※この作品はR-18です。

(AIで)爆乳で着衣で露出で実況で告白で~なエロ妄想集   作:ほんだ

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マシュ04 理想の偶像 と 醜悪な実像

 

バスルームを出た私は、背後のドアを閉めると同時に、深く長い溜息を吐き出した。

重たい鉄の扉を閉ざすように、たった今まで起きていた恥ずかしい出来事を、記憶の奥底へと封じ込める。

 

……忘れなくては。

トイレでの失態も、肛門を洗う水流に刺激を感じてしまったことも、すべては生理現象の処理における些細なトラブルに過ぎない。

私は首を左右に振り、頬を両手でパンと叩いた。

 

「状況、再確認。……私はカルデアのサーヴァント、シールダーです」

自分自身に言い聞かせる言葉が、静寂なリビングに空しく響く。

部屋の様子は変わっていない。白く、清潔で、無機質だ。

だが、今の私には、この空間の全てが敵意を持って迫ってくるように感じられた。

天井の四隅にあるカメラ。壁に埋め込まれたセンサー。そして、書棚に並べられた無数の陵辱記録。ここは、ただの閉鎖空間ではない。マシュ・キリエライトという個人の尊厳を剥ぎ取り、雌としての本能を暴き立てるために設計された、悪意ある「飼育箱」だ。

 

ならば、この無防備な姿のまま調査を続けるわけにはいかない。

私は自分の服装を見下ろした。

黒いノースリーブのワンピース。

機能的ではあるが、防御力は皆無に等しい布切れだ。それに、先ほどのトイレでの一件で、スカートの中は蒸れ、ストッキング越しにも分かるほど、太ももの内側が汗と愛液で湿っている。この「私服」でいること自体が、私の意識を「普通の女の子」へと引きずり下ろし、羞恥心という弱点を晒け出させているのではないか。

 

「武装します。……戦闘態勢へ移行し、身も心も引き締めなくては」

それは、極めて論理的で、正しい判断のはずだった。

サーヴァントとして霊衣を纏えば、物理的な防御力だけでなく、精神的な耐性も向上する。魔術的なプロテクトにより、この部屋の卑猥な空気からも身を守れるはずだ。

 

私は部屋の中央に立ち、意識を内側へと沈めた。

マスターとのパスは繋がっている。魔力供給は細いが、途切れてはいない。

イメージするのは、私が身に纏っている最新鋭の装備。ダ・ヴィンチちゃんが改良を重ね、私の身体能力を極限まで引き上げるための強化外骨格。

 

「霊基外骨格(オルテナウス)、展開──!」

右手を掲げ、真名解放に近い意志を込めて魔力を練り上げる。

カッ、と閃光が走り、光の粒子が私の身体を包み込む。

慣れ親しんだ重厚な金属音と、視界を覆うVRバイザーの起動音を期待した。

 

だが。

 

「……え?」

 

──ガッ、ガガガッ……!

不快なノイズと共に、光の粒子が霧散する。

構築されるはずの重装甲が現れない。背負うはずの巨大な円卓の盾も、脚部を覆うスラスターユニットも、実体化せずに崩れ去っていく。魔力回路がショートしたような、焦げ付く感覚。

 

"Warning: Spirit Origin Mismatch. Reverting to Default State."

 

脳内に無機質な警告音が響く。

霊基不適合? そんなはずはない。オルテナウスは今の私の霊基に合わせて調整されたはずだ。

動揺する私の意思とは裏腹に、システムは強制的に「代替プラン」を実行した。

それは、退行。私がまだ未熟で、自身の宝具名さえ知らなかった頃の、最も初期の霊基データ。

 

──シュンッ。

軽い音と共に、別の霊衣が私の身体に装着された。

 

「うっ……!?」

瞬間、私が漏らしたのは、安堵の声ではなく、苦悶の呻きだった。

きつい。

苦しい。

全身を万力で締め上げられるような圧迫感が、私を襲った。

 

