いつもの注意事項です
■二次創作です。本編の設定とは違う場合があります
■オリジナルの団長が出てきます。ご了承ください
ある日の事、アレン騎士団の団長であるアレンと副団長のゴデチアはとある理由でバナナオーシャンの隣国であるリリィウッドにあるとあるパティスリーを訪れていた。
そこで二人は同じソファーに座りながら、とある人物を待っていたのである。
「新しくわたしたちの騎士団に入る花騎士の人って…確かパティシエールをしてたんでしたっけ?」
「その通り。だからなのかわからないけれど、このパティスリーを待ち合わせ場所にしたみたいだね。って、もしかしてあの子かな…?」
二人が今日ここに来た目的で話をしていると、パティシエールの格好をした銀髪の少女が彼らと向かい合う席の前まで歩いてきた。
そして二人に会釈をして、自己紹介をするのだった。
「はじめまして、花騎士にしてパティシエールのコムギと言います。
本日は私の都合を汲んでくれてありがとうございます」
銀髪の少女の名前はコムギと言い、幼い見た目ながら花騎士とパティシエールという二足の草鞋を履いているという。
その自己紹介を聞いてアレンは微笑み、ゴデチアは少し驚いていた。
「本日は、よろしくお願いしますね」
そんな二人を見て、コムギは少しはにかんだような表情をしながら席についたのだった。
「なるほど…つまり今までは色々な騎士団をパティシエールと兼業しながら巡って来たけれど、一旦どこかの騎士団に正式に入団したくて僕らの騎士団を選んでくれたのか」
「はい、色々な騎士団を見てきましたが、私に合っていそうな騎士団はここかと思って。
確か毎日おやつを作っているんでしたよね。私もパティシエールをやっていますから、そういう事をしている騎士団はないかと探していたんです」
ある程度の会話を重ねた後、コムギがアレンの質問に淡々と答える。
その様から感情を察するのは難しいと思われるが、時折楽しそうにしているのを彼女と向かい合っているゴデチアは見逃さなかった。
「コムギさんはそんな所を気に入ってわたし達の騎士団に入ろうと考えてくれたんですね。
副団長として嬉しいです。それに…美味しいお菓子の作り方も教えてほしいです。
コムギさんのお菓子自体も楽しみですけど…自分で作るお菓子ももっと美味しく作りたくて…」
そしてゴデチアはコムギの話が終わると、すぐに彼女に笑顔で話しかけた。
「はい。そういう事をしているこの騎士団の人達なら、私の夢も理解してくれると思ったのが一番の理由です。副団長様がそう言ってくれるのなら、お菓子のレシピも教えてあげられますし、コムギも安心してお仕事ができま…あっ…!
い、今名前を言ったのは…忘れてください…」
そして彼女はその話に答えているうちに、一人称を自分の名前で呼んでしまった事に気づいて顔を赤くしてしまった。
その姿を見たゴデチアは彼女と同様に顔を真っ赤にしてしまい、申し訳なさそうに俯いてしまった。
「ははっ、二人とも仲良くなれそうだね。
…ん? 外が騒がしいな…何があった?」
二人が顔を真っ赤にしているのを見てアレンは思わず笑ってしまったが、店の外から騒ぎ声が聞こえてきたので、窓から外の様子を伺うと…
「ギシャァァァァァ!!!」
「害虫が出たぞー! 花騎士を呼べー!」
巨大な蟷螂の害虫が両腕の大鎌を振るい、人々を襲おうとしていた。
「あれは…害虫か! ゴデチアさん、コムギさん、恥ずかしがっている所に悪いけれど…害虫が現れた、花騎士としての仕事の時間だ! 」
アレンがそう叫ぶと、ゴデチアとコムギは一瞬ビクッと驚いてしまったが、すぐに身なりを整えて彼と共に料金を置いて店を出た。
すると三人の前にメイドの格好をした少女が走ってきて、彼らにこう尋ねたのだった。
「あなた達は…騎士団長と花騎士…? なら、ちょっと手を貸して欲しい。
エーデルワイス様…私のご主人様が、先にあの害虫に向かっていってしまったから、援軍を探していたのだけれど…」
その問いにアレンは「勿論だ」と答えて、後ろのゴデチアとコムギも頷く。
「ありがとう。私の名前はスノーフレーク、エーデルワイス様のメイドで、花騎士…
