これは罰なのだから、楽郎くんに逆らってはいけない。ベッドに手を、床に足を付け、腰を持ち上げる。
「さて、まったく触ってないのに
真後ろに立つ楽郎くんが、何気ない口調で付け加えた私のメンタルに致命的な修飾語。心臓が跳ね上がり、発汗量が増し、吐息が殊更熱を帯びる。
「はあっ、はぁっ… な、なんです、か…?」
首を巡らせ振り返ると、楽郎くんが静かな笑顔を浮かべ、ピースにした指同士を閉じたり開いたり、曲げたり伸ばしたりしている。
「十分に濡れてはいるけど、やっぱ解しといたほうが痛くないよね?」
『何を』、なんて問うまでもない。私の女陰にその指を差し込み、思う存分内側を掻き回すのだろう。
「んぐっ…そっ、それは……っ、は、はい…」
生唾を飲む。ここから更に快感を上乗せされるのが怖くてたまらない。けど、痛い思いをせずに済むのならその方が良い。
「『はい』?」
「ぁう…、わんっ…」
「だよね。じゃあとりあえず、5回くらいイってみようか?」
「は、わん…。―――わう?」
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結論から言うと、楽郎くんの発言には一切の誇張も自惚れも無かった。私の身体の弱点を全て把握していて、それを的確に愛撫できる、自負に基づく宣言だった。
「彼氏の寝込み襲うような悪い子にはお仕置きがいるよなぁ? 玲さん、ごめんなさいは?」
楽郎くんの指が
「ごめ、なさっ、そこ♡ そこだめっ♡♡ よわいんですっ♡♡ イクっ♡ イキます♡♡ あっ♡ あっ♡ あ゛ーっ♡♡♡」
謝罪の言葉を言い切ることすらできず、懇願するようにベッドに額をこすりつけてオーガズムに達する。私の喉から発せられたとはとても思えない濁った嬌声と共に、透明な潮がぴしゃぴしゃと吹き出す。
絶頂に体力をごっそり持っていかれ、呼吸が一気に乱れる。しかしそれを整える時間は与えられない。
「はあぁっ、ふうっ……ンぅうっ!」
膣から指が引き抜かれ、下半身が震える。粘液塗れの指が閃き、今度は陰核に触れる。肉豆を覆う包皮があっさりと剝かれ、敏感な秘核が晒される。
「玲さんと
普段通りの口調の雰囲気とは対称的に、淫靡に蠢く指が正確にクリトリスを刺激する。断続的に発生する快感の波が繰り返し脳に叩き込まれる内、快感が収まる瞬間が消滅し永遠に高みに押し上げられていく。
「ひいうっ♡ はあぁっ♡ なんっ♡ これっ、おちる♡ おちちゃいますっ♡ ら、ろっ、くぅうんっ♡ とめ…たすけっ……んっっく…い゛うぅーーーっっ♡♡」
浮遊感を錯覚するほどに追い詰められ、せり上がる恐怖から慈悲を乞う言葉が漏れる。しかし、楽郎くんの手は止まらず、頭の中に歓楽が蓄積されていく。
自分で触って得る快感など比べ物にならない。楽郎くんの手によって与えられる、無遠慮故に圧倒的な快美感。藁を掴む猶予もなく、私は成す術なく二度目の絶頂を迎えた。
まだ終わらない。私はどこまでも上がって落ちる。
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「そっかぁ落ちるの怖かったかぁ。ごめんね玲さん、ほらぎゅってしてあげよう」
「はうっ…♡ で、でも、わるいなんて、これっぽっちも、思ってません、よね…?」
「バレた?」
「もう…♡」
自分の体を支える余力すら失った私は、楽郎くんに身体を預けざるを得なかった。
背後から胸の下に腕を回され、痛みを感じないギリギリの力加減で抱きしめられる。そのまま楽郎くんに引き寄せられ、一緒になってベッドに寝転がる。ぎゅうぎゅうに身体が密着して、スキンシップが齎す安心感に、心がどっぷりと浸かる。
しかし同時に、熱り立つ凶器が私の尾骨にぐりぐりと押し付けられ、骨から伝わる熱と存在感に、下腹部が…子宮が期待に疼く。
「玲さんの身体、どう抱きついても抱き心地最高なのヤバいわ…。このまま抱き枕にして二度寝もアリじゃない? …今更寝れないけどね」
「ぁ、の…らくろう、くん…? あついのが…あたって、ます……」
「んー…あててんのよ?」
リラックスしきりの楽郎くんのおどけた言葉に、にわかに弛緩した雰囲気が形成される。でも私の胸中はそれどころではない。私は、私の置かれている状況が、ますますわからなくなっていた。
楽郎くんは、後三回は私を絶頂させるつもりでいる。であるならば、この状況は一体何なのか。何の布石なのか。この後どうやって私を絶頂させようというのか。尽きない疑問は思考力を圧迫し、期待と恐怖が渾然一体になって混乱を生み出していく。
