爽やかな朝だった。
青空の下でエールでも飲みながら、うたた寝に興じたくなるような朝だ。
ルシアは、たっぷりと睡眠を取ったあとのすっきりとした寝覚めのまま、キッチンに立っている。
あれから一日半が経過していた。
ルシアは宣言通り、昨日は昼を過ぎても目を覚まさなかった。
ルシアはアバナホールの再調査以来、一睡もできなかった上、何も食べていないまま触手セックスにのめり込み、そのまま失神している。
さすがに触手セックスで体力を使い果たしたルシアを、淫魔の鎧は無理に起こしたりはしなかった。
コンロに乗せられた鍋の中には、朝食には似つかわしくない重厚な料理が温められていた。
保冷庫購入の勢いで奮発して買ってきた食用として育てられた牛のスネ肉が、赤ワインをふんだんに使って煮込まれている。
ローリエの香りが鼻孔をくすぐり、赤ワインの芳醇な香りが食欲を掻き立ていた。
テーブルには、柑橘系の果実を淫魔の鎧が触手で搾ったフレッシュジュースと、朝一番で買ってきた焼きたてのパンが並べられている。
ルシアは牛スネの煮込みを皿にたっぷりと取り、二日振りの食卓へと運んでいった。
朝からこのような時間のかかるメニューを、作ることなどできるはずもない。
いくら材料を切って煮込むだけとはいえ、手軽なメニューとは言い難かった。
ルシアは、柔らかく煮込まれた牛肉を咀嚼しながら、淫魔の鎧への感謝も噛みしめていた。
昨日の昼過ぎ、絶頂失神に続く眠りから覚めたルシアは、起きるなり淫魔の鎧にリプレイをおねだりした。
前の晩は淫魔の鎧の優しさにイかされるばかりだったが、せめて淫汁カクテル以外にも何かの形で返せるものなら返したい。
淫汁カクテルと引き替えに犯してほしいと言ったが、自分が気持ちよくなるだけではなく、淫魔の鎧にも気持ちよくなってほしいとイかされながら思っていた。
そう思ったルシアは、目を覚ましたときに思いついたことを実行しようとしていた。
決して触手セックスに溺れ、また失神まで責めてほしかっただけではない。
そう。責めてほしかった。だが、それだけではない。
淫魔の鎧は常に愛液と腸液を吸収するため、ルシアのおまんことおしりの穴に触手を挿入しっぱなしている。
それは、ルシアが失神していようが、戦闘中だろうが、今だってそうだった。
ルシアは、この二本の触手は淫魔の鎧にとって、重要な器官だと考えていた。
さらに、触手セックスの際におまんこやおしりの穴が締め付けると、明らかな反応を見せることもあり、触覚があることは間違いないとルシアは思っていた。
そして、以前の触手セックスの際には、別の触手にフェラチオを強要されたような記憶もあった。
つまり、ルシアはその二本の触手に、お口を使ってのご奉仕をしようと考えていた。
幸いなことに、淫夢での自分やレミルとのふたなりセックスで、嫌というほどフェラチオの良さを思い知らされていたし、思い知っていた。
決してご奉仕だけでなく、お口も気持ちいいからだなんて、ルシアは思っていない。思ってないったら思ってない。
ルシアはそれを口にすることなく、淫魔の鎧に昨夜のリプレイをおねだりしていた。
そして、そんなルシアの提案を、淫魔の鎧が断るはずもなかった。
ルシアが何も食べていないことは気にかかるが、セックスの前に食べ過ぎて途中で気分が悪くなっては本末転倒だ。
食欲を満たしたことで、性欲まで霧散するようなことがあっては元も子もない。
ルシアの食事は、セックスのあとにゆっくり摂ればいいと、淫魔の鎧は考えた。
結果として、ルシアはご奉仕までたどり着くことなく、触手に屈服させられて完全失神状態に追い込まれた。
やっぱり触手には勝てなかったよ。
今朝のメニューは、ルシアが失神したあとに、淫魔の鎧が触手を伸ばしてこしらえたものだった。
それを嬉しそうに食べながら、今朝こそはとルシアは思ったが、今日はやることが山積している。
淫魔の鎧へのご奉仕は、まだお預けになりそうだった。
ほぼ三日振りのまともな食事を済ませたルシアは、シャワーを浴びることにした。
