※この作品はR-18です。

男娼少年イヴ -亜人っ娘だらけの異世界で穢され嫐られ毎日-   作:ノーティー・ナイト・ザ・リーアム・クラブ

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→作品の進捗とハーメルン様外での活動の報告、またリクエストの受け付けなどはツイッター上で行っております。

※GL描写あり


ひと仕事終えてもまた仕事は来る

 帰りの蜥蜴車の中、ナイトマンはイヴニンスをちらりと見た。

 彼は服の胸元を引っ張っている。

 

 

「……服に擦れて気になるんですかね?」

 

「し、仕方ないだろ!……さんざ弄られたせいだから……ヒリヒリするんだよ」

 

「首のところも派手に噛まれましたなぁ。獣人のイヌ型……特に狼系のアプローチは何によらず激しいと聞きますからなぁ」

 

「…………」

 

 歯型を隠すように手で撫でる。

 指が触れるとピリッと痛んだ。

 

 

「……変な女だった」

 

「変と言いますか、面白い経歴をお持ちでしたな。小説にしたいほどですよ」

 

「……やっぱりお前、あの女の過去とか人となりを知ってたんだな……」

 

「えぇ、そりゃもう。おかげさまで結構な精気が回収できそうですよ……あなたがキチンと風呂に入ればね」

 

 不機嫌そうにそう言うと、窓のカーテンを少し開けて朝の街を眺め出す。

 その隣でイヴニンスは考え込む仕草の後、フレデリカの事を話し始めた。

 

 

「……アレは相当拗らせているよ。『思い出すから花は置いてない』とか言いながら、屋敷は花を模した装飾ばかりだ……忘れたい忘れたい言いつつ、本当は忘れたくないんだろな。だから好きだった男と似た男を求めているんだ」

 

「ほぉ〜。良い分析ですな。ジャックドー家が没落しても、カウンセラーとして食って行けますよ」

 

「没落なんかするかっ!」

 

「しかしフレデリカ氏の褒められる点は、取り戻しに走らないところですな。そのせいで己がおかしくなったとしても、好きだった人が不幸になる事はしないところ。そのおかげで『華麗なるギャツビー*1』のような末路は回避している訳ですな」

 

「誰だよギャツビーって……」

 

「あたしが知る中で最も一途にして、最も哀れな男ですよ、友よ……ひっひっひっ」

 

 底冷えするようなナイトマンの引き笑いと同時に、蜥蜴車は停まる。

 オフィスに到着したようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋内に戻ってすぐアーリーに身体の傷を治して貰い、すぐに浴室へ放り込まれた。

 既に浴槽にお湯が張られていたが、昨日と違ってキチンと沸かしたてのようで、湯気が立ち上っている。

 

 

「…………気は乗らないが、あいつを見境なくさせたら僕が酷い目に遭うからな……」

 

 念を押されてナイトマンから言われた通り、十分から二十分ほど浸かる事に決めた。

 イヴニンスはいそいそと服を脱ぐ。

 

 

「……うっ……」

 

 露出された乳首はピンと勃ち、微かに赫みがかっている。

 意識してしまうと外気の中の微かな風でもムズムズと感じてしまう。

 

 

「くっ……! あ、あの女とメイドたちめ……っ!……次会ったら絶対に蹴飛ばしてやる……!」

 

 煩悩を鎮めようと、すぐさまイヴニンスはお湯に浸かる。

 浴槽底面の滑らかなカーブに身体を乗せ、肩まで沈めた。

 

 神経が昂っていたせいか、お湯の中の感覚がとても心地良く、息を吐いて落ち着けた。

 

 

「ふぅ…………へぇ。お湯に入るだけでこんな安まるんだな……」

 

 軽く伸びをして、深呼吸。

 それから顔や髪を濡らして洗ったり、入浴を満喫する。

 

 ナイトマン曰く、自身の身体に溜まった精気が水に溶けんでいるとの事だが、変わった様子は伺えない。

 空気のように、肉眼では捉えられないものなのかもしれない。

 

 

「……んふふ…… 癖になりそう……」

 

 ともあれお湯の温度が良い具合な事もあり、イヴニンスは風呂を気に入ったようだ。

 

 

 

 

