序盤がちょっと暗めな話になりますのでご注意ください。
今回はちょっとしたおまけもあります。
いつもの注意事項
■二次創作です。本編の設定とは違う場合があります
■オリジナルの団長が出てきます。ご了承ください
「戦えない誰かの為に戦い、自分の為すべきことを為せ」
かつて父が自分の騎士団の花騎士の皆に言っていた言葉を、僕はぼんやりと水平線を見つめながら思い出していた。
たまの休みにこうやって遠くの景色を見ながら、昔の事を思い出す。この癖のようなものは、このバナナオーシャンに来てからは浜辺に来て行うことが多くなった。
子供の頃の両親や親友だったイアン、メコ達との楽しかった思い出、父方の祖父母の家に預けられてからの修行の日々、騎士学校での勉強…
昔を思い出して思う事は、両親を失い、親友と別れたあの日以来僕の心はずっと、雨が降る空のように薄暗いままだということ。
修行の日々は辛かったけれど強くなれる事は嬉しかったし、祖父母も可愛がってくれた。
騎士学校でも友達が出来て、今でも彼らと文通をする程には仲がいいつもりだ。
それでも…僕の心はいつまでも晴れない。
道半ばで倒れた両親や花騎士達の無念、行方を知らないイアンの安否、風の噂で聞いたメコの家の没落…
嘆きと悲しみが僕の心にいつまでも暗い影を落としていた。
そして何より、どれだけ修行を積んでも世界花の加護の無い自分では花騎士達について行くのがやっとだという事実が重くのしかかっている。
自分よりも遥かに子供なカカオさんやプミラさんでも軽々と害虫を倒していくし、エリンギさんの素早い居合い斬りは真似の出来ない技だと思った。
彼女達に追いつこうと僕も剣を振り続けているが、やはり加護の有無は身体能力に影響するようで、中々追いつくことは出来ずにいたのだった。
だからこそ主に戦闘では斬り込みつつ彼女達のサポートに回っているのだが、子供の頃からやってきた事が無駄になっているような気がして、やるせない気持ちが募る。
いや、悪いことばかり考えるのはよくないな…これじゃあただ単に気分が落ち込んでいくだけだ。
そうだ、気分転換に街で買い物でもしよう。
そうして僕は浜辺を後にして、街へと続く街道を歩いていくのだった。
街道を歩いて行くと、空がどんどんと曇っていっていることに気がついた。
まるでさっきまでの落ち込んでいた僕みたいだと苦笑しつつ道を歩いていると、街の方を見ている一人の女の子が目に留まった。
薄い菫色と葡萄酒のような色の綺麗なウェーブの髪、玉虫色に輝く瞳、少し紅潮している頬、柔らかそうな口、フリルが沢山使われている可愛らしい衣装、白いタイツに包まれた細い太もも、前屈みで内股気味な仕草…
彼女のそんな可憐な姿に僕は目を奪われてしまった。
心拍数が多くなってドキドキする、彼女をずっと目で追ってしまっている。これが一目惚れ、というやつなのだろうか?
すると彼女は急にふらついてしまった。目眩でも起こしているのだろうか?
それでも彼女は前に進もうと歩こうとしていたが、二、三歩ほど歩いた所で咳き込み、とても苦しそうだった。
「く、ぅう……けほっ」
「君! 大丈夫かい!?」
居ても立っても居られなくなった僕は、後ろから彼女に声を掛けた。
「体調が悪そうだけれども、無理をしてはいけないよ」
「……ごめんなさい。わたし、でもっ……っ」
彼女の目線の先には、怪我をして泣いている子供がいた。もしかして彼女はあの子を助けようとしてたのか…
僕がその事に気づいた時には、もう彼女は泣いている子供の方に駆けていた。
僕は全然気づかなかったのに彼女は気づいていたのか…けど無理をしてまで人を助ける彼女が苦しむ姿に僕は、あまりいい気分ではなかった。
「……なるほどね。事情はわかったけども、君自身が無理をしてはいけないよ。あそこで君が倒れてしまっては、元も子もないだろう?」
「うぅ、ごめんなさい…」
泣いていた子供はどうやら怪我をしていたようで、彼女はその手当てをしてあげたようだ。
その後僕は彼女が手当てを終えた後に、近くのベンチでマントを掛け布団がわりにして休ませることにした。
そこで僕達はお互いの名前や身分を伝えてから、雑談をしていた。
彼女の名前はゴデチア。まだ騎士団に入っていない花騎士だという。
僕は彼女が体調不良を押してでも治療を専念したことが気になって問いかけると、その理由と共に身の上話をしてくれた。
誰かが傷ついているのは放ってはおけないことや誰かを助けるために花騎士になったこと、今日は散歩を兼ねた警備巡回をしていたこと、そしてさっき子供を助けたこと。僕が話を聞いていくうちに彼女の顔色はどんどん良くなっていって、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
なんて可愛らしい笑顔なんだろう…僕はそう思いながら、自分の頬が緩んでいくの感じていた。
…だらしない顔になっていないだろうか?
