(AIで)爆乳で着衣で露出で実況で告白で~なエロ妄想集 作:ほんだ
さほど長い作品でなかったのか、壁に映し出された映像は、ループ再生に入っていた。
画面の中の「理想のマシュ・キリエライト」は、何度目かの優雅なティータイムを終え、再びベッドの上で無邪気に手足を伸ばしている。純白のシーツの上で、彼女が寝返りを打つたびに、第一再臨の軽装鎧が滑らかに身体のラインをなぞる。
私は、その映像から目を離すことができず、同時に、鏡に映る自分の姿から逃げることもできずにいた。
羨望と嫉妬。
その二つの感情が、胸の奥で渦を巻いている。
けれど、見れば見るほど、決定的な「違い」が残酷なまでに浮き彫りになっていく。それは、単なる体型やムダ毛の有無といった話だけではなかった。
「……突起が、ありません」
私は無意識に、自分の胸元に手をやっていた。
画面の中の彼女の胸は、慎ましいサイズながらも美しい曲線を描いている。黒いインナー生地はピンと張り詰め、その表面は滑らかだ。おそらく、撮影用にニプレスか何かでしっかりと保護されているのだろう。下着のラインはおろか、乳首の凹凸さえ一切感じさせない、人形のような無機質な美しさ。
対して、鏡の中の私はどうだ。
インナーに押し潰された爆乳。その頂点に、親指ほどの太さはあるのではないかと思えるほどに肥大化した突起が、黒いインナーを内側から猛烈に突き上げている。
硬い。熱い。そして、痛いほどに敏感。鎧の摩擦、室内の空調、そして精神的な興奮。それら全ての刺激を受けて、私の乳首は岩のように勃起し、その存在を主張している。黒い生地越しでも、その形がくっきりと判別できるほどだ。乳輪の広がりさえ、生地の伸び具合で透けて見えそうなほどに、浅ましく自己主張している。
「はぁ……はぁ……」
呼吸に合わせて、その突起が上下する。
見られている。鏡の中の自分に。そして、背後の巨大な「清純な私」に。まるで、「貴女はただの発情した雌牛ですね」と嘲笑されているような被害妄想が、脳裏をかすめる。
(……違います。これは、あくまで生理的な反応で……)
私は首を振った。
そうだ。彼女が特殊なのだ。
あんな風に、汗もかかず、乳首も勃たず、ムダ毛の一本もない女性なんて、現実には存在しない。あれは作り込まれたフィクション、虚構の偶像だ。現実の女性は──たとえ英霊であっても──生きていれば汗もかくし、排泄もする。寒ければ乳首だって立つ。
私が劣っているわけではない。彼女が「映像作品」として清楚に可憐に補正されているだけだ。
「そうです。……比較対象が、間違っていました」
私は努めて冷静を装い、自分への言い訳を口にした。
敵の戦力を分析するのに、プロパガンダ用の綺麗な映像ばかり見ていては、本質を見誤る。
この特異点を作った元凶は、もっと下劣で、歪んだ欲望を持っているはずだ。ならば、調査すべきは「綺麗な私」ではない。もっと……そう、この部屋の主の趣味嗜好が反映された、より過激で、より現実的な資料だ。
(下には下がいます。世の中には、今の私なんかよりもっと……救いようのないほど乱れた記録だって、あるはずです)
そんな卑しい安堵感を求めている自分に気づかないふりをして、私は再びカウンターの書棚へと向き直った。
指先が、背表紙の列を滑る。
先ほどのような、目を覆いたくなるようなハードなAVのタイトルが視界を過ぎる。『強制種付け』『輪姦地獄』『異種姦』……。
いや、これらは違う。
今の私が見るべきなのは、明らかな「演技」や「特撮」ではない。
もっと生々しく、今の私(この身体)に近いリアリティを持った、ドキュメンタリーのような作品だ。本番行為がない「イメージ・ビデオ」の棚。けれど、その奥に押し込まれていた、黒いパッケージの一群に目が止まった。
『Fetish Image Series: 04 ──シールダーの排泄管理と局所崩壊──』
タイトルに「セックス」の文字はない。パッケージの写真も、男優との絡みはない。
写っているのは、薄暗いタイル張りの場所で、第一再臨の鎧を着たままうずくまる女性の後ろ姿。ただし、その鎧は──お尻の部分が、無惨に引き裂かれている。
「……これなら。敵の手口を知る、手がかりになるかもしれません」
私は震える手でケースを掴んだ。
直感があった。
これは、先ほどの綺麗なコスプレビデオとは対極にある。けれど、今の私にとっては、こちらの方が遥かに「現実味」があるのではないかと。
