這々の体でアレイ・バーグのゲートを潜ったルシアは、ベースタウンに帰り着いた安堵からか覚束ない足取りで道を歩いていた。
足取りが怪しいのは、安堵ばかりではなく、淫魔の鎧が相変わらず性器を弄くってるせいもあった。
「ルシア~、いい加減機嫌直せよ~。ギルドからの依頼、完遂じゃないにしても収穫はあったし、トロルの討伐までできたじゃないか」
さんざんにイかせまくり、お漏らししながらの失神まで追い込んだあげく、いまだにクリトリスをチロチロと弄んでおいて勝手な物言いをする。
そればかりでなく、おまんことおしりの穴には、相変わらず触手が潜り込んでいた。
「あのさ……人のそんなとこ触りながら謝る気ある?」
怒りで血管を、刺激で股間をピクピクさせながら、ルシアが小声で言い返す。
性器を弄くる触手を引っこ抜いて、地面に叩き付けてやりたい。
だが、アーマーの中に手を入れられない以上、成すが侭だった。
「ご家族にはきちんと挨拶するし、その前でこんなことはしないからさ、それは安心してくれよ」
いくらなんでも家族の前でルシアを犯すほど、淫魔の鎧は外道ではない。
千年以上前にとある国の女王の持ち物になった際、国賓との謁見時にふざけて女王を犯し抜いたことがあった。
それが元で戦争寸前まで両国の緊張が高まり、クーデターまがいの騒乱を引き起こして以来、主人が人と会っているときには自重するようにしている。
主人の淫液は常時欲しいが、それが元で主人を窮地に追い込みたくはなかった。
「……ボクは独り暮らしだから」
寂しそうにルシアが答えた。
一五歳の誕生日に探索者ギルドに登録するに当たって、両親と大喧嘩して家を飛び出している。
家は兄が継ぐことになっていた。
ルシアは兄にもしものことがあったとき、婿を迎えて家を存続させるためのスペアでしかなかった。
自作農ではあるが、兄妹に分割相続してやれるほど、家の農地は広くない。
兄が無事この世界の成人である一五の歳を迎えたとき、ルシアの存在意義はあらかた消滅していた。
その時点で、両親はルシアにふたつの選択肢を用意していた。
どこかそれなりの農家か商家にさっさと嫁に行くか、伝手を頼って貴族の侍女になるか。
当然のことだが、家の勢力を伸ばすための手段だ。
スペアとしての意義をなくしたルシアに、この二者択一しか両親は考えていなかった。
ルシアは、幼い頃から畑の開墾を手伝わされ、弓の扱いを教え込まれた。
狩に同行するには、最低限自身を守れなければならない。
当然、弓だけではなく、近接戦闘に役立つ短刀や剣の扱いにも次第に慣れていった。
これは野盗の襲撃に遭った村の苦い教訓から、数世代前から始まったことだった。
その結果、ルシアはその年頃の娘としては、他の村や町の娘とは隔絶するほどの戦闘能力を持っていく。
同世代の経験を積んだ少年と、肩を並べて狩りに参加できるほどになっていた。
「そうか。でも、もう着ないって、俺お買い得だよ」
何となく触れてはいけない心の傷を掻き乱したような罪悪感に、淫魔の鎧は話を元に戻した。
プレートアーマーが一瞬で紗のローブに変化する。
薄く上品な仕上げだが、身体のラインはおろか、薄いピンクに色づいた乳首まで透けて見えていた。
ルシアがそれに気づく前に、今度は商店の売り子が着るような服装に変わる。
次いで農村の娘、妖艶な娼婦、酒場の売り子が着るそれと変化すした。
最後には王族がパーティーで着るようなドレスに変化し、淫魔の鎧はルシアの反応を窺っている。
周囲には一瞬の早変わりを大道芸と思ったのか、人だかりができていた。
「わっ!? ちょ……何これ……それよりこんな所じゃ……!」
いきなりのファッションショーに、ルシアは戸惑う。
「ちょっと何コレ……恥ずかしいってば。……ボクこんなの似合いやしないし……」
