「…家に来なさいって言われた時、拓っくんどう思った?」
「…えっ!?…い、行かないと…、お尻を叩かれるって…。」
「…あはは…、拓っくんは正直ねぇ?…でもそうよね?…ウソついたら…、おばさんからお尻ペンペン300回…だもんね?」
「…う、うん…。」
怒って家に呼んでいただけならば、まだ理解出来るのだ。
ただ…、"集会"の日程は事前に決まっていたはずで、しかも奈津子は会の進行役だった。
「…もし僕が、おばさんの家に行ってたら、どうなってたの…?」
「…それは…、拓っくんが、綾子ちゃんを見捨てて、自分の都合を選んでいたらってこと?」
「…うん。」
「…う〜ん…、私の知ってる拓っくんなら、絶対にそんなことはしないと思うけれど…、おばさんが家に帰るのを待っててもらって、そのあとお尻ペンペンだったかな…?」
「…えっ、…そ、それだけ…?」
「えぇ。」
…何だ、それなら勇気を出して"集会"に出るより、そっちのほうが楽だったんじゃ…?
綾子の"絶交のお尻ペンペン"がもう1日続いてしまう結果にはなるが…、そこを考慮しなければ…。
「…あれ?…でも…、もし僕が、勇太君と一緒におばさんの家に行ったとして…、おばさんが"集会"で遅くなるなら、僕そのまま帰っちゃうんじゃ…?」
「…ううん、それは何も心配してなかったわ。」
「…えっ?」
奈津子が次に発した言葉に、拓也は驚愕する。
「…うふふ…っ、だって今、おばさんの家には…、拓っくんのお母さんが来てるんだもの。」
「…え、ええぇ〜っ!!!?」
「…ふふっ、良かったわね拓っくん、鉢合わせしなくって…。」
待て待て待て…、どういうことだ…!?
…集会の裏で、僕のお母さんが今…、勇太君の家に居る…!?
…だとしたら、その目的はもちろん、ただの連絡事項などではもちろん無く…。
「…じゃ、じゃあまさか…、今ごろ勇太君は…!!?」
「…えぇ。拓っくんのお母さんから、きつ~くお尻ペンペンされているはずよ?」
「…な、なんで…!?」
「…なんでって…、あの子に伝言を頼んだ時点では、拓っくんがどっちへ行くかわからなかったから…、"保険"をかけておいたのよ?…もし拓っくんが家に来ていたら…、先に、お母さんからも叱られていたでしょうね~?」
「…ヒ、ヒィィ〜っ!!?」
拓也はそれを聞いただけで、奈津子の"手回し"の徹底ぶりに心底恐怖を感じた。
…もし、拓也が綾子のことを見捨て、勇太の家へ行く道を選んでいたら…、そこに待っていたのは、拓也の母親である美由紀からの、"お尻ペンペン200連発"の刑である。
…そして恐ろしいのは、その後…。
勇太の母親である奈津子が帰宅するのを待ち、母親である美由紀の目の前で…、さらに追加で奈津子から、"ウソをついたお尻ペンペン300発"…。
…今日の"集会"に出席したことで、"綾子の母親にわざとお尻ペンペンされた"という件は何とか許して貰った拓也だが…、もし仮に、"集会"を嫌がって勇太の家を選択していたら…、美由紀と奈津子から恐ろしいほど尻を叩かれたうえに、綾子の母親にさえ許して貰えず、綾子まで巻き添えで明日の朝、母親から2度目のお尻ペンペンを食らっていたことになる。
(…あ…っ、危なかったぁぁ〜っ…!!?)
…拓也のことは自業自得だが…、綾子との"約束"すら果たせないまま、危うく奈津子、美由紀、綾子の母親の3人を同時に、大激怒させてしまうところだった…。
…そんな事態になったら、さすがの拓也も、最終的にどんな目に遭わされていたかわからない…。
「…ふふっ、まぁ拓っくんは今回ちゃんと"集会"に来たわけだから…、"連絡帳のお尻ペンペン"も、今日は無しにしてあげるわね?」
「…っ!」
(…も、もし家に行ってたら…、おばさん、それもやるつもりだったの…!?)
尋ねるのが怖すぎて、「あ、はは…」としか返せない拓也。
奈津子の冗談なのか本気なのかわからない発言に、すっかり振り回されている。
「…あ、それと…、拓っくんも気になっていたと思うけれど…、今日の"集会"で拓っくんが叱られちゃった件は、お母さんには全然言ってないからね?」
「…え…!?」
「…うふふ、もし拓っくんがおばさんの家へ行ってたら…、綾子ちゃんのお母さんのことも含めて、ぜ〜んぶ話さなきゃ駄目だったけれど…、今日は私も入れて"10人のお母さん達"から叱られちゃったわけだから…、お尻ももう限界でしょう?」
「…う、うん…。」
「…だから、"ギリギリ合格"。…ただ、一応口止めはしたけれど…、他のお母さん達からもし伝わっちゃったら、沢山お尻ペンペンされる覚悟はしておいてね?」
「…わ、わかった…。」