翌日から俺は、毎日その約束に懊悩する事になった。
『今度あなたがここに来るまでに、覚悟を決めておくわ』
と、確かに彼女はそう言った。それはつまり、次に雪ノ下の部屋を訪れる時は……本当の意味で男女の関係になると、そういう事だ。
「何だかあやしい雲行きね」
雪ノ下は空を見上げてそう言った。彼女をマンションに送り届ける、俺にとっても家路の一つとなった道の端の事だった。
こと奉仕部では雪ノ下と二人きりになる事は稀で、あったとしても数分や十数分の事だった。だからというか何というか、実際小町のひと押しもあっての事だが、雪ノ下を家まで送り届けるのは日課になっている。それぐらいしか、二人きりの時間と言うのは作れなかった。
「傘持ってきてねーぞ……」
雪ノ下を送ったついでに部屋に上がり込むのは、週に何度かはあった。別に話すべき事も無かったが、離れ難さからそうしていただけの事。しかしもう一週間以上、彼女の部屋に上がっていない。
ちょうどマンションの敷地内に入ると、悪い予感は的中するようにザァッと音を立てて夕立はやって来た。走るぞ、と言い終わるより早く、俺と雪ノ下はマンションのエントランスに向かって走り出していた。
「酷い雨だな」
振り返るとさっきまで歩いてきた道路が霞むぐらいに、激しく雨が降っていた。ボケっと眺めていても、止みそうにない。
「ええ、しばらく止みそうにないわね」
帰り道に広がっていた暗い雲を思い出しているのか、雪ノ下は外よりも目の上を見るようにしてそう言った。夕立なのだろうが、それは数分で過ぎ去ってくれるものでもない。
「雨宿り……していって貰って構わないわ」
「……ああ、お言葉に甘えて」
カードキーを取り出しながら雪ノ下はそう言った。まさかまた雨がきっかけになろうとは、彼女だって思いもよらなかったと思う。
エレベーターに乗り、浮遊感すら感じないほどスムーズな上昇に身を委ねて、そして扉は開かれる。雪ノ下の部屋まで、たったの十数歩しかない。
雪ノ下の部屋に入ると、重厚な玄関扉がきっかけを促すようにカチャンと瀟洒に音を立てて閉まる。
「……シャワー、浴びて行く?」
「いや、そんなに濡れてないしな」
いつかのようにビタビタではなく、俺も雪ノ下も髪がわずかに濡れているだけだ。だからそのシャワーの意味は、別の意味にとって変わってしまう。
靴を脱いで、先に部屋に上がる。雪ノ下は自分の部屋なのにどこか戸惑うように、俺から数秒遅れて歩いてくる。
「あー、なんというか、その」
「……何、かしら」
リビングに続く廊下の途中で、俺は立ち止まる。後ろに続く足音も止むと、俺は振り返ることなく問いかける。
「もう覚悟って、出来てるか?」
「……とっくの前に」
振り返ると雪ノ下は不安と熱が入り混じった目で俺を見つめていた。目があった瞬間に、気恥ずかしくてお互いに目を逸らす。
だけどいつまでもそのままではいられない。雪ノ下の覚悟に、俺もまた応えなければいけないから。
* * *
初めて通された寝室は、想像していたよりも雑多に感じられた。具体的に言うと、主にベッドの上が凄い事になっている。
机周りは綺麗に片付いているのに、枕の周辺にはパンさんとかパンとかパンさんが鎮座に鎮座を重ねていた。どんだけ好きなのパンさん……。知ってたけど。
「……」
「……」
窓を打つ、激しい雨音。
その音の最中にベッドに腰掛け、二人でひたすらに沈黙を守っていた。
はっきり言って、始め方が分からない。これがMM号なら「どうする? キスまでだったらしちゃう?」とかあるんだろうが、今この部屋にミッションなどない。
けどまぁ、どれだけ待っていたって雪ノ下からアクションがないのは明白だった。さっきから両手でスカートをギュッと握り込んで、プルプル震えてるし。
俺は覚悟を決めて無言のまま座り直して中途半端に空いたスペースを詰めると、その震える手を上から握った。