ディスクを入れ替える。
静かな旋律のBGMが途切れ、部屋に完全な静寂が戻る。
数秒のローディングの後。
プロジェクターが再び明滅し、壁一面に新たな映像を映し出した。
……音がない。
音楽も、ナレーションもない。
聞こえてくるのは、ザラついた環境音だけだ。換気扇の低い唸り。遠くで響く水滴の音。ハァ、ハァ、という、苦しげで重たい吐息。
画面に映し出された場所は、どこかの公衆トイレのようだった。
それも、女性用ではない。
壁に並ぶ白い陶器の列──男性用の小便器だ。薄汚れたタイル、黄ばんだ照明。清潔感など欠片もない、路地裏の吹き溜まりのような場所。
そこに、一人の女性が立っていた。
衣装は、私と同じ第一再臨の霊衣。
だが、その着こなしは「可憐」とは程遠い。
女優の体型は、先ほどの美少女とは違い、肉感的で豊満だった。今の私に近い、あるいはそれ以上に、太ももや二の腕に脂肪がつき、鎧が肉に食い込んでいる。汗で濡れた肌が、照明を受けてテラテラと光っている。
彼女は、カメラに背を向けていた。
そして、ゆっくりと男性用小便器の一つに歩み寄っていく。
(……何をする気ですか?)
私は息を呑んで見守った。
彼女は便器の前で立ち止まると、振り返ることもなく、自身の腰巻アーマーに手をかけた。
ガチャリ、という硬質な音が、スピーカーから響く。
鎧を脱ぐのかと思った。
けれど、違った。
彼女は鎧を装着したまま、インナーの背中側──お尻を覆う布地に、指を食い込ませたのだ。
──ビリッ、ビリリッ……!
布が裂ける音が、静寂を切り裂く。
彼女は、自分の手で、レオタードの股布を引き裂いた。
脱ぐのではない。「壊して」露出させるのだ。
黒い布の裂け目から、たっぷりと肉のついた白い臀部が、弾けるように溢れ出した。
そして、その中心。
陰唇は見えない。前のマンコは、残った布と太ももで隠されている。だが、後ろの穴──肛門だけは、裂け目から完全に露出し、カメラに向けて無防備に晒されていた。
その肛門を避けるように、無骨で太いゴシック体、警告色のような赤文字で、彼女の心の声を代弁テロップが浮かび上がった。
『ごめんなさい。私は、綺麗な女じゃありません』
『努力もできない、毛の処理もできない、ただ太るだけの無様な雌豚です』
『誰とも付き合ったことがない処女なのに、身体だけはこんなにいやらしく育ってしまいました』
「っ……」
私はそのテロップを目にした瞬間、思わず自分のお尻に手をやりそうになった。
画面の彼女は、そのまま小便器に向かって中腰になる。いわゆるスクワットの姿勢だ。便器の受け口に股間を近づけ、突き出す。
カメラが下に回り込みながら、ズームする。執拗なまでに、その「肛門」へと。
女優の肛門周辺には、うっすらとだが、確かに毛が生えていた。処理されていない、リアルな体毛。それが、汗と脂で濡れ、照明の下で生々しく主張している。
彼女は何も言わない。ただ、荒い息を吐きながら、小便器の縁を両手で掴み、身体を支えている。
『見ての通り、私はパンツの中まで毛だらけの野獣です』
『だから、私は決めました。人間として愛されることは諦めます』
『その代わり……こうして「処理していない汚い穴」を晒して、性欲処理用の肉オナホとして生きていきます』
『セックスなんて贅沢は言いません。ただ、この汚いケツ穴と、放尿する無様な姿で、誰かが興奮してくれればそれでいいんです』
排尿の準備をする動作とシンクロして、テロップは進む。
──ジョロロロ……。
唐突に、水音が響いた。
彼女の股間から、黄色い液体が勢いよくほとばしる。男性用の便器に、女が跨がり、放尿している。
その排泄音は、先ほど私がバスルームで聞いた音と、まったく同じだった。
濁った、下品で、動物的な音。
告白テロップを肯定するかのような、下品な排泄音。
「綺麗な私」が先輩のために努力を誓ったのに対し、この「汚い私」は、自身の醜さを自覚した上で、それを晒して快楽を得る道を選んでいた。処女であることを言い訳にしながら、最も恥ずかしい排泄器官を、カメラに差し出している。
カメラは、尿の行方を追わない。
ただひたすらに、排泄行為を行っている彼女の肛門、いえ「アナル」を接写し続けている。
排尿の勢いに合わせて、肛門がキュッ、キュッと収縮する。ピンク色の粘膜が裏返るように広がり、また閉じる。そのたびに、周りの尻毛が震え、汗の滴が伝い落ちる。
(……挿れない、のですか?)