 そろそろ十分は超えただろうと、浴槽から立ち上がった。

 ちらりと胸を確認。乳首からはまだじんじんとした感覚が残っており、のぼせとは違う赤面を見せた。

 

 

「……うぅ……な、なんで治らないんだよ……」

 

 スッと薄い胸板を撫でる。

 ふと、馬乗りになったカーリオの顔が想起された。

 

 

「んんっ!……駄目だ駄目だ。思い出したらドツボだぞ……」

 

 乱された心を落ち着けるべく、浴槽の縁に腰を置き、足だけお湯に浸けた状態で深呼吸する。

 ただリラックスすればするほど、余計な事と言うのは面白いように湧き出てくるものだ。

 

 フレデリカとルイスの囁き声が頭に巡り、ぞくりと背筋に悪寒が走る。

 すると次は、ウィルズに触られたり舐められたりした感覚がペニスに現れた。思わずびくりと身体が跳ねる。

 

 

(……あ、あれ何だったんだ……アソコって、弄るとあんなに……)

 

 次に悪戯な笑みを浮かべながら、自身のペニスを扱くカーリオの姿が想起される。

 更には絶頂と共に胸へ何か白い液体をかけて来た姿も。

 

 お腹の奥が熱くなって来て、意思を無視してイヴニンスのペニスが勃つ。

 それをイヴニンスは、ぼーっと見ていた。

 

 

(……カーリオと、シュミーズの裾のせいで何があったか分からないけど……排尿に似た感覚があって……もしかして僕もあの、白い……何かを出せるのかな……)

 

 ゆっくり、恐る恐ると、勃ちきったペニスへと右手が伸びる。

 もう片方は、ぷっくりとした乳首の方へ。

 

 

 

 同時に触れようかとした時、ノック音が響いた。

 驚き、サッと両手を引く。

 

 ドアを叩いたのは、アーリーだった。

 

 

「イヴくーん! もう二十分越しちゃうよー! あまり精気流し過ぎると、イヴくんの栄養分もなくなっちゃうから気を付けてねー!」

 

「!?!?」

 

 それを聞いて大急ぎで浴槽から出た。

 用意されていたタオルで身体を拭きながら、ドアの向こうのアーリーに対して怒る。

 

 

「そ、それを先言いなよ!? 危うく餓死するとこだったじゃないか!!」

 

「ごめーんねっ♡ それよりお姉ちゃんが身体拭いてあげよっか!?」

 

「自分でやれるっての!」

 

「えー? いけずーっ!」

 

 用意されていた服に着替え、火照る顔を手で仰ぎながら浴室を出る。

 悶々とした気持ちが収まらない。

 

 

「……本でも借りて、夜まで読むか」

 

 気を鎮める為、そう決め込むイヴニンスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び都市に夜が訪れる。

 その間のイヴニンスは部屋に篭り、昼寝や読書で時間を潰していた。

 ベッドに寝転び、傍らには数冊の本が積まれている。

 

 サッとイヴニンスは本を閉じ、口を曲げた。

 

 

「……幽閉されてるみたいだ……門限までなら外出して良いって言っていたし、明日は出てみるか」

 

 本を置き、ベッドから立ち上がり、扉の方へ行く。

 そのまま部屋から出た際に、事務所で話し合うアーリーとナイトマンの会話が耳に入って来た。

 

 

 

 

「えー? まだ『お尻』は早くない? 搾精解禁したんでしょでしょ?」

 

「しかし次のお客さんはですね、本番なしでもかなりの精気が期待できるって感じの人なんですよ」

 

「つまり絶倫……って、こと?」

 

「んー……イヴニンス氏の精神力なら壊れないとは思いますが……『新型オイル』とやらの刺激に耐えられるかどうか……」

 

 不穏な会話をしているなと察しながら、イヴニンスも事務所に入る。

 椅子に座り、夜景を眺めながら紅茶を啜るアーリーとナイトマンの姿があった。

 

 

「……なに? また仕事?」

 

「休む暇なんざありませんぜ、イヴニンス氏。もうあと三十分で出発です」

 

「んふ♡ 今日もアーリーお姉ちゃんが送るよー!」

 

 足をブラブラさせて、上機嫌なアーリー。

 その向かいに座るナイトマンは、紅茶のカップから何かの冊子に持ち替えた。

 

 