「比企谷くん」
その瞬間、俺が何か言うよりも早く、雪ノ下は緊張した声で俺を呼ぶ。
「な、なに……」
「私、凄く面倒くさい人間っていうのは前から分かっていたけど……凄く重たい人間でもあるって事、最近気づいたの」
「お、おう……」
それも知ってたけどね? と茶化せる雰囲気でもなく、まっすぐ床を見つめる雪ノ下の横顔を見ている事しか出来ない。その視線に気付いたのか、雪ノ下は部屋に入ってから初めて俺の顔を視界に捉えた。
「だから私の初めてを奪う責任、取ってね?」
「当たり前だろ」
即答すると急に気恥ずかしくなったのか、雪ノ下は元々赤くしていた頬を更に赤くさせて視線を床に戻した。何か俺もメッチャ恥ずかしいし手汗も背中の汗もヤバい。
そう言えばシャワーすら浴びていなかったが、家につくなり行為の事ばかり考えてしまって完全に忘れていた。しかしもうスタートの合図は出され、俺自身止まれそうにない。
「ん……」
肩を掴むと反射的に目を閉じた雪ノ下に、唇を重ねる。いきなりガッツキ過ぎか? とも思ったが、さっきからいよいよ我慢出来なくなってきている。
いつかのように唇で唇をはむようにすると、雪ノ下もその動きに応じてくる。生暖かい鼻息が頬を撫でる度に、我慢のコップに理性が注がれて溢れそうになっていく。
「……ん。待って」
思わず押し倒そうと力を込めた俺を、雪ノ下はそっと胸を押し返してくる。
「制服、皺になるから」
「……そうだな」
雪ノ下はするりと俺の腕から抜け出てベッドから立つと、ハンガーに上着を吊るした。俺も一瞬遅れて立ち上がると、上着を脱いで隣のハンガーにかける。
「雪ノ下……」
「ん……っ」
そのままその場に固まっている雪ノ下の肩に手を添えると、もう一度その唇を塞ぐ。今度はもっと情熱を持って、ゆっくりと時間をかけて。
そろそろ、だろうか。俺は雪ノ下の唇の中に舌を侵入させると、彼女はビクンと肩を揺らす。けれど俺から逃げることも振りほどく事もせず、おずおずと控えめに舌を絡ませ返してくる。僅かなザラつきが、まるで猫のようだとぼんやりする頭で考える。
「……はぁ」
一体何分そうしていたのか、実際には十数秒のことだったのか。俺にはまともな時間の感覚すら残っていなかった。ただキスが終わって潤いの増した目で俺を見上げてくる雪ノ下を見て、我慢のコップから理性が溢れ出ていくのが分かった。
「あ……」
俺は何も言わずに雪ノ下をベッドに押し倒すと、その上に覆いかぶさる。不安の消えない、潤んだ目で見つめられても、溢れた理性は戻ってきそうもない。
「ん……」
また唇を重ねると、今度はブラウスの上から雪ノ下の身体のラインをなぞっていく。肩に触れ、腕の細さを確かめ、腰のくびれをなぞり、時間をかけて乳房までたどり着く。
「んん……っ」
キスされながら、雪ノ下は身じろぎする。だが俺はそれで動きを止めることはない。そんな事、できる気もしない。
ブラウスと下着越しに触ったそこは、ゴワゴワとした感触の向こうに確かな柔らかさがある。思っていたより、胸はある……のかも知れない。制服の上着まで着ていると特に身体のラインは分かりづらくなってしまうから、こうでもしないと実際の大きさというのは分からない。
「……脱がす、な」
「ん……。はい」
俺は幾分荒くなってしまった鼻息を鎮めるように唇を離すと、雪ノ下のリボンタイをしゅるしゅると外した。襟元のボタンを外し出すと、雪ノ下は真っ赤な顔で俺の手の動きを見つめていた。
胸元が緩く開かれると、黒のブラジャーが彼女の乳房を包んでいる。そうか、雪ノ下の勝負下着は黒なのか……。
「あ……」
しかしこうしていても、ブラジャーは取れない。俺は雪ノ下の腰を上げさせるとスカートの中からブラウスを引き出して、その背中に手を這わせた。瞬間彼女はビクンと背中を仰け反らせたが、その手の動きは止められない。