私は奇妙な焦燥感と共に画面を見つめていた。
テロップの内容はともかくも、AVなら、ここで男優が現れて、その無防備な穴を犯すはずだ。
けれど、誰も来ない。ただ、彼女が一人で、汚い便所で、衣装を破いて用を足しているだけ。
それが、延々と続く。
セリフは一切ない。
聞こえるのは、ジョロジョロという排泄音と、衣擦れの音、そして彼女のくぐもった喘ぎ声だけ。それは苦痛の声なのか、それとも解放の悦びなのか。画面の彼女は、決して前を見せない。恥じらうように顔を背けているが、そのお尻だけは、雄弁に「見てくれ」と語りかけているようだった。
やがて、排尿が終わる。
ポタ、ポタ……と雫が落ちる音がする。
彼女は拭こうともしない。濡れたまま、破れた衣装を直そうともせず、ただまた荒い息をつきながら、カメラの方へとゆっくりと腰を振ってみせた。
お尻の穴が、パクパクと蠢く。
まるで、「次はここを使って」と誘うように。あるいは、「排泄するための穴は、性器ではないから恥ずかしくない」という、倒錯したルールを主張するかのように。
映像がフェードアウトする。けれど、すぐに次のチャプターが始まる。
今度は野外。公園の茂みの中。
やはり彼女は衣装を破り、お尻を突き出し、土の上に先ほど以上の音を立てて、黄色く濁った小便を撒き散らす。
カメラはやはり、その「後ろの穴」と「尻毛」だけを、病的な執着で追いかけ回す。
部屋には、BGM代わりの排尿音だけが、重低音のように響き続けていた。
私は、その音の奔流に飲み込まれそうになりながら、立ち尽くしていた。
プロジェクターの光が、私の身体に映像を重ねる。
私の白い肌(といっても、鏡で見れば赤らんでいるが)の上に、画面の彼女の汚れた肌と、排泄する肛門がオーバーラップする。
気持ち悪い。
不潔だ。
下品極まりない。
……けれど。
(この人は……私と同じ、鎧を着て……)
否定できない「共通点」が、楔のように打ち込まれていた。
彼女の肉感的な太もも。食い込むニーソックス。
そして、アナル周りの毛。
あの「理想のコスプレイヤー」よりも、この「排泄する女」の方が、今の私に近い。その事実が、私の背筋を冷たく、そして熱く撫で上げていく。
鏡の中の私の乳首は、先ほどよりもさらに硬く、鋭く尖り、インナーを突き上げていた。まるで、画面の中の彼女の行為に呼応して、何かを期待しているかのように。
...▼
壁面いっぱいに映し出された映像は、またループ再生に入っていた。
薄汚れた公衆トイレ。背中から股布を引き裂かれた黒い鎧。そして、男性用小便器に向かって突き出された、白く肉感的な臀部と、その中心で無防備に晒された肛門。
──ジョロロロロ……。
スピーカーから流れる排泄音だけが、BGMのように部屋を満たしている。
私は、その映像から目を逸らすことができなかった。
生理的な嫌悪感はある。不潔で、下品で、見ていられないほど卑猥だ。本来なら、すぐに停止ボタンを押し、ディスクを叩き割るべきだ。
けれど、私の指は動かなかった。
それどころか、食い入るようにその「穴」を見つめ続けていた。
画面の中の女優は、顔を見せない。彼女の個性は、その豊満なお尻と、排尿のたびにヒクヒクと動くアナルだけに集約されている。
汚い。
……けれど、どうしてだろう。その汚さが、どこか神々しくさえ見えてしまうのは。
(この映像は……「商品」なのですか?)