「そう言えばイヴニンス氏。差し上げたタイプライターで何か、お書きになられました?」

 

「……いや。何を書こうか迷ってて……」

 

「では演劇や、小説とかにご興味は?」

 

「ない事はないが……」

 

「ではこの……あー……『ファイアーワーク・マガジン』に寄稿とか興味ありません?」

 

「なんだそれ?」

 

「創刊されたばかりの月刊誌です。寄稿している小説家が少ないようで、持ち込み受け付け中だとか。良い刺激になるんじゃないですか?」

 

 小説と聞いて真っ先に思い浮かんだのは、パニアの顔だった。

 無意識に唇を舐めてしまう。

 

 

「……ふーん……まぁ、気が向いたら」

 

「楽しみにしていますとも」

 

 ナイトマンから差し出され、ファイアーワーク・マガジンを受け取った。

 中身を斜め読みすると、挿絵と共に小説の短編が幾つも掲載されている。

 

 

(……へぇ。怪奇小説も募集中か……パニアに勧めてみよっかな……)

 

 そこでイヴニンスは、頭の中が暫しパニアだらけだった事に気付き、恥ずかしくも悔しくなった。

 首を振って思考をニュートラルに戻す。

 

 

 

 そうこうしている内に時間が来た。

 紅茶を飲み終えたアーリーは立ち上がり、イヴニンスの手を引く。

 

 

「それじゃ、行こっか!」

 

「帰りはまたあたしが迎えに行きますんでー」

 

「……もう女装はないよな」

 

「今日はありませんな……今日はね」

 

 不敵に笑うナイトマンを残し、イヴニンスとアーリーはオフィスを出る。

 ずっとアーリーが手を繋いでくるので、サッと振り払ってやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蜥蜴車による走行時間は、四十分程度。

 ドアを開いた先を見て、イヴニンスはギョッとした。

 

 眼前に建つは、縦長の古ぼけた煉瓦造りの一軒家。

 蜥蜴車のある街道の雰囲気も暗く、石畳も汚れ気味だ。

 すぐにイヴニンスは、ここは貧民街ではないかと気付く。

 

 

「…………おい。雰囲気がなんか……危ないぞ」

 

「ここはアーニマのちょーっと治安悪い街だねー。イヴくん一人で夜歩いてたら間違いなく犯されるね♡」

 

「……次の客とやらは大丈夫なのか?」

 

「ナイトマンも、本気でヤバい人は避けてあげてるから大丈夫だよ!」

 

「…………パニアもフレデリカも結構ヤバかったぞ」

 

「あはー! それもそっかー!」

 

 自身の額を叩いて納得するアーリー。

 イヴニンスは呆れ顔のまま蜥蜴車から降りる。

 

 玄関先に表札がかかっており、「リムバケット・トゥエンティー・フィンガーズ」と書かれていた。

 

 

「……なんかの店っぽいな」

 

「隠れた名店って奴だよー。お忍びで上流階級の人も来るってさ!」

 

「……質屋や服屋ではないな。まず」

 

「質屋や服屋ではないね。まず」

 

 ニタニタ笑いを浮かべながらアーリーはイヴニンスの先に行き、店の扉を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 扉の上部に付けていたベルが鳴り、「店主の一人」が目を向けた。

 玄関先では、ハットを脱いだ白いワンピースの女性がニコッと笑顔で立っている。

 

 

「お待たせしました〜。ご予約された、『ドゥーア・リムバケット』様ですか?」

 

 ドゥーアは座っていたソファから立ち上がり、彼女の方へ行く。

 ふわりと、大きく屹立した尻尾と獣耳が揺れる。

 

 

「……あら。もうそんな時間になったのね」

 

「えぇ、もうそんな時間になっちゃったんですよ!……あっ! 私はアーリーです!」

 

 部屋の中にあったコート掛けにハットを吊るすと、握手を求めてアーリーはドゥーアに歩み寄った。

 

 

「先のナイトマンとのお話の通り…………やんっ!?」

 

 その時だった。

 隠れていた何者かが、アーリーの背中から優しく抱き付く。

 そして彼女の脇の下より通した手で、寄せ上げるように胸を掴んだ。

 

 

「……慎ましいですけど、とても形の良い乳房ですわね」

 

 ドゥーアと良く似た女性の声だ。

 じっくり、ゆっくりと、撫で回すようにアーリーの胸を揉む。

 

