣している。
…これには、もともと母性が強い奈津子や"桃ちゃん"はもちろん…、残り8人の母親達も、拓也の様子が愛おしくてたまらない。
(…はぁぁ~っ、拓也君ったらほんと…、小っちゃい子みたい…。…お尻ペンペンされてこんなに泣いてる姿も、家の子とは大違いね…。)
(…拓也君、ほんとに我慢してたのね…。いけない悪戯したのなら仕方ないけど、健気だわぁ…。)
(…うふふ…っ、泣いてる姿は本当に可愛いけれど…、またやったら、次は本当に心を鬼にしなきゃね…。)
母親達は、今日はもうこれ以上、拓也の腫れ上がった尻をぶたなくても良いことには安堵していたが…、後日、もしも"そうなった時"には、自分もまた協力しなければならないだろうと、各々が決意を新たにしていた。
「…それじゃあ…、"拓也君"がもう少し落ち着いたら、"卓哉君"のお母さん、今度空いてる日を教えてやって貰えますか?」
「…は、はい…。」
…拓也は泣きながらも…、その奈津子の言葉はしっかり耳に届いていた。
"空いてる日"というのはもちろん…、拓也が、"2年生の卓哉"の目の前で、その"卓哉の母親"からお尻ペンペンされてしまうという日である。
(…う、うぅっ…、今日さえ乗り切れば、しばらくは大丈夫だと思ってたのに…っ。)
上級生として、何度も"面倒を見てあげた子"の家で、その子のお母さんからお尻ペンペンされる…。
いくら同意しているとは言え、"見せしめ"のようにして叩かれるのならば、その恥ずかしさは変わらない。
「ほら、こんなに大きなお兄ちゃんでもお尻ペンペンされるのよ…」などと、膝の上へ載せられ、尻を裸に剥かれて、ぴしゃぴしゃと叩かれるに違いないのだ。
…拓也は想像しただけで、恥ずかしさで悶絶してしまう。
(…くぅぅ~っ…、いっそ…、全然知らないお母さんの方がまだマシだったかも…?)
"10人の母親達"の子供の中には…、謙太や学など、拓也とは直接面識のない者も居る。
本人達に会うよりも先に、その母親からお尻ペンペンされてしまった拓也だが…、恥ずかしさだけを考えれば、知り合いよりはまだ良かったのかもしれない。
…とくに、顔見知りとなった下級生の母親にされるのは、恥ずかしすぎる…。
「…あらっ、拓也君…、もう平気なの?」
拓也の涙が止まっている事に気付いた周囲の母親が、優しく声を掛けてくる。
「…平気じゃないけど…、平気…。」
「…あっはっは…、そりゃあね~、あれだけ皆にお尻叩かれたら、そうなるわよねぇ~っ?…平気って言い切ってたら、じゃあ続きやる?ってなっちゃうし。」
「…ひぃっ!?」
「…うふふっ、冗談、冗談っ。今日はもうペンペンしないわよ~?」
「…ちょっとぉ、拓也君、また怖がってるじゃないですかぁ~。」
もう許してあげて下さいよ〜。
"桃ちゃん"が何とか拓也をフォローし、本日の"集会"はようやく終わりを迎えようとしている。
「…うぅ〜っ…、痛かったぁ…。」
「…拓也君、大丈夫…?」
「…うふふっ、ここに居るお母さん達みんな…、拓也君のこと立派だと思ってるわよぉ〜っ?…そりゃあ、悪戯は褒められたものじゃ無いけれど…、最後まで頑張ってお仕置き受けられたものね?」
「…う、うん…。」
「家の子だったら、絶対に途中で逃げ出してたわ…。」
「…家も家も。…拓也君は、きちんと叱られようって姿勢が見えてたわよね。」
「…あ、はは…。」
…拓也は、勇太の母親である奈津子との関係性や、綾子の"絶交"発言による毎朝のお尻ペンペンを帳消しにして貰うなどの目的があったため…、逃げたくても逃げられなかっただけなのだが、ざっくりとした事情しか知らない周りの母親達は、拓也の罰に向き合う姿勢を褒め讃えていた。
「…それに比べて、家の娘ときたら…。…もうほんっと生意気で…。」
「…家の子もそうですよぉ…。…そうだ。今日帰ったら久しぶりに、たっぷりとお尻ペンペンしてあげようかしら…?」
「…あらっ、家もちょうど、そう思ってたところなんです。…拓也君があれだけ我慢出来るのに、同い年の娘がすぐに泣いちゃうなんて、何だかおかしいなと思ってたんですよ〜。」
(…な、何か…、僕のせいで、とんでもないことになってない…?)
"10人の母親達"の一部は、今日の"集会"で拓也がお尻ペンペンに"耐えすぎた"ためか、日頃から家で行っているお仕置きが本当に効いているのかどうか、帰って確かめてみよう…、などと言い始めていた。
(…ま、まずい…っ、本当にそんなことになったら…、明日学校の教室で、誰のせいでそうなったかって、犯人探しが始まっちゃう…!?)