害虫を討伐するまでの間だけだけど、よろしく」
すると彼女は自己紹介をして、アレン達を先導するように走り出した。
そしてそれに続くように、アレン達も走り出したのだった。
一方その頃、巨大な蟷螂の害虫が衛兵隊にに向かって叫び声を上げながら、その大きな鎌を振り上げようとしていた。その時…
「はぁぁぁぁっ!」
「やぁぁぁっ!」
二人分の少女の声が聞こえて、閃光と氷の刃が蟷螂の振り上げようとした鎌を腕ごと吹き飛ばした。
その腕は瞬く間に浄化されて消えていき、失った当の蟷螂ですら認識するのに時間がかかっていた。
「ギキャ….ギャシャァァァァ!!!」
腕を失った事に気づいた蟷螂は、怒号と共にある一点を見つめていた。
そこには白い軽鎧に身を包む小柄な金髪の少女とネズミのような白いフードを被った白髪の少女がいて、同じように蟷螂を睨み返していた。
そんな中、蟷螂の背後の木々から突然、羽音と共に蜂の害虫が複数体現れた。
リリィウッドの町は森で覆われている為、このような奇襲を行う害虫は多いという。
そして現れた蜂達は少女達を取り囲むようにして空中に留まり、尻尾から針を出して牽制した。
これにより蟷螂は先程まで片腕を失って不利になっていた状況を見事にひっくり返して有利になった為か、残っていたもう片方の腕を振り上げ、笑顔を浮かべるような顔付きで涎を垂らしながら少女達を見据える。
しかし、その余裕の表情は、足に叩き込まれた一閃と複数の斬撃によって一瞬にして悲痛な物へと変わった。
「ぐぎゃぁ!? ギシャァァァァァ!??」
その一瞬の出来事で蟷螂の足は殆ど潰れて、片側の足は全て浄化されて消えてしまっていた。
それ故に蟷螂は自力で立つ事は出来ず、残った片腕と片足で身体を支えるのがやっとになってしまい、形勢が一気に変わる。
すると蜂達が蟷螂の悲痛な叫びに呼応するかのように、一斉に2人の少女に向かって突撃して行った。しかし…
「いきます、それっ!」
「狙いを定めて…えいっ!!」
泡立て器から吹き出す生クリームが蜂の身体に掛かり、羽根を羽ばたかせないようにしてしまい、地面に落とす。
そして落ちていく蜂達は地面に描かれた花の紋章から現れる炎の槍が突き刺さり、浄化されていった。
「やりました! コムギさんのクリーム…戦闘にも使えるなんて凄いです!」
「ゴデチアさん、ありがとうございます。
あなたの炎の槍もすごく熱くて害虫もすぐに焼けてしいましたし、これを使ってお菓子を焼くのも悪くないかもしれません」
蜂の害虫が浄化されていくゴデチアがコムギを褒め、お礼を言ったコムギがお返しのようにゴデチアを褒めた。
とても微笑ましい光景だが、二人は気を抜かずその後すぐに武器を構え直して、蟷螂を睨みつけた。
二人とも可愛らしい顔立ちだからかそこまで怖い表情にはならなかったが、その睨みは今の蟷螂には恐怖を充分に感じさせたようで、それをかき消すかのように叫び、鎌を大きく振り上げた。しかし…
「今よっ! ブレイブリーストライクっ!!」
「行くよチューさんっ、はぁぁぁぁっ!!」
光の奔流が蟷螂を覆い、氷の槍の連撃がその肉体を引き裂く。
更に上から降ってきた雪の塊に押し潰され、蟷螂は浄化されていった。
ゴデチアとコムギは一瞬何が起こったのか分からなかったようだが、後ろを向いてみると、金髪の少女と白髪の少女が先ほどまで構えていた武器を下ろしていた。
「これで討伐完了ね…そこの貴女達も武器を下ろして大丈夫よ」
金髪の少女が二人にも武器を下ろす事を促すと、コムギは軽く息を吐いて、ゴデチアはその場に腰を下ろした。
「ゴデチアさん、大丈夫ですか? もしかしてどこか痛めましたか?」
「ごっ、ごめんなさいっ! 討伐が終わったかと思うと、安心しちゃって…怪我をしたわけじゃないですから、心配しないでくださいね」
ゴデチアを気遣うコムギと、そんな彼女に心配ないと恥ずかしそうに伝えるゴデチア。二人のそんな会話を少し遠くで聴いていたアレンは微笑んでいた。
その姿を見ていたスノーフレークは、何気ない事を聞くように彼に質問した。
「もしかしてあの二人って、あなたの恋人?