「くぅっ……こ、れは……?」

光が収まり、私は自分の姿を確認して愕然とした。

そこに現れたのは、オルテナウスのような機械的な鎧ではなかった。

私がサーヴァントとして覚醒した直後──「第一再臨」と呼ばれる状態の装備だ。黒いインナーを基調とし、必要最低限の金属パーツを組み合わせた、軽装の鎧。

 

問題は、そのデザインではない。

サイズだ。

この霊衣は、「かつての私」の体型に合わせて記録されたものだ。カルデアで召喚された当時、まだ成長過程で、今よりもずっとスレンダーだった頃の私の身体データ。それを、この部屋の影響で異常なまでに肥大化し、爆乳とデカ尻に変貌した「今の私」に、無理やり装着したのだ。

 

──ミチ……ミ、チチチチッ!

繊維と革、そして金属が悲鳴を上げる音が、耳元で聞こえるようだった。

 

「はっ、ぐぅ……息が……」

まず、胸だ。

第一再臨のインナーは、今の私の爆乳にはあまりにも容量が足りていない。

胸の上から首元を護る硬質な素材が、容赦なく乳房を押し潰している。

収まりきらない脂肪の塊が、上下左右へと逃げ場を求めて溢れ出していた。

特に胸元の谷間は、左右からプレスされた乳肉が密着し、深い渓谷を作っている。インナーの縁が乳房の柔らかい肉に深く食い込み、今にも乳首ごとポロリとこぼれ落ちそうだ。呼吸をするたびに、押し潰された胸が大きく波打ち、窮屈さを訴える。

これは鎧ではない。胸を強調し、見せつけるための矯正下着だ。

 

視線を下ろす。

お腹周りは、もっと悲惨だった。

第一再臨の衣装は、ヘソ周りが露出したセパレートタイプに近い構造をしている。かつては引き締まった腹筋を見せていたその隙間から、今は柔らかくついた脂肪が、ムニュリとはみ出していた。

鎧の隙間に肉が乗っている。

「ボンレスハム」という単語が脳裏をよぎり、私は顔から火が出るほどの羞恥を感じた。

 

そして、下半身。

ここが、最も致命的だった。

 

太もも。

黒いサイハイソックス──いわゆる「ニーソックス」が、ムチムチに太った太ももの肉に食い込み、段差を作っている。絶対領域と呼ばれる素肌の部分は、白く柔らかな肉が溢れ出し、歩くたびにプルンプルンと震えるのが分かる。

 

「っ……あ、食い込んで……」

下半身を守るのは、ハイレグ状の黒いレオタード風インナーと、短い腰巻状のスカートアーマーのみ。巨大化した私のお尻に対し、布面積が絶望的に足りていない。インナーの股布が、お尻の割れ目に深く、鋭く食い込んでいる。

それはまるでTバックのように、肥大化した尻肉の谷間に埋没し、歩くたびに肛門を直接擦り上げるような刺激を与える。

 

だが、何よりも私を絶望させたのは、股間の「処理していない毛」だった。

第一再臨のインナーは、脚の稼働を妨げないよう、股グリが鋭角に切り込まれたハイレグデザインだ。

かつては、それで問題なかった。

けれど今の私は、数ヶ月分の剛毛を蓄えた「未処理ボディ」だ。サイズアウトして食い込んだインナーの縁から、収まりきらなかった陰毛が、黒々と、縮れてはみ出している。

 

「嘘……見えて、ます……」

鏡を見なくてもわかる。

太ももの付け根。インナーと肌の境界線。そこに、モジャモジャとした黒い毛束が、無様に溢れ出している感触がある。

鎧を着ているのに。戦闘服なのに。

私服のワンピースよりも遥かに露出度が高く、そして私の「恥ずかしい部分」を強調している。これではまるで、拘束された奴隷の衣装だ。

 

「解除……っ、武装解除を……!」

私は慌てて魔力供給を断とうとした。こんな恥ずかしい格好でいられない。ワンピースに戻った方が、まだマシだ。

けれど、その時。ふと、身体の軽さに気づいた。

 

