※この作品はR-18です。

男娼少年イヴ -亜人っ娘だらけの異世界で穢され嫐られ毎日-   作:ノーティー・ナイト・ザ・リーアム・クラブ

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実技講習

「そんじゃ座ってくださいな。んで、あたしらの話を良く聞くように」

 

 イヴニンスは椅子に座らされ、ナイトマンから追加の説明を受けていた。

 アーリーはついさっき、どこかへ出掛けてしまった。

 

 

「精気と言うのは、亜人の持つ生命のエネルギーです。これの回収もあたしたちの仕事の一つなんでしてね……それで、パトリック氏の願いを叶える為に消費した分を、二百年後の当主で子孫たるあなたに回収して貰います」

 

「わ、訳分からない……どうして僕が……」

 

「それ、ここに来る前に話しましたよね? 同じ説明は極力しませんので、出来る限り受け入れてくださいな。キチンと払い終えたら元の世界の、連れ去った瞬間の時間に帰しますので」

 

「……帰してくれるのか……?」

 

「ただ帰ったとしても、以降のジャックドー家は我々の支援から外れる事になります。家を維持する為には自力で取り組む必要がありますので、今の内にその覚悟を」

 

「………………」

 

「まぁ一応、『再契約』も可能ですからね。強制はしませんので、気が向いたらまたあたしに聞いてくださいな」

 

 状況がまだ受け入れられず、イヴニンスは呆然自失の様子で俯いたままだ。

 しかし構わずナイトマンは続ける。

 

 

「それで精気を回収する方法は三つ。亜人と交わった上で『長く興奮させる事』、『何度も絶頂させる事』、『心を通わせる事』。一つでも条件さえ満たせば精気を回収できますけど、二つ三つ揃えば更に多くのエネルギーを回収できます。早く帰りたかったら、なるだけそれを意識してくださいな」

 

「ま、待って……えっと……ま、交わるとか、全然意味が分からない……絶頂ってなに?」

 

 比較的ストイックかつ奧手な性格のイヴニンスにとって、半ば現実味のない話だった。

 初恋だって経験した事もない。

 

 ナイトマンは容赦なく続ける。

 

 

「それとそれと。あなたの気絶中に、少し身体を弄りやした」

 

「え? 僕の身体を?」

 

「ちょっとした改造ですよ。今のあなた、普通の食事をしても腹は満たされないようになってます」

 

「……はぁ!?」

 

「あなたの生命の源は、回収した精気です。だから反抗して回収作業を怠ったとしても、最後は餓死してポックリポクポクですんでお気を付けて」

 

「なんて事してくれたんだ!?」

 

「因みにあなたが死んだ場合は、死後のパトリック氏のようにあなたの魂を回収して精気に変えます」

 

「……っ!?」

 

「そんで、更にそれを差し引いた分の負債分は……仕方ないので、あなたのお父様に払って貰います。死んで楽にはさせないんで、お気をつけて」

 

 サラッと残酷な事を言うナイトマンに、イヴニンスは戦慄した。

 見た目こそ人間ではあるが、およそ倫理観や価値観が人間と違う存在だとは悟れる。

 

 

「……人間の魂を回収だとか、異世界だとか……何度も聞いてるが、お前たち何者なんだ……?」

 

「その質問に答えてはならない決まりなんです。とりあえず便宜上、アーリーは『天使』で、あたしは『悪魔』と思ってください。どうしてもって言うなら答えても良いですけど、間違いなく発狂死しますぜ?」

 

「…………今まさに発狂しそうだよ……」

 

「基本的に聞かれた事には正直に答えます。それが『悪魔』ですからね……さて!」

 

 ナイトマンはコート掛けに掛けてあったコートをはおる。

 コートの背には大きく、棘のような物が胸を貫かれているフクロウの刺繍がされていた。

 

 

 何をするのかと首を傾げるイヴニンスに対し、入り口の扉を開けて出るように促す。

 

 

「……どこ行くの」

 

「そりゃ、適当に亜人引っ掛けて交わりに行くんですよ」

 

「無理だって!!」

 

 およそ元の世界では「穢れた行為」とされていた事を、これからやる。

 そんな事をいきなり出来るワケはない。

 

 

「無理もなにも、やらないと餓死ですぜ? 最初はまぁ、失敗するかもですけど、一応交わるだけでも少しばかり精気は回収できますし。これも経験ですよ」

 

「そ、そんな、僕……れ、恋愛だってやった事ないし、そんな事は好きな人とだけしかやりたくないって言うか……」

 