自分には一生縁がないだろうと思っていたドレスへと変わり、恥ずかしがりながらもちょっと悪い気はしない感じに頬を染める。
「な、もう服に金かけなくてもいいんだぜ、ルシア。そのうえ汚れないから洗濯の必要も無しだ。水浴びするときは消えることだってできるんだぜ。ほら」
唐突にドレスが消え失せ、衆人環視の中、全裸のルシアが立ち尽くす。
「へっ……!?」
突然鎧が消え、人だかりの中に全裸で放り出された格好になる。
年齢の割に大きいおっぱい。
その頂点にある、まだ幼いくせにさっきまでの再三の責めで勃起した乳首。
張りのある、汗でなまめかしく光っている丸いおしり。
そして全身が汗で濡れている中でも一際濡れているパイパンの股間。
すべてがいきなり剥き出しになる。
「!? ……きゃぁぁぁぁぁっ! いやぁあああっ! ちょっ! どこに消えたのっ!?」
胸と股間を慌てて抑えてうずくまり、キョロキョロと周囲を見回し姿を消した鎧を探す。
だが、見えるのは自分を取り囲んでいる町人だけだ。
ルシアは真っ赤な顔で身体を抱きながら、人波を縫って路地に逃げ込んだ。
「何慌ててるんだ?」
何食わぬ顔で言うような口調とともに、周囲から浮かない程度のデザインの服が現れた。
淫魔に作られたせいか、着飾ることはあっても全裸に対する羞恥心を理解しない。
「ま、今日はギルドに報告だけして、後は身体洗って飯食って寝ちまえ。身体洗うときはさっきみたいに消えてるから、ちゃんと洗えるぜ」
遠回しに自力では二度と脱げないことを告げ、相変わらずクリトリスと乳首に細い触手を這い回せる。
「い……いきなり消えないでよ! ……思いっきり見られちゃったじゃない! 莫迦莫迦っ!」
ルシアが怒りを叩き付ける。
全裸を衆人環視の元に晒したことは、死にたいくらい恥ずかしかった。
だが、淫魔の鎧の倫理観に文句を言っても始まらない。
ルシアは半ば諦めていた。
状況が状況であり、解放されたわけではないとはいえ、再び出てきてくれたことには安心してしまった。
「言われなくても……そうするよぉ……だからっ……触るなああああっ! くそぉっ! ここじゃなきゃ破ってやるのにぃっ!」
いろいろとどっと疲れが出てそう言うが、再び乳首やクリトリスを刺激されて大声で叫ぶ。
「破る? 無理無理。フロストジャイアントが力任せにやっても無理。それから触るなって言われてもなぁ。淫魔の王が作った鎧が、触らずにいられるとでも思うか?」
加虐趣味はないが、ルシアに答える内容はどうしてもそう取れるようになっていく。
淫魔の鎧は、二百年ぶりの人との交流を楽しみながら、おっぱいや性器、おしりの触り心地も楽しんでいた。
「うう……知り合いがいなければいいけど……」
たいして大きくもない街だ。
それは甘い考えだった。
おそらく明日の朝までに、ルシアがいきなり全裸で走り去ったと、誰もが噂するだろう。
めげるな、ルシア。
あと七五日の辛抱だ。
「それより、ルシア。早くギルドに報告だけはしておかないと。あのダンジョンは駆け出しの特訓場だって言ってたろ? あんなモンスターが出てくるなら、上級者以外立ち入り禁止にしておかないと、ミンチの大量生産だぜ」
ルシアの怒りを平然と聞き流し、口調を変えて話題を逸らしながらも、クリトリスを触手で弄ぶ。
聞きようによっては、駆け出し卒業レベルのルシアを上級冒険者扱いしている。
ついでに今後のことを考え、ギルドにはインテリジェンスアーマーとして認識させようとしていた。
「くぅう……やーめーろーっ!」
無駄だとわかっていても身をよじり、諦めたら負けとばかりにルシアは叫ぶ。
いろいろありすぎて、今日はもう報告なんかいいから休みたいと思っていた。
だが、淫魔の鎧の言葉に気づかされ、はっとして考えを改める。
あのダンジョンに駆け出しレベルの探索者が、これまでと同じように入れば間違いなく死ぬ。