「……あれ?」

魔力の消費量が、異常なほどに少ない。

かつて、初めてオルテナウスを展開しようとした時は、回路が焼き切れそうな負荷を感じた。

だが、この初期装備はどうだ。

まるで呼吸をするように自然で、魔力リソースをほとんど喰っていない。私服で過ごしているのと変わらないほどの低燃費。それどころか、微弱ではあるが、マスターからの魔力パスが安定し、身体能力が底上げされているのを感じる。

 

計算が、頭の中で走る。

ここは敵地だ。いつ何時、襲撃があるかわからない。

私服(防御力ゼロ)でいることのリスク。対して、この恥ずかしい鎧(防御力あり、身体強化あり)でいることのメリット。さらに、カルデアとのパスが不安定な今、高燃費のオルテナウスは維持できないが、この初期装備なら、24時間展開し続けても私の魔力は枯渇しない。

 

「……合理的、です。戦術的には」

私は、食い込むインナーの不快感を堪えながら、自分に言い聞かせた。

見た目がどうであれ、これは「鎧」だ。概念礼装としての防御機能は生きている。もし敵が現れても、この姿なら盾を展開して戦える。私服のまま無防備に晒されるより、遥かに安全なはずだ。

 

そう。安全なのだ。

たとえ、乳房がこぼれ落ちそうでも。

お腹の肉がはみ出していても。

股間から剛毛が覗いていても。

これは「正装」なのだから。

 

「……私は、シールダー。マスターを守る盾」

呪文のように唱え、私は武装解除の手を止めた。

鏡のような窓ガラスに、私が映り込んでいる。

それが自身の姿でなければ、英霊と言うにはあまりにも肉感的で、淫靡だと目を反らしただろう。

黒い光沢のある素材が、白い肌と黒い毛を際立たせている。締め付けられた肉が赤く色づき、苦しそうに、けれどどこか嬉しそうに脈打っている。

 

(この部屋は……私に、この格好をさせたがっている?)

一瞬、そんな疑念がよぎった。

私服よりも、この初期再臨の姿の方が、より「雌」としての魅力を引き立て、見る者の劣情を煽ることを、部屋の主は知っているのではないか。オルテナウスが展開できなかったのも、故障ではなく、この部屋の意志による選択なのではないか。

 

けれど、私はその疑念に蓋をした。

認めてしまえば、この鎧を着ている理由が「身を守るため」ではなく、「見せるため」にすり替わってしまう気がしたからだ。

 

「よし……行けます。これなら、戦えます」

私は、太ももに食い込むソックスの位置を直そうとして、逆に肉が盛り上がるのを見て見ぬふりをした。

腋の下も、インナーのアームホールがきつく、処理していない腋毛が押し潰されてチクチクとする。全身が締め付けられる感覚。それは拘束の苦しみであるはずなのに、なぜか身体の奥底が熱く疼くのを、私は「戦闘高揚」だと解釈することにした。

 

新たな「皮」を被った私は、再び部屋の探索へと意識を向けた。

その背中には、目に見えない「未処理ドスケベ奴隷」というタグが、既に貼り付けられているとも知らずに。

 

 

 

...▼

 

霊基外骨格の展開失敗というアクシデントはあったものの、私はかつての姿──第一再臨の霊衣を纏うことで、一応の「武装」を完了した。

相変わらず、部屋は静寂に包まれている。襲撃者が現れる気配はない。ドアの向こうから音がすることもなく、窓の外は人工的な青空が張り付いているだけだ。

差し迫った物理的な危機は、今のところ存在しない。

しかし、この無音こそが最大の圧力だった。私の荒い呼吸音、動くたびにきしむ霊衣の音、そして自分の心臓の鼓動だけが、この空間における唯一のノイズだ。

 

「……現状維持は、ジリ貧です。何か、手がかりを」

私は強引に意識を切り替えた。

この部屋から脱出するためには、ここが「誰の」「何のための」部屋なのかを特定する必要がある。そして、そのヒントになり得る情報源は、今のところ一つしかなかった。リビングの壁一面を埋め尽くす書棚と、カウンターに置かれたノートパソコンだ。

 