「じゃあ交わった相手全員に恋すりゃいいです。で、終わったら忘れる。そっちの方が多く精気は回収できる」

 

 価値観の違い故、話が通じないとイヴニンスは頭を抱える。

 ただナイトマンもそんな彼の様子を見て、考えを変えたようだ。

 

 

「…………んー、まぁ。そうですな。初めてですもんな。やはり最初は練習でもしなければですかね……」

 

「と言う事は私の出番のようねぇん!」

 

 ババーンと開いた入り口の扉からアーリーが入って来る。

 その手にはパンの入ったペーパーバッグが抱えられていた。

 

 

「あ。やっと買って来てくださりましたか」

 

「はい、今日のエサ」

 

「エサとか言うんじゃないですよ」

 

 パンを受け取ると、ナイトマンはそれをムシャムシャ食べ始めた。

 アーリーがイヴニンスにウィンクしてから、事情を説明する。

 

 

「私や君はもう食事の必要ないんだけどねー? ナイトマンはちゃんと食べなきゃいけないの。不便な奴よね?」

 

「これが悪魔の宿命です」

 

「さぁさぁ、それよりさぁ! 今、練習が必要とか言わなかった!? いや言ってた!!」

 

 目を爛々と光らせ、アーリーはイヴニンスに迫る。

 ガッと椅子の背凭れを掴んで、腕の中にイヴニンスをホールドする。驚いた彼はすっかり膠着していた。

 

 

「れ、練習って……あの、本当に言って……!?」

 

「アンタとヤったって精気は出ないじゃないですか。無駄交尾ですよ」

 

「無駄交尾言うな。練習ぐらいならいいでしょでしょ? 本番はしないし、そこまで穢さないから!!」

 

「必死過ぎでは」

 

 またアーリーから甘い匂いが漂い始める。

 危険だと判断するも、一度嗅ぎつけてしまったのならどうやっても止められなかった。

 

 頭がぼんやりし、動けなくなり、身体が熱くなる。

 また腹の底からギューっと、何かが迫り上がるような熱さを覚えた。

 それに驚き、お腹に拳を押し付ける。その行為さえ、アーリーを滾らせた。

 

 

「はぁ……♡ まだ性欲の発散方法とか分からない系男子……?」

 

「い、い……言ってる意味の方が分からないって……!」

 

「本当は私が筆下ろしたいんだけど……ナイトマンが怒るしなぁ〜……」

 

「そりゃそうだ。初めてってだけで精気は多く取れる。無駄交尾でオジャンにしてたまりますかい」

 

 ギロッと流し目で、恨みがましく睨むアーリー。

 ナイトマンはパンを頬張りながら開けっ放しの扉を閉め、そこに背を預けて立っていた。

 

 

「……え。出てけよ」

 

「暴走しないか監視します。本番なし、キスなし、タッチだけ、ただし性器はノータッチ」

 

「…………四面四角め」

 

「三面六臂の間違いですぜ」

 

 舌打ちをした後、再度イヴニンスへ向き直る。

 彼女から発せられる淫気に当てられ、目はとろんとし、頬も紅潮している。頭も、首が据わっていない赤子のようにふらふらしている。

 幼さを残しながらも、顔立ちの良いイヴニンス。夢心地にいる彼の姿は、とてもコケティッシュだ。

 

 

「へぇ……イヴちゃんエロいじゃん……」

 

「い……イヴって……言うな……」

 

「あー……イヴだと女の子っぽいもんね。でもいいじゃん、イヴで。今のあなた、そこらの女よりもゲロエロよ……?」

 

「もっとムードある語彙を心掛けてくださいよ」

 

 小言を挟むナイトマンに向かって、被っていたハットを投げ付ける。

 あまりに綺麗な所作で投げるものなので、つい目で追ってしまったイヴニンス。

 

 

「はーい、余所見げんきーん!」」

 

 ふらふらするイヴニンスの頬を両手で挟み、自分の方へ向けさせる。

 蛇の目を持つアーリーに見つめられた彼は、さしずめ捕食者の前で怯む獲物のようだ。

 

 

「……ねぇねぇ。聞きたいんだけどさ〜?」

 

 頬から首筋へとアーリーの手が流れる。

 びくりと、イヴニンスは身体を跳ねさせた。

 

 

「イヴにとって『交わる』って、どう言う行為の事なのかなぁ?」

 

「……え?」

 

「ほらほら〜、言ってみて?『交わる』って、どんな事しなきゃいけないの〜?」

 

 真っ赤になりながらも、覚束ない思考で答える。

 