両手に花、という物?」
その質問にアレンは一瞬ぽかんとしてしまったが、すぐにまた微笑んでこう答えた。
「いいえ、僕の花は片手でしか持てない程ですよ。そんな彼女が恥ずかしそうにしながらも仲間と成長していく姿を見て、いい傾向だと思っただけです。…格好を付けすぎましたかね」
その答えにスノーフレークは
「似合っているからいいけど、かなりカッコつけてる」と正直な発言し、アレンも「そうですよね…」
と苦い顔になってしまった。
二人がそんな会話をしていると、パティスリーの方角から数人程の人影が現れて、その中の一人の青年がスノーフレークに話しかけてきた。
「スノーフレーク、その様子だと討伐はもう終わったようだな。遅れてしまってすまない…」
「いいえ、そこにいる騎士団長の人や花騎士達が力を貸してくれたから、ご覧の通りに安全に終わった」
どうやら青年は彼女の所属する騎士団を率いている団長のようで、彼女の報告を聞いた後にアレンにも話しかけたのだった。
「彼女に聞いたけれど、君も騎士団を率いているそうだね。君の報告も聞きたいのだが…これから時間はあるだろうか?」
その発言にアレンは二つ返事で「はい」と頷き、彼と話をするのだった。
その頃、ゴデチアとコムギは金髪の少女と白髪の少女と会話をしていた。
「私の名前はエーテルワイス、リリィウッドの貴族であり花騎士よ。今回は助かったわ、どうもありがとう」
金髪の少女が会釈をしてからゴデチアに自己紹介をする。その気品を感じさせる態度に彼女は押され気味だったが、勇気を出して会釈を返す。
「どっ、どういたしまして! わ、わたしの名前はゴデチアと言いますっ…! バナナオーシャンからやって来ましたっ!!」
自己紹介は恥ずかしさから少しどもってしまったが、その様子を見てエーテルワイスは「ふふっ」と楽しそうに笑った。
「恥ずかしがらなくても大丈夫よ、私は貴族だからって偉ぶりたい訳ではないから。
ほら、少し落ち着いて」
そして落ち着くように促されてしまい、彼女はさらに顔を真っ赤にして恥ずかしそうに俯いてしまった。
「エーデルワイスさん、お久しぶりです。少し前の害虫討伐でご一緒して以来ですね。
私はこれから故郷を離れて彼女と同じ騎士団に入ることになりました」
ゴデチアが恥ずかしがっていると、すぐ後ろにいるコムギがエーデルワイスに挨拶をする。
「あら、コムギさん。こちらこそ久しぶりね、あの時はお世話になったわ。
ゴデチアさんと同じ騎士団に所属する事になったのね。私としては貴女の作るお菓子は美味しかったからまた私達の騎士団にも来て欲しかったのだけれど…
遠く離れた所とはいえちゃんとした騎士団に入るようになったのはいい事だと思うわ」
するとエーデルワイスも笑顔で挨拶を返し、騎士団に入る事を祝福する。
二人がそうやって話し込んでいると、ゴデチアの方に白髪の少女が話しかけて来たのだった。
「こんにちは、私はミハイル騎士団の副団長のセラスチウムだよ。
ゴデチアさんだっけ、今日は助けてくれてどうもありがとう! あの地面から槍が出てくるの、すごく格好良かったよ〜!」
セラスチウムと名乗った少女は、ゴデチアを笑顔でべた褒めしていた。
「ふぇぇっ!!? ふぁっ、あのっ、こちらこそお褒めいただきありがとうございましゅっ!
