※この作品はR-18です。

男娼少年イヴ -亜人っ娘だらけの異世界で穢され嫐られ毎日-   作:ノーティー・ナイト・ザ・リーアム・クラブ

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Callboy-Chick EVE
本番とやらが近付いているようだ


 オフィスに戻った頃には、イヴニンスの疲労は完全にピークに達していた。

 玄関を通り過ぎると、さっさとふらふら寝室へ行こうとする。

 

 

「待て待て待ちなさいイヴニンス氏! 風呂!」

 

「う……そうだった……」

 

「下着替えたからって満足するんじゃないですよ! ほら、そんまま直行! 十分は浸かれ!」

 

「わ、分かったからもう、大声を出さないで……余計疲れる」

 

「行けっつのッ!!」

 

「分かったってのっ!!」

 

 精気回収に対し執念深いナイトマンへ辟易しつつ、イヴニンスは言われた通りに浴室へ向かった。

 既に入浴には慣れて来たようで、服を脱ぐと何の抵抗もなく温かな湯の中へ身体を沈めた。

 

 

 

 最初こそは面倒臭そうだったものの、一度お湯に浸かれば心地良さから逆に出たくなくなる。

 

 

「ふわぁ……眠い……」

 

「イヴニンス氏! もう出ないと餓死しちまいますぜ!」

 

「…………」

 

 うつらうつらし始めたタイミングで、浴室の外からナイトマンが叫ぶ。

 室内にある時計を見やると、いつの間にか十五分が経過していた。

 

 

「……入れだの出ろだの……せっかちな奴め」

 

 そう愚痴りながら浴槽より立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 身体を拭き、与えられたワイシャツとズボンを着ると、目をしぱしぱ瞬かせながら自室へ向かう。

 途中、ナイトマンから声が掛けられた。

 

 

「イヴニンス氏。そう言えば外出するって話、どうしますかね?」

 

「…………明日に延期」

 

「でしょうな。では今日はお休み」

 

 そのまま自室に入ると、大きくふかふかのベッドへ俯けに倒れ込み、一瞬の間もなく寝息を立て始める。

 疲労困憊としたイヴニンスの姿をドアの隙間から、ナイトマンは確認していた。

 

 

「……んー。貿易商の息子だから体力はあるハズなんですけどねぇ……」

 

「お尻プリって向けて寝てる……アレ襲って良いよね?」

 

「現れたな色狂い馬鹿天使」

 

「またボコすよド腐れ悪魔」

 

 ヌッとナイトマンの下から顔を出すアーリー。

 

 

「まぁ、そりゃ航海術とか色々学んでるって言っても、セックスなんてやった事ないんだしさ? しかも今日のメチャハードだったっぽいじゃん?」

 

「えぇ、高濃度の精気が期待出来ますな……とは言えやはり、本番で得られる精気よりはレートは下がる。まだ場慣れしてないが、そろそろ本番もさせなきゃならんですなぁ」

 

「お上が煩いもんねー……と言う事は、とうとうイヴくん童貞卒業!?」

 

「その通りですな。さよならチェリーボーイ」

 

「アタシがやって良い!? 優しく筆下ろししてあげられるけど!?」

 

 そう言う彼女に向かって、黙って中指を立てるナイトマン。

 

 

 ドアが閉められた直後、その奥からドタンバタンと二人、喧嘩をしている音が響いた。

 深い眠りの最中にいるイヴニンスに、その喧騒は聞こえなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 彼が目覚めたのは昼下がりの頃、夕方の一歩手前。

 溜め息と共に身体を起こしたイヴニンスは、西日の太陽を見て罪悪感に苛まれる。

 

 

「……う……一日を無駄にしてしまった……」

 

 朝に眠り昼過ぎに起きると言うのは、彼にとって初めての経験だ。

 故に長年の生活リズムが狂い、眠りから覚めたのに倦怠感が強い。

 

 

「……お茶でも飲もう」

 

 そう決め、部屋を出て応接室の方へ。

 

 

 