淫魔の鎧が身体を清めてくれているとはいえ、やはり淫汁まみれになったあとは気分的な爽快感もほしかった。
「ねえ、お部屋でえっちなことするときなんだけど。なんでキミは姿を消しちゃうのかな? 初めて会ったときみたいに、服の内側からできるんでしょ?」
シャワーを浴びながら、ルシアはふと思いついた疑問を口にする。
別に服やアーマーを着たまま、ヤりたいわけではない。
わざわざ姿を消す理由を知りたいだけだった。
「ああ、そのことか。まず、ご主人。金属に囲まれて、のたうち回りたいか? 外には聞こえないようにしても、ご主人には金属の擦れ合うがちゃがちゃした音は聞こえちまうんだ。覚えてると思うが、あれはうるさいし、興ざめだろ?」
ストレートな答えが返ってきた。
確かにその通りだ。
「そうだよねぇ。キミを着てるときって、軽いし、ぴったりだからそれは気にならないかもしれないけど、確かにうるさいよね。だから、もう二度とクオムには聞かせないでよねっ! でも、部屋着ならそんな音、しないよね? 邪魔じゃないの?」
淫魔の鎧の言葉に納得しつつも、ルシアは恥ずかしい過去を思い出して赤面してしまう。
そして、アーマー状態でなければ、その理由もないことに気が付いた。
「ああ、それは簡単だ。服になってると、自由度が減るんだよ。ご主人が着ているアーマーも服も、触手の形態変化なんだ。アーマーや服の外に触手を伸ばすのは、着てる形が崩れちまうかもしれないから、なかなか難しいんだよ。緊急時ならともかくな。あとは、ルシアのきれいな裸は、誰だって見たいだろ?」
いちいち納得しながらルシアは聞いていたが、最後の最後にとんでもないことを言われて戸惑ってしまう。
「え? そんなこと……ないよ。……ボク、おっぱいちっちゃいし……レミ姉みたくないし、クオムだって……ボクよりスタイルいいし……」
形のいいおっぱいを見下ろしながら、ルシアは二人に対する劣等感を口にした。
「おいおい、ルシアのおっぱいは言うほど小さくはないし、おしりもそうだけど、相当きれいだぞ。それに、おまんこずぼずぼしてるときには、ちゃんと揺れてるだろ? ちっちゃいって言うのは、そのときに揺れもしないのを言うんだぞ、ほら」
おっぱいは大きければいいというものではない。
手に余るという言葉は、そのためにある。
だらかといって、大きすぎるということはない。
そして、小さければだめでもない。
男にとって、おっぱいとはそれだけでありがたいものだ。
個人的な好みはともかく、なぜ、人はおっぱいの大小に優劣を付けるのか。
きちんと育ってきた身体は、数値に関わらず美しい。
淫魔の鎧の触手がルシアのおっぱいを下から支え、ゆっくりと揺らした。
「やんっ!♥ ああっ!♥ いまはだめ。ボク、また明日まで起きられなくなっちゃう。きゃんっ!♥ ボクのおっぱい、きれいって……ありがと……ひっ!?♥ ひゃうぅぅぅ……♥」
おっぱいを触手に触られたルシアが、可愛らしい悲鳴を上げる。
優しいタッチに、昨日と一昨日のとろかすような触手セックスの記憶を、即座に思い出され、秘裂の中が熱くなってしまった。
おっぱいを揺らされただけでなく、シャワーの熱でピンク色に染まった乳首を弄くられ、ルシアは甘い声を抑えられない。
そんなことを言われたせいか、今朝からはいやに視線を感じる。そんな気がした。
「心配するな、ご主人。今はやらないさ、今は。今日はやることがあるんだからな」
いくら淫魔の鎧でも、さすがにそれくらいは弁えている。
おっぱいから触手を離し、それ以降ルシアのシャワーを邪魔することはなかった。
勿論、今のタッチでにじんだ愛液の吸収を、忘れるような淫魔の鎧ではない。
シャワーから戻ったルシアは、斬撃による快感の抑制実験について、淫魔の鎧と相談していた。
とりあえず、アバナホールへの進入と周辺の素材採集がが禁止されている現状では、できることが少なかった。
ルシアは、もう慣れてしまった何もいない空間への問いかけをしながら、実験の手だてを考えている。