「……そうだよ、こんなとこで莫迦やってる場合じゃなかった。急がないとっ!」
全身に降り注ぐセクハラは無視して、ルシアはギルドに足を向けた。
この時間からダンジョンに赴く者はいないとしても、明日の朝までには何らかの措置を取ってもらわなければならない。
淫魔の鎧がちょっとしたサービスで魔力を使い、常人とは思えない速度で走っていることに気づかないほど、ルシアは焦っていた。
「……と言ってもボクのレベルじゃ信用されないかもしんないから。強力な装備のおかげで助かったことにするんでもっかい鎧に戻ってよ。悔しいけどその通りだし……」
あわよくばこれを外してもらう方法が見つかるかも、という打算は隠してルシアは言った。。
どんな姿に変化するかは、気まぐれな鎧次第だが、少しでも説得力のある姿になってほしかった。
「安心しろ。このインキュバスアーマー、淫魔の鎧様が証言するんだ。たいがいの奴は信じるさ。それに、ルシアに討伐の依頼が来るかもしれないぜ。ひと稼ぎできるだろ」
相も変わらずクリトリスを弄びながら、自信たっぷりに言う。
淫魔の鎧がルシアの力をブーストすれば、トロルやスライム程度なら、ほぼノーダメージで倒せる。
もちろん、あとで魔力を補充しなければならないが、ルシアのスタミナが続く限り狩り続けることが可能だ。
淫魔の鎧は、新しい主人によりよい剣を買わせてやりたかった。
「ってキミが報告すんの……? っていうかそんな有名なの? ……ん……っ!」
ルシアは淫魔の鎧の知名度に疑問を呈する。
クリトリスを弄くられっぱなしだが、今はそれどころではないほどルシアは焦っている。
文句を言っては会話にならないので、もうこの際はと無視していた。
「俺の固有名称を知らなくても、インテリジェンスアーマーなら説得力も違うだろ、常識的に考えて。俺も後少しでフルスペック発揮できるから。そうなれば物理無効じゃなくて反射もできるし、魔法の無効かにモノによっては反射もな」
淫魔の鎧は自慢げに答えた。
「そんなこと言っても無駄だよっ! ついでにキミに取り憑かれてるって報告して外してもらうんだからっ!」
単純に強い鎧と言うだけなら大歓迎だ。
しかし、常時セクハラされ続けるなど、御免被る。
それは単に嫌なだけではなく、快感に慣れてしまい流されるのが怖かった。
もっとも、報告したところで、外せるかどうかは別問題だが。
「とりあえず事は一刻を争うから、報告だけしちゃうよっ! ボクとキミのことはそのあとっ! すいませーんっ!」
ルシアはギルドに飛び込んだ。
いつものように、ざわめきがギルドのホールを満たしていた。
今日一日の成果を報告する声や、自慢と混ぜ返しの罵声が飛び交かっている。
あわてて飛び込んできたルシアに、ギルドマスターを始めとしたそこにいた全員の視線が突き刺さった。
ルシアに突き刺さるような視線を向けても、誰も悪意を持ってはいない。
紆余曲折を経て、家出同然に村の周辺ではもっとも大きな町に、ルシアは独りで来た。
その日のうちに探索者ギルドに登録し、村で鍛えた腕を活かしていくつもの依頼をこなしていった。
狩りの経験は、無理をしないことを身体に覚え込ませていた。
実直に、身の丈にあった依頼を誠実に達成していく姿は、ベテランたちから好意的に見られるようになっていく。
反面、底辺から脱出できない探索者たちは、世間ずれしていないルシアに羨望と嫉妬の眼差しを送っていた。
中にはルシアをを性の対象に見ている者もいた。
ベテランたちが見向きもしないような依頼を、共同で受けさせようとした。
言うまでもなく、人目の届かないところへ誘い込み、ルシアを犯してやろうということだった。
なかば親の気分になってしまったベテランたちやギルドの職員は、そんな輩を叩きのめし、ルシアに付こうとする悪い虫を片っ端から駆除していた。