 室内にはアーリーだけがおり、一人でティータイムを楽しんでいた。

 どうにも彼女に苦手意識のあるイヴニンスは、思わず顔を顰めた。

 

 

「あっ! イヴく〜ん! 一人で寂しかったのー!」

 

「……あいつは?」

 

「ナイトマンの事なんかいいよ! ほら、おいで♪ おいで♪」

 

 自身の隣にあるチェアに座るよう促すものの、イヴニンスは彼女とは向かい合わせにあるチェアを選んだ。

 不貞腐れて唇を尖らせたアーリーだが、すぐにカップを用意して、紅茶をポットで注いで淹れてやる。

 

 

「めちゃくちゃグッスリだったじゃん。疲れは取れた?」

 

「……変な時間に寝て、変な時間に起きたから……身体が怠い」

 

「身体が怠いのは多分、連日おザーメン出してるからかな? あ、安心してね! 私の力で、イヴくんの精液はすぐ充填されるように改造してるから!」

 

 笑顔で肉体改造の事をサラッと言うアーリーに戦慄しかけたものの、「こいつらはそんな奴らだ」と半ば諦めたように受け入れる。

 差し出された琥珀色の紅茶を、イヴニンスは飲んだ。

 

 

「ふぅ……で。今夜もまた……その……し、仕事があるんだよな?」

 

「そりゃね? 最近凄いんだよぉ? 私とナイトマンの賢明な営業により、色んな人から予約が来ててね! この国で一番の男娼になるのもそう遠くはないかもね?」

 

「……あと何人こなせば、僕は帰れるんだ……?」

 

「ナイトマン曰く〜……最短ペースで約七千二百人ほどだって」

 

「ななせっ……!? 何年かかるんだよそれ……!」

 

「まぁまぁ、安心しなさいよ。今のイヴくんは私のお陰で不老状態だし。それにこの世界の人間の寿命は〜、君の世界よりも二倍長いから〜……まぁ、向こう二十年は老けないままでもバレないと思うよ?」

 

 イヴニンスの世界の人間が渇望したであろう不老を手にしてしまった。

 とは言え喜ぶ要素は一切ない。役割を果たすまで枷で縛られているだけに過ぎないからだ。

 

 

「……お前にとったら生物の概念って、人形を弄るようなモノなんだな」

 

「言い得て妙だね。その気になればイヴくんを女の子にも出来ちゃうし、赤ちゃんにもお爺さんにも子猫ちゃんにも……イヒヒっ♡ 紅茶にもカップにも変えられちゃうからね♡?」

 

 

 楽しげに微笑みながら、縦に割れた瞳孔で見つめるアーリー。

 言動こそ軽いものの、彼女がイヴニンスの身体に施した全ては神の所業のそれだ。

 

 ぞくりと寒気が背筋に走る。

 すぐにそれを鎮めようとサッと彼女から目を晒して、紅茶を啜った。

 

 

 

 

 暫くしてナイトマンが応接室に入って来た。

 彼はイヴニンスを視界に捉えると、丁度良いと言わんばかりに手を打った。

 

 

「イヴニンス氏! 体調は万全ですか?」

 

「え? ま、まぁ……」

 

「今からお仕事ですよ」

 

「……まだ夜じゃないけど」

 

「別に仕事は夜だけって訳じゃないんですよ」

 

 そう言っイヴニンスの隣にあったチェアに座り、アーリーに紅茶を淹れて貰うようティーポットを指差して頼んだ。

 

 

「まぁ、本当は夜だったんですけどね。早められるなら早くって、お客さんが言ってたんで」

 

「……どんな客?」

 

「お名前は『ララ・ラズリーロ・ランサバル』氏。現在、このアーニマに滞在中の外交官です」

 

「が、外交官?」

 

「なかなか多忙な方でしてね。やっと取れたお休みを、あなたと過ごしたいとの事で」

 

 淹れて貰った紅茶を啜る。

 

 

「ふぃい……イヴニンス氏も大分、お仕事に慣れて来た頃だと思いますので、このララ氏より本番行為を解禁しようと思ってます」

 