「立ち木をぶん殴っても、だめな気がするんだ。オーガの棍棒を剣で受けたときは、気持ちよくならなかった。剣で何かを斬らないと、実験にはならないんじゃないかな?」
体験を元に、ルシアは話している。
間違っても、辻斬りをしようなどとは、考えてもいなかった。
「正直に話して、試し斬りやらせてもらうか? リーガ工房で」
まずはひとつ、反対されると分かってはいるが、もっとも現実的な案を淫魔の鎧は提示する。
さすがに事情を知らない人の前で、失神するわけにはいかないだろうとは思っていた。
「それは、嫌。キミがいるから、もしイっちゃってお漏らししても、見られることはないと思うけど、……レミ姉とえっちなことしてたときなら、ともかくだよ」
やはり、見られることはないと解っていても、人前でお漏らしなどしたくはない。
万全の準備を整えて、セックスに望むならまだしもだった。
「となると、モンスターを捜すのも危ないしな……」
勿論、現状でトロルやオーガ程度が、淫魔の鎧にとって脅威になどなりはしない。
レジェンドクラスのドラゴンや、生まれ故郷の魔界に住む最上級の魔族でもソロで倒すというのならともかく、今ならアーマーから伸ばした触手で縊り殺せる。
数が多ければひとつずつ縊るのではなく、触手を槍に変えて眉間でも貫いておけばいい。
シャワーの際に言ったように、触手をアーマーの外で自由に操ることには困難を伴うが、今の淫魔の鎧であれば何とでもなる。
もっとも、ドラゴンでも最上級の魔族でも、造物主であるインキュバスキング・アダムであろうと、ルシアを素っ裸にして防御を捨て、持てる力を攻撃に全振りすれば、何とか倒せなくはない。
アダムが持てる力を全て注ぎ込んだだけではなく、サッキュバスクイーン・リリスの悪ノリの結果だった。
たまたま、娘であるサッキュバスプリンセス・リリムに関して些細な夫婦の諍いがあり、それが淫魔の鎧を史上最強にしてしまった原因だったなど、口が裂けても言えないことだ。
だが、それを証明していない以上、町の外へ探索に行くことを、ギルドが許可するとは思えなかった。
「だよなぁ……。んじゃ、俺を斬れ」
ごくあっさりと、淫魔の鎧が言い放った。
「うん。……ええっ!?」
軽く返事をしてしまったルシアが、一瞬絶句して聞き返した。
いつも声がするあたりとおぼしき、左胸の乳首のあたりに視線を落とす。
目があった。
目が合った。
「っ!?」
ルシアは息を飲んで、左胸の隆起の頂点、乳首のあたりを見つめた。
ルシアの握り拳よりやや小さめな、切れ長の目がひとつ、そこからルシアを見上げている。
黒曜石のような漆黒の瞳が、窓から射し込む太陽の光に瞬いていた。
睫毛を持たない瞼は、柔和や穏やかとは無縁の、邪悪ともいえる形状をしているが、ルシアは不思議と嫌悪感を抱かずにいる。
その目がルシアを見上げて、笑っていた。
「めええええええええええっ!?」
やや間をおいて、ルシアの絶叫が部屋に響いた。
さっきまでは、なかったはずだ。
朝食の準備でキッチンに立ったときも、視線が下を向くことがあり、そのときには服の上には何もなかったと思う。
これほどはっきりした目があれば、その時点で気付かなければおかしい。
ルシアは、何度も自身の目を擦っていた。
「どうした、ご主人? ご主人は、あれか、ヤギさんだったか?」
形を歪めた目が、笑いながら聞いてくる。
だが、そんな目を見て笑い事ではないと、ルシアは思っていた。
探索者仲間やギルドの職員、この宿の関係者などの近しい人なら、淫魔の鎧は知られた存在だ。
今さら目のひとつやふたつ増えたところで、説明さえすればそれで済む。
だが、淫魔の鎧を知らない町の人々が、服やアーマーの上で瞬きする目を見たらどう思うか。
それを思うと、ルシアは頭がくらくらしてきた。
「何なのさ、その目はっ!? さっきまでなかったよねっ!? こんな妖しい服着て町を歩いたら、どうなると思ってんのさっ!?」
間違いなく、騒ぎになる。
下手をすれば、異端扱いだ。
淫魔の鎧のアイデンティティがどうであろうと、目を隠せるオーバーコートを買うと、ルシアは決めていた。