 

「んっ……んふふっ。握手より先におっぱい揉まれるなんて、予想外でしたねー」

 

「職業柄、なによりも身体付きの方に興味があるのよ。私たち」

 

 そう言って今度はドゥーアもアーリーに前から抱き着いた。

 後ろに回した両手で、彼女のお尻を鷲掴みにし、揉み始める。

 

 

「膨よかなお尻……服の生地越しでも手に吸い付くわ」

 

「あんっ♡……ん〜? でしょ〜? お尻には自信あるんですよ〜?」

 

 胸を揉んでいたもう一人が、アーリーの乳首を見つけて捏ねた。

 この不意打ちにはさすがのアーリーもピクリと反応してしまう。

 

 

「ぷにぷにと、可愛らしい乳頭ですこと……」

 

「んあっ……!……ちょっとちょっと。不意打ちはズルじゃないですかー?」

 

 アーリーを挟み込み、両者はそれぞれ胸と尻を優しく揉みしだく。

 

 

「あら。お尻の方は少し、筋肉が硬くなっているわ……座りっぱなしは駄目」

 

「お胸の方もケアしないといけませんわ……小さくても、形は崩れてしまいますわよ」

 

「んふっ……あっ……結構良いかも……」

 

「……はぁ……あなた、足の付け根も凝っているわ……可愛らしい太腿なのに……」

 

「……ふぅ……アンダーから揉み上げると、作り立てのクリームのようにふわふわしておりますわ」

 

「あふっ……♡」

 

 

 二人の手つきは次第にいやらしく、ねちっこさを増した。

 

「…………綺麗な顔ね。天使のよう……」

 

「…………綺麗な髪ですわね。朝日を浴びた、羽毛のよう……」

 

 両者から囁かれながら、ひたすら揉まれ続けるアーリー。

 暫くはそれを楽しんでいたものの、熱っぽい目付きでドゥーアが顔を寄せて来たところで、彼女の眼前に手の平を出してストップをかけた。

 

 

「あーはは。私としてはこのまま朝まで楽しむのもアリなんですけどねー。今日、仕事で来たんで」

 

「……残念ね、可愛い天使さん。ほぐしてあげたかったわ」

 

「えぇ、可愛い小鳥さん。蕩けさせてさしあげたかったですわ」

 

 名残惜しそうに二人が離れたところで、アーリーは手を二度叩いて合図する。

 

 

「イヴくーん! 入っていーよー!」

 

 扉のベルが鳴り、一人の儚げな少年が姿を現す。

 彼は部屋の中を見渡し、怪訝そうに目を細めた。

 

 

 

 

 

 シックなインテリアで、あちこちに瓶詰めの植物が配置されている。

 本棚にも植物の図鑑が所狭しと並べられており、何よりも花っぽい不思議な香りが充満していた。

 

 

「……フレデリカが見たらどんな反応するかな。またあの、死んだ目になるのかな……」

 

 そう呟いた後に玄関から店内のエントランスに入り、店主たちを確認する。

 

 

 

 

 アーリーを挟んで、同じ顔をした若い女性が二人。

 違うのは赤い毛色と、青い毛色。

 それ以外はぴんと立った獣耳も、ふっくらとした尻尾も、ボブカットの髪型やジャンパースカート姿も、全て同じだった。

 

 

 次の相手は、狐型獣人の双子姉妹のようだ。

 二人はイヴニンスに気が付くと全く同じ涼しげな目付きで、興味深そうに彼を眺める。

 

 思わず身構えるイヴニンス。

 おっとりとした、お淑やかそうな顔立ちの姉妹は柔い口調で自己紹介を始めた。

 

 

 

 

「はじめまして。私は『ドゥーア・リムバケット』」

 

「はじめまして。私は『ウーヌ・リムバケット』です」

 

 赤毛の方のドゥーア、青毛の方のウーヌは同時に会釈をした。

 これまでの人物と違って品のある二人に、イヴニンスは圧倒され会釈を返してしまう。

 

 

「……イヴニンス・ジャックドーだ。ジャックドーで……っ!?」

 

 ウーヌとドゥーアはつかつかとイヴニンスに寄り、挟み込むようにしてしゃがむ。

 くっつきそうなほど顔を近付ける二人に、イヴニンスは呆然と立ちすくむ。

 