私は意を決して、カウンターの方へと歩みを進めた。

一歩踏み出すたびに、身体に合わなくなってしまった霊衣が、食い込む。太もものサイハイソックスが肉を締め付け、股間のインナーが鋭く張り付く感触は、私に「今の自分の身体がいかに肥大化しているか」を、一歩ごとに警告してくるようだった。

 

カウンターの前までたどり着き、私は立ち止まった。

そこに置かれている「椅子」が、改めて目に入ったからだ。

 

「……ッ」

それは、透明なアクリル素材で作られた、デザイン性の高いハイスツールだった。

一見すれば、モダンなインテリアに見えるかもしれない。

けれど、今の私には、その形状が持つ「真の意味」が痛いほど理解できてしまった。

 

透明な座面、その中央手前部分に施された、大きなU字型の切り込み。

 

もし、ここに座ればどうなるか。

透明なアクリルは、座った人間の下半身を一切隠さない。そして、あのU字の切り欠きは、股間の最も見られたくない部分を、下からの視線や、あるいは何らかの器具に対して、無防備に晒すための構造だ。

 

先ほどの、トイレでの記憶がフラッシュバックする。

便座の底から見上げていた、あの黒いカメラレンズ。

あそこでは、私は排泄する瞬間を下から撮影されていた。もし、この椅子に座ってしまえば?

 

(……丸見え、です)

想像してしまった。この透明な椅子に座り、足をブラブラとさせている自分の姿を。

食い込んだ黒いレオタードの股布。腋から溢れ出した剛毛。そして、先ほどの洗浄でも完全には拭いきれなかった湿り気や、トイレでの興奮で分泌された愛液が、透明な座面にペタリと押し付けられ、白く曇った痕跡を残す様を。

下から覗き込めば、押し潰されたお尻の肉と、布切れ一枚隔てただけの私の秘部が、鮮明に鑑賞できるだろう。

 

「……座りません。警戒のため、立哨姿勢を維持します」

私は椅子から目を逸らし、自分にそう言い訳をした。

座って楽をしたいという誘惑よりも、お尻の下を覗かれるかもしれないという恐怖と嫌悪感が勝った。私は立ったまま、カウンターの奥にある書棚へと向き直った。

 

そこには、先ほど目にした同人誌以外にも、大量のメディアが陳列されている。背表紙やパッケージが、極彩色の光を放ちながら、私を待ち受けていた。私は、意を決してその「敵性資料」の確認を開始した。

 

並んでいるのは、書籍だけではない。DVDやBDといった映像媒体も、圧倒されるほどに収納されている。

そして、そのすべてのパッケージに──「マシュ・キリエライト」がいた。

 

「……なん、ですか。これ……」

吐き気をこらえながら、タイトルとパッケージ写真を検分していく。

そこに写っているのは、私と同じ衣装──この第一再臨の鎧や、カルデアの制服、あるいは水着などを着た女性たちだ。

しかし、その内容は、サーヴァントの記録映像などでは断じてなかった。

 

『絶頂要塞カルデア ~シールダー・マシュの24時間発情記録~』

パッケージには、だらしなく舌を出してアヘ顔を晒す私が、複数の男たちに囲まれている写真。

 

『露出特異点・新宿 ~人ごみの中で漏らしちゃう~』

新宿の街中で、一般人が行き交う中、スカートを捲り上げて路上で排泄している写真。黄色い液体が太ももを伝い、アスファルトに水溜りを作っている瞬間が、克明に切り取られている。

 

『聖処女の裏側 ~ケツ穴開発完了報告書~』

こちらのパッケージは、バックショットのみで構成されていた。

お尻を両手で大きく広げ、赤く腫れあがった肛門を、カメラのレンズに押し付けるように突き出している。「処女は先輩のために守りますけど、後ろならOK!」という煽り文句と共に、アナルプラグやバイブを挿入され、涙目で喘ぐ私の顔写真が添えられている。

 

……心臓が跳ねた。

さらに、私の今の精神状態を抉るようなタイトルが続く。

 

『未処理!剛毛シールダー ~毛むくじゃらの秘部を徹底観察~』

そのパッケージの女優は、わざと腋毛や陰毛を処理せずに撮影に臨んでいるようだった。ハイレグの隙間から、黒々とした毛がはみ出している。局部アップの写真では、陰唇が見えないほどに密生した毛の中に、白い精液が絡みついているおぞましい光景が写っていた。