買うまでどうやって隠すかまでは、頭が回っていなかったが。
「ああ、これか?」
淫魔の鎧が、ウインクしてみせる。
きちんと顔を形成してあれば、それなりに魅力的なのかもしれないが、布地の上で目だけが瞬きしても、不気味にしか見えなかった。
「可愛くないっ!」
一言の元に、ルシアが切って捨てる。
ふたつの目が揃い、片方だけが瞬きすることで、初めてウインクは成立するものだ。
今のままでは、ただの瞬きでしかなかった。
少しだけ胸元の目が、悲しそうな目つきになった。気がする。
「いや、別に可愛くしようとしたわけじゃ……。まあ、それはどうでもいいんだが。伝えておくのを忘れてた。済まない、ご主人。それから、普段はご主人の許可がないところでは、ただの模様でいるから心配は無用だ」
ほんの僅か悲しそうな声のあと、ルシアの心配を氷解させる言葉が続く。
たしかに瞬きさえしなければ、少々奇抜なデザインといえるかもしれなかった。
「あ、そうしてくれるなら、ボクは助かるけど……。でも、なんで急に目が出てきたの?」
ルシアはそれも気になっていた。
これまで淫魔の鎧に目があることは、一言も聞いていない。
何がきっかけで発現したのか、聞いておかなければ不安だった。
この先、目が増え、鼻が浮かび、耳が生えて口が裂けてきたら、もうそれは外になどでられなくなる。
「ああ、実はな、この目が俺のコアなんだ。今までは、まだただの主従関係だったからな。一昨日の夜、ご主人が俺を受け入れてくれただろう? それから、昨日は何をしようとしたかは知らないが、俺に見返りを求めない何かがあったんだろう? それで、やっと完全体として復活できたんだ。心から礼を言う。ありがとう。感謝の極みだ、ご主人様」
出会ってからは、愛液や腸液と引き替えに、ルシアに魔力を供給するという契約の下に、二人の関係は成り立ってきた。
その時点でも防御力に関していえば、淫魔の鎧は史上最強を誇っていた。
だが、二人の関係が契約を越えた信頼関係に成長することが、淫魔の鎧が持つ最大の力が発現するトリガーとして隠されいた。
だてにインキュバスキングとサッキュバスクイーンの夫婦による共同作業の成れの果てではなかった。
ルシアが淫魔の鎧に頼り切っているだけでは、このトリガーが発動することはなかった。
存在を受け入れ、見返りを求めない心で接することが、トリガーの発動条件だった。
「え、そう、なの? じゃあ、それ以上は増えない?」
一昨日以来の淫魔の鎧に対する発言や、昨日の気持ちを思い出し、ルシアは思い切り照れてしまった。
顔を真っ赤に染め上げたルシアは、恥ずかしさのあまり素直な言葉が出てこない。
「何を心配してるかは知らんが、これだけだぞ。だいたい、アーマーに顔があるなんぞ、美的にもおかしいだろうに」
胸元に目を意匠したレリーフがひとつであれば、充分にデザインとして通用する。
だが、胸当て部分全体に顔のレリーフを施すなど、狂気を疑われてもおかしくないデザインだ。
ましてや、それが瞬き、匂いを嗅ぎ、音を聞いてしゃべるなど、どんな呪いのアイテムかと、淫魔の鎧自身がそう思う。
なによりも、そんな不気味な外見でいることは、インキュバスキングとサッキュバスクイーンの誇りと美的感覚が許さなかった。
「あぁ、よかった。もう外に出られないかと思ったよ。でも、そっか。うん、改めてよろしく、ボクの大好きなアーマー様」
ルシアの心が、淫魔の鎧を封印から完全に解き放っていた。
そのことが嬉しくなったルシアは、改めて一昨日の夜に言ったセリフを口にする。
決して恋愛感情ではないが、それ以外に適切な言葉をルシアは思いつかなかった。
「それで、さっきの俺を斬れってのは、どういうことなのさ? ボクにそんなこと、できると思うの?」
能力と心情の両方から、ルシアは話を元に戻した。
フロストジャイアントが力任せに引き裂こうとしても、ビクともしないと聞かされた淫魔の鎧を、どれほどブーストされていようとルシアの腕では斬れるとは思えない。
そして、大好きと評した相手に剣を向けるなど、ルシアにはできるはずもなかった。