私を抱きしめる腕が、片方外れる。自由になった右手がそっと私のお腹をなぞる。
「んっ…、んふっ……」
くすぐったさに混じる少しの快感に鼻から息が漏れる。しかしこの程度では到底絶頂には届かない。
わからない。本当に楽郎くんの意図が読めない。
「らくろうくん…なにを、して…」
「何をするつもりだと思う?」
連続絶頂で摩耗した体力と精神では、思考も大して働かない。疑問ばかりが脳内をループして、混乱は加速するばかり。そして、状況は私を置き去りにして
「『ここ』を指で刺激するのはちょっと難しいからね。裏技を使おうと思って」
「裏、技…?」
そう言って楽郎くんが指差すのは、下腹部…ではなく、その奥にある――
貫手に揃えた指先が、臍と股間のちょうど中間の辺りにそっと当てられる。
まさか楽郎くんは、体の外からポルチオを刺激しようとでも言うのか。
「い、いくらなんでもそんなこと…」
「できるさ」
「で、でも…」
「できる」
直ぐ側で発せられる有無を言わさぬ力強い断言に、段々と私の語気が弱まり、心が揺らぐ。
(できる、の…? 本当に、そんな魔法みたいなこと…)
私の動揺を知ってか知らずか、楽郎くんが一際強く私を抱きしめる。身体同士がより密着して、ドキドキが高まりながら安心感に溺れていく。
「玲さん。落ち着いて、深呼吸して……はい吸ってー?」
耳元で囁きかけられるままに、息を深く吸い込む。
「吐いてー」
深く息を吐く。
手足の末端まで熱が行き渡るような、身体の強張りが溶けていくような。
湯船に浸かった時のように、緊張が解けていく。
「また吸ってー」
もう一度、吸う。
吸った分だけお腹が膨れ、楽郎くんが当てた指が沈み込む。
まだ、何も起きない。
「吐いてー」
再び、吐く。
楽郎くんの言うとおりにするのが、不思議と心地いい。
頭の中、全部空っぽにして楽郎くんに差し出す。
「俺にここを刺激された時の事、目を閉じてよーく思い出して?」
空っぽの頭の中に、過去の記憶が蘇る。それは身体の芯に響く深い快感。あれをされると、総身が粟立って、背筋がぞわぞわと震えて、あられもない喘ぎ声を上げさせられる。それが、この二ヶ月間、何度も。
何度も。
何度も―――
「今」
ぐり、と。
指が、食い込む。
「ッッ!!?」
目をカッと見開く。耐え難い何かに襲われて身体が自然に丸まる。
総身が粟立つ。背筋がぞわぞわと震える。身体の芯に、深く響く快感。
間違えようもない。これは。
「ッは、あ゛っ♡ あ゛、あ゛…あ゛!!?」
稲妻のような衝撃に目を白黒させる。腰に当たっている肉の凶器は、挿入されていない。
(本当、に―――っ)
「成功したみたいだね。じゃ、イくまでやろっか」
「待っ」
ここまでの優しさは全て演技でしたと言わんばかりの、容赦ない外からのポルチオ攻め。
同じ場所を何度も指で刺激されて、全身から汗が吹き出す。頭の奥で火花が弾けて、手足が派手に暴れる。
「う゛あっ♡ い゛っ♡ お゛う゛っ♡ ごっ、これだめっ♡♡ またすぐう゛ぅ♡♡ イキますっ♡ イギますからゆるしてっ……あ゛あ゛あ゛ーーっっ♡♡♡」
気持ちいいのに苦しくて、その苦しさが気持ちいい。許容量を遥かに越えてお腹の底に伸し掛かる、重く、甘く、そして暴力的に強い歓悦。全身が弾け飛ぶ錯覚の後、余韻と放心状態は普段以上に長く続いた。
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ようやく、自分以外に目を向けられるようになるころには、絶頂と余韻の中で私の身体がせっせと作り続けた愛液は、本番を待ち望む膣口からこぼれて腿を伝い、ベッドのシーツに大きな染みを作ってしまっていた。
「はぁ゛ーっ♡♡ はふーっ♡♡♡ ……うぅ~…っ」
首を巡らせ少し恨めしげな視線を楽郎くんに向けるも、楽郎くんはけんもほろろ。まるで相手にしてくれない。
「弱いって分かってるから責めてるんじゃん? さあ、まだあと二回残ってるよ? タイムリミットもあるし、ちゃきちゃき行こうか?」
楽郎くんから悪魔の宣告がくだされる。もう既に体力は限界。これ以上は失神が視野に入ってくる。
「い、いえ! もう、もう大丈夫れす! 挿れられても全然、痛くないと思いますっ!」
「残念ながらそいつは聞けないなあ。玲さんのよがってるとこ、もっと見たいもん」
「あう、ぁ……」
楽郎くんは言って聞く人ではない。止めるなら他の方法でないと。
ぐちゃぐちゃの頭で考えようとするさなか、纏った粘液が僅かな光を反射し、てらてらと輝く右手の指をそっと私の股間へと―――見てる場合じゃない!
