※この作品はR-18です。

ふしぎな気遣い   作:佐田トレコ

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影響7

「…き、昨日は…、大変だったみたいだね…、拓也君…。」

「…う、うん…、まぁ…。」

「…家のお母さんと、綾子ちゃんのお母さんが両方居る"集会"に飛び込むだなんて…、本当にすごいよ…。僕だったら、絶対にマネ出来ないもん…。」

 

拓也は、勇太の母親である奈津子がどんな風に昨日のことを話したのか、まだ聞かされていなかった。

…さすがに、"10人の母親達"全員からお尻ペンペンされた件は伏せておいてくれたようだが…。

…今の勇太は、奈津子と綾子の母親から2人がかりで、拓也が死ぬほどお尻ペンペンされた…と解釈している様子だった。

 

「…で、でも…、勇太君だって昨日、帰ったら、僕のお母さんが部屋に居たんでしょ…?」

「…そうそうそう…、そうなんだよ〜。…もう本っ当にビックリして、お尻もやっぱり200連発だったんだけど…、拓也君の方の話を聞いたら、僕はその程度で済んで本当に良かったと思うよ…。」

「…う、うん…。」

 

…どうやら勇太は昨日、いつも拓也が母親である美由紀から受けている"お尻ペンペン200連発"を、自宅で喰らったらしい。

数だけを聞けば非常に重い罰だが…、ズボンの上から叩かれるだけであり、後半は確かに痛いのだが、何とか我慢出来る程度でもある。

…ただ勇太にとっては、"自宅で友達の母親からお尻ペンペンされる"という恥ずかしさもある…。

 

「…はぁ〜っ…、拓也君ちでお尻ペンペンされた時も恥ずかしかったけどさ…、家に帰ったら拓也君のお母さんが居て…、その場でお尻ペンペンされるっていうのも…。」

「…う、うん…。僕もわかるよ…。いつもと違う感じって言うか、慣れてないと余計に恥ずかしいよね…。」

 

…拓也は昨日、初めて訪れた公民館の中で…、"10人の母親達"全員からお尻を叩かれたばかりである。

…状況に関しては、慣れているはずもない。

 

「…そうそう、そうなんだよ…。おばさんのお尻ペンペンってさ、後半すごく痛くなるじゃん?…ズボンの上からだと思って油断してたら…、ジンジンヒリヒリ熱くなってきてさぁ…。」

「…うんうん…、僕も毎回そう思うよ。…我慢出来なくはないんだけど、動かずにはいられないって言うか…。」

「…それそれ…。やっぱり拓也君もそうなっちゃうんだぁ…。」

 

学校の廊下の隅で、"お尻ペンペントーク"に花を咲かせる2人。

お互いに昨日の事があるせいか、気持ちが昂っていた。

 

 

 

「…おっと、さすがに喋りすぎたかな…?…ごめん、学校の廊下でする話じゃなかったよね…。」

「…ううん、僕のほうこそ…。…勇太君、色々詳しく教えてくれてありがとう。」

「…あはは、拓也君…、本当に水臭いってば…。…だって僕たち2人とも、悪い事をしたら…。」

「…うん…。」

 

勇太の母親である奈津子と、拓也の母親である美由紀は…、お互いの子供の躾において、"全面協力"すると断言している。

もし勇太が悪さをすれば、母親の奈津子からだけではなく…、美由紀の手によっても"お尻ペンペン200連発の刑"を浴びせられる可能性がある。

…一方の拓也は…、同じく母親の美由紀によるお尻ペンペン200連発に加えて…、さらに奈津子から、お尻を剥き出しにした強烈なお尻ペンペンを命じられる恐れがあるのだ。

…そして、もしウソをついた場合には、その追加罰が300回にも及ぶことになる…。

 

(…こ、これだけでもう、十分怖かったのに…。綾子ちゃんのお母さんにまで悪戯をしたせいで、大勢のお母さんを怒らせちゃったんだよね…。)