「そこは心配する必要はない。触手を斬れ、ご主人。魔力で作った触手をいくら斬られようと、俺にダメージなどないからな。魔力は常時補給されているから、いくらでも作り出せるぞ。ほら」
ルシアは左のおっぱいの上から、魔力が肌の上を駆け抜けていく感覚を捉えた。
そして、肩胛骨のあたりに、ぞわりとした気配を感じる。
一瞬の間をおいて、ルシアの視界を蠢く無数の触手が埋め尽くした。
「……っ!? ……なに、これ? ……どう、なってんのさ? ……どこから生えてるの?」
蠢く触手の群れに、ルシアは思わず息を飲む。
肩胛骨のあたりを基点に、魔力が外に向かって流れるのを感じていた。
まさかとは思うが、自分の肉体から生えているのではと、ルシアは不安に囚われている。
同時に、この触手全てに責められたらと、愛液を無意識に溢れさせてもいた。
「まあ、全力でやると、この部屋が弾けて宿ごと消し飛ぶからな。今は、こんなもんだ。ご主人の動きを邪魔しないように、肩の後ろから服を変化させてある。昨日までなら服の形がおかしくなるところだったがな。今なら布地の量は減るが、バランスを取りながらできるぞ」
得意げな言葉が伝えられ、胸元の目が笑ったように細められた。
そして、ルシアにとって、少々気になる言葉も伝えられている。
「はあ~、すごいね、これ。で、布地が減るって、どういうことさ。まさか、いつかみたいに人前で裸に……」
とりあえず、感嘆の言葉を伝えてから、ルシアは気になる部分を尋ねつつ、胸元の目に視線を落とす。
さっきシャワーを浴びたあとからは、身体の線が見えない、ゆったりしたワンピースになっていたはずだった。
ルシアの視界に、胸元をざっくりとV字にカットされ、乳首のギリギリまでおっぱいをさらけ出し、ぴっちりと身についた、そして太腿を露わにしたワンピースが映っていた。
いっそ、全裸よりギリギリで隠されている分、かえって扇情的なデザインだ。
どこからどう見ても、露出過剰の痴女です。どうもありがとうございました。
「……。あは。バカバカっ! キミのバカああああああああああああっ! こんな格好じゃ外歩けないよおおおおおっ!」
ルシアの罵声が部屋に響いた。
幸い、淫魔の鎧による防音は完璧で、クオムの読書とレミルの情事を邪魔することはなかった。
「さて。それじゃ、やってみな、ご主人」
宿の裏庭を借りたルシアと淫魔の鎧は、剣の素振りを終えていた。
過去の主人だった剣豪の動きを触手のサポートでトレースし、一旦基本からやり直すことにルシアは決めていた。
やはり我流で振り回していた剣筋は、無駄が多く敵に避けられやすい。
基本に忠実な剣は、百戦錬磨の相手には読まれやすいといわれるが、ルシアにそのような相手と戦う予定などあるはずがない。
そんなことは騎士団や、戦争屋である傭兵にでも任せておけばいいことだ。
ルシアが相手にするのは、ダンジョンに湧くモンスターであり、剣の技を競うことが目的ではない。
基本に忠実であれば、困ることはない。
ルシアの目の前には、ゴブリンやコボルドが数体いた。
特に襲いかかってくることもなく、その場に佇立している。
ルシアの肩から伸びた触手が一旦地面に潜り、適切な距離を取って作った試し斬り用の人形だった。
「うん……。走ったときに、後ろに引っ張られたりしないよね?」
ルシアは身体を捻ったり、前屈したりしているが、肩に抵抗や違和感はなかった。
それでも、走ったときにどうなるか、剣を振ったときはどうなのかと、不安は残っている。
「大丈夫だ、ご主人。その触手は伸縮自在にしてあるからな。ご主人の動きを阻害することなどないぞ」
得意げな声が聞こえてきた。
胸元の目も、自信のほどが窺えるような目つきになっている。
「うん。キミのことは信じてるけど、やっぱり初めてのことは不安だよ。で、斬った瞬間に、ボクの魔力を吸い上げるんだよね? いきなり全力は怖いから、最初は軽くやってみるからね」
そう言ってルシアは剣を抜く。
そのまま手近な触手ゴブリンの前まで歩き、上段に振りかぶって剣を振り抜いた。