そのルシアからの報告に、ホールのざわめきが一瞬で消える。
駆け出しの探索者たちが、比較的安全に経験を積めるはずだったダンジョンの危険度が、一気に跳ね上がった。
早急に対策をとらねば、無駄なひと死にが出るだけだ。
だが、町娘のような装いに剣を下げたルシアの報告に、半信半疑になる者も多い。
ルシアが駆け出しを卒業した程度のレベルであることは、ここにいる誰もが知っていた。
もし、ルシアの言うことが本当であれば、彼女はここにいるはずがない。
人騒がせな嘘を平然とつくような娘ではないが、スライムやトロルに遭遇して生きて帰れるほどのレベルではない。
ルシアが生還できたことは、奇跡としか思えない。
よほど怖い目に遭って、何かを誤認しているのかも知れないと考えるベテランも多かった。
いずれにせよ、ルシアをここまで慌てさせた何かが存在するならば、何らかの対策は必要だった。
「ご主人様の言うことは本当だって。ご主人様は嘘なんかついてない。このインテリジェンスアーマー、淫魔の鎧が証言する」
唐突に淫魔の鎧がホールにいる全員に向け、高らかに宣言した。
小狡くルシアをご主人様と呼び、解除を依頼されても冗談になるように先手を打つ。
ギルドのホールにざわめきが広がった。
インテリジェンスアーマーが眠っているようなダンジョンなら、相当な危険度であることは間違いない。
ルシアが生還できたことは、奇跡ではなかった。
このインテリジェンスアーマーに出会えたことが、まさしく奇跡だった。
ギルドの職員は、慌ただしくダンジョンへの全面的な立ち入り禁止を宣言した。
幹部連を非常召集するため、事務員数人がホールを飛び出していった。
ルシアと淫魔の鎧は、あっという間に探索者たちに囲まれてしまった。
ルシアは、こんなエッチな鎧より自分の発言力は弱いのかと思うと少し悔しくもあったが、それどころではないことに気がついた。
「そうだっ! もしボクの後に、出かけちゃった人がいたら救出隊をお願いしますっ!」
ルシアの叫びに、五人の腕っ扱きたちが剣を掴んで飛び出す。
ベテランが檄を飛ばし、何人かの駆け出しが自警団の詰め所に走った。
ダンジョンで行方不明者が出たときに、いつも見られる光景だ。
とりあえず、単身でトロルを倒せるレベルが五人に自警団が動員されるなら、手遅れでない限り大丈夫だろう。
まだ帰っていない探索者たちの無事を祈りながら、ギルドのホールは日常運転に戻っていった。
ひと息ついた後、ルシアは周りを囲む探索者たちから、口々に質問を浴びせられた。
底辺や駆け出しレベルからはやっかみや妬みも向けられるだろうが、ある程度のレベルの者たちは概ね好意的に見ている。
それがたとえ運であってもだ。
「ルシア、良かったじゃないか、そのアーマー」
「何しょぼくれてんだよ? ん? 淫魔の鎧の方が信頼されてる?」
「違う違う。それほどのアーマーを手に入れたルシアの証言だから信頼できるんだ。大事にしてやれよ」
ひと通りの質問が終わった後、ベテランたちからルシアを慰める言葉が続いた。
「あ……いやその、ボクはホントたまたまこれを拾っただけだし……その……」
自分の実力じゃないのに称賛されても困るな、とルシアは思う。
しかしもっと困るのは、この鎧に取りつかれてセクハラされてるから助けて、とも言いだせない空気が醸成されたことだった。
力も経験も豊富な人たちからそう言われ、ルシアの心が揺らぎ始めた。
――自分なんかがこんなすごい物を手にしたなら、甘んじて受け入れるべきなのかなぁ……――
ルシアの思考を読んだのか、クリトリスがきゅっと締め上げられる。
――やっぱ、やだぁ……――
淫魔の鎧としては、受け入れられそうになったことを喜んだようだったが、ルシアは少し涙ぐんだ。
「ところで、どんな能力があるんだ、淫魔の鎧には?」
ベテランのひとりが訊ね、ルシアが口ごもる。