ふと、そんな疑問が浮かんだ。
これは記録映像ではない。誰かが企画し、撮影し、そして販売されている「商品」だ。つまり、この世には──このカルデアの外には、女性が衣装を破り、お尻を突き出し、肛門の動きを見せつけながら排尿する姿を、「見たい」と望む男性たちが存在するということだ。
それも、少なからぬ数で。
彼女は、その需要に応えている。自分の最も恥ずかしい部分を、最も下品な形で晒すことで、彼女は誰かの欲望を満たし、価値ある存在として認められているのだ。
「……求められて、いる」
その言葉を口の中で転がした瞬間、背筋に甘い痺れが走った。
サーヴァントとして、マスターに求められること。それは私の喜びだ。
けれど、この映像の彼女もまた、別の意味で「求められて」いる。盾としてではなく、女として。
高潔な精神ではなく、排泄する肉体として。
(もし……先輩も、こういうのが好きだったら?)
ぞわり、と肌が粟立つ。
先輩は優しい人だ。こんな下品な趣味を持っているはずがない。
でも、もしも。
もしも先輩が、私の盾の裏側で、こんな風に無防備なお尻を見たいと願っていたとしたら? 私が「清楚な後輩」を演じている間に、先輩はこっそりと、こういう汚れた映像を見て、処理していたとしたら?
画面の彼女のアナルが、排尿の終わりを告げるように、キュッと収縮する。その周りに生えた産毛が、汗と飛沫で濡れて光っている。汚れているはずなのに、その艶かしさが、私の目を焼き焦がすほどに鮮烈だった。
私は、ふらふらと歩き出した。
プロジェクターの光に背中を押されるように、部屋の北側──鏡として機能している窓ガラスの前へと。
鏡の中に、一人の女戦士が立っていた。
サイズアウトした黒い鎧に身を包み、至る所から肉をはみ出させた、だらしない身体の女。顔は紅潮し、目は潤み、呼吸は荒い。
そして何より、その股間からは、隠しきれない「雌の匂い」が漂っているようだった。
「……確認、します」
私は、先ほど見た「理想のコスプレイヤー」のポーズを真似てみた。
片足を上げ、可愛らしく小首を傾げるポーズ。
けれど、鏡に映ったのは、可憐なヒロインではなかった。
上げられた太ももに、サイハイソックスが深く食い込み、ボンレスハムのような段差を作っている。黒いレオタードの股布は、パンパンに張った外陰部の肉に埋没し、悲鳴を上げている。
そして、そのクロッチ部分。
黒い布地の中央に、じわりと広がる濃いシミ。先ほどの肛門洗浄の湿りと、止まらない愛液が混ざり合い、乾く間もなく布を濡らしているのだ。
さらに、その縁から。
収まりきらなかった縮れた剛毛が、黒い森のように溢れ出していた。
「あぁ……」
視覚的な暴力だった。
理想のツルツルな股間とは対極にある、野生そのものの光景。
鏡の照明が、無慈悲にその細部を照らし出す。太ももの内側に張り付いた陰毛。レオタードの隙間から覗く、尻肉の付け根。
そして、そこにもびっしりと生えそろった、処理されていない尻毛。
テラテラと光っている。
私の恥ずかしい毛が、脂と汁で濡れて、黒光りしている。
(汚い……。獣みたいです)
私は自分の姿に絶望した。
英霊としての輝きなど、どこにもない。ここにあるのは、ただ発情し、体液を垂れ流し、毛の手入れさえできていない、肉の塊だ。
けれど。
その絶望の底で、奇妙な「納得」が鎌首をもたげた。
(でも……あの映像の人と、同じじゃないですか?)
背後の壁で、今も排尿を続けているあの女優。彼女もまた、肉感的な身体を持ち、毛を生やし、汚れていた。そして、彼女は「商品」として成立していた。
ならば。
この鏡の中の私も──英霊としては失格でも、「性的な消費物」としては、むしろ上等な素材なのではないか?