触手を剣が切り裂き、ルシアの身体に快感が走る。
その瞬間、快感は余韻を残すことなく消え失せたが、ルシアは全身から血液が一気に抜けていくような感覚の中で、ものも言わずに昏倒した。
「しまった! 吸いすぎたっ! 大丈夫か、ご主人っ! しっかりしろっ!」
倒れ込んだルシアが地面に激突する前に、淫魔の鎧が優しく減速させ、そっとルシアを横たえた。
触手を通して魔力を戻し、ルシアを触手が揺り動かす。
「……んっ……はうっ! ……どう、なってた、の……?」
目を覚ましたルシアは、淫魔の鎧に尋ねた。
軽い貧血を起こしたような、一瞬の記憶がない。
「ああ、すまん、ご主人の魔力を吸いすぎた。ご主人はスペルユーザーではないから経験がないと思うが、魔力の急激な枯渇で気を失ってしまったんだ。加減を間違えたというか、よく解らないというか、試行錯誤を重ねるしかないな。情けないが、協力してくれ」
淫魔の鎧は、素直に謝罪した。
傲慢で我が儘な部分もあるが、こういったところは妙に素直だった。
一昨日の夜、ルシアの魔力を全て吸い上げてもとは言ったが、それをする気は元からない。
今も淫魔の鎧はルシアの魔力を、全部吸い上げるようなことはしなかった。
だが、スペルユーザーではないルシアは、魔力の減少に慣れていないせいで身体がついていかず、昏倒するはめになっていた。
「う、ん。大丈夫。大丈夫だよ。それに協力してもらうのは、ボクの方なんだからさ。そんな言い方は、なしにしてほしいかな」
頭を振りながら立ち上がったルシアは、淫魔の鎧を気遣った。
何しろルシア自身、初めての試みだ。
多少の失敗で、責めたり詰ったりする気はない。
「ああ、ご主人にそう言ってもらえるなら、ありがたい。まだできるか? 俺も、早く感覚を掴みたいからな」
無理に引き起こすことなく、ルシアが立ち上がるのを待って、淫魔の鎧は答える。
魔力を戻している以上、瞬間的な魔力枯渇の後遺症はないはずだが、何せ慣れないことだ。
ルシアが無理だと言うなら、実験は明日再開でも構わなかった。
「うん、やろう。なんだかんだ言っても、キミだけが頼りなんだ。早く感覚掴んでくれたら、それだけボクも助かるんだからね。いくらでも協力させてもらうよ」
ルシアには、快感を調整できるはずがない。
先日の経験では、手応えが大きければ大きいほど、快感も比例して大きくなっていた。
つまり、快感を抑えたければ、手応えがない程度にしか斬れないことになり、それは致命傷になりかねない。
淫魔の鎧の魔力調整に頼るしか、ルシアには手段がなかった。
「うりゃあっ! あんっ!♥」
ルシアが剣を振り、不穏な声を上げる。
何度も繰り返された実験で、ルシアは何回失神したか、もう分からなくなっていた。
魔力の枯渇もあれば、吸い上げがまるで足りずに絶頂で失神したこともあった。
「よし、今のはよかったよ。かなり手応えあったけど、そのあとはぜんぜんだった。もう一回、やってお昼にしようか」
朝から始めた実験は、ルシアの失神で中断されることも多々あったせいで、もう太陽は頭の真上に近づいていた。
「ああ。今のはいい感じだったな。俺もだいぶん感覚は掴めてきたぜ。あまりやりすぎるのも身体に障るだろう。あと一回で今日はやめにして、昼のあとはゆっくり身体を休めてやれ」
早く感覚を掴まねばならないとは思うが、焦る必要はない。
王都から腕利きの探索者が到着しても、それが探索自粛の終わりを告げるわけではない。
調査には、それなりの時間も必要だ。
向こう一ヶ月は自粛が続くだろう。
その間に感覚を掴めばいいと、二人は考えていた。
「じゃあ、やるよ。……せりゃあああっ! ひゃうぅぅっ!♥」
最後の一撃とばかりに、ルシアは全力で斬撃を放った。
素振りに続いて、半日近くも的を相手に剣を振り続けただけあって、疲労は相当溜まっている。
そのせいか余計な力が抜けて、ほぼ理想的な剣筋で、ルシアは剣を振り切っていた。
剣が触手を両断し、絶頂しかねないほどの快感が背筋を這い登ろうとする。
その瞬間、絶妙のタイミングで魔力が吸い上げられ、快感が嘘のように霧散した。