まさか、アーマーの下から触手が生えていて、ずっと犯されっぱなしだなんて答えられるはずもない。
顔を真っ赤にして下を向いたルシアをよそに、淫魔の鎧はいきなり姿を変える。
そこら辺を歩いている町娘のような装いから、本来のきらめく姿が現れた。
「俺はご主人様の思うように姿を変えられるんだ。もちろんどの姿でもご主人様にダメージは通さないぜ」
先ほどと同じように早変わりを繰り返し、王族が纏うようなドレスまでは同じことをする。
ここでルシアが逃げ出すようなことがあれば、主人の名誉に関わると思い、さすがに全裸はやめておいた。
歓声と驚愕のどよめきが炸裂する。
思わぬファッションショーに、拍手と口笛が飛び交った。
「うう……わ……ちょっ! は、裸はやめてよっ!」
ルシアは再び早変わりする鎧を、慌てて止めようとする。
これ以上人前で裸体を晒すくらいなら、舌を噛み切って死んでやる。
いや、恥ずかしさだけでも、充分死ねる。
「こうして肌が見えていても、いっさいのダメージは通さないぜ」
某国民的RPGの女戦士が纏うビキニアーマーを、さらにきわどくしたデザインに変化し、淫魔の鎧は得意げに言った。
「そう……これなら……って良くないぃっ!」
ルシアが不安に駆られ、恐る恐る下を向く。
上半身は、ショルダープレートが羽のように伸びるが、ブレストプレートは乳首だけを隠しいるに過ぎない。
形のよいふたつの隆起が、小刻みに震えているのが丸見えだった。
そして、下はクリトリスから前の割れ目、おしりの穴だけを隠すのみで、恥毛が生えていたら間違いなく丸見えだ。
後ろはふたつの双丘が丸出しのTバック状の過激なデザインで、いっそ全裸より恥ずかしいかもしれない格好に変わっていた。
ルシアは顔を真っ赤にして胸と股間を押さえてぺたりと座り込むが、胸を抱えた腕が却って谷間を深くする。
周囲の探索者たちから、爆発するような歓声が上がった。
「ま、こんな感じ。ご主人様がダメって言うからこれくらいで勘弁してくれ。そんなわけで、みなさま今後ともよろしくお願いいたします」
淫魔の鎧は砕けた口調を引き締め、周囲の探索者たちに礼儀正しく挨拶する。
同時にルシアの退路を、完全に断ちきった。
こうしておけば解呪を申し出ても、誰もが諌めるようになるはずという計算は当然ある。
だが、主人の評判を落とすようなマネはしたくないという思いも、当然あった。
「ご主人様、後の対応はギルドに任せて、そろそろ身体を休めないと明日に響くぜ。トロル三匹ぶっ潰したんだ。後は任せても誰も文句は言わないって。そんなわけでベテランのみなさん、俺たちはこれで失礼させていただくぜ」
ビキニアーマーから普段着へと姿を変え、ルシアに帰るように促す。
「ん? やっぱり全裸になって見せて、誰かに切りかかってもらって、それを弾き返すとこまで見せた方が良いか、ご主人様?」
どうしていいか解らないという表情に、羞恥と怒りと困惑を混ぜ込んだまま、座り込むルシアに声をかける。
「……っっ! んなわけないでしょぉっ!」
普通の見た目に戻ったルシアは、バネ式人形のように立ち上がり、挨拶もそこそこに逃げるようにギルドを飛び出した。
「……うう……絶対色んな意味で有名人になっちゃったよ……」
恥ずかしさに頭を抱えながらふらふらと歩いて、ようやく自分の部屋がある宿舎にたどり着いた。
淫魔の鎧に対して罵声を叩き付ける気力は、とうに失われている。
日暮れ時の道を、焦点の合わない目でふらふらするルシアは、かなり残念な娘に見えていた。
ルシアたち探索者が起居する宿舎は、探索者ギルドが借り上げた宿だ。
小さいながらもベッドとクローゼットを作り付け、簡素な調理施設もある個室には、少々狭いがトイレとシャワールームがある。
その他にも男女別の大共同浴場と、広い食堂があった。