 

「な、なに……?」

 

 二人は互いにイヴニンスの肩と腰を抱いて、逃げられないよう固定。

 

 

「あら……予想よりも男っぽいのね。もっともっと、女の子と見紛うほどだと思っていたのに」

 

「でも額から鼻先まで、口先から顎先まで……とてもなだらかで、黄金比に近いラインで流れておりますわ。彫刻が動き出したような、麗しい美少年ですこと……」

 

「な、な、なんだよお前たち!?」

 

 振り解こうと身体に力を加えるものの、びくともしない。

 華奢な腕のどこにこんな力があるのかと慄くイヴニンスの両耳元に、双子は口を寄せる。

 消え入りそうで、されど熱を帯びた声で囁いた。

 

 

「……艶のある白肌ね。真っ赤になったのがすぐに分かるわ……それに産毛もなく、滑らか……羨ましいぐらいね」

 

「……美しい碧眼ですわ。虹彩も、割れた銀河の欠片のようです……上下ともに睫毛も多く、色っぽいですわね……」

 

「……表情の筋からも強情さが伝わって来るわ。その奥にある、幼さと脆弱さも……」

 

「……喉仏も見えておりますわ。でもまだ控えめで、愛くるしいですこと……」

 

「…………ねぇ、姉さん。完璧ね」

 

「…………えぇ、ドゥーア。逸材ですわね」

 

 第一印象こそお淑やかで大人しそうで、品があると感じたイヴニンス。

 しかしこうやって品定めされている内に、パニアやフレデリカ、そしてカーリオらと同様に「獣」なのだと気付かされる。

 

 

「は、離せって……!」

 

 もう一度身体を強く揺さぶったところで、パッと双子は離れて立ち上がった。

 延々と耳元で囁かれた影響か、イヴニンスの顔は赤く染まっている。

 アーリーはそれを、面白そうにニタニタと眺めていた。

 

 

「お気に召しメシでしょうかー?」

 

「えぇ。凄く。値段を提示された時、なんて強気な金額なのかしらと思ったけど……寧ろ安いぐらいだわ」

 

「とても敏感そうですし……自分を抑えられるか、心配ですわ……」

 

 そう言ってイヴニンスの頭を撫でるドゥーア。

 すぐにイヴニンスは頭を振って、それを拒絶する。

 

 

「……少し……いえ。結構、聞かん坊のようですわね」

 

「……ふん。嫌なら帰る」

 

「とんでもないですわ……楽しみです」

 

 この流れも定型化して来たなと思い、呆れ返ったイヴニンスは小さく溜め息を吐く。

 反抗的な態度で接しても、客は逆にイヴニンスを気に入ってしまうのだ。

 

 

「……変態どもめ」

 

「それじゃ、私はこれで失礼しますので!」

 

 そう言ってアーリーは掛けていたハットを被り、店を後にしようとする。

 

 

 

 扉の方へ向かったアーリーの肩を、ドゥーアが掴んだ。

 振り向こうとした時、背後から耳元に顔を寄せられて囁かれる。

 

 

「……(いとま)ができたら、またウチに来て欲しいわ……あなたにならサービスしてあげるわよ……」

 

「…………んふふっ♪ えぇ、是非ともっ♡」

 

 クルッと振り返り、「ごめんあそばせ」と言いながらスカートの裾を持ち上げ、上品にお辞儀をする。

 それからアーリーはやっと店を出た。

 

 

 

 

 

 扉を背にし、困ったように笑いながら首を振る。

 

 

「んーっ……あいにく私、女の子相手でも『バリタチ』なんよねー。あの子たちとは相性合わないかなー……」

 

 そう呟いて、暗い通りに出た。

 蜥蜴車は片道のプランで予約していた為、既に店先から居なくなっていた。

 帰りはのんびり街を散歩したいと考えていた、アーリーの意向だ。

 

 

「しっかし、アレは確かに絶倫さんだねー。男も女も見境なしなパクパクモンスターちゃんかぁ……しかも結構、ご無沙汰ぽかったし、イヴくん大丈夫かなー?」

 

 心配少々、愉快さ九割な態度で、暗い夜道を上機嫌に散歩するアーリー。

 その時すれ違ったマニッシュな風貌の女性に、呼び止められる。

 

