リリルカ・アーデにTS転生した男がふたなりチ○ポで無双する 作:季式-キシキ-
ギルドで魔石を換金すると、1200ヴァリスになった。
ゴブリンは大したことなかったが、最後に倒したコボルトの魔石が通常のものより大きかったらしい。
そういえば好戦的というか戦い慣れしていたような気がする。
ギルドに来たついでに受付嬢にも挨拶していこうとかと思ったが、誰がリリルカの担当受付嬢だったか思い出せなかった。
受付嬢はギルドの窓口のようなもので、冒険者一人につき一人が担当している。
思い出せないということはリリルカの印象に深く残らなかったか、興味が失せてしまったか。
どうせ相手も私のことは覚えていないと、記憶の中のリリルカも言っているような気がするので気にしないことにした。
まあいい。今は飯だ飯。
リリルカの記憶を頼りに、安くてうまくて量がある行きつけの店に向かった。
そこを目指して歩いていると、後ろから声をかけられる。
「あの、これ落としませんでしたか?」
「えっ?」
振り返ると、そこには一人の少女がいた。
後頭部にまとめられた薄鈍色の髪は艷やかに輝き、髪と同色の瞳は純情そうに感じる。
若葉色のジャンパースカートと、その上から着ている長めのサロンエプロンからは給仕か料理人を連想する。
初めて見るはずの顔だが、
記憶を漁ってもこのひとについて見に覚えがないが、私にだけ見えるリリルカが警告を鳴らしていた。
「大丈夫ですか?」
「えっ、あ、はい」
心配そうに顔を覗き込まれて我に返る。
彼女の手のひらには小さな魔石?があった。
落とし物とはこれのことだろうか。
換金し忘れていた魔石を落としてしまったか、とも思ったが、すぐにその考えを捨てる。
私は装備を一新したばかり、ゴブリン三匹とコボルト一匹分の魔石しか持っていなかった。
そして換金所でもしっかり換金してもらっている。
つまり――
「それ、リリの落とし物じゃないです」
「えっ、でも……」
「間違いありません」
彼女の勘違いだろう。
「えっと、あの……」
「近くに転がっていた
「そうですね! これ、どうしましょう……」
「ギルドに届けましょうか? どうせ冒険が終わればギルドに寄るので……」
「よかったです。それじゃ……」
ぐぅ~……。お腹が鳴る。
あっと、気まずくなって俯いていると、目の前の少女がくすりと笑った。
恥ずかしさに顔が熱くなる。
「……あっ、そうだ! もしよければなんですけど、一緒にご飯食べませんか?
私、すぐそこの酒場で働いてて……本格的に開くのは夜なんですけど。
軽い食事くらいなら……ご迷惑ならいいんですけど」
「いえそんな、ありがとうございます! あっ、でも今そんなに手持ちがなくて……」
「大丈夫です。呼び止めてしまったお詫びということで」
そう言って彼女は踵を返した。
こちらを振り向いた拍子に揺れた薄桃色の唇が視界に入る。
――美味そうだな。
そんな思考が脳裏に浮かび、慌てて打ち消す。
今のはなんだろう。
善意で接する彼女に、邪な感情を向けてしまった?
いや、きっと空腹のせいで頭がおかしくなっているんだろう。
早く食事を済ませよう。
私が案内されたのは大通りに面した角地にある大きな建物だった。
看板を見ると【豊穣の女主人】とある。
「ちょっと待っててくださいね。すぐ戻りますから」
店内に入ると、私を置いて、カウンターの奥へと消えていった。
少しの間、店内を見渡す。
カウンター席とテーブル席がそこそこあり、給仕服を着たエルフや
他の客がいないことから、私が連れてこられたことも予想外だった様子で、遠巻きから私を探るような視線を向けてくる。
耳を傾けると、「シルが」「客人?」といった会話が聞こえてくる。
こんな場所あったのか。
リリルカの記憶を探っても、来店したことはない。
だからこそ、彼女たちも初対面の私にどう接すればいいのか分からないのだろう。
私だって分からない。
店内を観察していると、さっきの女性が戻ってきた。
手には大きめのバスケットが握られている。
「お待たせしました」
「……ありがとうございます」
バスケットを受け取り、蓋を開けるとサンドイッチが入っていた。
他にも焼き立てのパンや野菜スープもある。
とてもおいしそうに見える。
けれど、本当にもらってもいいんだろうか。
このひとは親切心から譲ってくれたのだろうが、なんだかものすごく申し訳ない気持ちになる。
こちらは無一文に近く、恩を返せるかも怪しい。
そう思って悩んでいると、彼女が言った。
「困っている人がいれば助けるのは当たり前ですよ」
……まあ、その通りなのだろう。
私も手持ちに余裕があるわけではない。
みてくれは駆け出し冒険者のそれと同じだ。
今回は好意に甘えておこう。
それに、彼女の方も私の反応を見て、遠慮していると思ったようだ。
「どうぞ食べちゃってください。
それでもし余裕があるときにお店に寄ってもらえると、それだけで助かりますから」
「ああ、なるほど。分かりました」
合点がいったという風にうなずく。
ただの善意ではない、打算ありのアピールをされるが、それすら私への気遣いだということが伝わってくる。
本当に良い子だなぁと感嘆していると、少女は耳元まで口元を近づけ、私にだけ聞こえる小声で「夜にきてくれたら、いっぱいサービスしますよ」と意味深に囁いた。
不意をつかれ、ドキリと胸が高鳴る。
耳元では彼女の微笑みが聞こえるような気がする。
「楽しみにしてますから」
「はっ、はい……」
私は表情を隠すようにフードを深くかぶった。
食事を終えると、彼女は仕事に戻っていった。
私も時間が余っていたので、もう一度ダンジョンに向かった。
目的はモンスター討伐より苦手意識の克服。
モンスターを見つけ次第、チカラをセーブしないように意識しながら戦う。
途中何度か危なかったが、なんとか切り抜けられた。
これは思った以上に効果的だったようで、意識して戦ってから数時間、苦手意識が緩和していく実感と、戦えば戦うほど前より早くモンスターを倒せるようになっていった。
現代で積み上げてきた非暴力の常識が崩れていくような錯覚を感じたが、これがカルチャーショックというやつだろうか。
これならいけそうだなと思いながら地上に戻ると日が暮れていた。
バベルの塔で汗を洗い流し、ギルドに向かうと魔石を換金してもらった。
ゴブリン三匹とコボルト二匹。
合わせて1500ヴァリスになった。
少女が拾った魔石を受付嬢に渡すと、換金するか聞かれたが、私のものではないのと、彼女との約束があったので断った。
ちょっと不思議そうな顔をされたが気にしない。
「それにしても朝の稼ぎと合わせて2700ヴァリスですか……」
命をかけてこれは割に合わなすぎる。
いや、一階層だとこんなものなのかもしれない。
モンスターと戦う時間より、探してる時間のほうが長かったくらいだ。
もっと、奥の階層にいけばモンスターの質も収入も上がるかもしれない。
とはいえ、私はまだステイタスを使いこなしているわけではない。
念のためもう一日、一階層に留まり、苦手意識の払拭に努めよう。
「今日はもう休みましょうか」
疲れた体を引きずるように、宿へと帰る。
明日もがんばろう。
シルさん回でした
書いてて楽しいけど、物語はまったく進展してないのよな…
リリルカの成長はスローペース(話の流れは巻いていくかも)