慌てて両手でその手首を掴んで止めようとする。普段、楽郎くんとの力比べでは負けることは無いのに、今のろくに力が入らない身体では、両手を使ってようやくギリギリで押し止めることしかできない。
「うーっ、ううぅーっ…!」
あまりにも、弱く不甲斐ない有様。楽郎くんの前ではいつもこう。情けなくて涙が滲む。
「おっと、そんなに嫌かあ。 …じゃあ、しょうがないか」
込められていた力が弱まり、ようやく押し返す。
良かった。通じた。やめてくれた。安堵がにわかに全身に広がる。
「楽郎、くん――」
「玲さん、今…自分が
楽郎くんが徐に左手を上げる。
私に見えるように、見せつけるように。
手首に引っ掛けられた、赤い
紐が振られる度、私の首元からちゃりちゃりと音が鳴る。
心臓が嫌な音を立て始める。息が浅くなり、焦点が合わなくなる。
「わ、私は楽郎くんの彼女で……」
わかっている。今のわたしがそうでないことは。それでも縋る思いで言葉を零す。
「―――ペット」
「っ!」
顔が見えないまま、耳に滑り込んでくる楽郎くんの言葉に、肩が震える。
「で、でもそれは……」
「それとも、メス犬?」
「っ…♡」
背筋を悪寒が駆け抜け、視界が端から暗く染まる。
酷い。なんて事を言うのだろう。
(いやじゃ、ない……)
私の動揺を知ってか知らずか、楽郎くんがさらに畳み掛ける。
「受験勉強だってのに、こんなの持ってくるような娘、だいぶぶっ飛んだマゾだと思わない?」
「あ、ぅ………」
何も、言い返せない。楽郎くんは何一つ嘘を言っていない。私が、全部………。
でも、何か言わなければ。ただされるがままだったこれまでへの反骨心で、なけなしの否定を絞り出す。
「でもっ、でもぉ……」
「イヤイヤする玲さんもかわいいね。こんなに触って欲しそうな乳首してなかったら、もうちょい説得力あったかなぁ」
「ん゛いうぅっ!」
楽郎くんの左手が、真っ赤に充血した乳房の先端部を強く抓る。快楽に屈しふやけきった脳は、痛みを快感に誤認してしまう。
抵抗の意思をにわかに剥ぎ取られ晒した隙に、右手まで私の乳首を虐め始める。
優しく捏ね回し、時折押し潰すように。手のひら全体で乳房を愛撫されながら緩急自在に責め立てられ、瞬く間に絶頂に押し上げられる。
「きっ♡ あっ♡ いうっ♡♡ イくっ♡♡ イッぎうっ♡♡♡ イッ…ぅーーッ♡♡♡♡」
首を仰け反らせ、足がじたばたと虚空を掻く。信じられない早さで繰り返す絶頂。短期間に何度も何度もイかされて、私の身体は随分イき易くなってしまっていた。
言うなれば最大HPそのものが大幅に減少しているようなもの。普段ならまだ耐えられる
「は、へ……♡♡ へぇ、あ………」
余韻未だ冷めやらず、頭を俯向け糸の切れた人形のように全身が弛緩する。唇を閉じる気力も失せて、舌をだらりと垂らして桃色の熱呼吸を繰り返す。抗う意思は儚く砕け散り、何もかも認めてしまって良いのではないかとすら思い始める。
「玲さん、身体こっち向けて」
「ふあ……♡ んむ、ぅ……」
言われるまま、身を捩って向き合う私の唇と、楽郎くんの唇が重なる。それにとどまらず、舌が私の口内にねじ込まれる。
私の身体は条件反射で舌同士をうねり合わせ、唾液が混じり合ういやらしい水音が耳の奥に直に伝わる。耳まで同時に犯されているかのような錯覚すら覚えてしまう。