ホックの部分までたどり着くと、さてどうしたものかと動きを止める。確か摘むように寄せてやれば簡単に外れるのだと、現代小説の一節に書いてあった気がする。いや、本当にただの小説だよ? エロ小説とかじゃないから。
「……慣れているのね」
「んなわけないだろ……」
五度ほどのトライの後に無事ホックが外れると、ぽそりとそう言われて即否定する。慣れていたらきっと一発で外せる気がするぐらい、その感覚は呆気ない。
「あ……」
俺はブラウスの中で手を這わせて雪ノ下の胸を直に触ると、乳首を指で探し当てた。雪ノ下はまたビクンと、さっきよりも大きく反応する。
湯船の中で抱きしめた時に、腕の中に確かに感じたそれを、俺はいまだに見ることなく愛撫していた。雪ノ下はかたく目を瞑って口を抑え、漏れ出そうになる声を我慢しているようだった。
こうして直に触ってみると、やはり思っていたよりもヴォリュームはあって、揉みごたえもある。周りにはっきりと大きいと分かる女の子が多いだけで、年齢を考えたらそれこそこれが普通なのかも知れない。
そんな事を考えながら俺はたっぷり五分は雪ノ下の胸を堪能すると、彼女はもう息も絶え絶えと言う様子だった。薄っすら開いた瞳の奥にはさっきよりも熱と潤みを湛えている。
「……あっ」
俺は雪ノ下の腿を撫でると、そのままスカートの中に手を侵入させる。雪ノ下は脚を組み合わせて抵抗を見せるが、俺がショーツの中に指を入れると力が入らないのかいとも簡単に侵入を許される。
「あ、ん……っ」
指だけで探り当てたその入口は、ぬるりと既に十分な潤滑を得ているように思えた。挿入にどれぐらい必要かは正直分からないが、意外にもしっかりと濡れている。
「こっちも脱がすな」
口元を手で抑えたままの雪ノ下がコクリと頷くのを見てから、俺はスカートの中からショーツを抜き取った。未だ大切な部分は何も見えないまま、俺はまた雪ノ下の入り口に指を這わせた。
「ひぁ……っ!」
その瞬間、抑えていたはずの雪ノ下の口元から喘ぎが零れ出た。頬は赤く、目が潤んでいるのはさっきから変わらない。けれどその姿に、俺はさっきよりもはっきりと興奮していた。
「気持ちいい、か?」
「き、聞かないで……んっ」
再び喘ぎを我慢する雪ノ下の入り口は、やはり十分に湿っていると思う。胸への愛撫だけで、十分に受け入れる準備が整っていたようだった。
さて次はどうしたものかと考えを巡らせていると、雪ノ下はパシと愛撫を続ける俺の腕を掴んだ。彼女は肩で息をするように、荒い呼吸になっている。
「あなたばっかり、ズルイわ……」
えぇ……気持ちよくなってたのは雪ノ下さんの方ですし、ズルくもなにもないと思うんだけど……。
「次は私の番よ」
え、何、どういう事? と俺は視線で問いかけるが、雪ノ下は俺の下から抜けると乱れた衣服を整えた。
「ここに座って」
ポンポンとベッドの縁が叩かれる。これはひょっとして……あれですか、そうですか。
「あー……と。口でシてくれるって事?」
コクッと、恥ずかしそうに、雪ノ下は頷いた。
正直俺のイチモツは何というか、さっきから臨戦態勢だ。何なら雪ノ下をベッドに押し倒したぐらいからガッチガチである。当然今にでも挿入できるぐらいの硬さは有しているが……雪ノ下がそう言うのなら甘んじて受け入れよう。
「と、取るわね……」
雪ノ下は自分からすると言ったのに恥ずかしそうに、俺のベルトに手をかける。指が震えて緩めるのに時間がかかったが、カチャリと音をたてて確かにそれは外された。
「腰を上げてくれるかしら」
「お、おう……。てか、自分で脱ぐから……」
何とも言えない気恥ずかしさを感じながら、どうしようかと逡巡した挙げ句、俺はトランクスごと一気に脱ぎ去った。ブルンッと飛び出した肉棒は、座った状態でも天井を向くぐらい硬くなっている。