 

「……なぁ、嬢ちゃん」

 

「んー? 私のこ……」

 

 言い切る前にガッと肩を掴まれ、振り向かされる。

 ガシリと肩や腕を掴んだのは、四本の腕だった。

 

 

 アーリーの前にいたのは、獣人ではない。

 白目と黒目が逆転した瞳、額から長々と伸びた触角、そして四本の人間らしい腕と、長く細く、関節の多い虫じみた脚。

 この世界に存在する四つの人種の一つ、「蟲人」。

 

 

 口は人間や獣人と同じ大きさ。

 だが口角から耳にかけて線が通っており、状況によってはその線から下全てがガパリと開く事を示していた。

 

 

 

 そして今が、その「状況」でもある。

 蟲人の女はアーリーを抱き竦めたまま、眼前で耳まで裂けた口を披露した。

 

 

「はぁ……♡ 嬢ちゃん、可愛いな……♡」

 

 裂けた口の中から、「大顎」が剥き出しとなる。

 それがアーリーの目の前でカチカチと噛み合わされた。

 

 

「……アタシさぁ? カノジョと別れちまってさぁ?」

 

「あ〜らら。それは残念」

 

 悍ましい姿を現して迫る蟲娘だが、アーリーは涼しい顔だった。

 

 

「そんで分かるだろ……? 溜まっちまってさぁ……♡ 子宮が爆発しそうなんだよぉ……♡」

 

「娼館行けばー? 私より可愛い子いるでしょん?」

 

「ヒヒッ……♡ 近所の娼館は全部出禁食らっちまってさぁ……言っても、『例の双子』より理由はマシだからよぉ……♡ 優しくしてやるぜ……♡?」

 

「…………ほーん?」

 

 彼女の話を聞いて興味を抱いたアーリー。

 少しだけ考え込み、蟲娘の足から頭までを見て品定めした後、ニコッと笑いかけた。

 

 

「……いーよっ。他の子が襲われたらかわいそうだし、お相手してあげる♡」

 

「ほ、ホントか……!?」

 

「うんっ!」

 

「ヒヒッ……そうと決まればアタシのウチに……」

 

「えーっ?」

 

 甘えた声でアーリーは、蟲娘の腕が離れたと同時に彼女の懐へ身を預けた。

 ドキリと動揺する彼女の目の前で、ワンピースの襟首を開いてチラリと胸元を見せる。

 

 

「……っ!?」

 

「家まで待てないかなぁ〜?……んー?」

 

「じゃ、じゃあ、ちょっと歩いたトコにある宿屋か……?」

 

「……むー」

 

 蟲娘の腕を一本掴み、自身のお尻を触らせる。

 突然の事による驚きと興奮で、彼女の口は尋常ではないほど開いていた。

 

 

 

 

「……お外で誘ったんなら……お外でヤりましょ?」

 

 もう一本の腕も掴み、手の平を自身の頬に撫でさせる。

 予想以上に積極的なアーリーと、彼女の頬と尻の感触で思考が焼き切れたのか、二つ返事でその提案を飲んでしまった。

 

 

「あ、あぁ……そ、外か……うん……外でも良いかも……」

 

「……んふっ♡ じゃあ、そこの路地裏行こっか?」

 

 彼女の懐を離れ、近場にあったひと気のない路地裏へとアーリーは誘う。

 まともな思考力が消えているのは、アーリーから放たれた淫気のせいであろう。

 

 

「な、なぁ……ヒヒッ……嬢ちゃん、名前は? アタシ、『グラッシー』……」

 

「アーリーちゃんでいいよー」

 

「んじゃあアーリー……先に言っとくけどさぁ……気を付けろよぉ? もう二度とアタシ以外には戻れねぇ身体になるかもしれねぇぜ……♡?」

 

 グラッシーの宣言を聞いたアーリーは振り返る。

 

 

 

 

 

「……うんっ! かもね」

 

 アーリーの底冷えするような微笑みは、路地裏の闇の中に消えて見えなくなった。

 後に続き、グラッシーも闇の中にふらふら入り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恭しいお辞儀で出て行ったアーリーを、イヴニンスは冷めた目で見ていた。

 

 

「……仕草だけ上品ぶってさ……変態のクセに……」

 