 まずはアーリーの唇に目が行く。

 病的なほどに白い肌の中で、その唇だけが瑞々しい薄紅色だ。

 口角も挑発的に吊り上がっており、妖艶さを醸し出している。

 

 イヴニンスは生唾を飲んでから、素直に答えた。

 

 

「……き、キスする事……と……」

 

「キスして、それから?」

 

 首筋にあったアーリーの手が、彼の肩を掴む。これで逃げられないだろう。

 

 

「そ、それから……」

 

 アーリーの唇から視線が下がる。

 肩を掴み、前屈みになって迫っているアーリー。ブラウスの胸元が弛み、ちらりと肌が見えた。

 その先にある膨れた、女性の象徴。

 見るな見るなと理性が叫ぶが、ついつい目がそこへ向いてしまう。

 

 そんなイヴニンスの視線を知ってから知らずか、アーリーは更にグイッと前のめりに寄り、胸元を見せ付ける。

 

 

「それから……なあに?」

 

「…………か、身体に、触る事……」

 

「……あは♡ 触る事って、例えばどこを?」

 

「………………」

 

「んー? どこ見てるのかなぁ〜? やっぱ男の子は女の子の大きなお胸が気になるのかな〜?」

 

 イヴニンスは暫く黙った後、アーリーの目を見て言った。

 

 

 

「……母上の方が大きい……」

 

「………………」

 

「ブフッ!!」

 

 彼女の背後で吹き出すナイトマン。

 イヴニンスの眼前に不機嫌顔になったアーリーは、そのまま再びぎろりとナイトマンを睨んだ。

 

 

「失礼しやした……いえ。まぁ、別に大きさだけが全てじゃないですからね。えぇ。推定Aカップのアーリーさんでも、やはり好ましく思う殿方はいらっしゃると思われますから、気にしない方が良いと思います故」

 

「ごめんねイヴちゃん。ちょっとあいつボコボコにして来るから」

 

「オウマイゴッド」

 

 キレたアーリーがパッと背を向け、ナイトマンの方へ行く。

 

 その際に彼女が上着として着用していたジャケットの背後が見える。

 背中に大きく、棘のようなものが生えた、三つ目の小鳥が刺繍されていた。

 

 更にアーリーが身を翻した際に浮き上がった、スカートの向こうにある生足も。 

 

 

 イヴニンスのその視線に気付いたナイトマンが、怒り心頭のアーリーに耳打ち。

 

 

「落ち着いてくださいな、良い事教えますから」

 

「その前にゴミデリカシーのヒョロガリクズ男をボコボコにしたいんだけどなー?」

 

「イヴニンス氏は足フェチの素質があります」

 

「…………なんですって?」

 

 立ち止まり、横顔だけをイヴニンスに向ける。

 確かに彼は一瞬見えたアーリーの生足へ、名残惜しそうな目付きを注いでいた。

 

 

「イヴニンス氏の世界はですね? 胸元を曝け出すよりも、足を出す事の方がモラルに反してたんです。ほら、思い出してくださいよ……あっちの世界、お姫様とかお嬢様とか、凄い胸元出ている服の割にみーんな、地面スレスレまでのロングスカートだったじゃないですか」

 

「………………」

 

「だから彼にとって、胸元よりも生足の方が耐性がなく、破壊力満点ですぜ」

 

「…………いいわ。ボコボコにするのは明日にしてあげる」

 

「あ、ボコボコにはされるんですね」

 

 クルッと踵を返し、イヴニンスへ向き直るアーリー。

 スカートの裾を摘み、パッと引き上げ、膝の辺りまで晒してやる。

 

 

「……っ!?」

 

 白く長くすらりとした、形の良い人形のような足がイヴニンスの目を奪う。

 面白いように顔を赤らめ、もじもじと反応する彼を見て、「あはっ♡」とアーリーは笑った。

 

 

「……へー。へぇ〜〜?」

 

 すぐにアーリーは部屋の隅にあった椅子を一脚運び、イヴニンスと向かい合わせになるよう置く。

 その上に座った彼女はサンダルを脱ぎ、スカートを捲って太腿まで晒し、両足を上げた。

 

 

「え……!?」

 

 一本は、驚くイヴニンスの太腿の上に乗せ、もう一本は彼の顔の前でゆらゆらさせる。

 

 

「な……あ……!?」

 

 アーリーの足は細く長いが、その先に繋がる太腿は健康的かつ、艶かしく膨れている。

 その先は股へと続くものの、帳を下ろしたスカートが隠してしまっていた。それがまたもどかしい。

 