これからもアレン騎士団の副団長のゴデチアをよろしくお願いしましゅっっ!!」
しかし恥ずかしがり屋の彼女にとってその直球の褒め言葉は嬉しさよりも恥ずかしさの方が勝ってしまい、混乱してしまうのだった。
「えっ…? アレン騎士団? って事はミハイル君の友達の騎士団にいるんだ! しかも副団長なんてすごいね! だからあんなに強くて格好良かったんだ!」
「あぅぅ…そんなに沢山褒めないでくださいっ…って、ふぇっ? セラスチウムさんの所の団長さんはアレンさんを…わたし達の団長さんの事を知ってるんですか? 」
ゴデチアは更に褒めてくるセラスチウムに恥ずかしがりつつも、彼女の発言の中で気になった事を聞いてみた。
「私もミハイル君から聞いただけなんだけど、騎士学校時代の友達で今でも交流してる人が何人か居て、そのうちの一人にアレンって人がいるんだって言ってたんだ。
よく副団長の子との惚気話をする人だって聞いたけど、あなたの事が大好きなんだね!」
「そうなんですね、たまに友達に会いに行くって言ってましたけど…セラスチウムさんの所の団長さんのかもしれませんね。
って、えっ? アレンさんがっ…ずっと惚気話をっ!? ふぇぇぇぇっ…!」
そうして返ってきた答えから疑問は解決したが、まさかさっき出会ったばかりの少女に恋人が惚気話を友人達にしていた事を教えられ、ゴデチアは更に顔を真っ赤にしてしまった。
「えっ!? あっ、なんか言っちゃダメな事言っちゃった?ごめんなさい…」
「ふぁっ!? あのあのっ、謝らないでください…セラスチウムさんが悪い訳ではないですから…」
その姿を見て申し訳なさそうに謝るセラスチウムと、謝るほどでは無いとこちらも申し訳なさそうにするゴデチア。
そんな風に縮こまる彼女達を見かねたエーデルワイスが、少し呆れたように二人に話しかけた。
「二人とも…お互いに縮こまってしまったらどうにもならないわ、ちょっと落ち着きなさい」
彼女にそう言われて、二人はハッとした後に深呼吸をして落ち着こうとする。
そうしている時セラスチウムの肩に、白いねずみがちょこんと乗っかった。
「えっ、ふわぁぁぁ…! セラスチウムさん、その肩に乗ってるねずみさん、真っ白でかわいいです…お名前はなんて言うんですか?」
その姿を可愛らしいと思ったゴデチアは瞳を輝かせて、セラスチウムに名前を尋ねたのだった。
「あ、チューさんの事? チューさんは昔、害虫から私の事を助けてくれたとっても凄いネズミさんなんだ〜。私が花騎士になれたのもチューさんのおかげなんだよ」
その問いかけにセラスチウムは笑顔で返し、白いネズミを指さしながらゴデチアに名前を教える。
ネズミのチューさんも助けた事を話してくれたのが誇らしいのか、えっへん!といった感じのポーズをしていた。
「そうなんですか! 自分よりも大きな害虫に物怖じせずにセラスチウムさん助けるなんて、チューさんはとっても勇気のあるネズミさんなんですね」
ゴデチアはそう言って褒めながらチューさんの頭を指で撫でた。
するとチューさんは照れくさそうな仕草をしてしまった。
「あはは! そういえば私以外には褒められる事に慣れてないから、照れちゃってるみたい。
褒めてもらってよかったですね、チューさん。って、きゃぁぁ!? くすぐったいですよっ!」
更にはセラスチウムまで誉めるせいでチューさんは恥ずかしがってしまい、彼女の首筋を登ってフードの中に隠れてしまった。
「ふふっ、もしかしたらチューさんも恥ずかしがり屋さんなのかもしれませんね」
「あははっ、そうかもしれないね」
二人はさっきまで縮こまっていたのも忘れて、お互いに笑い合っていた。
「ふふふっ、これでもう二人は大丈夫そうね」
「はい、そうですね。ふふっ」
そんな二人に釣られて、コムギとエーデルワイスも思わず笑ってしまい、場の雰囲気は和やかな物に戻っていった。
そんな中、カフェテリアの方角から二人の人影が現れたのだった。
「団長さんっ」
「ミハイル君っ!」
