決戦のための準備は進みつつあった。飛行体のみならず各艦が自分の腕を上げるために連成に日々励んでいた。戦艦は数少ない水上打撃能力を十分に活かすべく射撃精度の向上に努めていた。その中でも大和は最大の戦力として君臨しており残存戦艦を束ねる存在であった。
???「へーイ、大和!!おはようございマース。」
大和「金剛さん、おはようございます。」
金剛「今日も電探射撃の訓練ですカー?」
大和「はい。決戦までに精度をもっと上げないとダメですからね。」
金剛「イェース!!一撃必中ネー。」
大和と話しているのは戦艦金剛である。現在、日本で生き残っている戦艦はここにいる大和と金剛のみである。最近は以前本土で取り付けられた電探による射撃訓練を中心に行っていた。これまで日本側は電探装備に欠いていたた。一方で、深海棲艦側は電探を駆使した攻撃や防御を行ってくる。この深海棲艦の電子装備にこれまで多くの日本艦が沈んできた。
この2艦に搭載された電探は二号電波探審議二型、通称22号電探である。性能的には距離はともかく角度の精度が甘く敵側のレーダーの性能には遠く及ばないものの観測機などと組み合わせて使用することで高い精度を出そうと試みられていた。また、夜戦においても敵の接近を早期に検知できるためレーダー射撃による奇襲を避ける効果も期待されていた。
大和「この装備のおかげでようやくこの46cm砲を活かすことができます。これまでは長距離では威嚇程度にしかなりませんでしたから。。。」
金剛「私はその威嚇に何度も助けらマシタ、でも、これからはもっと心強くなるネー。」
大和「はい。これでようやく皆さんを守る事が出来ます。この電探を使えば私に敵の注意を引くことも出来ますし、、、金剛さん??」
金剛「大和、、、まだ自分を犠牲に他を守ろうと考えてるデスカ?」
電探は相手に電波を当て帰ってきたものを解析することで距離や角度を測定するものである。よって、相手に向けた電波を探知されれば逆にこちらの位置を露呈してしまうことになるのである。実際、これまではこの逆探を恐れて電探の開発が行われてこなかった。大和は意図的に敵に逆探させ自分を標的にしようと考えていたのである。
金剛「私なんて何も守れなかったデス。榛名を、比叡を、霧島を、、、大和にはまだ信濃がいるネ。そんなことをしたら信濃が悲しむネ。」
金剛が大和の肩に手を置いた。
金剛「大和は私の自慢の後輩デース。そんなことをしなくても勝てますヨ。」
大和「金剛さん、、」
???「大和ねーさん!!」
大和と金剛がそんな会話を遮るように大和をよぶ声が遠くから聞こえてきた。
金剛「噂をすればなんとやらデース。」
そう言うと金剛はその場を後にした。大和、信濃の姉妹水入らずの時間を邪魔しないようにとの配慮であった。少しした後、金剛は楽しそうに会話する大和と信濃を見ながら物思いに耽っていた。その目には少しだが潤んでいた。そう、金剛にとっての最愛の妹達はもういないのである。。。
敵の電探に対する対策が必要なのは何も戦艦だけではなく空母も同様である。空母の場合、こちらの攻撃が早期に探知され迎撃されてしまうため航空機の消耗が激しいのである。前回の戦いではそもそも敵の航空兵力が少なかったため問題にならなかったが、マリアナではそうはいかないだろう。特に今生き残っている空母の多くは太平洋戦争でのマリアナを経験しているため尚更意識せずにはいられなかった。太平洋戦争でのマリアナ沖海戦では敵のレーダーにこちらの攻撃が早期探知され攻撃隊のほとんどが打ち落とされてしまった。これをマリアナの七面鳥撃ちと呼ぶことがあるほどである。今度はその徹を踏まぬようにある秘策を練っていた。
ガジ「もっと低く飛べ!!じゃないと敵の電探に探知されるぞ。」
普段、温厚なガジだが訓練になると途端に厳しくなる。それも実戦で生き残って欲しいという思いの現れでもあった。
雷撃機A「はい!!」
ガジ「よーし。海面を恐れるなよ。」
今、航空隊は戦爆雷連合の編隊飛行訓練を実施しているがその高度はあまりにも低い。通常、4000~6000m付近で飛行するところを1000m以下の低高度で編隊飛行してるのである。これが敵のレーダー網を突破するための秘策である。レーダーの電波は直進するため水平線の向こうは見ることができないのである。よって、低く飛べば飛ぶほど敵がこちらを発見するのが遅れるのである。敵の防空はレーダーに頼り切りになっているためその隙を突くのである。
その訓練の中、龍鶴は戦爆雷連合の上方、高度4000mを単機で飛行していた。低高度で飛ぶと確かに敵のレーダーにも探知されないがこちらも敵を発見しづらくなる。そこで、龍鶴が先導機として哨戒を行っていた。これだと、他の機にコックピットをのぞき込まれ人間が乗っているとバレずに済む。龍鶴の役目は敵艦隊の捜索と味方の誘導である。当然、龍鶴の機体は敵のレーダーに探知されやすいが編隊で飛行するのに比べれば探知を遅らせることが出来るだろう。計画では敵艦隊まで50km地点で龍鶴のいる高度まで上昇し敵の機動部隊を奇襲することになっている。
龍鶴「あの時、この作戦がとれるほどの練度があれば。。。」
龍鶴がいうあの時とは当然、マリアナ沖海戦のことである。太平洋戦争でのマリアナ沖海戦時には航空隊にこのようなことができる練度はすでに無くなっていたが、もし実行できるだけの練度があれば結果も違ったものになっていたかもしれないという思いがあるのである。また、瑞鶴もこの訓練に強い思いで臨んでいた。
瑞鶴「この作戦なら、、、もうマリアナの七面鳥撃ちなんて言わせない。」
瑞鶴もマリアナ沖海戦の経験者であり、あの敗戦の記憶を消そうとしても消えない。瑞鶴、龍鶴ともに思いは同じであった。あのマリアナを乗り越える。
決戦の日は刻一刻と迫っていた。