 

「ひっ……」

私は思わず後ずさった。

鏡を見たわけではない。これはパッケージの写真だ。偽物だ。

けれど、そこに写っている「剛毛」や「デカ尻」は、今の私自身のコンプレックスを、あまりにも的確に射抜いていた。まるで現在の私の身体を知り尽くした上で、「お前はこういう存在なんだ」と突きつけられているような感覚。

 

(違います……私は、こんな……)

否定したい。

けれど、先ほどのトイレで、私は自分の肛門周辺を見た。剛毛に覆われたお尻の穴が、ウォシュレットの水流で卑猥に蠢く様を見てしまった。このDVDの中の「彼女」たちと、今の私に、どれだけの差があるというのだろう。

 

視界が揺らぐ。

このままでは、精神汚染を受けてしまう。

何か、違うものを。

私が私であることを肯定できる、正常な記録を。

 

棚の端に、少し雰囲気の違う区画があった。毒々しい赤やピンクの文字ではなく、白や水色を基調とした、清潔感のあるデザイン。私は縋るようにその一本を手に取った。

 

『Pure Smile ~マシュ・キリエライト イメージ・コスプレコレクション~』

 

イトルには、淫らな言葉が一切ない。

パッケージの写真も、露出はしているものの、そこには「恥じらい」と「清楚さ」があった。

木漏れ日の中で微笑む私。

第一再臨の鎧を着ているが、サイズはぴったりで、肉がはみ出すこともなく、スタイリッシュに着こなしている。肌は白く、滑らかで、ムダ毛など一本も見当たらない。

これこそが、世間一般が抱く「マシュ・キリエライト」のイメージ。

そして、私が本来あるべき姿。

 

「……これなら。これなら、見ても……」

これは「敵性資料」ではない。

私の正当性を証明するためのリファレンス、参照資料だ。

あの下品なAVこそが歪曲された虚構であり、この美しい映像こそが真実なのだと、自分自身に確認させる必要がある。そうしなければ、私は自分を「AVのような淫乱な女」だと認めてしまいそうで怖かった。

 

私は震える手でパッケージを開けた。

ディスクを取り出し、カウンターの上のノートパソコンに向かう。ディスクドライブのトレイが開く音が、静寂の中でやけに大きく響いた。

 

カチリ、とディスクをはめ込む。トレイを押し込むと、ウィーンという回転音が唸りを上げ始めた。

 

「確認します。……正常な、私の姿を」

私は透明な椅子には座らず、立ったまま、祈るように画面を見つめた。

画面には「LOADING」の文字。

それは私にとって、汚された精神を浄化するための、一筋の希望の光のように思えた。たとえその希望が、現実の私との乖離を決定づける、残酷な鏡になるとも知らずに。

 

 

 

...▼

 

ドライブが回転するウィーンという駆動音が、祈りの音色のように聞こえた。

私はカウンターのノートパソコンの前で、固唾を飲んで再生を待っていた。このディスクに収められているのは、「正しい私」の姿だ。先ほどまで目にしていた、あの汚らわしいAVの群れ──排泄し、喘ぎ、汚される私の似姿たち──を否定し、私の尊厳を取り戻すための聖なる記録。

そう信じていた。

 

ふいに、背後でカチリとリレーが切り替わる音がした。

パソコンのモニタには何も映らない。代わりに、部屋の南側の壁──ベッドの頭側にある壁面全体が、青白く発光を始めた。

 

「……えっ? プロジェクター……ですか?」

驚いて振り返る。

壁面いっぱいに展開された巨大なスクリーン。そこに、映像が投影され始めた。

ノートパソコンでの個人的な視聴など許さないと言わんばかりの、強制的な大画面表示。等身大どころではない。壁一面に映し出されたその人物は、私の視界すべてを覆い尽くした。

 

そこにいたのは、私だった。

いいえ──「理想のマシュ・キリエライト」だった。

 

