リリルカ・アーデにTS転生した男がふたなりチ○ポで無双する 作:季式-キシキ-
『ようガキども。施しの時間だぜ』
私が改めて教会の奥にある食堂でおもてなしを受けていると、入り口のほうから女性?の声が響く。
視線を向けると、酒瓶を持った老女がいた。
「ああ、ペニア様ですね。ダイダロス通りの顔役を務めている神様です」
私が疑問に思っていると、マリアさんが教えてくれた。
「なんだい。私の他に客人かい? アンタも心に余裕があるなら、手垢まみれの薄汚い金を落としていくといいさ。心が洗われるよ」
悪質な宗教勧誘のような気がして、話半分に聞き流した。
ペニアは私の様子を見て興味をなくすと、子供たちに人形や本を配っていき、マリアさんに重そうな革袋を手渡した。
「今月分さ。これくらいあれば足りるだろう」
「ありがとうございます」
「いいさな。私は蓄えるのが苦手なだけさね」
「それでも助かります。私一人だとどうしても限界がありまして……」
「ふん。それじゃあね。
アンタの善行は美徳だが、度が過ぎると反感を買うよ」
どうやら孤児院に支援を施しにきただけのようだ。
彼女は最後まで嫌味を言いながら、去っていった。
「すいません、リリルカさん。
あれでも普段は物腰の柔らかい方でして」
「それはないですね」
あれの物腰の柔らかいところなどさすがに想像できない。
マリアさんもお世辞に無理があったと自覚があったのか苦笑していた。
「そろそろリリも失礼します。
あっ、そうだ。一応、伝えておきますが、大通りの方であるファミリアが襲われたらしいので、子供たちの外出も気をつけておいた方がいいですよ」
「そうですか。分かりました。ご忠告ありがとうございます」
ライくんが帰ろうとする私に気づいたのか近づいてくる。
「なんだよ。もう帰るのか?」
「ええ、もともと帰り道で遭遇しただけなので」
「そっか。ありがとな」
子供たちに見送られながら、私は孤児院を後にした。
孤児院が見えなくなるまで歩いた辺りで「待ちな」と声をかけられる。
声のする方向へ視線を向けると、私より先に孤児院を出たペニアが出待ちしていた。
「また会いましたね。待ってたんですか?」
「まあね。ちょいと気になることがあっただけさね」
「気になること?ですか。
あっ、言っておきますが、リリはババ専ではないので、そういう気持ちは受け取れませんよ」
「何を言い出すかと思えば、こっちだってごめんだよ!
そうじゃなくて、孤児院にいたお前さんが気になってな。
あそこは行き場を失った子供たちが最後に行き着く場所。
だというのに、お前さんはその中でも、特に不幸そうな顔をしていただろう?
そいつが気になってね」
「不幸そう? リリは今の生活に満足、しているかどうかはリリ自身にも分かりませんが、そこまで悲観的には見てませんよ」
「そうかい? だとしたら、私の眼が曇っていただけか。
あるいは、あそこが天国と思えるような地獄にいたか」
ペニアの言いたいことはなんとなく伝わってくるが、あえてはぐらかしている。
ライには涙でごまかせたが、
それをペニアは見抜き、私に興味を抱いたのだろう。
「まっ、どちらでもいいさね。久々に面白いものが見れただけ満足するさ」
「趣味が悪いですね」
「そいつはお互い様だろう。
最近の孤児ってやつは恵まれすぎて鼻につく。
その点アンタはいい。
私は眷属を取らない主義だが、アンタさえ良ければ飼ってやるよ」
「遠慮します。リリにはもう主神がいるので」
「主神がいるって、それでかい? なるほどねぇ……」
ペニアは何やら勝手に納得している様子だが、私にとってはどうでもいい。
そもそも昼間から酒臭い相手とはお近づきにもなりたくないのだ。
前世の私は別に、昼間から酒を飲むことに抵抗感はなかったが、今のリリには嫌な記憶を刺激してしまう。
それに、自分が酔っていることに気づいていないやつの相手をしたくない。
するだけ無駄な気がする。
「話はそれだけですか。それでは失礼しますね」
これ以上、うざ絡みされても面倒なのでさっさと話を切り上げてその場を後にする。
ペニアのせいで気分は最悪だが、孤児院に行って面白いものが見れたのもまた事実。
「ライ、フィナ、ルゥ……そしてマリアさんですか。まるで聖母マリアみたいな方でしたね」
シルさん以外碌な人脈のなかった私にとって、今回の交流は得難きものだ。
日がな一日中ダンジョンに潜っているだけでは得られない出会いだ。
そんなふうに考えて歩いていると、突然、動けなくなった。
私だけではない。
周りを歩く通行人から空を飛ぶ鳥、はては肌に触れる空気までもが文字通り止まっていた。
私だけの世界。
周りの人たちは私のように思考できているのかどうかすら分からない。
初めてシルさんに出会ったときのような視線が突き刺さる。
今回は一つだけではない。
いくつもの視線がはるか高みから、私の内面を丸裸にしようとしている。
まるで見世物小屋にいる兎のような気分だ。
しばらくすると、一つまた一つと質量のある視線は消えていき、灰色の空は再び青空を取り戻した。
通行人は歩く、鳥は空を飛ぶ、風は肌を撫でる。
止まっていた時間は動き出していた。
「今のは……一体……」
唖然とするしかなかった。
私のせい?
周りを見るが、誰もさっきの現象に気づいているものはいない。
私にだけ知覚できていた時間。
思い当たる節はないが、私のつぶやいた言葉が原因だと考えると、もしかして異世界の言葉ってこの世界だとタブーだったりするのだろうか……。
いや、それだとふたなりとかガッツリアウトな気がするが……。
「分からん……分からねば……」
ライ、フィナ、ルゥ。
彼らの名前がアウトラインだとは思えない。
だとしたら、『聖母マリア』が琴線に触れたのだろうか。
判断材料が足りない。
もう一度試してみたくなったが、さっきは助かっただけで二度目はないかもしれない。
今はできるだけ気をつけるように心がけるしかない。
ペニアヒロインは嫌すぎる…
なんかリゼロみたいな現象が発生していましたが、あれはオリルカの不用意な発言が原因ですとだけ