「……本番行為ってなに? これまでのアレコレは全部、練習だったの?」

 

「練習って訳じゃないんですけど、まぁ練習みたいなモンでしたな」

 

「……なに、されるんだよ……その……本番、って、奴は……」

 

「生物の繁殖に於ける唯一の方法にして、生物が自然に用いる中で最も快感を得られる方法ですな」

 

「…………だ、だから何するんだよ」

 

「説明が面倒臭いので実際にヤれば早い」

 

 いきなり突き放すナイトマンに唖然とさせられる。

 二人の会話を聞いていたアーリーは、カップを口元に付けながらニヤニヤ笑い。

 

 

「イヒヒっ! と〜っても気持ち良い事だよっ♡」

 

「まぁ、相手の技量と身体の相性にも左右されるモンですけどな。一応こちらがサービスする側ですんで、(あた)う限りの努力と奉仕をお願いします」

 

「あーあ……これで真っ新なイヴくんとお別れかぁ〜……そのララって人に嫉妬しちゃうなぁ」

 

「良く言うわこの人」

 

 若干険悪な雰囲気にあるナイトマンとアーリー。

 その傍らでイヴニンスは次の仕事に対する不安と緊張を思いつつ紅茶を飲み干す。空っぽのカップを置いたタイミングで、ナイトマンは言った。

 

 

「それじゃ、頑張って」

 

「……いや、頑張ってって……今日はどっちが僕を送るのさ」

 

「今日はその必要ないんですよ」

 

「は?」

 

 ナイトマンがピッと自身の背後、応接室の扉の方を指差した。

 

 

 

 

「今日の仕事場は、あなたがさっきまでグッスリ寝てた寝室ですんで。そこで待機していなさいな」

 

 

 

 

 

 

 

 言われた通りにイヴニンスは、寝室にて待つ事となった。

 カーテンを閉め切ったり、ベッドを整えたり、忙しない様子だ。

 

 

「……そう言えば仕事場とか言ってたよな……」

 

 ここに来た時にアーリーから言われた気がする。

 確かに一人用にしてはベッドが大き過ぎるとは思っていた。

 思えばベッドを囲むこの天蓋も、雰囲気を盛り上げる為の物だろう。

 

 

「…………ま、また抱かれるのか……」

 

 途端に恥ずかしくなり、ベッドに座りながら落ち着かない様子で指を繰る。

 据え付けられた時計だけが規則正しく鳴る部屋の中、まだかまだかと待ち人で居続けた。

 

 

「……う……っ」

 

 意識すればするほどこれまでの情事が頭を過り、下腹部から切ない痛みが迫り上がる。

 堪らなくなったイヴニンスは、気休めにもう一杯だけお茶でも貰おうかと立ち上がる。

 

 

 ドアを少し開いた時、玄関先が見えた。

 そこにはナイトマンの背中と、彼と向かい合わせで立つ見知らぬ人がいた。

 

 

「お待ちしておりましたとも、『ラズリーロ』様!」

 

 ナイトマンが出迎えている相手こそが、次の客らしい。

 どんな人物か確認しようとしたが、前に立つナイトマンか邪魔で姿を完全に捉えられなかった。

 

 

「えぇ! 事前に申し上げた通り、ウチのイヴ氏は上玉で御座います!」

 

「……イヴニンス・ジャックドーって言えよ」

 

 客の前ではイヴ呼びのナイトマンへ、一人こっそりと恨み節を吐く。

 

 

「お時間は前払いで頂いた代金分、たっぷり明朝までを設定しております。ただ当店のサービスで、途中で終了なさる際には、余った時間分の代金を分換算で返金出来ますので……返金分はこちらから、即日銀行の方に振り込まれるよう手配しておきます」

 

 説明を聞き、ララから「まあ!」と、驚きの声がかかる。

 声音はお淑やかで大人しそうな、柔らかなものだった。

 

 

「じゃあ、もしも私が部屋に入ってすぐ帰るとなれば……」

 