「なっ……え? ……え?」
雪ノ下は突如露出された男性器を見て顔を隠し、けれどすぐに指の間からそびえ立つそれを二度見した。
「比企谷くん……」
「はい……」
「何故もう勃起しているの?」
「ぼっ……。そりゃ、興奮したら、勃つだろ……」
それにしても雪ノ下の口から『勃起』というキーワード聞けるとは……。色々はかどり過ぎて、理性の箍など簡単に外れてしまいそうだ。
「あとその大きさはなに? 本当にこれが、入るの……?」
早口でまくし立てていた口調が、この後の事に思い至ったのかスローダウンして声が小さくなっていく。そんなびっくりする事かどうかは分からないが、実際に目の前で見ると相当大きく見えるのかも知れない。
「まあ、入ると思うけど……」
「そ、そうよね……」
雪ノ下は覚悟を決めたのか、顔を覆っていた手を俺の股間に伸ばす。おっかなびっくりと根本を触れられて、思わず声が出そうになる。ビクンと俺の肉棒も反応すると、雪ノ下は思わずといった様子で手を引っ込めた。
「んなビビらんでも……」
「し、仕方ないじゃない。初めてなんだから……」
雪ノ下は赤い顔のまま唇を尖らすと、視線をそむけたまま俺のモノに手を伸ばした。今度はさっきよりもしっかりと根本を握ると、その小さな右手からは半分以上がはみ出している。
「咥えられる、か……?」
「え、ええ……」
雪ノ下はズル剥けになった男性器に顔を近づけてくると、コクンとその小さな喉を鳴らした。そんな仕草の一つ一つが初々しくて生生しくて、何もされる前から爆発しそうだった。
「い、いくわよ……」
「お、おう……」
意を決した雪ノ下はその小さな唇をいっぱいに開けると、俺の肉棒を咥え込んだ。温かな口内に包まれた瞬間、俺のモノはまたビクンと大きく脈打った。
「ん……」
「うぉ、おぉ……」
俺は初めてのフェラチオの快感で、感動に打ち震えていた。正しくはまだ咥えられただけでフェラチオをしてもらっている訳ではないが、あの雪ノ下が俺のイチモツを咥えている、というその光景だけで十分な感動がある。
「う、動けるか……」
「んん……」
コクッ、と雪ノ下は俺の肉棒を咥え込んだまま頷くと、ゆっくりと上下に頭を動かし始める。撫で付けた髪から、ふわりとサボンが香る。
「っ……! 雪ノ下、歯、当たってる……」
「……んっ。……ご、ごめんなさいっ」
甘い痛みに身じろぎすると、雪ノ下は思わず肉棒から口を離した。その温かい場所から抜け出たそれは、ぬらりと唾液で光っている。
「気をつけるわ……。どうしたらいいか、教えてね」
「ああ……」
そう言って雪ノ下は再び俺のペニスを咥え込む。またも天国かと思われるような快楽の園に包み込まれて、俺のイチモツは元気にビクビクと反応する。
「うぉ……。そう、だな……。唇でしごくようにしてくれ」
「ん、んぅ……。ほう?」
雪ノ下は俺の肉棒を咥えたまま、小首を傾げて聞いてくる。正直その姿を見ているだけで、暴発しそうだ。
「そうだ……。う、ぁ……。あと、舌も使ってくれ……」
「ん……。んぅ、ん、ん……」
雪ノ下はコクンと頷くと、ジュプジュプとオーラルセックスを加速させる。たった一分に満たないその行為で、俺の肉棒はもう射精寸前になっていた。
「雪ノ下、ちょ、ストップ、ヤバイ……」
睾丸が上がり、精液が尿道を駆け上がってくる感触が俺を焦らせる。このままでは、間違いなく持たない。
「んっ……。待って、もう少しでコツを掴めそうだから」
そう言うと雪ノ下は最初の戸惑いなどどこに行ったのか、三度口内に俺の肉棒を咥え込む。ジュプジュプと、イヤらしい水音がベッドルームに響く。
「ちょっ、雪ノ下っ、ヤバイ……出るっ!」
ビューッ、びゅクゥッ! びゅっ、ドピュッ、ビュくぅっ、ビューッ、びゅーっ!!