魔法文明の発達は、一見中世風の世界に水道と下水を発達させている。
だが如何せん未発見の物質や理論、未開発の技術もまだ多く、中世と現代が妙に入り混じった世界を形成していた。
普段のルシアは大浴場で、歳近い探索者仲間との情報交換というおしゃべりを楽しみにしていた。
だが、このような状態で大浴場へ行くわけにはいかない。
友達の前で触手にいいようにされるなど、絶対に許容できることではなかった。
それ以上に、友達が淫魔の鎧の毒牙にかかることでもあれば、ルシアは死んで詫びるだけでは済まないと思っていた。
とにかく自室のシャワーで、汗やらいろんな液体を流すことにする。
もっともほぼ全部の液体は、鎧にエネルギーとして吸われているので、感覚的なものに近いのだが。
「……と言うわけでシャワー浴びるから消えてよ……っていうか消えるとキミはどこに行くの? どこかに隠れてみてるの?」
覗くな、と言いたいところだが、そもそも素肌に密着されていた時点で見られるどころではなかった。
もっと恥ずかしくてエッチなこともさんざんにされたわけだが、見ないでいてくれるならその方が良いに決まっている。
「了解~。ああ、どこにも行かないぞ、俺は。ただ防御シールドを全部解除してステルス化するだけ」
そう言うが早いか、淫魔の鎧の姿が消える。
何もないはずの空間から、おまんこを触手がまさぐる感覚が伝わり、同時におしりの穴の入り口にも同じ感覚が伝わってきた。
「ふぅん……ひゃっ! シャワーくらい、ゆっくり浴びさせてぇぇっ!」
つまり見えなくもなるし、触れもしなくなるけど、一方的に触ってくることはできる。
こちらからは干渉不能な存在になる、といったところだろうか。
やはり覗かれてるも同然なのが気になるが、出て行けと言っても聞かないだろう。
そして、そもそも本当にいなくなったか、証明の仕様がない。
触手が弄くっていることは諦め、ルシアはシャワーに集中することにした。
「ふぅーっ!きもちーっ!」
頭からシャワーを浴びる。
火のスペルを応用し、高架タンクに貯めた水を温めている。
ある程度減るとサーチのスペルを応用したセンサーが感知し、補助タンクで温められたお湯が足される仕組みだ。
塩ビ管はまだ開発されていないが、漆喰で防水した木箱と節を抜いた竹を巧みに組み合わせ、簡易ながらも給湯設備が運用されていた。
「シャワーの後はどんな服がいいんだ? 細かく説明しなくても、思い浮かべてくれたら、ここを通して教えてもらえるからな」
ルシアが石鹸を使う前に、砂と埃まみれの髪をお湯で流していると、何もない空間から声がする。
「どんな服って言われても……今日はもうその辺のものテキトーに食べて寝るだけで。出かけないから普段の下着と寝間着みたいな……思い浮かべればいいって、頭の中まで読まれるの?」
考えたことすべてを見透かされる恐怖に、一瞬背筋が寒くなる。
直後。
「ふあっ! ちょ……こんな時までやめてよっ! 洗えないでしょうがぁあああっ!」
不意におまんことおしりの穴に再び触手が入り込む感触が走り、不意打ちに上半身をのけぞらせて声を出す。
アーマーの中で犯され抜いたときは、触手を見ることはできなかった。
見たいわけではないが、怖いもの見たさにルシアは鏡に映る股間に視線を向けててしまった。
「ひっ……!」
透明な触手に犯され、ぽっかりと穴が空いて中が見える自分の膣に驚く。
見えないけれど、おしりの穴も同じ状態なのだろう。
助けを呼びたくても呼べない。
呼んだところで触手が見えなければ、他人にオナニーを見せたがる露出狂でしかない。
シャワールームで快感にのたうち回り、絶頂失神してもそのままイかさせる自身の姿が脳裏に浮かんだ。
陵辱が始まる。
心の奥底で、無意識のうちにほんの少しだけ期待していることに、ルシアはまだ気づいていなかった。