穏やかで、心を鎮めるようなピアノの旋律が、BGMとして静かに流れ出す。

画面の中の彼女は、私と同じ第一再臨の鎧を身に纏っていた。けれど、その着こなしは天と地ほども違う。

透き通るような白い肌。無駄な贅肉など一グラムもついていない、スレンダーで引き締まった肢体。鎧の黒いインナーは、彼女の華奢な身体に吸い付くようにフィットしており、どこにも歪みがない。彼女は、白い部屋の中央にあるベッドの上で、無邪気に寝転がり、手足を伸ばしていた。

 

「……綺麗」

思わず、ため息が漏れた。

れは、私が憧れ、目指していたサーヴァントとしての高潔な美しさそのものだった。

画面の中の彼女が、カメラに向かって──つまり私に向かって、花が咲くような笑顔で手を振る。その瞳には一点の曇りもなく、純粋な好意と信頼だけが満ちている。先輩に向けられるべき、穢れなき献身の表情。

音声はない。けれど、彼女が何を言っているのかは痛いほど伝わってくる。

『先輩、大好きです』

そう全身で語りかけている。

 

映像が切り替わる。

白いレンタルスタジオのような空間で、彼女が軽い体操を始めた。

柔軟運動のために両腕を高く上げ、身体を反らせる。その脇は、雪のように白く、滑らかだった。毛穴の一つも見当たらない。完璧に脱毛処理された、マネキンのように美しい素肌。

レオタードの股ぐりからも、ムダ毛など一切はみ出していない。彼女の身体は、聖女のように清潔で、汗の匂いなど欠片も感じさせない。

 

続いて、小さなテーブルで紅茶とマカロンを楽しむシーン。

小さく上品な口元で、お菓子を齧る仕草の、なんと可憐なことか。食べこぼしもしない。下品な咀嚼音も立てない。

ただそこに在るだけで絵になる、完璧なヒロイン。

その背景となっている白い部屋は、今私がいるこの監禁部屋とよく似た構造をしていた。けれど、決定的に違う。あちらは光に満ちた「聖域」であり、こちらのようなジメジメとした淫靡な空気は微塵もない。

 

映像の中で、可憐な彼女が画面の向こうの「先輩」を見つめる。

その映像には、音声がない代わりに、彼女の心情を綴った美しいフォントのテロップが、静かに浮かび上がっては消えていった。

 

『先輩の役に立ちたくて、毎日頑張っています』

『無駄な脂肪も、恥ずかしいムダ毛も、全部なくしました』

『貴方の自慢の後輩であるために。貴方の隣に立っても恥ずかしくない、綺麗な私であるために』

 

その言葉の一つ一つが、純白のドレスのように眩しい。

彼女は努力しているのだ。愛されるために、身体を磨き、恥じらいを捨てずに、清廉潔白であり続けている。それは、サーヴァントとしての忠誠心の、最も美しい形での発露だった。

 

(……そうです。これこそが、マシュ・キリエライトの本来あるべき姿……)

私は胸を撫で下ろした。

そうだ。マシュ・キリエライトとは、こうあるべきなのだ。

先ほどまでの私が感じていた「不潔さ」や「卑しさ」は、やはりこの部屋の空気に当てられた一時的な錯乱だったのだ。この映像こそが正解。私はこのイメージを取り戻せばいい。

 

安心感に包まれ、私はふと、視線を巡らせた。

プロジェクターの光が部屋を明るく照らし出している。

その光を受けて、反対側──北側の壁にある窓ガラスが、鏡となって私を映し出していた。

 

そして、私は見てしまった。

南の壁に映る「天使のような私」と、北の鏡に映る「現実の私」を。

 

「……あっ」

呼吸が止まった。

残酷なまでの対比が、そこにあった。

 

鏡の中の私は、同じ第一再臨の鎧を着ているはずなのに、まるで別の生き物だった。

画面の中の彼女が妖精だとしたら、鏡の中の私は、欲にまみれた雌豚だ。努力を怠り、脂肪を蓄え、剛毛を生やしたままの、怠惰な身体。「綺麗な私であるために」という言葉が、鋭い刃となって私の胸を貫いた。