ついに我慢の限界を超えた俺の肉棒は、雪ノ下の口内に包まれたままその中で射精する。強烈な快感が背中を駆け上がり、ドクドクと遠慮なく彼女の口内に生殖液が注がれる。
「んっ、んぅっ!? はぁ……っ。えほっ、えほっ」
ビュクッ、びゅっ、ビューッ、ビューッ!! びゅっ、ドピュゥッ、ドプッ、どプゥッ!! びゅっ、ビュプッ!
喉の奥に精液がかかったのか、雪ノ下は口から肉棒を離してえずいた。その間も俺の射精は止まることなく、雪ノ下の顔や髪、制服のブラウスやスカートにまで白濁液が飛んでいく。
「う、おぉ……」
どぷ、どぴゅ、びゅ、ドピュゥッ!! びゅぷっ、ドプッ、ビュプッ、ドピュゥッ!!
俺はノーハンドで、雪ノ下の至る所に精液をかけていた。自分でも信じられないぐらい大量に射精して、雪ノ下は普段の佇まいからは想像もつかないぐらい凄い事になっている。有り体に言えば……精液まみれだった。
「……あなた……どれだけ出すの? 髪や制服にまでかかったじゃない」
「えぇ……俺ストップって言ったよね?」
言うとそれを思い出したのか、雪ノ下は頬に赤みを取り戻して「それは、そうだけど」とごにょりだした。そう、これは事故だけど、雪ノ下さんにも過失ありですね。
「まあでも、悪い……。汚したな」
「いえ……」
俺はヘッドボードからティッシュの箱を取ると、何枚かそれを取り出して雪ノ下の顔にぶちまけてしまった精液を拭き取る。続いて髪にかけてしまった分を拭くと、雪ノ下は自分でスカートやブラウスにかかってしまった精液を拭き取っていた。
「どうせ洗濯しなきゃだし、脱がすな」
「え……ちょっと」
俺は雪ノ下を立たせると、精液を拭き取る作業の続きのように彼女のブラウスを脱がした。ずっこけたブラジャーから溢れた乳房が、照明の明かりの下で乳首を晒している。
「スカートって、どう脱がすんだ?」
「じ、自分でするから……」
雪ノ下は自分でスカートのホックを外すと、ジィーとチャックを下ろしてスカートを床に落とした。俺はそれを待って脱げかけているブラジャーを取ると、雪ノ下はニーハイだけを残して裸になった。
思わず、見惚れてしまう。
こと普段は顔の美しさばかりに目がいってしまうが、隠されていた彼女の身体は想像よりずっと神々しくて完璧なバランスだった。腰のくびれも、乳房のなだらかな曲線も、細すぎるぐらいの腕も、俺から意識を完全に奪い去るのに十分だった。
「そ、そんなに見られると、恥ずかしいのだけれど……」
「あ……悪い」
「私だけは、不公平よ」
そう言うと雪ノ下は、俺のシャツのボタンを下から外し始めた。別に上だけ外して脱いだ方が早かったのだが、その行為があまりにも甘くて御しづらかったので、そのまま足元にひっかかっていたズボンたちを脱いだ。
たっぷり時間をかけてお互いが裸になると、俺の愚息はまだビンビンと唸りを上げている。
「まだ勃っているのね……」
「まあ、これで終わりじゃないしな」
一度射精したのに勃起が続くのには自分でも驚きだが、目の前に雪ノ下の裸があるのだから仕方がない。今日の目的は、まだ達成されていないのだ。
「っと、ゴムは……」
「あるわよ」
俺は財布のポケットに忍ばせた避妊具を取るべくズボンを拾い上げようとすると、そうするより先に雪ノ下が言った。彼女はベッドの上のパンさんの下から赤いパッケージに『0.01』と書かれた箱を取り出して俺に渡してくる。
えぇ……どこから取り出してんのこれ。しかもこれ薄くて高いやつ……。初めてなのに生感覚になったら、全く我慢できる気がしない。っていうかゆきのん自分でこれ買ったん?
