※この作品はR-18です。

さよなら、そしてありがとう   作:LINAR

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After route0-① 悪意

「俺はどう映った?」

 その言葉に、由良は――何も答えなかった。

 

 

「ここかな?」

 街の景色に緑が多くなってきた場所に3棟が横並びに連なって建っている14階建てのマンションに着いた。

「うん・・・ありがとう」

 だいぶ体も楽になったのか、由良は背中から降ろしてもしっかりと地に足を付いてふらつくこともなく歩けるようになっていた。

「じゃあ・・・これで」

 涼太は踵を返す。すると――

「涼太!!」

「――!?」

 由良が唐突に叫ぶ。その声のボリュームに涼太は驚きながら振り返る。

「あんたがどう映ったか――答えてあげる」

 由良の表情は明らかに怒りと、嫌悪感を含んだものであった。

「―――気持ち悪い」

 由良の言葉が風と共に涼太の耳を通り抜ける。。その言葉に涼太は表情を失ったように由良を見つめた。

「――まさかそんな人間になってるなんて・・・思わなかった!!」」

 由良の言葉が夜空に響き渡る。

「美月さん、由香里さんと何かするのはいい――他の女に手を出してもいい。でも――」

 そして由良は、無表情で佇む涼太の目をしっかりと見据えてハッキリと告げる。

「あたしには関わらないで」

 そう言うと、由良は背中を向ける。

「――さよなら」

 由良は最後にそう短く告げると、ゆっくりとその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 由良の言葉を受けた涼太は、まるで壊れたかのようにその場へと立ち尽くす。由良の姿はしばらく前に消えていた。

「・・・?」

 すると頬に何かが伝う。

「・・・あれ?・・・なにこれ?」

 掌で拭い、眼前で確認すると、そこには確かに水滴があった。

「おかしい・・・止まらない・・・」

 次々と涙が溢れ、零れ落ちる。

「俺は・・・間違えた?」

 鼓動がどんどんと速くなる。

「いや、俺は・・・俺は・・・」

 胸を抑える。ここ数年は感じてなかった肺の痛みだ。

「――カハァ!!」

 何故か肺が突然圧迫をはじめ、全ての空気が外へと出る。

「――ハァ!!――ハァ!!」

 肺が欲する空気を必死に吸う。頭の中が混雑する。思考がぐるぐると渦巻き、何もわからなくなる。

「(この感じは――)」

 そう、自身が生まれた(・・・・)時と同じ感覚だった。意識が混濁した中で芽生えた人格。

「(だが――)」

 涼太は違和感を感じていた。生まれた時は混濁した意識の中で切り離された(・・・・・・)のだが、今回は――

「(取り込んでいるのか・・・)」

 意識の混濁は、まさしく思考や人格までも全てを混ぜようとしていた。

「ア・・・アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 頭が割れるように痛みだす。涼太は声にならない叫びをあげながら倒れ伏す。

「アァ・・・ガァ・・・」

 涼太は頭を抑えながらうずくまり、その地獄が終わるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――君!!――君!!」

