リリルカ・アーデにTS転生した男がふたなりチ○ポで無双する 作:季式-キシキ-
悲鳴のあった先には人混みができつつあった。
「リリさん……」
「危険がないか見てきます。シルさんはここで待っていてください」
「あっ……」
不安そうに私を見つめるシルさんを思えば残るべきだったが、どうしても好奇心を抑えきれなかった。
野次馬をかき分けて通ると、赤毛の男性が血まみれの状態で他の冒険者から事情聴取を受けていた。
聞き耳を立ててみると、どうやらひと気のない道で襲撃に遭ったらしい。
被害者はヘファイストス・ファミリアの鍛冶師で、話を聞いているのはガネーシャ・ファミリアの団員。
鍛冶師の男性は血まみれでこそあったが、深手を負った様子はない。
襲撃された際は先輩の鍛冶師と同行し、相手の攻撃をその先輩鍛冶師がかばったときに返り血を浴びたのだとか。
先輩鍛冶師が敵を足止めしているうちに逃げ切り、こうして助けを求めているのが現状のようだ。
話を聞いたガネーシャ・ファミリアの団員はすでに行動を起こしていた。
救出に向かうものもいれば、野次馬を含めた周囲の避難誘導を率先して行ったり、駆けつけた他の冒険者にも事情を説明して協力を募るなど。
大体の事情を把握した私はシルさんが心配になって戻ろうとしたところで、知らない少女が横切った。
金髪の少女は機嫌が良いのか、私に見向きもしなかったが、私は彼女から微かな血の匂いを嗅ぎ取った。
避難誘導している冒険者含めて、誰も異臭に気づいた様子はない。
ここは冒険者の街だし、微かな血の匂いなど
私が気づけたのは、血の匂いとは無縁の前世の感覚が残っていたおかげだろう。
相手は私の様子に気づくことなく人混みに紛れていった。
まだ近くに残っているガネーシャ・ファミリアの団員に伝えるべきか迷ったが、これ以上シルさんを待たせたくなかったのと、血の匂いを嗅いだだけという信ぴょう性の薄い話を信じてもらえるとは思えなかったのでやめた。
「すみません、シルさん!」
「あ……! もうっ、心配したんですから!!」
シルさんのもとに戻ると、ぷりぷりと怒った様子で説教を食らう。
そらそうだ。
私がシルさんでも怒る。
私と違って自衛手段のないシルさんは人一倍不安だったはずだ。
それに私にもしものことがあればシルさんは自分のことのようにショックを受けていたかもしれない。
まだ知り合って短いが、シルさんの人となりの良さは伝わってくる。
「ごめんなさい……」
素直に謝っておくことにした。
「……いえ、無事ならいいんですよ」
一瞬の間はあったが許してくれたみたいだ。
「それで、何かわかったことはありましたか?」
「えっと……」
大通りでの出来事と、犯人かもしれない少女が近くにいたことを伝えた。
「そんなことが……」
さすがのシルさんも険しい顔つきになった。
この世界において、血の匂いは命に関わるものだ。
特にオラリオでは迷宮都市と呼ばれるだけに、冒険者は日常的に血を流すことになる。
自分の血はともかく、他人の血には敏感な人が多い。
ましてや襲われた相手がヘファイストス・ファミリアの鍛冶師となればなおさらだ。
「わかりました。同僚の子たちにも気をつけるように伝えておきますね」
「はい、それでお願いします……」
「それとリリさん……」
「なんですか?」
「その、ありがとうございます。私のために、戻ってきてくれて……」
「……」
俯きながら顔を赤らめるシルさんを見て、思わず言葉を失った。
それは反則じゃないですかね? ちょっと胸がキュンときちゃいましたよ。
何気に褒められることに慣れていない私は照れ隠しに視線を逸らす。
「い、いえ、元はと言えばリリがシルさんを一人にしてしまったので……」
「それでも、ですよ。
リリさんと一緒じゃなかったら、今頃襲われていたかもしれませんし……。
本当にありがとうございます」
「……はい、それじゃ帰りましょう。酒場まで送りますよ」
私はそそくさとその場を離れようとするが、シルさんに腕を掴まれる。
「あの、手を握ってもらえませんか……?」
「え……!? ど、どうしていきなり……?」
「怖くて、つい……」
そう言って、シルさんは私の手を握りしめた。
「大丈夫ですよ。酒場につくまでですから」
私はその手を拒めなかった。
シルさんを酒場まで送り届けたのち、私も宿屋に帰ることにした。
危険を承知で遊び歩いて襲われましたはさすがに笑えない。
それでも約束があるので、明日の夜には酒場に顔を出してみるか。
夜道は危ないが、酒場は人の目がある分、宿屋に一人でいるよりも安全だろう。
そんなことを考えながら歩いていると、「あっ!」という声に足を止める。
声の先には見覚えのある少女の姿、服装こそ身奇麗になっているが昨夜襲われていた
今回は彼女一人ではなく、茶髪の少年とハーフエルフの子供とも一緒にいた。
「この人、昨日の人!」
「こいつがフィナを襲った犯人か!って女じゃん!!」
「……犯人の、仲間、かも……?」
一難去ってまた一難。
休日に限って休みがない。
「違うよ。助けてくれた人だよ」
「そっちか。でも、俺とマリア母さんが駆けつけたときには誰もいなかったぞ?」
「誤解されたくなくて……隠れてた、とか?」
「あの、貴方たちは誰です……?」
私抜きで私の話で盛り上がっていた少年少女たちに声をかける。
「ああ、ごめん。俺はライ。
フィナを助けてくれたなら知っていると思うけど、昨日こいつが襲われたんだ。
だから俺達の手で犯人を見つけたくて探してたんだ」
「マリアお母さんはやめるように言ってたじゃない……。
私はフィナ。昨夜は助けていただいてありがとうございます」
「……ボクはルゥ。マリアお母さんに、ライが暴走しないように見張っておくように、言われてる……」
「そうですか。リリはリリルカ・アーデです。
それと助けたというには語弊があります。
リリはただ見かけただけ、介抱しただけです……」
「それでも助けてもらったことには変わりありません。
それがなかったら、今頃は……」
「なんにせよ、ありがとな。フィナを助けてくれて」
「………」
彼らは感謝の念を私に向けてくれるが、私は本当の意味で助けたわけではない。
ただ見ていただけなのだ。
彼女がなぶられる姿を。
思いはすれど言葉は出ない。
忘れかけていた劣情だけが蘇る。
下積み時代も中盤に差し掛かってきました。
シルさんを家ではなく、酒場まで送り届けたのは、シルさんが本編で家を秘密にしているからですね。