肉と粘膜を絡ませ合う接吻肉交の味に脳が酔いしれる。ぼんやりした『しあわせ』が滲むように広がり、残り滓のような羞恥心や反抗心を取り込んでいく。
楽郎くんの手が私の頬を、耳を、髪を撫ぜて抜ける。直ぐ側の刺激に反射的に目を閉じた。
触れられた場所から送り込まれるくすぐったさと、ぴりぴりと甘い刺激に、さらに思考が『しあわせ』で白く染まっていく。
(あ……♡ これ、すき……♡ しゃ、わせで……イく……イっちゃう……♡)
「んぷっ……ふーっ♡ うう、んうぅーっ………♡♡」
さっきまでと比べて大分大人しく、弱々しく、しかし確かに全身がエクスタシーに震える。
快感ではなく多幸感で、身体ではなく脳が迎えるオーガズム。絶頂すればするほどに、どこまでも気持ちいい事に弱くなっていく私の身体に、甘くて苦い敗北感が胸中を満たす。
私の絶頂を感じ取って、楽郎くんの舌が離れる。口の中にもの寂しさが広がった。
「これで、五回絶頂したね、玲さん」
「ふぇ…? あ…そう、でしたっけ……」
そういえば、そんな事を言っていた気がする。もう数十秒前の事に思考を巡らすのも難しいくらいに、私の身体は外も内も蕩けきっていた。
「よっと」
勢いよく身体を起こした楽郎くんが、私の上を取る。
「罰も与え終わったし、お待ちかねのご褒美と行こうか。というか俺がもう限界」
シャツを脱ぎ捨てながら、私の足の間に割り込む楽郎くん。何度見ても慣れないその裸身に、視線がふらふらと彷徨う。
筋骨隆々などではなく、ひと目見てわかる力強さや逞しさには欠けるけれど、それは間違いなく、『喰らう側の雄の肉体』だった。
雌を組み伏せ、屈服させ、我が物とする為の肉体。その肉体全てが、私を求めていると分からせられる。
対する私は喰われる側。雄に組み敷かれ、服従し、その所有物になることこそが至上の悦び。
私の肉体は、いつの間にかそれを認めていて。そして、心が理解し、理性も恭順しようとしている。
だって、こんなの勝てない。上っ面の体力などではない、もっと根源的な、生命としての
楽郎くんは強い雄で、私は弱い雌。社会的生物として生活している間は目に見えないその絶対的な力関係は、今この時可視化される。
同時に理解する。私のこの弱さは、誰に対しても発揮されるものではない。少なくとも今ここにいる私にとって、この弱さを曝け出して良いのは、世界に楽郎くん唯一人。
ああ、なんでこんな事にもっと早く気付かなかったのか。
二ヶ月前のあの日に分かっていたのなら、身の振り方立ちふるまい、色々変えられたというのに。
楽郎くんに―――
「――いさん、玲さん?」
「ふぇっ、なななんですか!?」
呼び掛けられて
「…大丈夫?」
「はい…。大丈夫、です…」
とくん。とくん。
鼓動がいやに落ち着いている。決して心が冷めた訳ではない。
今の私にとっては、裸でいることも、楽郎くんの裸が目の前にあることも、当然の事になっただけ。人から獣へ、常識の基準がすり替わっただけ。
「ならいいけど。…付けるよ」
手に持った箱から、パッケージされた円いゴムを取り出そうとする楽郎くん―――の手を、はしとつかんだ。
楽郎くんが、訝しんだ目で私を見る。
「……。どうしたの? 玲さん」
「あ、楽郎くん…」
楽郎くんの手を掴んだのは、無意識だった。
ぐちゃぐちゃの脳みそでもわかる。これを言ってしまったが最後、私は酷いことになるだろう。一抹の不安と恐怖は付き纏う。
(その方が、きもちいいから…いいですよね?)