「買ったのかよ……」
「な、何で引いているの。凄く恥ずかしかったのに……」
真っ赤な顔でぼしょりとそういう雪ノ下が可愛すぎて、俺はどうにかなってしまいそうだった。実際我慢できなくて、気づいたら雪ノ下をベッドに押し倒していた。
「あ……」
「着けるから、ちょっと待ってな」
俺は新品の箱からその一つを取ると、アルミの袋を破って中身を取り出した。男性側、と書かれた方をイチモツに添えると、キツイながらもしっかりと包み込まれていく。
「入れる、ぞ?」
コク、と赤い顔で頷いた雪ノ下の脚を広げさせると、ピンク色のそれが僅かに見える。雪ノ下の入り口に大きくなったままのモノを擦り付けると、まだ彼女の中は湿っていた。
「いくぞ……」
「はい……。っ……ん……っ!」
ゆっくりと雪ノ下に押し入って行くと、彼女はギュッと目を瞑る。そうさせるのは痛みからなのか恐怖からなのか、俺には分からない。
「いっ……」
途中でプツッとわずかな感触がして、雪ノ下の表情が苦悶に歪む。思わず腰の動きを止めて、雪ノ下の顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?」
「……っはぁっ……。少し、痛かっただけだから。いいから最後まで……」
入れて、というのはまだ恥ずかしいのか、雪ノ下はそこまで言って言葉を切った。俺は頷いて進入を再開すると、十秒ほどかけて雪ノ下の最奥に辿り着く。
彼女の膣内は、とても狭い。ピッタリと肉棒に密着した襞が、ヒクヒクと脈動するように蠢く度、射精が近くなってくる気がした。まだ挿入しただけで一往復もしていないのに、すでに気持ちいい。
「全部、入ったぞ」
「ええ……。あんなに大きいのに、全部入ったのね……」
感慨深げに雪ノ下は結合部を見て、自分の中に入って見えなくなった肉棒を思い出しているようだった。その間も雪ノ下の膣内は精液を搾り取ろうかとしているように、わずかに蠕動している。
「ねえ、比企谷くん」
「ん?」
結合部から視線を戻すと、雪ノ下は眦に涙を溜めて俺を見ていた。
「今、凄く幸せよ。今まで感じた事もないぐらい」
顔が赤くなってくるのが分かって、俺は誤魔化すように雪ノ下を抱きしめる。彼女も俺の背中に腕を回すと、耳元でそっと囁く。
「好き。……大好き」
「……俺もだ」
そう言って俺は僅かに腰を動かし始める。このままでは、一往復もする事もないまま、暴発してしまいそうだった。
「ん……あ……。俺もはズルいわ。ちゃんと言って」
「は、あぁ……。好きだ」
その言葉を実際口に出してみると、バカみたいだと思ってしまう。たった二文字で伝わる想いなんか、とうの昔に過ぎ去った。
「うん……。あ……」
「めっちゃ好きだ。好きって言葉じゃ足りないぐらい、好きだ」
だから二回も、三回も。何十回、何百回──。いや何千回、何万回と伝え続けて、ようやく俺の想いは届くのかも知れない。
生憎日本語は想いを伝え切るのには、あまりに言葉が足りないから。一生言い続けて、ようやく伝わるのだろう。
「あ、あぁ……。私、もっ……好き……っ」
次第に腰の動きが速く大きくなってきても、雪ノ下は俺の動きを止めようとはしなかった。気になって身を起こして見ると、まだ表情には痛覚が残っているように感じる。
「はぁ、はぁ……痛く、ないか?」
「少しだけ……でも、大丈夫だから、続けて……。あ……っ」
見つめ合いながら腰を動かすと、いよいよ我慢できなくなってくる。さっきあれだけ大量に射精したばかりなのに、目の前で切なそうに微笑まれたり、慎ましやかな乳房が揺れたりしているのを見せられて、まったく持ちそうにない。
「早いけど……出していいか?」
「あぁ、ん……っ。いいわ、出して……あっ」
俺は雪ノ下の腰を両手で持つと、ズンズンとその最奥を突き始める。もっと彼女の痛みに寄り添わなくてはいけないと考えつつも、腰が止まらない。
「は、ぁ、うぉ……雪ノ下、出るっ……イクぞっ……!」
「あ♡ ん……。出して、私の中で……あ♡ あぁっ♡♡」
ビュプゥッ、びゅっ、ビューッ、ドプッ、ビュルルゥっ!! びゅっ、ビューッ、びゅるっ、ドプッ、ドプゥッ!!