 

「……ほぉ〜ら。イヴちゃんの見たかった、私様のおみ足だぞ〜?」

 

 イヴニンスの太腿に乗った左足が、つーっと彼の腹の下まで伸びる。

 木目の細かい白足は、陽光でてらてらと輝いて見えた。

 

 だが左足ばかりも見ていられない。

 顔の前で揺らされていた右足の甲が、イヴニンスの頬を、頬肉を少し引っ張る程度まで強く撫でた。

 

 

「んぅ……」

 

 すべすべとしていて、心地が良い。

 アーリーの淫気に当てられている事もあり、されるがままに受け入れていた。

 

 

「あっは♡ かわいっ♡ お目めトローンで足見ちゃって……あれあれ? 自分からほっぺたスリスリしてな〜い?」

 

「…………っ!」

 

 ハッと、なけなしの理性が働く。

 自分は名門貴族の、こんな事になってはしまったが、現当主だ。

 足で撫でられると言う、屈辱的でモラルのない事に身体を預けて良いのか……と、今更ながら逡巡する。

 

 

「や……やめろよ……!」

 

 ぷいと顔を背け、アーリーの両足を払う。

 

 

「僕に足を向けるな……!」

 

「んーー? あれー? まぁーーだプライド残ってる系?」

 

「ここまで気高いとは恐れ入りますな。まぁでも、催眠自体は十分効いているっぽいので、時が来れば大丈夫かと」

 

「は……え……さ、催眠だと……!?」

 

 ナイトマンは「あ、言ってなかったな」と言いたげな表情を見せた。

 

 

「あなたこの世界に来てから我々の命令を受け入れてくださってますよね。窓の外を見て〜とか、椅子に座って〜とか、話を聞くように〜、とか。今だってずーっと、律儀に椅子に座りなすって逃げようともしない」

 

「…………あ……!」

 

「無駄な反抗をされないよう、『相手の言う事を聞く』『相手の行為に成すがままにされる』ように催眠も施してます」

 

「…………お前ら……ぼ、僕の身体を弄びやがって……!」

 

「これも効率良い精気回収を実現するが故です」

 

「ふざけ……んぁっ!?」

 

 左足の爪先が、イヴニンスの股ぐらを撫で上げた。

 突然の刺激と快感に、声を上げて身体が跳ねる。アーリーがニタニタ笑っていた。

 

 

「おーい。お姉さんさっきさー? 余所見厳禁って言わなかったっけ? んー?」

 

「い、言うなよぉ……!」

 

 淫気と、説明にあった催眠術のせいか、イヴニンスの視線は再びアーリーへ向けられさせる。

 今度はぺたりと、彼女のぷにっとした足裏が頬に引っ付く。

 

 

「ほれほれ。認めちゃえ〜♡ 自分は、お姉さんの足が大好きです〜って」

 

「ん……ふ……ぜ、全然、大好きじゃない……って……!」

 

「でへへ〜! そうは言うけど、自分から私の足の裏に顔スリスリさせてんじゃんじゃん?」

 

「さい……催眠の……せい……!」

 

「うっはぁ!! 破壊力最高っ!! 身体正直にさせて性格は強情のままとか、私にとったらアリなんだけどね?」

 

「だまれよぉ……あぇっ!?」

 

 唐突に、イヴニンスの口元と頬を挟むように、アーリーの足の親指が差し込まれた。

 そのまま口角を引かれ、口内を見せびらかされる。

 

 歪んだ表情、紅潮した顔、悔しさを滲ませた瞳に、開け放たれた口。

 今のイヴニンスの姿は、アーリーの嗜虐心を煽るのに十分過ぎる破壊力があった。

 

 

「うわぁ〜、エっっロ……きゃ〜、歯も真っ白でキレ〜……もっと開けさせてやれ、えいっ!」

 

「ふあ……!?」

 

「うわうわうわ……口の中あったかい……ヨダレでテラテラ……舌も舌苔(ぜったい)すらなくて真っピンク……あ。のどちんこ……エロ」

 

「ぉぇ……!」

 

「あ、えずいた……ガチエロじゃんよ……ねぇねぇ。私の足をさ、舐めてみてよ」

 

 左足で股ぐらを撫でながら、「舐めろ」と右足の指を口の中へ差し込む。

 屈辱的で、あまりにも情けない光景。なのに身体はアーリーの足へ執着する。

 

 

「んぷ……」

 

「……! うおわわわ! 舐めた舐めた!! 舐めたよこの子っ!! 足指フェラじゃん!?」

 