その人影の正体に気づいたゴデチアとセラスチウムが嬉しそうな声色で名前を呼び、その方向へと向かっていった。
「あ、ゴデチアさん」
「セラスチウムっ!?」
嬉しそうに近づいてくるお互いの副団長を見て、アレンとミハイルはそれぞれ違った反応を見せる。
とことことゆっくり歩いてくるゴデチアに合わせるように、ゆったり近づいていくアレン。
それとは対照的に小走りでこちらに向かってくるセラスチウムに驚き、その場で立ち止まってしまったミハイル。
そんな彼女達の姿を見たコムギとエーデルワイスもミハイル同様に驚いてしまい、ぽかーんとしてしまっていた。
「ここの管轄の騎士団長さんへの報告も済んだから戻ってきたんだけど、皆笑ってるのを見るに楽しそうでよかったよ」
「はい、エーデルワイスさんは緊張しているわたしを気にかけてくれる優しい方ですし、セラスチウムさんはわたしの事を格好いいって褒めてくれました。それにセラスチウムさんにはチューさんっていうとっても頼りになるネズミさんがいて…」
ゴデチアは先程まで皆で話していた内容をアレンにも伝えようとするが、可愛い動物にあった事で興奮気味なのか、早口になってしまっていた。
「ゴデチアさん、今日はいい事があったのかな? なんだか興奮しているけど…」
アレンがそのことを指摘するとゴデチアはまた顔を真っ赤にしてから彼に謝って、恥ずかしそうに俯いてしまった。
「ふあっ…!? あっ、あのっ、ごめんなさい…! わたしばっかり言いたいことを言っちゃって…迷惑でしたよね…?」
すると彼は彼女の頭を撫でながら、いつもやっているかのように慰めの言葉をかけた。
「大丈夫だよ、迷惑だなんて思ってないから…そんなに興奮してるのが珍しいって思っただけだから気に病む事はないよ。
それにしても、可愛い動物と触れ合えたみたいでよかったね」
その言葉にゴデチアは安心しつつも、周りに人がいるのに頭を撫でられた事が恥ずかしくてまた俯いてしまった。
「あぅぅ…ありがとうございます。でも、頭をなでるのは、二人きりの時じゃないと…恥ずかしいです…」
「あ、ついやっちゃってたね…本当にごめん…」
そんな彼女に対して少し困ったように謝罪するアレンを見て、エーデルワイスは微笑みながら彼らに言葉を掛けた。
「二人とも、いつもそんな感じで触れ合ってるなんて、とても仲が良さそうね。うちの奥手な団長さんにも少しくらいは見習って欲しいわ」
そんな彼女の言葉をゴデチア顔を真っ赤にして反論する。
「え、え、えっ、エーデルワイスさんっ!?
違いますからっ! たまにしかやってませんよっ!!?」
その言葉にエーデルワイスはまたもやふふっと微笑み、隣にいたコムギも笑っていた。
「団長様、ゴデチアさん、結婚式はまだだと聞いていたので、ウエディングケーキは是非ともこのコムギにお任せください」
そしてそのままパティシエールとしての仕事の宣伝までこなしてきた彼女に二人は驚いてしまい、ゴデチアに至っては恥ずかしさから俯きながらアレンの身体に抱きついてしまった。
「あ…コムギさん、そんな冗談言うんだね…」
「パティシエールジョークというやつです、カフェの店長さんから教わりました」
アレンがコムギの発言に対して突っ込むと、彼女は教わったジョークだと返す。
アレンはそんな彼女の事を思ったより感情表現の豊かな子かもしれない、と思ったのだった。
そして彼はミハイルとセラスチウムの方を見てみると、自分と同じように抱きつかれながら困っていた。
「それに今日はチューさんが他の人にも褒められて頭も撫でられてたんだよ! それでチューさんったら恥ずかしがって私のフードの中にさっきまで隠れちゃって…」
「わかった、わかった! わかったからそんなに抱きしめてこないでくれっ! 皆見てて恥ずかしいから…お願いだ!」
そんな二人のやり取りを見たアレンは、セラスチウムさんみたいに積極的だと理性を保つのは大変だろうなぁ、と思いながらミハイルの苦労を偲ぶのだった。
そうやって和気藹々としていると、先程までアレンと話をしていた騎士団長の青年が部下の花騎士達を連れてやって来た。