 アーリーを見送った後、ウーヌとドゥーアは再びイヴニンスの近くまで寄る。

 彼の手を両方から取り、優しく引いた。

 青毛のウーヌの方から話しかけられる。

 

 

「……では早速、奥へ行きましょ。イヴニンスくん」

 

「ジャックドーでいい……ところでここは何の店だ? 香辛料か、薬屋か?」

 

「植物を使う点で言えば惜しいですわね……正解は『マッサージ店』ですのよ」

 

「……マッサージ? あの……マッサージ?」

 

 身体の節々に指圧を加え、血行を促進させたりコリを解したりする行為だ。

 イヴニンスもたまに見かけており、国によっては医療として見做されていた事を思い出す。

 

 しかしそのマッサージに植物は使用するものなのかと、疑問も生まれる。

 

 

「……それに植物をどう使うんだよ。アロマに?」

 

「香り付けも兼ねているので、間違ってはいないわ」

 

 続けて赤毛のドゥーアが説明を引き継いだ。

 奥へ続く部屋の両開きの扉を、二人がかりで開ける。

 

 

「私たちはオリジナルの『オイル』を調合できるの。それを使用した『オイルマッサージ』で、私たちは有名になれたわ」

 

 部屋は広々とした一間。

 壁にかけられた板の上には数多の瓶詰めオイルが敷き詰められ、天井のシャンデリアからはセピア色の灯り。

 

 中心には、縦長の「エステベッド」が一つ、立てられていた。

 壁紙はなく、草花モチーフの木彫細工が施された壁や、オーク材の家具の数々など、様式がレトロだ。

 

 漂う花の甘い香りも相まって、一気に雰囲気に飲まれてしまった。

 

 

「特に上流階級の人からは絶賛されているのよ。著名人の方も、リピーターにいるわ」

 

「……お、オイル、マッサージ……? オイルを……塗りたくるの?」

 

「えぇ。オイルを、塗りたくるのですわよ?」

 

 姉のウーヌが微笑む。

 これから自分が何されるのかは分かったものの、イヴニンスは腑に落ちなかった。

 

 

「……なんで客を取る側が、お金払って客を買うんだよ……金を貰う側だろ君たち」

 

「確かにこれからあなたに施すのは、私たちがいつもやっている事ですわ……でも間違えてはなりません……私たちはお客様を買ったのではなく、『男娼を買った』のですわよ?」

 

「えぇ……私たちの発散の手段として、仕事の技術を使うだけなの……」

 

「………………」

 

 不思議な口調の双子に嫌な予感こそするが、大体の事情をイヴニンスは理解した。

 とりあえず自分は、その「オイルマッサージ」とやらを施される訳だ。

 

 

 イヴニンスから離れ、準備を進めるウーヌとドゥーア。

 二人の後ろ姿を見ながら、イヴニンスは今回の仕事を軽く捉えていた。

 

 

(……まぁ、この双子……パニアより素行は良さそうだし、フレデリカほどおかしくなさそうだし……お金貰ってマッサージ受けると言うのも妙だけど、やる事自体は健全……かな?)

 

 そう思いつつ、開いたままの扉を閉めてやるイヴニンス。

 

 

 

 

 

 これから彼は思い知る事となるのだ。

 イヴニンスから顔を背け、ペロリと舌舐めずりをしているこの双子に、とんでもない目に遭わされるのだから。

 

 

 双子は再度澄ました顔でイヴニンスに向き直る。

 ドゥーアの方が、部屋の隅にあったポールカーテンを指差した。

 

 

「ではイヴニンスさん。施術開始の前に、そこで服を全て脱いで欲しいわ」

 

「………………」

 

 服を脱ぐ事へのいやらしさを感じないのは、ここがマッサージ屋だからだろうか。

 カーテンの中には、巻いて前も隠せるよう大きめのタオルも置かれており、恥ずかしさはあるが、抵抗感はフレデリカの時と違って全くなかった。

 

 

「……一応聞くけど……変な事はしないんだよな……?」

 

「オイルマッサージを変な事とするなら、確かに変な事はするわね」

 

「…………はぁ……分かった」

 

 一々言い回しが遠い二人に辟易しながらも、イヴニンスはカーテンの中に入り、シャッと引いて姿を隠した。

 カーテンの奥から聞こえる布の擦れる音を聞きながら、双子は互いに呟く。

 