「ふーっ……んふ……ん……」

 

 鋭さのあった視線も、熱っぽいものへと変わる。

 今のイヴニンスは、彼女の奴隷とも言える状態にまで発情していた。

 

 そんな彼の魅力に、アーリーが影響される。

 息を荒くし、身体は前のめり。目も爛々と光っていた。自身の股ぐらに両手を挟んで、もじもじとしている。

 

 舐められてくすぐったい感覚が、更に興奮を掻き立てる。

 

 

「はぁ……♡ はぁ……♡ もう無理……♡ 子宮がこの子求めてんですけど……♡」

 

「……んぇ?」

 

「もうコレ駄目でしょ? 喰わなきゃ駄目でしょこんなの? 寧ろ、喰って嫐って穢してあげなきゃ失礼だよね♡」

 

 アーリーの両足が離れる。

 名残惜しそうにそれを目で追っていたイヴニンスだが、ギンギンに目を見開いたアーリーを見て理性を取り戻す。

 今にも飛びかかりそうな彼女を見て、生理的な恐怖を感じた。

 

 

「ひっ……!?」

 

「はぁ……♡ お姉さんが本当のエッチを教えてあげるからね、イヴちゃん……!!」

 

「あ……ま……待って……!? え、えっちって、もうやったじゃん……!?」

 

「待たなぁぁーーいっ!!」

 

 椅子を倒して立ち上がり、萎縮するイヴニンスに飛びかかろうとするアーリー。

 寸前でナイトマンが、彼女を裸締めで拘束して止めた。

 

 

「ぐぇ!?」

 

「この、バカ脳内真っピンククソザコ理性の駄惰堕(ダダダ)天使がッ!!」

 

「さ、先っぽだけだってぇ……!」

 

「先も後もねぇですっての!……うおーー!?」

 

 アーリーもまた全力で抵抗し、二人はそのまま床の上をバタバタ取っ組み合う。

 イヴニンスはポカンと、その様を椅子の上で膝を抱えながら、眺めているしかない。

 

 その間もチラリと伺える生足を目で追ってしまい、自分で自分が悔しくなってしまった。

 

 

 取っ組み合いは五分続き、ナイトマンの裸締めを抜け出せなかったアーリーが根をあげて終わった。

 しかしあれほど首が締まっていたと言うのに、アーリーの喉はまるで潰れていないようだ。

 

 

「……分かった……分かったよもうっ!! もう落ち着いたから離れろ!」

 

「ホントなんですね!? 今度また襲ったら、最後の審判までやり合いますからな!」

 

「どんな覚悟なのさー!?」

 

 言質を取ったナイトマンは、やっとアーリーを解放する。

 二人は呼吸と服装を整えながら、ゆっくり立ち上がった。

 一瞬だけ切なげな視線を、アーリーがイヴニンスに向けたものの、約束通り手出しはしなかった。

 

 

「……よし……いやぁ。お見苦しいものをお見せしてしまいました。申し訳ございません、イヴニンス様。以後ないようにします」

 

「……ガチガチ石頭の腐れ性根な偏屈ボケボケ悪魔め……」

 

「まぁアンタのおかげで、イヴニンス氏の性的嗜好や性知識の程度を知れたのでヨシとしましょ」

 

「あ、アレは催眠のせいだからな!?」

 

 顔真っ赤で否定するイヴニンス。

 そんな彼を無視してナイトマンは質問する。

 

 

「それでイヴニンス氏……イヴニンス氏にとってエッチとは、キスと、身体に触る事と……他には?」

 

「他? 他だと?」

 

「えぇ。他ですよ。その先」

 

「……その先なんてないだろ。キスも、か、身体に触るのも……恋人同士しかしちゃ駄目だし……」

 

 可愛い返答に、アーリーが「んんっ!」と声を出す。

 それを目で窘めた後、ナイトマンはまたイヴニンスと視線を合わせた。

 

 

「自慰のご経験は」

 

「じ、じー?」

 

「別名オナニー、マスターベーション、マス掻きの事です。シコるとか、ズリとかも言うかな?」

 

「知らないよそんなの……なに? やる事?」

 

「年齢的に精通はしているはずなんですがねぇ……んじゃあ、赤ちゃんはどこから来るか知ってます?」

 

「は、母親のお腹の中から……親類が多くて、良く出産祝いにも行くから……それは知ってる」

 

「さすがにコウノトリ云々を信じる歳じゃねぇですか……では、どうやってお腹の中に赤ちゃんが宿るか、とかは?」

 