 

…勇太は叱られても、まだ奈津子と美由紀の2人に叱られるだけだが…、拓也の場合は、自身の母親である美由紀に加えて…、昨日の"集会"で拓也のお尻を叩いた"10人の母親達"が全員…、拓也のことを常に見守っているのだ。

…もはや、うかつに悪いことは出来ないと、気を引き締め直す拓也。

…そこへ、タッタッタ…、と小走りで近付く少女の影があった。

 

「…ごめん拓也君、勇太君とお喋りしてる所に悪いけど…。」

「…わぁっ!?」

「…そ、そんなに驚くところ…?まぁ良いや。…あのね、さっき学校入る時に…、女の人がこっちへ来て、"拓也君って子に、お昼休みに西門前で待ってるって伝えてもらえる?"…って言ってたよ。」

「…えっ?」

 

…女の人…?

ちょうど話題に出ていた美由紀と奈津子がすぐ頭に浮かんだが…、もしそうならば、堂々と入って来るか、学校に電話をすれば済む話である。

 

「…何だろう?…お、女の人って…、誰かのお母さん…?」

「…さぁ?…でも多分そうだと思うよ?先生じゃなかったし…。…どうして、今じゃなくてお昼休み…?とは思ったけれど…、怪しい感じじゃ無かったから…。」

「…う、うん…、わかったよ…、ありがとう…。」

「…うん。確かに伝えたからね?」

 

…そう言うと少女は、また教室に戻っていった。

 

「…た、拓也君…、今の呼び出しって…?」

「…う、う〜ん…。誰だかわからないから、まだ何とも言えないけど…、勇太君のお母さんでは無いよね…?」

「…家のお母さんなら、コッソリ西門近くに呼んだりはしないと思うけど…。」

「…だ、だよね…?」

 

拓也の通う学校の"西門"は、どちらかと言えば校舎の裏側にあたるので、人通りがほとんど無い。

業者の搬入などを除けば…、例えばなるべく人目を避けて、我が子の忘れ物を届けに来た親などにコッソリ接触するための秘密スポットである。

…つまり、この人物も拓也と会っているところをあまり見られたくないのだろう。

ただそうなると…、本当に誰だかわからない。

 

「…ほ、ホントの不審者だったりして…!?」

「…こ、怖い事言わないでよ…。…でも、わざわざ僕を呼んでるって事は…、知ってる人かなぁ?」

「…女の人って言ってたよね…?…例えば拓也君さ、昨日…、初めて会った人とか、居なかったの?」

「…えっ?」

「…ほら…、僕のお母さんと、綾子ちゃんのお母さんに怒られたんでしょ?…その時、近くに誰かが居たとか…。」

「…あっ…、あぁ〜っ…、ど、どうだったかなぁ〜…?」

「…もし居たなら…、その人が呼んでるとかだったりしてね?…拓也君が怒られすぎて、心配になったとか…。」

「…う、う〜ん…?…そ、そうかもね〜…?」

 

勇太の読みは突拍子もないように思えて、的を射ていた。

拓也は昨日、勇太の母親である奈津子と、綾子の母親の2人どころか…、他に8人もの母親達全員から、お尻ペンペンの罰を受けてしまったのである。

…それを知らない勇太は、"たまたま近くに居た人が呼んでいるのではないか"と半ば冗談で推測したが…、拓也にはしっかりと、"心当たり"の人物が居た。

 

(…ぜ、絶対にあの人だ…。…も…、もう今日のお昼休みに来ちゃうんだ…?)

 

拓也の頭には、すっかり"ある人物"の顔が浮かんでしまう。

…今日はまだ、"集会"の翌日。

拓也のお尻も完全に治ったとは言い難く…、見た目にはほとんどわからないが、座るとやっぱりジンジンと痛む。

…そんな状態のお尻を…、再び"ペンペン"するかもしれない人物と…、拓也は会わねばならないのだった。

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