 

まず、シルエットが違う。

あちらの彼女は、鎧を「着こなして」いる。

対して私は、鎧に「縛られて」いる。

サイズアウトしたインナーが、二の腕や太ももの肉に容赦なく食い込み、ボンレスハムのように段差を作っている。ただ立っているだけなのに、お腹周りの脂肪が重力に負けて弛み、セパレートの隙間からブニリとはみ出している。爆乳と化した胸は、胸当てに押し潰されて苦しげに脈打ち、谷間には脂汗が光っている。

 

「ちがう……こんなの、私じゃ……」

首を振る。

けれど、鏡の中の「肉の塊」も、同じように首を振る。

画面の中の彼女が、再びストレッチのために腕を上げた。

美しく、ツルツルの脇の下が見える。

 

私は無意識に、自分の脇を見た。

きついアームホールに締め付けられた腋の下からは、黒々とした剛毛の束が、縮れて覗いていた。白く美しい肌などどこにもない。あるのは、発汗と摩擦で赤く充血し、毛穴が目立つ、生々しい皮膚と毛だ。

 

画面の彼女が、ベッドに座り、膝を抱えるポーズをとる。インナーのラインは肌に密着し、股間の膨らみなど皆無に近い、スマートな曲線を描いている。

 

私は、鏡の中の自分の股間を見た。

はち切れんばかりに食い込んだレオタードの股布。その周辺から、収まりきらなかった陰毛が、剣山のように突き出し、太ももの内側へと溢れ出している。先ほどの肛門洗浄の湿りが乾ききっておらず、股布には濃いシミが広がり、そこから立ち上る「匂い」までが、鏡越しに漂ってきそうだ。

 

「なんで……」

嫉妬。

そう、これは、認めたくはないが、嫉妬だ。

私は、あの画面の中のコスプレイヤーに、激しい嫉妬を抱いていた。

彼女は偽物だ。ただの役者だ。

本物の英霊である私を真似ているだけの、模造品に過ぎない。

それなのに、なぜ。

なぜ、偽物の彼女の方が、こんなにも「マシュ・キリエライト」らしいのか。

なぜ、本物であるはずの私の方が、こんなにも汚らしく、劣化したコピー品のように見えるのか。

 

「あの方の身体には……無駄なものが、何もありません」

脂肪も、毛も、汚濁も。

彼女は、先輩に愛されるために作られた、清純な偶像。

 

「それに比べて、私は……」

圧倒的な「雌としての質量」。

鏡の中の私は、戦うためでも、愛されるためでもなく、ただ「交尾するため」だけに肥え太った、肉の器に見えた。胸も、尻も、太ももも。すべてが過剰で、卑しく、重苦しい。

霊衣の黒い光沢が、私のだらしない肉体を締め上げ、強調している。

それはまるで、出荷前の家畜に等級印を押すような、残酷な現実の証明だった。

 

画面の中の彼女が、カメラに向かってウインクをした。

可愛らしい。守ってあげたい。誰もがそう思うだろう。

先輩だって、きっとそうだ。

こんな、毛だらけで、汗臭くて、締まりのない身体をした私より、あんな風に綺麗に整えられた「偽物」の方を、本物として愛したいはずだ。

 

ズキリ、と胸が痛んだ。

いや、胸だけではない。

劣等感に苛まれるたびに、下腹部の奥が熱く疼くのを感じた。「私は偽物以下の成れ果てだ」と自覚することが、どうしようもなく惨めで、そして興奮する。

 

私は負けている。

英霊としての格も、女性としての魅力も、あの画面の中の幻影に完敗している。残っているのは、この無駄に感度が高まっている、未処理の肉体だけ。

 

「……うぅ」

私は目を逸らしたかった。

けれど、プロジェクターの光は容赦なく私を照らし、鏡は正直にその醜態を映し続ける。

背中からは「理想の私」の視線。

正面からは「現実の私」の視線。

その板挟みの中で、私は自分の身体を両手で抱きしめた。腕に触れる二の腕の肉は、餅のように柔らかく、そしてやっぱり──重たかった。

 

 

 

 

 

 

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