そして彼女の行動原理に、かつて父が口癖のように言っていた「戦えない誰かの為に戦い、自分の為すべきことを為せ」という発言を思わせるような気がして親近感を感じていた。
彼女は自分の為すべきことを見極めて、ちゃんと自分が出来ることを頑張っている…
そんな健気な所も魅力的だ…彼女を騎士団に迎え入れたい…ずっと一緒にいたい…
そんな気持ちが心の中に溢れていく。これが恋というものなのだろうか?
「謝らなくてもいいよ。僕の勝手な推測だけれども、それは多分君の優しさなのだから」
「え?」
「それに……そうだね。街を歩く君に見惚れて、あの子が泣いていたことに気づかなかった僕の方こそ、君に謝らなければいけないね」
「そ、そんな! わたしは別に……ぇ? わたしに見惚れ、て?」
僕が彼女に見惚れて子供が泣いている事に気づかなかった事を言うと、彼女は慌てて身を起こした。僕はその隙に片膝を地につけて、右手を彼女に差し出した。
すると彼女は驚いてしまったらしく、目を何回もまばたきさせた。そこで僕は少し笑った後に、彼女の右手を優しく握った。
「貴女の美しさと、優しさと。それでいて芯の通った意思の強さに惹かれました。よければ僕の騎士団に来てくれないでしょうか?」
僕はかなり気取ったポーズと口説き文句のような台詞を言いながら、ゴデチアさんを自分の騎士団へと誘う。
それは御伽話の王子が姫に愛の告白をするようで、側から見れば滑稽に映る事もあるかもしれないほどだった。だけどこうすると彼女の心にきっと届く気がして、僕はいつの間にかこうしていたのだった。
ゴデチアさんはその言葉を聞くと、突然の事に声が出なくなってしまったようだ。
だけど彼女は頬を真っ赤に染めて僕の瞳をずっと見つめてきた。
その愛らしい瞳に僕の顔が映っているように感じて、物凄く嬉しい…
そんな彼女から「貴方の騎士団に入れてください…!」と言われた時は天にも昇る気持ちだった。けどそれを堪えて、爽やかな態度を崩さずに騎士団の宿舎にエスコートするのが大変だった…
おまけ あなただけにみせるもの
「色々な服を買ってくれてありがとうございます。それに荷物も全部持ってもらっちゃって…」
「どういたしまして。ゴデチアさんは普段から頑張ってるからね…これくらいはしてあげないと…」
ある休みの日、僕らは街に繰り出して買い物をしていた。所謂デートというものである。
「ありがとうございます…そうだ、まだついてきて欲しい所があって…すごく恥ずかしいけど、アレンさんには見てもらって…確かめて欲しいんです…」
ゴデチアさんはそう言ってもじもじしながら、荷物を持っていない方の手を握ってきた。
凄く恥ずかしい…? 一体何を買うんだろう…
僕は彼女に連れられるまま、とある店へとやってきた。そこには、女性用の下着がいっぱいあって、いかにも華やかな雰囲気を感じた。
「えっと…ゴデチアさん、ここって…」
「わたし…アレンさんの下着の好みが知りたくて…色々な下着を着ますから、どれが良かったか教えてほしい…です…ふぇぇ…」
それはとても甘美で、少し危険なおねだりだった…
「まずはこれです…こっちに来てください…!」
試着室からゴデチアさんに手招きされて、そのまま中に入る。恥ずかしがり屋の彼女は下着姿を僕以外には見せたくないのはわかっているが、女性がいる試着室に入るのは逆に僕の方が恥ずかしい…
だけど彼女を恥ずかしい目に遭わせる事の方が嫌なので、我慢することにした。
「アレンさん…これはどう思いますか…?」