「……っ」
その思考に至った瞬間、乳首が鋭く疼いた。
鎧の胸当ての裏側で、硬直した突起が擦れる。私は否定したかった。そんな卑しい存在になりたくないと。けれど、私の身体は、背後の映像に共鳴するように熱を帯びていく。
──ジョ、ジョロ、ロロロ……。
背後から聞こえる水音が、誘い水のように私の理性を溶かしていく。私は、鏡から目を逸らせなかった。
何かに操られるように、ゆっくりと身体を回転させた。
鏡に対して、背中を向ける。
そして、腰を落とし、お尻を突き出す姿勢を取る。そう。あの映像の女優が、小便器の前で取っていたのと同じ、スクワットの姿勢だ。
「何をしてるんですか、私は……」
口では拒絶しながら、身体は止まらなかった。
鏡越しに、自分の後ろ姿を見る。
背中を大きく露出したレオタード。アーマーの下で、はち切れんばかりに膨れ上がった巨大なお尻。
私は、震える手を後ろに回した。映像の真似をするように、腰のアーマーをたくし上げる。
──ボロン。
わずかに隠されていた果実が、重力に従ってこぼれ落ちた。
鏡の中に、白く、圧倒的な質量を持ったお尻が現れる。レオタードの股布は、深い谷間に食い込み、ほとんど紐のように埋没している。
その食い込みの両脇から、黒々とした尻毛が、はみ出していた。
「……直接ではありませんが、見えます」
鏡の中の私のお尻。
その中心にある、茶色い一点。
布が食い込んでいるおかげで、肛門の輪郭がくっきりと浮き上がっている。
周りの毛が、汗で濡れて束になり、その穴を守るように、あるいは強調するように取り囲んでいる。先ほどの洗浄で刺激されたせいだろうか。鏡越しに見る肛門、いやアナルは、心なしか充血し、赤みを帯びてプクリと腫れぼったく見えた。
背後のスクリーンでは、女優が汚いアナルを晒して放尿している。
鏡の中では、私が汚いアナルを晒して、それを眺めている。
シンクロしている。
私は今、カルデアのシールダーではない。あの女優と同じ、ただ「見られること」を待っている、発情した雌だ。
「……先輩」
私は鏡の中の、自分のお尻に向かって呟いた。
先輩は、どっちが好きですか?
あのツルツルで綺麗な、嘘つきの私ですか?
それとも、こんな風に毛だらけで、お尻の穴をヒクつかせている、本当の私ですか?
──クンッ。
意識した瞬間、私の肛門が勝手に収縮した。鏡の中で、食い込んだ布ごと、お尻の穴が動くのが見えた。
まるで、あの映像の排尿シーンのように。あるいは、「ここを使って」と誘うように。
私は、その卑猥な動きに魅入られたまま、ただ立ち尽くしていた。
太ももの内側を、熱い愛液がツツーッと伝い落ちる感触があった。それは排尿ではないけれど、ある意味で、それ以上に恥ずべき「失禁」だった。
私の身体は、この部屋のルール──「見られるために存在する」というルールを、受け入れようと変化し始めていたのだ。
...▼
いつの間にか、背後のプロジェクターの光は消えていた。
再生が終了したのだろう。部屋には再び、天井と壁の隙間から漏れる間接照明だけの、薄暗く静謐な空気が戻っていた。
だが、私は動けなかった。
北側の窓──鏡として私を映し出すガラスの前で、腰を落とし、お尻を突き出し、背中を反らせた姿勢のまま、石像のように固まっていた。
鏡の中には、サイズアウトした悲鳴を上げる鎧を身に纏い、はしたなく臀部を強調している女がいる。
レオタードが食い込んだ股間。はみ出した剛毛。そして、突き出されたお尻の奥で、ひっそりと、けれど確かに存在を主張している肛門の輪郭。
そのポーズを維持しているうちに、ふと、既視感が脳裏をよぎった。
(……この姿勢。私は、知っています)
それは、この部屋で覚えた「卑猥なポーズ」ではない。
もっと昔から。
私がサーヴァントとして覚醒し、先輩と共に数多の特異点を駆け抜けてきた日々の中で、何千回、何万回と繰り返してきた動作だ。
敵の攻撃を防ぐ時。
宝具を展開する時。
私はいつも、こうして腰を深く落とし、大地を踏みしめ、盾を構えていた。重心を安定させるために足を大きく開き、衝撃に耐えるために前傾姿勢をとる。
それはシールダーとして、最も合理的で、強固な防御姿勢(スタンス)のはずだった。
けれど。
(私が盾を構えている時、先輩はどこにいましたか? 私は……先輩に何を見せていたのですか?)