どうやら戦闘になった区域の調査が終わったらしい。
「あら団長さん、調査お疲れ様。この二人と比べると随分遅かったじゃない…もしかして他の娘達でも構っていたの?」
「いや…そうではないさ。壊されてしまった区域が予想以上に広くて…
待たせてしまってすまない…」
エーデルワイスが騎士団長に労いの言葉をかけた後に、少し含みのある口調で遅かった事を問い詰めた。すると彼は困りつつも彼女に事実を伝えて、待たせてしまったことを謝罪する。
すると彼女は微笑んで「ふふっ、ちょっとした冗談よ。あの子達を見ていたらからかいたくなっただけ。
でもこの私を待たせるなんて、そう思われても仕方ないって事よ」と騎士団長に告げた。
そんな事を告げられた彼は困った顔をしながら顔をかいて「今度からもっと急いで来るから、揶揄うのは勘弁してくれ…」と彼女に懇願すふのだった。
その三者三様の光景を見たコムギは、誰にも聞こえないように
「ウエディングケーキの予約が三つも来てしまいました。これは頑張らないといけませんね…」
と笑顔で呟いた。
それから数刻程経った後、バナナオーシャン行きの馬車の中にて。
「それにしても、団長様の作戦通りでしたね。
私の能力を書類と移動している間の説明だけで理解した挙句、こうして作戦に組み込めるなんて、すごいです」
コムギが向かいに座っているアレンに、今日の的確な指示について褒めていた。
すると褒められていた彼は、指示が出せた理由について話し始めた。
「それは…そうだね、君は確かミハイル騎士団にいた事もあったんだろう? 騎士団長のミハイルとは知り合いだから、その時の仕事ぶりを君が僕達の騎士団に来る事が決まった後に教えてもらっていたんだ。それに今日の待ち合わせ場所のパティスリーの店員さん達にも話を聞いてある程度の情報は持っていたんだ。
それと君が言った説明や書類で判断した結果だ。…緊急時で時間がないから場当たり的だったけどね」
その言葉を聞いてコムギは驚きつつも、なるほどと言ったような感じで頷いて彼を褒めた。
「そうなんですか…確かにミハイル騎士団にも今の副団長さんが配属されるまでの短い間はいましたけど、そこまで調べられるなんて凄いですね。
それに指揮官としてだけでなく剣術にも長けているなんて、聞いてはいましたが驚きました」
そんな褒め言葉にアレンは謙遜するようにこう答えた。
「いや、その件に関しては君がミハイルの騎士団に所属していた事があった偶然を上手いこと利用しただけだよ。
それに剣術だって多少出来るだけで、花騎士に助けてもらわなければ害虫を討伐するには至らない…ただの牽制にしかならないものさ。
だから、君達花騎士の力が僕には必要なんだ。この世界にいる人々の幸せを守る為に…」
その答えにコムギは微笑み、頷いてアレンにこう返した。
「わかりました。そこまで強い意志のある貴方に、私は夢と命を預けようと思います。これからよろしくお願いしますね」
そう言いながら彼女はアレンに向かって手を差し伸べて、握手をしようとした。
その返事に彼は同じ様に手を差し伸べ、握手をしながらこう言った。
「こちらこそよろしくお願いします。とはいえ騎士団の宿舎は比較的穏やかな場所にあるから、あまり気を張らずにしてくれると嬉しいかな」
その発言にコムギは「はい」と頷いてから手を離す。
するとアレンの隣に座っていたゴデチアも手を差し伸べていた事に気づいて、彼女とも握手をした。
「コムギさんっ、わたしや、他の花騎士のみなさんのこともよろしくお願いします。
これから一緒に任務も日常の中でのお菓子作りも、頑張っていきましょうね」
「ゴデチアさん、こちらこそよろしくお願いします。任務もそうですが、お菓子作りですか…パティシエールの腕がなりますね」
二人はお互いに笑い合って、その姿を眺めていたアレンも自然と笑顔になっていた。
こうしてアレン騎士団に、また新たな花騎士が所属する事になったのであった。
今回の話はかなりお待たせしてしまいましたね、本当に申し訳ありません…