「九分九厘をお返しするって事になりますねぇ」

 

「あらあら……お値段もだけど、サービスまでメチャク……かなり強気ですわね?」

 

「それほど、あの扉の奥にいる少年に自信があると言う事ですとも」

 

 ナイトマンが振り返って、こちらの方を指し示そうとする。

 

 

 

 

 

 反射的にイヴニンスはドアをサッと閉めて、大慌てでベッド脇に立った。

 

 

「うわ……く、来るぞ……!」

 

 髪や身なりを整え始めた自分を客観視し、次第にこの仕事に慣れて来ている自分が嫌になった。

 馬鹿らしくなり、出来るだけ相手には威圧的に行こうと考え、腕組みで待つ事にする……その割に表情は強張っているが。

 

 

「……今度は誰だろ……パニアが猫で、フレデリカが狼、あとメイドたちが兎だったり羊だったりしてたな……んで、あの双子が狐で…………次は猿か虎にでもなるのだろうか」

 

 次に来る客が何の獣人なのかを予想しながら、姿勢を崩さず今暫く待つ。

 

 

 

 ついにその時が来た。

 ドアがノックされ、思わずイヴニンスの身体が跳ねる。

 直後すぐに、ドアが開かれた。

 

 

 

 

「さあ。こちらが当店唯一の男娼、イヴ氏です」

 

 ナイトマンに促され、客が入室する。

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 困惑の声をあげたのは、イヴニンスだった。

 てっきり獣人が来るものだろうと思っていただけに、全く違う彼女の姿を見て唖然としたからだ。

 

 

 

 

 

 四本の腕、細く長い人外じみた脚と、背中から垂れ下がるように生えた羽根のような物。

 その脚はまるで蟲のように節が連なったもので、脚を構成する甲殻は瑠璃色、関節部分と脚の先が点々と黒くなっている。

 

 また四本の腕の内、着用しているケープの下から伸びた二本はイヴニンスと同じ人間らしい腕であったが、脇腹の裏から前まで伸びたもう二本の腕は、脚と同じ構造をしていた。

 

 

 開いた人間らしい口の両端から、耳の後ろまで伸びた亀裂のような線も含め、獣人よりも人外具合が増している。

 

 初めて見てみればその姿に、悍ましさを感じられた。

 身体自体は小さいようだが、蟲らしい脚が異様に長く、背丈はナイトマンよりも若干高い。イヴニンスは逆に威圧を感じ取ってしまい、若干恐れ慄き、目を見開いては彼女の顔を見上げる。

 

 

 

 

 

 額には触角と思わしき長いツノが、床へ付かんばかりにピンと垂れ下がっていた。

 瑠璃色と黒とを交互に連ねたようなその触角をぴこぴこと揺らし、彼女もまた驚いたような顔をしていた。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 互いに絶句し、見つめ合うイヴニンスと女。

 そんな二人を交互に見遣りながら、ナイトマンは恐る恐る彼女に話しかける。

 

 

「どうされやした? もしかして、マジに返金対応コースですかね?」

 

「え、かわい過ぎな…………はっ!」

 

 我に返ったように彼女は口元を四本の手で抑え、取り繕うように微笑んだ。

 

 

「い、いえ、とんでもない!……メチャクチャ……あ、間違えた……か、かなり見惚れてちゃってしまって……」

 

 そう言う彼女の頬は微か赤らんでいる。表情もどこかだらしない。

 

 

「お気に召されたのなら幸いです……あと、室内は完全に防音となっておりますので、何かございましたならこちらを」

 

 ナイトマンは懐から出したハンドベルを彼女に手渡す。

 青い宝石が嵌め込まれた代物で、フレデリカ邸にあった物と同じハンドベルだ。

 

 

「当店はサービスで水に紅茶や菓子、その他食事もご用意出来ます。また事後は浴室も使えますので、お気軽に」

 

「…………もはやなんと言うか、一流ホテルですわね。さすがに悪くなりますわ」

 