雪ノ下が一際大きな声で喘いだ瞬間に、俺は彼女の膣内で射精した。正確には0.01mmの薄い壁の中に、ビュービューと肉棒を暴れまわらせて精液を発射する。
「はぁ、あぁ……」
「あぁ……♡ 比企谷くんの、凄く、動いてる……」
ドピュゥッ! びゅっ、ビューッ、ビュクンッ、どぷっ、ドピュッ!! びゅっ、ビューッ、ビュクンッ、どぷっ、ドピュゥッ!!
俺は雪ノ下に実況されながら、その狭すぎる膣内でドクンドクンとゴムの中に射精を続けていた。彼女に抱きしめられながらする射精は、今までのどんな射精とも違う、強烈な快感だった。
「は、あぁ……抜くな」
「えぇ……。あっ」
ヌルんっ、と射精の終わったペニスを引き抜くと、コンドームの先には二センチほど精液が溜まっていて、その外側に血がまとわりついていた。あまりにも生生しい、処女喪失の証だった。
「見せて」
俺が使用済みのコンドームの口を縛ると、雪ノ下がそれを受け取る。まじまじと精液がたっぷり溜まった避妊具を、雪ノ下は感慨深げに眺めていた。
「二回目なのにこんなに出すなんて……。避妊していなかったら、妊娠していたかも知れないわね」
おかしそうにそういうと、雪ノ下はふと俺の股間をみてまだそれが固さを失っていない事に気付く。っていうか俺も今気づいたよ。なにこの絶倫くん……。
「どうしてまだ勃起しているの……」
「いや、まぁ、分かんないけど……。まあ帰ってから抜いとけば収まるだろ」
「駄目よ」
急に真面目くさった顔をして、雪ノ下は俺の発言を否定する。
「無駄打ちは禁止よ。私とする時以外は、駄目」
「えぇぇ……。それキツくない?」
曲がりなりにも俺は健全な男子高校生で、更に本日めでたく絶倫スキルまで得たというのに……。男子高校生の性欲、舐めたらあかんぜよ。
「私がちゃんと処理してあげるわ」
言った後に恥ずかしくなって来たのか、俺の目を見てそう言った後に雪ノ下は目を逸らした。というか今まさにここに、処置待ちの案件があるわけだが。
「えーと、じゃあこれは?」
「も、もちろん、ちゃんとするわ」
雪ノ下は再び勃起したままの俺の肉棒を見ると、覚悟を決めるように唾を飲み込んだ。流れるように細い指を俺のお腹に滑らせると、ビンビンになったままのそれを握る。
「手でもいい?」
「お、おう……」
マジか、ちょっとまた口でシてもらうのを期待してたんだが……。まあさっき暴発して色々ぶちまけてしまったので、今日は難しいかも知れない。
俺が頷くと雪ノ下は半分身を起こして、シコシコと硬くなったままのペニスを上下に擦る。いわゆる、手コキである。
「いつもこうなの?」
「いや、こんだけ元気なのは、初めてだ」
「そ、そう……」
自分から聞いておいて、雪ノ下は恥ずかしそうに視線を逸らす。何だこの天使……可愛すぎるしやっている事がエロ過ぎる。
「そういやさっき口に出しちゃったけど……あれどうしたの」
「あれ、って?」
「いやほら、口の中に出しちゃった分……」
俺は雪ノ下の顔にかけてしまった精液を拭いている間も、口から精液が出された様子を見ていない事を今更思い出した。これは、ひょっとして。
「飲んだけれど?」
「マジか……」
何でそれ、舌の上に精液のっけて「こんなに出たよ?」ってしてからやってくれないのかね。ゴックンの定石でしょ。あねのんの動画の内容はどうなっているのかしら。
「普通は飲むものではないの?」
「いや、まぁ……大体飲むと思う」