「私、少し前から…薬を、飲み始めたんです……。そのおかげで、
言いながら、鼓動が段々と激しくなっていくのを実感する。少し前の私ならば、選ばないであろう選択肢。未知の、あまりにも危険な世界に
楽郎くんのことだ。我慢の効かなくなってる時に私がこんなこと言ったら、絶対に。
「玲さん、それは…どういうつもりで言ったのかな?」
楽郎くんが、私の上に覆い被さる。私の両肩を掴んで、至近距離で目と目が合う。
狼のような獣の目。目前に投じられた肉を、骨までしゃぶり尽くしそうな…いや、骨も噛み砕いてしまいそうな程の、飢えし凶獣の眼差し。
「まさかとは思うけど、俺も玲さんも色々大事なこの時期に、ゴムなしでセックスしようって言ってる? 安全だって、可能性は低いっつっても、もしもの時は事故じゃ済まされないよ? それ全部分かってて――」
私を諭すように、本心とは真逆の言葉を問いかける。
目を見れば、楽郎くんの考えている事がよく分かる。
一時の快楽のために未来を秤にかけた愚かな私を、何一つ隔てるもののない肉の杭で刺し貫きたい。ぐちゃぐちゃに掻き回して、何も考えずに奥の奥で精液を子宮の中に流し込んで。許してって言われても許さないで、潰れたカエルみたいになるまで犯し尽くしたい。
でも、僅かばかりの理性で、それがダメだってわかってる。無責任なことはしたくないって思ってくれてる。その優しさ、事ここに至って尚、理性を取り繕ってみせる心根が、本当に嬉しくて、とめどなく『好き』があふれてくる。
「まどろっこしい、ですよ…♡」
甘ったるく媚びきった声で、敢えて挑発的な物言いをしてみせる。
私は、それをこそ望んでいるのだから。
楽郎くんなら。
優しくて、かっこよくて、私の事全部お見通しの楽郎くんなら。
私が何を望んでいるのか、わかりますよね?
「楽郎くんが、この二ヶ月の間で何度も何度も突いて、捏ねて、掻き回して……♡ 楽郎くん専用になっちゃった、とろとろほかほかの
内心少し引くくらい、卑猥な言葉がすらすらと出てくる。
結局、これが私の地、なのだろう。楽郎くんのことが、欲しくて欲しくてたまらない。楽郎くんに愛されて、楽郎くんに隷属して、楽郎くんに蹂躙される。それが、私の悦び。私の幸せ。
私の肩をベッドに押しつける楽郎くんの手を片方取り、その手のひらにそっと頬を擦りつける。
『私は、貴方にこんなに懐いています』『だから』『貴方が私に何をしたって、私は受け入れます』。そんな気持ちを込めた頬ずり。
「………」
一言も返してこない楽郎くんの、目の奥に宿る情欲の火が、勢いを増しているのがわかる。
もっと、もっと燃やして。その火を炎に変えて、私を焼き尽くして。
そのためなら私は、どこまでも自分を貶められる。
楽郎くんの目を覗き込む。その瞳の奥に私が映っていた。
被虐の喜悦に目のくらんだ……卑しいメスが映っていた。
「それに、楽郎くんが言ったんですよ…?」
「……?」
「私はペットで、メス犬で…。ぶっ飛んだマゾだって…♡」
「っ…!」
「これからすることは、セックスなんて素敵なものじゃないんです。二匹の獣が、交尾するだけ…♡ 交尾に普通、ゴムなんて使わない。違いますか…?」
意味不明な事を言っている自覚はある。でも、それでいい。今の私達には、それこそが十分な理屈として成立する。
楽郎くんは、何も言わずに私の腰を両手で掴んだ。そのまま私の腰を浮かせ、持ち上がったその下に楽郎くんの膝が差し込まれる。ベッドのスプリングが小さく軋む。
思考が快楽一辺倒に染まりきった私は、その意図を瞬時に理解した。
(これ、逃げられない…。腰が完全に固定されて、斜め上から杭打ちみたいなピストンされちゃう…。どれだけ身を捩っても腰だけは動かせない、楽郎くんが満足するまで欲望を発散するための玩具にされちゃう…♡)
高まる期待に割れ目からみっともなく牝汁を溢れさせながら、楽郎くんに期待の眼差しを向ける。
住宅街に佇む一軒家。その二階にある薄暗い一室。私の心音と空調しか聞こえない静謐な空間の片隅で、始まる。
倫理モラル社会通念道徳理性常識を――知性すら擲った交尾が、始まる。
窓の外から、朝の光が差し込んだ。しかし、布の隙間から漏れる細い光では、私達には届かない。
「望み通りにしてやる」
凍てつくほどに冷たくて、灼熱のごとく燃えたぎる、唸るような低い声だった。