試着室の中でゴデチアさんが恥ずかしそうに震える。
着ている下着は…普段から着ているようなピンク色でフリルが色々な所にあしらわれていた。
「可愛い…凄く似合ってるよ…!ピンク色が好きなの?」
「はいっ! 普段の服にも選んでる色なので…気づいてくれて嬉しいです…」
彼女はそう言ってはにかみながら笑った。
ああ、本当に可愛らしい…
そして次に彼女が見せてくれたのは、普段の子どもっぽい雰囲気とは真逆の…黒地に紫色のフリルと小さなリボンが付いた扇情的なデザインの下着だった。
「こっ…今度はこんな感じです…これはどう…ですか…?」
乳首の辺りギリギリまでしか覆ってないブラに、大事な所しか隠していないほど小さなぱんつ…背伸びをしてるんだろうなぁ…
「今度はセクシーな感じだね…予想よりも似合ってるよ…でも恥ずかしいなら我慢しないで欲しいな…」
「そ、そうですか…でも似合ってるならよかったです…もうすぐお昼ですし、次で最後にしますね」
次で最後…僕はその言葉にホッとしていた。
これ以上彼女の下着姿を見ていたら、興奮しすぎてどうにかなりそうだから…
「アレンさん…これで最後ですっ…こんな感じはいかがですかっ…?」
そう言ってゴデチアさんが見せてきたのは、胸をすっぽりと覆う柔らかそうなブラと、同じくらい柔らかそうな…小熊…くまさんがプリントされたぱんつだった…
そしてそれは、一番僕の好みそうな下着だった…
「ぶっ!? えっと…ゴデチアさん…?どうしてこんな格好を? というかこの店でよく売ってたねそんな下着…」
「かわいいって思っちゃって持ってきちゃいました…うぅ…やっぱり子どもみたいですよね…?」
確かに子どもっぽいけれど、似合ってはいるし…何より彼女本人がかわいいと思って試着しているものなら、答えは一つである。
「そんな事はないよ、ゴデチアさん。凄く似合ってるし、自分で気に入って着てるんでしょ?
だったら自信を持ってほしい…」
そう言って僕は彼女の頭を撫でた。すると彼女は、いつものように俯いて恥ずかしがってしまった。
「あぅぅ…ありがとうございます…って、え…?」
彼女が不思議そうな声をあげるのを疑問に思った僕は、その目線を辿った。って、そこは…
「…ゴデチアさん、これはただの生理現象だから気にしないでくれ…好きな女の子がそんな格好で迫ってくる時点でこうなるから…ね」
「ふぁぁ…!? わっ、わかりましたぁ…」
「それでアレンさん、どっ、どの下着が一番似合ってましたか?」
彼女はそう言って聞いてきたが、僕の心は決まっていた。
「正直な気持ちを伝えるなら、どれもこれも甲乙付け難かったな…だから全部買おう」
そう言って僕は商品を持っていた彼女の手を取り、一緒に店のカウンターの方へ向かった。
「えっ…? いいんですか? 全部買ってもらっても…」
「うん…どの格好もすごく似合ってたからね…じっくり見ていたくなるくらいには…」
そう言うとゴデチアさんはいつものように顔を真っ赤にしてしまう。僕も彼女に恥ずかしい思いをさせられたので、ある意味釣り合いは取れた。
そして僕達は下着を買った後に店を出て、昼食を食べにレストランへと向かう。
買った下着のその後については、また次の機会に…
この出会いから二人の物語が始まるので、ある意味では0話になる今回のお話、楽しんでいただけたら幸いです。
そしておまけが実質的な13話に…
次回は予定が変わらなければギャグ回になりそうです
あの騎士団長や新しい花騎士も出せるかも…