「その分の料金は頂いておりますのでね。まぁ我々利益より、お客様の満足を重視しておりますから」

 

 本当にお金よりも精気を重視しているので、彼の言葉は社交辞令でもなく事実ではあるが。

 

 

 

「ではそろそろ、私は失礼を……」

 

「あ、ちょっと待って……く、ださる?」

 

「なんでやしょ?」

 

 説明を終えて出て行こうとするナイトマンを、彼女は一度呼び止めた。

 

 

「早速で悪いのですけど、紅茶をご用意してくださりませんこと?」

 

「お安い御用ですとも。スコーンなどもご用意出来ますが?」

 

「うーん……まだ良いですわ。夜になればまたお夜食を頼むかも」

 

「了承致しました……それでは、ごゆるりとお楽しみくださいませませ」

 

 そう言い残してナイトマンは出て行ってしまったから、部屋の中にはイヴニンスと、彼女だけ。

 いつの間にか組んでいたイヴニンスの腕は離れ、ぎこちなく震えていた。

 

 それほどまでに彼女……初めて見る「蟲人」のインパクトが強かったからだ。

 

 

 

 半ば膠着状態のイヴニンスへ、彼女からサッと詰めるように近寄られた。

 思わず一歩だけ後退りしてしまうものの、彼女が伸ばした左の蟲腕がイヴニンスの腰へ回される。

 

 

「っ!」

 

 血が通い、同時に柔らかな肉の腕と違い、彼女のその甲殻で構成された腕は冷たく、硬い。

 先端の爪とも言える部分はデコボコと節が連続して連なっており、背中越しでもその特異な形状が触感で把握出来る。

 

 

「あらあら……もしかして、御ご緊張されていらっしゃる?」

 

「……は、え……ん? ()ご緊張?」

 

「…………丁寧過ぎたかな……」

 

 少しだけ彼女は「やってしまった」と言いたげに苦笑いを浮かべた。

 

 

「あー……ふふ……大丈夫ですわよ」

 

 訝しむイヴニンスの前で、即座に優しく微笑んで取り繕う。

 

 

 

 

「お初にお目にかかりますわ。私、『ララ・ラズリーロ・ララサバル』と申し上げますの……こう見えて蟲人の国の外交官で、メチャクチャなキャリア組ですのよ?」

 

「……メチャクチャ?」

 

「あーもう、また出しちゃった……あ、いや、何でもないわよ?」

 

 薄々イヴニンスも、ララの怪しい言葉遣いに違和感を抱き始めていた。

 だがその違和感のお陰で、幾分か彼女へ抱いていた動揺と恐怖が薄れてくれたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今の二人は揃って、ベッドの横に並んで座っている。

 動揺落ち着いた頃合いで、改めてイヴニンスはララを見た。

 

 

 

 元々腰まで長く、今はベッド上に垂れかかっていた彼女の瑠璃色の髪には、黒い斑点がポツポツとある。

 思えばララの肩甲骨辺りから生えている羽根も、触角に蟲腕と脚も同様の色合いをしており、この瑠璃色に黒い点が彼女のベースと言える体色なのだろう。

 

 そう言った一部の部位を除いた、比較的イヴニンスと同じ人間らしい部分は、普通の皮膚と筋肉で構成されている。

 ウエストの細いトップスが胸から腰にかけて柔らかい曲線美を作っており、履いているスカートもベッドに座った事でびっちりと張り、丸やかな臀部の線を際立たせていた。

 

 今だってイヴニンスの太腿に置かれた手は柔らかく、血の通った温もりがあった。

 

 

 顔立ちも良く見てみれば、少し化粧が濃い気がするものの、整っていて可愛らしい。

 穏やかな目付きと筋の通った鼻、両口角から耳の後ろまで走った亀裂が気になったが、唇は瑞々しく艶やかだ。

 

 

「ねぇねぇ、イヴくん」

 

「……イヴじゃない。イヴニンス・ジャックドー」

 

 落ち着きを取り戻したと同時に、口調もいつもの高慢ちきなものとなる。

 