記憶が再生される。
爆風と熱風。轟音と閃光。私は常に最前線に立ち、全ての攻撃を受け止めてきた。
そして、私の背後──「盾の裏側」には、いつも先輩がいた。
私が守るべき、唯一のマスター。
彼は私を信頼し、その背中を預けてくれていたはずだ。
けれど?
その信頼に応えるべき私が、実際に見せていたものは何だったのか?
鏡の中の、突き出された自分のお尻を見る。巨大に肥大化した肉塊。食い込む布。はみ出した毛。
もし、戦闘中の私が、今と同じような──あるいは、無自覚なだけでもっと無防備な姿だったとしたら?
先輩が真剣な眼差しで戦況を見つめている、その視界のド真ん中に。私は、「守る」という大義名分を盾にして、この汚いお尻を突き出していたことになる。前傾姿勢をとれば、アーマーはめくれ上がり、お尻のラインは露わになる。激しい動きで汗をかき、蒸れた雌の匂いを撒き散らしながら、私は先輩の顔のすぐそばで、お尻を振っていたのだ。
「……先輩は、何も言いませんでした。優しくて、真面目な人だから」
先輩は、私の醜態に気づいていても、黙っていてくれたのだ。
それなのに私は、今の今まで自分の身体の管理もできず、あまつさえ「私は立派なサーヴァントです」という顔をして、彼に恥部を押し付け続けていた。
先ほどの映像のテロップが、脳裏に蘇る。
『処理していない汚い穴を晒して、性欲処理用の肉オナホとして生きていきます』
「……私も、同じじゃないですか」
鏡の中の「私」が、卑しく歪んだ笑みを浮かべた気がした。
私は気づいていなかっただけだ。戦闘中、後ろにいる先輩の視線を背中に感じて、どこかで熱くなっていた自分に。「見られている」という興奮を、「戦いの高揚」だと勘違いして、無意識にもっとお尻を突き出し、もっと際どいポーズを取っていたのではないか。
そう考えると、今この窓に向かってお尻を突き出している行為も、私の本性が露呈しただけの、当然の帰結に思えてきた。
先ほど見たAVのタイトルや、同人誌の卑猥な煽り文句が、記憶のフィルターを汚していく。『守ってるフリしてケツ見せ誘惑』『盾の裏で丸見えの無防備マンコ』『戦闘中のチラリズムでマスターを発情させる未処理シールダー』……。
ここは鏡張りになっているが、構造的には窓だ。
このガラスの向こう側──外の世界からは、室内が丸見えかもしれない。もし、そこに誰かがいたら。あるいは、この特異点を管理している「誰か」が、カメラ越しではなく、ガラス越しに私を見ていたら。
その人は見ているだろう。
マシュ・キリエライトが、敵もいないのに武装し、自分から進んでお尻を突き出し、肛門のシワを見せつけている無様な姿を。
(……私は、見せたいんですか? あのビデオの女優のように……このどうしようもない身体を、誰かに見て欲しくて……たまらないのですか?)