「…………えっと……だからそれは……キス、したり、身体に、触ったり……じゃ、ないのか?」

 

「オーケーオーケー、なるほどなるほど。ここまで純真無垢だとは思わなかった」

 

 アーリーがナイトマンを引っ張って、少しイヴニンスから離れた箇所で相談を持ちかける。

 

 

「や、やっぱりさ……ここは私がキッチリ教えてあげた方がいいんじゃないじゃん!?」

 

「だから精気も取れない無駄交尾はしたくねぇですっての」

 

「あの子性欲ムラムラなのに性器触らなかったし、筋金入りの無垢だと思うんだけどケド!?」

 

「こりゃ『初めての相手』のチョイスミスっちまいましたら、トラウマ与えてしまうやもしれませんなぁ」

 

「この世界の女たち、全員超絶肉食系じゃなかった?」

 

「……それで性行為に億劫になられりゃ、精気も上手く回収できませんぜ」

 

「だから私が慣らしてあげんじゃん!」

 

「そのチョイスミスの筆頭こそアンタなんですよ」

 

 仕方ないと首を振り、ナイトマンはアーリーを押し退けてイヴニンスの前まで行く。

 警戒する彼の前でしゃがみ込み、目線を合わせた。

 

 

「分かりました。最初はこちらで、出来るだけ甘々でラブラブな感じの人を探します」

 

「あ、甘々で、ラブラブ……?」

 

「とりあえずここから移動しましょう。我々の活動拠点に行きますよ」

 

「……ここじゃなかったのか?」

 

「転移先がこの宿だったってだけですな」

 

 そう言った彼はベッドに近寄り、その下から大きなスーツケースを引き出す。

 スーツケースを開き、中から厚手のコートを取るとイヴニンスに手渡した。更にキャスケットを取り出し、それを頭に被せる。

 

 

「な、なんだこの服と帽子……!? 凄い着心地……」

 

「イヴニンス氏の世界にはない技術と繊維が使われておりますからね」

 

「へ、へぇ…………これ、作れたらかなりの利益になるな」

 

「出来るだけ肌は隠すように。イヴニンス氏のような方は秒で襲われますからね」

 

「襲われる……どの世界にも人攫いや盗賊はいるんだな」

 

「いや盗賊じゃなくて逆レイプ魔と言うか……人攫いはいますけどね」

 

「なん……なんだって?」

 

「個人的には、精気を集める為なら逆レもいいかな〜とか思ってますので。襲われたかったらご自由に」

 

「その、ぎゃくれ、ってなんだ!?」

 

「仮にそうなっても、あなたが死ぬ前には助けますんで。ご安心を」

 

「安心できないよ!」

 

 アーリーはハットを被り、ナイトマンはシルクハットを被る。

 脱いだサンダルを履き直すアーリーの隣で、スーツケースを持ち上げるナイトマン。

 

 

「……では、行きますか?」

 

「イキましょう!」

 

「………………」

 

 先に出て行く二人を、不信がった目で睨むイヴニンス。

 廊下に出たアーリーがひょっこりと顔を出し、指をクイクイッと動かす。

 

 

「付いて来なさい?」

 

 嫌なのに身体が動き出す。

 影響下にある自分を最大限に呪いながら、イヴニンスも部屋を出て、扉を閉める。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 派手な看板が立てられたメインストリートでは、蜥蜴車の往来が止む事はない。

 駅や中央銀行にほど近いこの街は、人の流れも多く、非常に発達していた。

 高級商店、劇場やパブ、クラブハウスやホテルが立ち並ぶ、この都市一番の娯楽街である。

 

 

 ナイトマンらがいるのは、その街のほぼ中心部。赤煉瓦のオフィスビルの一室。

 彼らがここに到着した頃には、何かの工事の仕上げ中だった。

 

 現場を作業員(亜人娘)らが縦横する。

 その途中、ナイトマンらともすれ違ったりもした。

 

 

 しかしやけにすれ違う事が多い。手持ち無沙汰のまま、彼らの近くをウロウロする者もいる。

 そして各々持っている犬や猫などの獣耳や尻尾が、忙しなくぴこぴこ動いていた。

 

 どうやらアーリーと共に廊下で待つ、イヴニンスを見に来ているようだ。

 一斉に浴びせられる熱視線を受け、イヴニンスは帽子を目深に被って俯いている。

 

 

 

 二人の手前では、ナイトマンが支払いや権利などの手続きをしていた。

 まずは工事を請け負った建設会社の、犬耳女性社員との交渉。その社員はナイトマンに縋り付き、イヴニンスをギラギラ見ていた。

 