 

「まぁ? イヴくん、案外素っ気ないのですわね?」

 

「だからイヴニンス・ジャックドーだってば!……素っ気ないと言われても、これが僕だ。嫌なら帰れよ」

 

「いえ全然。嫌だなんてそんな……寧ろそのくらい強気な方が燃えっ……えー……そそると言いますか」

 

「……これからこの問答はもうやめよう……」

 

「帰る・帰れ」からの「大丈夫」も、半ば形式化して来て挨拶のようになって来た。

 

 

 彼女のヒト手*1がイヴニンスの太腿を愛おしそうに撫でる。

 

 

「ど、どこ撫でてるんだよ……」

 

 撫でられた事によるぞわぞわとした感覚に慣れず、イヴニンスはその手を跳ね除けようとした。

 しかし彼女の力は強く、どうしても離せられない。

 

 

「もう、ホントのホントに素っ気ないですわね…………良いじゃない。これからもっと恥ずかしい事、するんだから……♡」

 

「う……」

 

 顔を赤らめて俯くイヴニンス。

 恥じらう彼が可愛かったのか、ララは蟲手でイヴニンスの腰を引っ掛けるようにして掴み、強靭な力で以て引き寄せる。

 

 

「……っ!」

 

 あれよあれよでイヴニンスは、彼女とぴったりくっ付かされた。

 ララの胸が右肩に当たって僅かに潰れる。

 パニアやフレデリカにも同様の事をされた気がするが、なかなか慣れる感触ではない。

 

 

「ほら、もっと寄って……まだ夕方前なんだから……時間はまだまだあるんだし、ゆっくりお話しでもしましょ?」

 

「あ、あまり馴れ馴れしくするなよ……えと……そ、そう言う事をするにしても、これは商売なんだから……」

 

「つれないんですからぁ……♡」

 

 ララの長い長い触角が、蟲腕が、ヒト腕が、イヴニンスを包み込むように伸ばされる。

 更に身体は引き寄せられて密着し、鼻腔に甘い匂いが入って来る。

 

 

「ち、近付き過ぎだって……!」

 

「じゃあお話し、してくれる?」

 

「分かった、分かったから!……で、何の話しをするんだ」

 

「イヴくんの事知りたいなぁ」

 

「…………なんかお前、話し方が丁寧じゃなくなってないか?」

 

「んー……防音っぽいし、もう良いかなって思──」

 

 

 ドアがノックされる。

 一瞬だけララはハッとしたような顔を見せた後、一度咳き込む。

 直後ドアが開かれ、ナイトマンがティーセットをトレイに乗せて現れた。

 

 

「いやぁ、お待たせしましたな。お湯から沸かしてまして、時間かかっちまいました」

 

「……え、えぇ。ありがとうございます、ですわ?」

 

 ナイトマンの前では、強引ながらも口調を穏やかで丁寧なものに変えている。動作もぎこちないが優雅だ。

 それを見てイヴニンスは、察したようにじとりとララを見やる。

 

 

「テーブルに置いておきます」

 

「また御用があればお呼びしますわね?」

 

「えぇ、また」

 

 再びナイトマンは貼り付けたような微笑みと共に退室する。

 ドアの隙間が狭まり、がちゃりと閉まったと同時に、ホッとララは息を吐く。

 

 

「……なぁ。気になっていたんだけど」

 

「な、なに?」

 

「……無理に淑女になってまで世間体を大事にしているんだな」

 

 驚いたように細まっていた目を開く。白眼の真ん中に、ルビーのような瞳があった。

 

 

「……わ、分かっちゃった?」

 

「言葉遣いが怪しいからな」

 

「…………まぁ、そうだよね。この国の社交術とか、殆ど付け焼き刃で覚えたモンだし」

 

「おぉ……」

 

 イヴニンスから身体を離したララは、四本の腕を使って紅茶を淹れ始める。

 さっきまでの穏やかな言動は立ち消え、表情も含めてどこかやさぐれたような雰囲気だ。突然の変化にイヴニンスも困惑の声をあげてしまった。

 