ルシアは剣を振り抜いたまま、しばらくその姿勢を保ち、ゆっくりと態勢を直すと剣を鞘に収めた。
そして小さくガッツポーズを作ったあと、ぴょんぴょんと跳ね回りながら、全身で喜びを表した、
「やったっ! 大丈夫だったよっ! ありがとうっ! やったあっ! さあ、お昼にしよう。また、明日も頑張ろうね」
ひとしきり飛び跳ねたルシアは、そう言って裏庭をあとにする。
朝の残りはたっぷりあるし、シャワー浴びてエールでも飲んじゃおうかなと、そんなことを考えていた。
「……ねぇ♥……して♥」
ほのかに頬を染めたルシアが、ベッドに横たわっている。
シャワーを浴びて、エールを飲みつつ昼食を済ませたルシアは、埋み火のような性欲を持て余していた。
決して、ニンフォマニアになってしまったという、わけではない。
実験の最中に何度も快感を消され、そのときはそれでよかったが、身体は不満を残していたようだった。
触手が既に身体を這い回っている。
淫魔の鎧としても、これは願ったりだ。
別に狙っていたわけではないが、互いにいい結果になるのであれば、拒む必要はない。
なにも身体を休めるだけが、休息ではない。
いくら身体を休めたところで、心の充足感が満たされなければ、人は活力が湧いてこない。
触手セックスがルシアの活力になるならば、淫魔の鎧は全力で応じる。
おっぱいを触手で包み込み、優しく揉みしだきながら、淫魔の鎧はそう考えていた。
「あっ!♥ ……ふぁ♥……ぁん♥……んんっ!♥ ……キミの♥……やさし、の♥……はひゅっ!♥ ……す……き♥……ああんっ!♥ ……ボク、の♥……おっぱい♥……とろとろ……♥」
乳首が僅かにざらつく平たい触手に転がされ、おっぱいに押しつけられながらも、固い芯が存在を主張している。
白いおっぱいとピンク色の乳首のコントラストは、この世界でもっとも美しいもののひとつだと、淫魔の鎧は思っていた。
おっぱいを包み込んだ触手の収縮が、ルシアの心まで揉みほぐしていく。
長時間に渡る実験に強ばった身体は、マッサージでさえ性的な信号に変換していた。
「あひっ!♥ ……それ♥……そこぉっ!♥ ……きもちくて♥……ボク♥……あんっ!♥ ひうっ!♥ ……とけ、ちゃうよぉ♥……好きぃぃ♥……クリ♥……気持ちっ♥、ぅああっ!♥ いぃ♥……よぉ♥……いいよぉ♥……あっ!♥ ……い、イっちゃっ、たのぉ♥……もっ、とぉ……♥」
身を捩らせながら、ルシアは淫魔の鎧の愛撫を受け入れている。
凛々しい眉はハの字に下がり、軽い絶頂の余韻に長い睫毛が小さく震えていた。
栗色の瞳を収めた瞼は緩く閉じられ、闇の中にルシアは自分の痴態を思い描いている。
それがさらに脳を焼き、性感を高めていた。
「あああああああっ!♥ ……らめぇ♥……ぴりぴり、ら、ら……めぇっ!♥ ひぅっ!♥ イくっ!♥ ……あひっ!♥ ……も……やめ……んひいっ!♥ ……らめ♥……やめ……な……い、れ♥……いひっ!♥ ああっ!♥ ……イく♥……ボク、イっひゃぅぅぅ……♥」
早くも呂律が妖しくなったルシアが、ベッドの上でのたうち回りたいほどの快楽に、身をくねらせている。
だが、触手に身体を固められ、自由に動けなくなっているもどかしさが、さらにルシアを燃え立たせていた。
両肘と両膝が触手に固定され、両手と両足が力なくもがいている。
クリトリスを舐め上げられる快感に、もがく手足が痙攣し、軽い絶頂のあとに弛緩していた。
「イくっ!♥ ……イくイくイくイくイくイくぅっ!♥ ……くり……と、りしゅ♥……らめ♥……そ、な……ひひゃ……ら♥……っ!♥ めええええっ!♥ ……あひっ!♥ ……へぁ♥……」
ルシアのクリトリスに電流が走り、視界を火花が埋め尽くす。
あっさりとイったルシアの身体が脱力し、おしっこがちょろちょろと漏れ出していた。
ルシアは、触手セックスをおねだりしたときに考えていたお口でのご奉仕を、すっかり忘れている。
とろかすような触手セックスに溺れ、ルシアの脳髄は快感を求めることに染め上げられていた。
やっぱり触手には勝てなかったよ。