 

「四千万か……うわ、結構高かったですね。今、小切手切りますねー」

 

「ハァ……ハァ……あ、あの……半額にしますからあの子と寝かせてください……めちゃくちゃにしたいです……」

 

「小切手切りますんで」

 

「寝るだけですぅ……な、なんなら添い寝一時間ぐらいでいいですからぁ……」

 

「小切手切りました」

 

「工事費タダにしますからぁ……! 後生ですぅ……!!」

 

「小切手です」

 

 小切手を押し付け、社員は耳を垂らしながら渋々それを受け取った。

 

 次にこのオフィスの、猫耳女オーナー。

 会った時は凛々しかったが、今は荒い呼吸と血眼の危ない様子でイヴニンスをギンギンに見ていた。

 

 

「さすがは一等地のオフィス、値段も桁違いですな。とりあえず向こう……うん。一年分の代金で小切手切りますねー」

 

「ふぅーッ、ふぅーッ……!!……ねぇ。あの子をぐちゃぐちゃに抱かせて貰えないかしら……ッ!?」

 

「小切手切りますんで」

 

「わ、わ、分かった! 一年……いや五十年分タダにするからッ!!」

 

「小切手切りました」

 

「このビルの権利書でどうッ!?」

 

「小切手です」

 

 小切手を押し付け、オーナーはそれを握り潰さんばかりに嫌々受け取った。

 

 

 支払いとリフォームが済み、やっと三人は中に入れる。

 名残惜しそうに廊下の角から覗く、作業員や社員、オーナーらの姿は無視された。

 

 玄関ホールに入ってから、ハットを脱ぎつつアーリーがナイトマンに聞く。

 

 

「せっかくタダにしてくれるんだからさぁ? イヴちゃん貸したげて良かったんじゃないのー?」

 

「あの人たちは駄目ですよ。独り身拗らせた亜人娘ほど恐ろしいものはない。下手すりゃ死にますぜイヴニンス氏」

 

「まぁ、お金なんて幾らでもあるし、いっか」

 

「あくまで我々の目的は精気ですから」

 

 そう言ってシルクハットを脱ぎつつ、チラリとイヴニンスを見るナイトマン。

 イヴニンスは溜め息と一緒に帽子を取っている。亜人娘らの視線から逃れられ、安堵したようだ。

 

 

「道行く人もみんな僕の事見てたぞ……」

 

「獣人は匂いに敏感ですからね。なんと匂いで年齢と性別、更には童貞か否かも分かるそうですから。つまりイヴニンス氏の匂いは、亜人にとってえげつないほど良い香りって事なんでしょうな……んー。何か匂いを誤魔化す物でも用意しますか」

 

「なんか、若い人ばっかだった……」

 

「基本的に亜人はイヴニンス氏ら人間の二倍ほどの寿命ですからね。龍人族はもっと長いんですけど。だから若い見た目と言うより、若い時期が長いんです。人間年齢四十代すなわち亜人年齢二十代と言えば分かります?」

 

「亜人じゃない僕らがいても怪しまれない?」

 

「認識阻害をアーリーさんがかけてくれていますからね。まぁでも音とか匂いは誤魔化せないんで、過信しないように」

 

「…………僕だけ見られてたのはその、匂いのせいなの? あの天使とお前は眼中にないって様子だったけど」

 

「その質問は答えにくいですな。とりあえず、『天使と悪魔だから』って言っておきます……まぁ言うなれば、世界の(ことわり)とやらから外れられるんですよ我々って」

 

 オフィス内には様々な部屋があった。

 事務所と思われる部屋の他、風呂やトイレまで完備してある。仕事場と言うよりも家のようだ。

 アーリーは部屋を見て回りながら、感心したように手を叩いていた。

 

 

「うわー! 何でもあんじゃん! 今日この世界来たばっかなのに、いつから用意してたの?」

 

「事前視察はお手のものですぜ」

 

「真面目だなぁ〜ナイトマンは! あなたが百二十年若かったら抱いてやってたよ!」

 

「セクハラすんじゃないですよアンタ」

 

 ナイトマンとアーリーが荷物を片付けいる間に、イヴニンスは室内を見て回っていた。

 水洗式のトイレが彼なりに驚きだったようで、何度も何度も引き鎖を引いては水を流していた。

 

 

「……凄い。ど、どうやっているんだ……?」

 

「こらこら、無駄に流さない流さない! あなたの世界よりも水は潤沢とは言え、使う毎に金がかかるようになってんですよ!」

 