 涼太は見知らぬ男の声で意識を取り戻す。

「意識は――大丈夫そうだな」

 男は涼太の目を押し開きながらのぞき込む。彼はこの街の警察官であり巡回中に倒れている涼太を発見し、現在に至る。

「あ・・・」

 涼太は口を開く。

「どうした?どこか痛むのか?」

 心配そうにのぞき込む警官に涼太は笑顔を浮かべる。

「ありが・・・とう」

 その言葉と共に涼太は体に力を入れて上半身を上げる。

「お、おぉ!問題なさそうだな?」

 警官は安堵したように声を上げる。

「えっと・・・ご迷惑・・・おかけしました」

 そうして立ち上がろうとすると、警官は一度涼太の肩を抑えて制する。

「待ってくれ、まず意識の確認をしたい、身分証明書は持ってるかい?」

「はい・・・どうぞ」

 涼太は高校の身分証を渡した。警官はそれを見ながら問いかける。

「名前は?」

「秋山涼太」

「生年月日は?」

「○○〇〇年〇月〇〇日」

「年齢は?」

「18歳」

「住所は?」

「○○村○○○-○」

「大丈夫そうだね」

 警官はそう言って身分証を涼太へと返す。

「一応病院へは行くかい?」

「いえ、結構です」

 涼太は即答する。

「分かった。見たところ問題なさそうだし私はこれで行くよ――くれぐれも気をつけて」

「はい、ありがとうございます」

 その言葉を聞いた警官は去っていく。

「さて・・・帰りますか・・・」

 涼太はマンションを背に歩き出す。その歩様は軽快で淀みもない。

「まさか、逃がしておいたこの感情と・・・手を組むことになるとはな・・・」

 涼太は自身の感情、メンタル、人格全てを確認して、つい口から言葉を漏らしてしまう。

「せっかく余計な行動しないように認識外(ポケット)に逃がしたんだけどな・・・」

 わざわざ声に出さずとも胸の内に吐き出せばいいと理解しつつも口は止まらない。

「でも復活しちまったもんはどうしようもないよな?」

 軽い足取りで駅までの歩みを進める。

「あの子供(ガキ)涼太も怒りの中に溶けて消えちまったみたいだし・・・もう止めるものはない――」

 そして一度立ち止まり、由良のマンションの方角を見る。

「地獄に堕としてやるから覚悟しろよ・・・由良」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの日から1か月が経ち、夏は本格化していた。そんな中涼太は電話を片手に高校からの帰路についていた。

「―――はい、分かりました。準備しておきます・・・失礼します」

 涼太は通話を止める。相手は涼太が株を始めてから出来た知り合いで、金稼ぎの一環で参加した様々な種類の仕事の元請けであり、それらの成功から信頼関係が生まれ、今では盟友とも言うべき存在だった。