 

 

 

「蟲人の国はね、他と比べて文明のレベル? って言うかが低いって思われててね……いやまぁ、確かに他と比べたらそりゃ、低いかもだけどさぁ。話し合いよりグーで殴る方が好きって感じだし。我ながら思うけど完全に蛮族よ、蛮族」

 

 ヒト手を使用し、二つのカップを持つ。

 

 

「それでも国として生き残る為に、他国と交流しようって事になったんだけど……そうなったら相手の国に合わせなきゃならないじゃない?」

 

 蟲手の先端を巻き付けるようにして掴み、ティーポットで紅茶を注ぐ。

 指ほど自由に動かなさそうなのに器用だなと、横でイヴニンスは関心を持って見ていた。

 

 

「特に獣人の国って見た目とか、社交場での言動とかも厳しくてさぁ……服とか化粧もだけど、獣人は鼻の効く連中だし、匂い付けやら見えないトコも気を遣わなきゃで、モー面倒!」

 

「……そ、そうなんだな」

 

「あ、砂糖は何個?」

 

「……砂糖は入れずに飲むから」

 

「あらあら、大人さんですことわね?……この口調もやっぱおかしいかな」

 

「おかしいな」

 

「やっぱり?」

 

 ティーポットを置くと、また蟲手で角砂糖を取る。

 自分のカップにララは一個、二個……六個ほど角砂糖を放り込む。

 やっぱり蟲らしく甘い物好きなのかと、イヴニンスはちょっとだけ笑いそうになった。

 

 

「外交官ってんで、この国と貿易協定結ぶ為に話し合いしに来たんだけど……協定って言っても完全に主導権はあっちだし、その為には嫌でも獣人側に合わせなきゃならなくてね」

 

「…………」

 

「プライベート以外じゃもう、獣人らしく振る舞うのに必死よ、必死……はぁ。ちょっと他国の事情に詳しいからって外交官にされたけどさぁ……本場は全く知らないって言ったのに……」

 

 足を組み、疲れた顔で、砂糖を溶かした紅茶をスプーンで掻き混ぜる。

 それから砂糖の入っていない方を、イヴニンスに差し出した。

 

 

「あ、ありがと……」

 

「どう致しましてですわ?」

 

「……ですわを使い過ぎ」

 

「やっぱり?……獣人の国じゃ語尾のように使うって聞かされてたのに」

 

「誰からだよ……」

 

 イヴニンスが紅茶を啜ったタイミングで、ララも肘を組んだ足の太腿辺りに乗せ、頬杖を突くような姿勢で啜る。

 

 

「ふぅー……ここに来てから毎日毎日、視察に交渉、諸々の書類も提出しなきゃだし、社交場の参加に本国への報告書の制作、合間合間に社交術を勉強して、それだけじゃなくて獣人貴族との話のタネ作りに小説やら演劇やらも義務で嗜わなきゃだし……朝から晩まで駆けずり回ってる」

 

「…………大変だね」

 

「……それでやっと取れた休日……休日って言っても本当ならその、社交術勉強とか話のタネ作りとか何だけど……」

 

 ぼんやり前を向いていたララが、イヴニンスの方を向いた。

 その表情は疲れ果て、物憂げで、寂しそうだ。

 

 

「……あのナイトマンが来てさ。『どうですか?』って」

 

「…………」

 

「……男娼でも買って、癒されたいなって思ったから……大金出して、本番コースで。聞いたら獣人貴族でも普通に高級男娼は買うって聞いたし、大丈夫だと思うけど……」

 

 彼女の瞳を見てイヴニンスは最初は驚き、次には悟った。

 

 

 

(……こう言う、求め方も……あるんだな)

 

 途端に胸中には、彼女への愛おしさが現れた。

 見た目で慄いていた事が馬鹿らしいと思えるほど、すぐ隣にいるララはとても人間味に溢れていた。

 

 

(……パニアの時もだけど、僕ってこう言うのに弱いのかな……)