 ナイトマンに止められトイレを追い出された先で、アーリーが別の部屋の前でちょいちょいと手招きしていた。

 卑猥な事をされまいかと躊躇するイヴニンスだが、彼女は強引に腕を引っ張って部屋の中を見せる。

 

 その部屋の窓には全て、分厚い黒のカーテンがかけられていた。

 壁紙の色はヴァイオレット。部屋の中心部には天蓋付きのキングベッドが設置され、テーブルの上にはお洒落な細工の香炉と、銀細工のオイルランプが置かれている。あとはコート掛けと、普通のクローゼットくらいだ。

 

 少し雰囲気は暗いものの、豪奢な寝室くらいにしか見えない。

 

 

「……普通の寝室じゃないか。ベッドが広過ぎる気がするが……」

 

「そだね〜、普通の寝室だね〜……ふふふ……ここが君の仕事場になるんだから、今の内に良く確認しといた方がいいと思うよ?」

 

「し、仕事場?……い、いかがわしい事する場所……って事か……?」

 

「あ、恥ずかしがってる。エロかわ……よし。お姉さんとベッド、行こっか」

 

 背後にいつの間にか立っていたナイトマンが咳払いする。

 アーリーは「ジョークだから」と言うが、その目は恨みがましそうだ。

 

 

 そのまま三人は事務所へ向かう。

 用意された紅茶を飲みながら、各々ソファや椅子に腰掛けていた。

 ナイトマンとアーリーは寛いでいるものの、とてもイヴニンスは落ち着ける様子にない。

 

 

「……では、イヴニンス氏に注意事項を……基本的に外出は日中のみで、午後十七時までを門限とします」

 

「まぁ、時間については気にしなくていいよ〜。その時間になったら私が迎えに行くから!」

 

「あなたがどこにいるのかは把握しておりますので。でもまぁ、あまり遠くには行かないでくださいな」

 

 朝と昼は自由で、夜はいかがしい事をする時間と言う事だ。

 そう考えると恥ずかしくなってしまい、イヴニンスは俯く。

 

 

「門限までなら、基本的に勝手に出歩いて貰って結構ですけど、治安の悪い場所とかひと気のない場所だと襲われかねないので注意です」

 

「幼気な少年を無理やりとか最低よねー?…………気持ちは分かるけどさ〜?」

 

「まぁそうなっても精気は回収出来るのでね。注意とは言いましたけど、襲われるだけ襲われて結構です」

 

「………………」

 

 どうやら盗賊や人攫いの類ではなさそうだと、イヴニンスはやっと察する事ができた。

 

 

「こんな感じですかねー。仕事関連と精気回収は、このナイトマンが請け負います故」

 

「私の役目は君の監視とか健康管理。病気とか怪我とかも私がチョチョイと治すから、調子悪かったら言ってね!」

 

 そこまで説明を終えた後、二人は紅茶を飲み干してから立ち上がる。

 

 

「じゃっ、私たちは色々確認してくるからさ。君はゆっくりしててよ、イ〜ヴちゃん!」

 

「……イヴちゃんはやめろって」

 

「ではまた。何かあったら申し付けてくださいな、イヴニンス氏?」

 

 二人は部屋を出て行き、バタンと扉が閉まる。

 一人残されたイヴニンス。用意された紅茶を飲む気にはなれず、テーブルの上に置く。湯気が宙で踊った。

 

 ここまで怒涛の連続だ。

 静かになった途端、疲れと眠気がどっと襲って来る。

 耐え切れなくなったイヴニンスは、ソファの上で横になった。

 

 

 

「………………」

 

 ぽつりと、決意を溢す。

 

 

「……ジャックドー家は僕が護ります。父上、母上……」

 

 これからの不安と、当主としての責任感を抱きながら、深呼吸の後に瞳を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肩を叩かれ、目を覚ます。

 ハッと起き上がると、ナイトマンの姿があった。彼の背後にある窓の外を見て、夕方になっている事に気付いた。

 飲まないまま放置した紅茶も、冷め切ってしまって湯気が出ていない。

 

 

「……結構、寝ちゃってた」

 

「ブランケットでもご用意しとくべきでしたな。すいませんね、ちょいアレからバタバタしてましたんで」

 

「……それで。僕に何か用か?」

 

「そりゃもう、用があるから起こしたんです」

 

 

 ニタリと笑い、ナイトマンは懐から手帳を取り出し、中を確認しながら告げる。

 

 

 

「……仕事の時間ですぜ?」

 

 イヴニンスの顔が少し赤くなった。

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