私は、突き出したお尻を戻さなかった。むしろ、さらに腰を反らせ、アナルがよく見えるように角度を調整さえした。イメージ・ビデオの中のモデルのように指で広げることなどしない、もちろん自慰もしない。ただ、そこにある「穴」を提示する。かつて先輩に見せていたように、無自覚を装ったままに。
窓ガラスの向こうの闇に、無数の視線を幻視する。それは軽蔑の視線であり、同時に、粘着質な欲望の視線だ。
恥ずかしい。死ぬほど恥ずかしい。
けれど、その視線こそが、今の卑しい私にはお似合いなのだと、身体の疼きが教えていた。
「英霊失格、です……」
私は鏡の中の自分から目を逸らした。
自分の不甲斐なさと、無自覚な浅ましさに、胸が締め付けられるようだった。高潔な騎士を気取っておきながら、やっていることは露出狂と変わらない。そんな自分への嫌悪感に押しつぶされそうになった、その時だ。
──ゾクリ。
背筋に、冷たい視線を感じた。
鏡越しではない。
物理的に、私の背後から。
「っ!?」
私は弾かれたように振り返った。
誰もいない。ただ、白い部屋の静寂があるだけだ。
けれど、カウンターの上に置かれた端末──カルデアへの報告用カメラの赤いランプが、闇夜の獣の眼のように、じっと私を見つめていた。
「あ……」
録画中。
そうだ。私は、調査記録を残すために、カメラを回したままにしていた。
……ということは。
私が「卑猥なビデオ」を食い入るように見ていた姿も。鏡の前で、AV女優の真似をしてお尻を突き出し、アナルを見せつけていた姿も。
その全てが、今もこうして「報告」として記録され続けているということだ。
「ま、待って……違います、先輩! これは……!」
私は慌てて端末に駆け寄った。
顔が熱い。心臓が破裂しそうだ。
言い訳をしなくては。
これは私の本性ではない。敵の罠なのだと、正しく伝えなくては。
私はカメラを鷲掴みにし、レンズに向かって必死に語りかけた。
「ほ、報告の続きです! ええと、現在、敵性存在による高度な精神干渉を受けています!」
声が裏返る。
私の顔は、興奮と羞恥で真っ赤に染まり、目には涙が溜まっている。鎧のサイズが合わず、胸元の谷間からは汗ばんだ乳房が溢れ出し、カメラが揺れるたびにプルンプルンと波打っている。
「先ほどの映像資料の閲覧、および、鏡の前での……その、露出確認行為は、敵の術中にはまった結果であり、私の意志ではありません!」
嘘ではない。嘘ではないはずだ。
けれど、口をついて出る言葉は、どこか焦点がずれていた。
「敵は……私の、この……無駄に肥大化した『雌肉』や、処理できていない『剛毛』といったコンプレックスを刺激し、精神的な動揺を誘っています」
雌肉。
剛毛。
報告書には相応しくない、卑しい単語が自然と混ざる。
「私の……だらしないお尻や、汚いアナルを……いえ、臀部周辺の形状を執拗に見せつけることで、羞恥心を煽り、判断力を奪おうとしているようです。ですが、私は屈しません。私はシールダーですから……こんな、ドスケベな身体になっても、心までは……」
ドスケベな身体。
自分で言って、ハッとした。
私は今、自分のことを何と呼んだ?
画面の中の私は、どこかトロンとした目で、自分の豊満な胸元を無意識に手で隠しながら──逆に強調するように押し上げながら、潤んだ瞳で訴えかけている。その姿は、被害を訴える捕虜というよりは、犯された後の事実を興奮気味に告白する、雌の顔に近づきつつあった。
「……と、とにかく! 調査は継続します。敵の洗脳攻撃には……精神耐性で対抗しつつ、この……発情しきった肉体の……いえ、身体の異常もモニタリングしていきます」
息が切れる。
言葉を選ぼうとすればするほど、先ほどビデオで見た「淫語」が脳内に割り込み、舌に乗ってしまう。
私は逃げるように録画停止ボタンを連打しようとしたが、やはり反応はない。カメラは、私の動揺も、言い淀みも、そして赤く充血した乳首が鎧を突き上げている様も、冷徹に記録し続けていた。
「……以上、第2次報告を終了します。……先輩、見捨てないでくださいね……?」
最後は、報告というよりは、懇願だった。
私は端末をカウンターに戻すと、ガクリと膝をついた。冷たい床の感触が、火照った太ももの内側に心地よい。食い込んだレオタードの股布から、ツゥーッと一筋、愛液が太ももを伝って床に落ちた。
──ピチャリ。
静寂な部屋に、その小さな水音が響く。
私はまだ、自分が「露出狂」だなんて認めていない。ただ、敵の攻撃が激しくて、少しだけ身体が変になっているだけだ。
そう自分に言い聞かせながら、私は床に広がった自分のシミを、ぼんやりと見つめていた。
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