これでゴックンしてくれなくなっても何だか損な気がするので、俺は適当ぶっこいてはぐらかす事にした。飲めるなら飲んだ方がいいよね。精液浴びると幸福度が上がるって言うし、経口摂取の方が効果が高いだろう。多分。
「じゃあ次も……」
「それはイヤよ」
雪ノ下はシコシコと俺の肉棒を擦りながら、思いっきり拒否した。ひょっとしたら今日初めての拒絶かも知れない。
「あんな量、全部飲めるわけないじゃない」
「いや、まぁ、そうですよねー……」
俺は雪ノ下に呆れられながらも擦られて、段々と射精が近くなって来るのを感じていた。初めてのエッチの後にこんなプレイって、雪ノ下は性行為の才能が有りすぎて怖い。特に今後の成長が。
「そろそろ、イキそう……」
「ええ、今度はちゃんと見ていて上げるわ」
幾分余裕が出てきたのか、雪ノ下はふふっと妖艶に笑うとペニスを扱く動きを激しくさせる。流石にこのイヤらしさは、完全に想定外だ。
「あー、やばい、出る……。イクっ、うっ!」
「いいわよ、出して……。きゃっ!」
ドピュゥッ! びゅっ、ビューッ、ビュクンッ、どぷっ、ドピュッ!! びゅっ、ビューッ、ビュクンッ、どぷっ、ドピュゥッ!!
雪ノ下が射精の許可を出した瞬間に、俺のペニスからザーメンが放出される。射精の瞬間を覗き込むようにしていた雪ノ下の顔に、再び精液がかかる。
「うぉ、おぁ……」
「ちょっと、顔に……。まだ出るの?」
ビュプッ、びゅっ、ドプッ、どぴゅっ、ビュルルッ、びゅーっ、ビュッ、ドプゥッ!! びゅっ、ビュルルッ!! びゅく、ドピュッ、びゅっ、ビューッ、ドピュゥッ!!
雪ノ下に呆れられながら、俺はそのほとんどを自分の胸板や腹筋の上に撒き散らしていた。その間も雪ノ下の手コキは止まらず、彼女の親指にはドロッと白濁液が垂れていた。
「本当に信じられないぐらい出すのね」
雪ノ下は射精が終わったのを待って、ペニスと自身の指にかかった精液で出来た糸を見せながら言う。雪ノ下の頬と唇の端には、飛びすぎた精液がかかっていた。
「いやー、まあそうね。自分でもびっくりだわ」
俺は再びティッシュを取ると、雪ノ下の顔にかかってしまった精液を拭き取った。よく見たらいつも髪を結っている赤い小さなリボンにまで白濁液がかかっていて、申し訳ない気持ちを感じながら拭き拭きする。
「本当に……全部処理しきれるかしら……」
独りごちながら雪ノ下もティッシュを取ると、俺の身体にかかってしまった精液を拭き取ってくれる。甘い……というにはいかんせんイカ臭い時間が流れていた。
「ねえ、比企谷くん」
「ん?」
俺たちはすべての精液を拭き終えると、自然とベッドに横たわる。雪ノ下はもう、自分の裸を隠そうともしない。
「…………」
沈黙のままじっと見詰められると、何か試されているみたいだ。これは俺から何か言うべきなのか……と考えあぐねていると、おもむろに彼女はその完璧な造形の唇を開く。
「……大好き」
そう言うとお互いの柔らかい部分で、さっきよりも高くなった熱を交換する。
雪ノ下は子猫が親猫に甘えるように、俺の腕に頭を乗せた。優しく細められた目に視線が吸い寄せられて、心臓は再び高鳴り出す。それを誤魔化すように雪ノ下の髪を撫でると、彼女は気持ちよさそうに瞼を閉じる。
そうやってずっと、ずっとそうしていたいと。
俺は柄にもなく、そう思った。目を瞑った雪ノ下は幼い表情で眠っているようで、それでいて祈っているようも見える。
いつしか、窓を打つ雨音は止んでいる。
やがて彼女の寝息が聞こえてくるまで、それほど長い時間はかからなかった。