 

 溢れる感情と、易々と同情してしまう自分に辟易としながらも、頬を赤らめて目を逸らし、紅茶を飲み干した。

 

 

「…………この部屋は、外とは違う世界だ」

 

「……え?」

 

「だから、この部屋で起きた事は……その……外とは関係ない」

 

 カップをテーブルに置き、イヴニンスはララの蟲腕に自ら触れた。

 驚く彼女の瞳を、心底から恥ずかしそうな顔で見つめた。

 

 

「……この部屋で起きた事、話した事、見せた事は、この部屋だけに残る。外の誰にも知られない──」

 

 

 蟲手を引き寄せて、辿々しい手取りで頬に付ける。

 思えば彼女のその蟲手は、ハートが連なっているようにも見えた。

 

 

 

 

「──好きに、したら良い……よ……僕で、よければ……」

 

 

 

 ララが飲みかけの紅茶を、テーブルに置いた事は確認出来た。

 気付けば四本の腕がイヴニンスを一斉に捕らえていた。

 

 

 肩と腰、足と手を掴まれたまま、ベッドに押し倒される。

 

 しな垂れた触角と髪が彼を覆う。

 

 

 

「……はぇ?」

 

 呆然とするイヴニンスの視線の先、紅潮し感極まった表情と顔のララがいた。

 

 

「……い、イヴくん……い、今の殺し文句……ッ……」

 

 

 

 口角から走っていた亀裂が、じわじわと開く。

 

 白眼が次第に淀んで行き、黒くなって行く。

 

 

 

 亀裂から下の顎がガパリと、降ろされた。

 

 

 

 

 

「……メチャクチャサイコぉお……♡♡♡」

 

 

 

 頬の裏に格納されていた、蟲の大顎が表出する。

 白眼が黒く変色し、元々の赤い瞳をきらきらと際立たせている。

 

 

 羽根を広げ、首をカクカクと動かして、大顎の先をカチカチと合わせていた。

 

 恍惚とするララのその姿はまさに、異形。

 獲物を見つけ、捕まえた、その本性が晒された。

*1
今後の描写にて、蟲人の持つ人間らしい手・腕を「ヒト手・ヒト腕」、蟲らしい方を「蟲手・蟲腕」と表記する。




▼イヴちゃんエロエロ感度累加記録♡
●各部感度
・弱点:脇腹と首筋、更にはお胸も追加!詳しく言うなら前鋸筋がビンビン!
・口:キス中毒寸前のエロエロマウス!頑張ればお口だけでイケそう!
・乳首:すっかり性感帯だね!そりゃ折角乳首付いてんだから、有効的に使わないと勿体ないよね?
・陰茎:出しまくり!!もうこれで一人前の大人チンポだね♡
・お尻:お指で初貫通♡でも大丈夫だよ!指挿れられただけじゃ処女喪失にはならないから!
・前立腺:あ〜らら……知ってしまったねぇ。この快感を……♡

●精神状態
・好きな人:パニアさんと言いララさんと言い、イヴくんってもしかして、苦労人に弱い?
・堕落具合:すっかり性癖壊されちゃったね!これからどんどん堕ちて行こーっ!
・雌雄度数:メスイキを覚えたけど、まだオスだね。


▼ナイトマンダイアリー
●現状の見立て
・イヴニンス氏は、根は優しい人物だ。パニア氏は勿論、フレデリカ氏にもどこか思うところがある風だった。リムバケット姉妹は特殊だけど。ともあれ彼の優しさに漬け込むような客を斡旋すれば、精気はメチャクチャ手に入るハズだ。いやはや、イヴニンス氏がチョロい性格なのが幸いだ、そしてやっぱり子供だ。悪い大人に騙されそうだね。

●今後の指標
・童貞卒業さえしてしまえば、もうこっちのモンだ。ガンガン本番コースを取らせて、ガンガン精気を回収、これに尽きる。地道な営業の成果も出て来て、多くの方々から予約が来ている。諸君、我々の勝利だ。
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