 

 

「……楽しみね。姉さん……♡」

 

「えぇ……楽しみですわ、ドゥーア……♡」

 

 無表情気味だった二人の顔に、紅潮と恍惚が差し込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、外の路地裏。

 ぴちゃぴちゃと、何かを舐め取っているような音が響いている。

 

 

「……ねー? あんだけオラオラ系だったのにさー? 始まったらお淑やかって、どーなのさー?」

 

「んぷ……ちゅるる……♡」

 

 全裸で木箱の上に腰掛けるアーリー。

 その股の間には同じく全裸のグラッシーが跪き、彼女の秘部を一心不乱に舐めていた。

 

 

「はぁ……♡ はぁ……♡ あ、あんたこそ……♡ すっげー力強いんだなぁ……♡ アタシ、組み伏せられたの初めてで……」

 

「ちょっとさー……休憩しないでくれるかなー?」

 

「っ……!?」

 

 アーリーはグラッシーの顔を両手で掴み、自身の眼前まで引き寄せる。

 咄嗟に四本の腕で背後の壁に手を置き、アーリーを押し潰さないようにするグラッシー。

 

 外から見ればグラッシーがアーリーを壁に追い詰めているように見えるが、その実は逆だ。

 

 

「あなた、大きな口持ってんでしょ?」

 

 両手をグラッシーの口の中に入れ、こじ開ける。

 グラッシーの口はガパリと、喉奥が悠々と開き、頬の裏に隠されていた大顎がビクビク震えていた。

 

 

「あ……あぇ……っ」

 

「これで私のお股全部咥え込んだらさぁ? 奥まで舌入るでしょ……でしょ?」

 

「……っ♡」

 

「はいはーい、抱き締めるのキンシーっ。クンニで私イカせてくれなきゃ、ここでやめちゃうよー?」

 

 足を使ってグラッシーを押し退かし、そのまま頭の上から足で押さえて股まで下げさせる。

 グラッシーは言われた通り顎を大きく開き、その口の中にアーリーの秘部から鼠蹊部全てを入れた。

 

 

「あんっ♡ あったかいお口♡……はぁ……イヴくんもこんだけ素直だったらなー……」

 

「んじゅるっ……じゅるっ……」

 

「あはっ♡ 入って来た入って来たーっ♡」

 

 大陰唇を分け入り、グラッシーの下がアーリーの膣口から産道に挿入。

 にゅるりと深く入る舌に、アーリーは満悦そうに腕を組む。

 

 

「そんだけ咥え込んだなら、私様の愛液全部飲めるよねー?」

 

「んくっ……♡ じゅるるる……っ♡ ふーっ♡ ふーっ♡!!」

 

「ありゃ、聞いてないや……んー。淫気、出し過ぎたかも」

 

 二人の淫行はそのまま、暗闇の中で延々と続く。

*1
1925年にF・スコット・フィッツジェラルドが発表した、毎夜に渡って豪勢なパーティーを催す謎の貴族、ジェイ・ギャツビーにまつわる一連の親交と事件を書いた作品




▼イヴちゃんエロエロ感度累加記録♡
[諸都合につき、今回はお休みでーす♪]


▼ナイトマンダイアリー
●現状の見立て
・相変わらず強情で不遜な態度ですが、おかげさまで新興貴族の筆頭格たるフレデリカ氏をリピーターに付けられた。彼女の過去と性的嗜好は当然把握済み。この調子で街の有力者をどんどん落としまくって買わせまくれば精気もガンガン手に入る。提示した金額と精気の量は比例するので、この路線で進めて行きたいところ。

●今後の指標
・イヴニンス氏の初射精は確認したものの、本人は見ていない上にフレデリカ氏らの攻めが激し過ぎたようで実感をしていない様子。今回はそれを自覚させようとリムバケット姉妹を充てがったが、あたしとしても不安が残る。何てったって、性欲強過ぎるせいで数多の娼館から出禁食らった双子だからね。まぁ、フレデリカ氏の内容でもまだ大丈夫だったので、少しギアを上げても良いかなとは思う。とっとと本番させたいのよ俺は!
とは言えやはり、「お尻」はまだ早かったかな?まぁ、いっか。債権者はイヴニンス氏だし。
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