「アニキ、どうかしたんスか?」

 背後についてきていた丸夫が声をかける。

「丸夫・・・俺、福岡行くことになったわ」

「は?」

 涼太の言葉に丸夫は唖然とする。ちょっといいか、と涼太は近くにあったベンチに腰掛ける。丸夫もそれに倣って隣に座った。

「前、丸夫とふとしに行ってもらった仕事の依頼主、知ってるよな?」

「あぁ・・・何かワゴン車で運んでたやつッスよね?長時間車に一緒に乗ってるだけで日当5万出たんでビックリしましたよ」

 丸夫もふとしもそのあからさまなヤバさはあえてスルーしてネタにしている。

「そうそう、ってかそもそも依頼主に会った?」

 そこで丸夫は過去を回想するが、現場には運転手と同社のもう一人しかいなかった。

「いや、見てないッスね」

「なるほど。まぁ、その仕事の依頼主と大きめの仕事することになったから村からも出るわ」

「は、はぁ・・・」

 それは明らかにヤバい仕事に加担すると言う意思表示だった。

「いや、アニキ・・・お母さんはどうするんスか?」

「母さんか・・・」

 そこで涼太は一度言葉を止める。

「事前に色々と進めていたから、そっちは大丈夫だ」

 丸夫の質問はそこで止められる。しかし、涼太はその場限りの嘘を吐くような人間じゃないと信じ、丸夫はその話題を止める。

「分かりました――いつ頃から行きます?」

「近いうちだな・・・もちろん高校も辞める」

 涼太の言葉に迷いはない。

「高校辞めても大丈夫なんスか?」

「まぁ、まともには生きる予定なかったからな・・・いつか来るだろうとは思ってたし、だからこそ高校までに俺に掛かった費用は全額親に返した」

「え・・・」

 丸夫はその告白を聞いて絶句する。

「あれ?言ってなかったか、俺が金稼ぐようになったのは親の俺への費用を全部返済することで自由になろうと思ったからだ」

 涼太はそのことを母親に告げた時、高校の費用も含めた全額を返し終わった時の母親の寂しそうな顔を思い出す。

「さっきの話にも繋がるが、母親も流石にそこまでした俺に関わらない方が良いと思ったのか、単身赴任の親父の下に引っ越していったよ」

「そう・・・だったんスか・・・」

 その言葉を最後に丸夫は閉口した。

「あぁ――そうだ、丸夫・・・ひとつ頼み事していいか?」

「ええ・・・いいっスよ。なんスか?」

「由良のことだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に――いいんスか?」

 涼太の頼みごとを聞いた丸夫が信じられないと言った驚愕の表情を浮かべて確認した。

「あぁ・・・もう手配も済んでる、俺の代行者(そいつ)も参加出来れば問題ないと言ってる」

 丸夫はごくりと生唾を飲み込む。

「で、でも本気でやろうとしたら・・・色々と問題が・・・」

「事後処理もソイツに一任してる、前から付き合いのある仕事仲間(・・・・)だ。信頼して良い。ちゃんとそれも含めた資金も渡してる」

「一応、ちゃんと確認したいんすけどアニキは参加しないんすよね」

「あぁ、俺はその日には福岡に行ってる」

「そう・・・っスか・・・」

 丸夫はまるで現実感を感じられてなかった。今でも夢かと錯覚するほどに。

「アニキ・・・俺・・・」

 下を向き、自分を抱きかかえるように震える丸夫の肩に涼太は立ち上がりながら手を乗せる。

「お前達にしかできないんだ――」

「え・・・」

 涼太は乗せた手で丸夫の肩を掴む。その拍子に丸夫は顔を上げた。

「あの一件の(由良を犯した)お前等じゃないとな・・・」

 丸夫を見下ろす涼太の口元は歪みその目に光はなかった。

「分かり・・・ました・・・」

 丸夫は。上げた顔を再び下げた。

「まぁ、計画は問題ない。責任も俺が持つ。事後は――好きに(・・・)してくれていい」

 涼太は顔を伏せ、動けない丸夫の猫背を軽く叩きながら軽快な口調で告げる。

「じゃ・・・頼むぞー」

 そう言って涼太はひらひらと手を振りながらその場を後にする。

「・・・・・・・・・」

 丸夫は頭の中の、正義と悪が葛藤し動けない。それから丸夫が動けるようになったのは1時間もしたころだった。




今回の由良の反応は「拒絶」です。
まぁ、常識的に言えば当たり前の反応です。
本人が常識的な人間なのか?って話はありますけど・・・。
そういったものが織り交ざった分岐です。


アフターストーリーは由良の反応によって涼太の人格が決定され、それによって全然違う進み方になります。

一応、涼太の人格についての補足と説明を下に記載するので、この物語の軸になってる涼太の人格の設定を明確にしたい方は覗いてください!

自分の中での作り上げた涼太像がある方はそのまま物語を読み進めて頂いて問題ありません!

それでは、今回も読んで頂きありがとうございます!
また次回もよろしくお願いします!!













































涼太の人格について

原作の涼太の人格は
子供 7:3 大人 という割合であると考えてます。
年齢的な物からくる7と
都会育ちで知識や物腰、考え方が大人びている3

それが一件によって3つに別れました。
「旧人格」:子供の部分、甘えたいという感情や自分のことが第一であるという年齢相応の欲求や行動が占める。この人格は元の人格比率が大きいため基本的に主人格と扱われている。

「新人格」:大人の部分、この物語は大人の部分が状況を動かすため、必然的に話の中での登場機会が多い。冷静で俯瞰的、尚且つ涼太の感情を受け継いでいないため由良への感情も、旧人格経由で流れてくることはあっても新人格が何か思うことはない。

「怒り」:そして今回ようやく登場した第3人格、というか涼太の元々の人格が生み出した感情です。
これはポケットと言われる、いわゆる認識をしない「逃げ場」に追いやられていて今まで認識されておらず、これは余程の出来事がない限り出てこないものです。
由良の行為に対する怒りの感情をひたすら書かなかった理由がこれです。
勿論、後々の物語はこれを読んでない前提で書くので度々同じような説明が出ます。

この人格には力関係が合って
新人格<旧人格<怒り
というような関係性で、新人格は最も弱いです。
怒りの感情は最も強く、分裂前の感情なので後付けの他人格より必然的に強くなります。
あんまり語りすぎるのも痛々しいのでここまでにさせて頂きます。失礼しました!















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