からかい上手のノクトさんが、男をからかったらどうなるか理解(わか)らせられる 作:猪熊夜離
遠方から不慣れな土地に越してきたライに、学園長のレリィ・アイングラムは世話係をつけようと言った。
誰もが同じ男子のルクスがその任に就くと思っていた。広い学園に男子二人ぼっち。助け合って学ぶようにとの配慮だろう。
だが実際に選ばれたのはノクトだった。
ノクトの家は従者の一族で、シャリスの実家バルトシフト家に仕えてきた。学園ではルームメイトでルクスの妹でもあるアイリ・アーカディアをサポートしている。
貴人のお世話はお手の物と言えるが、問題は二人の性別が違うことだった。
「お世話係は留学生が早く学園に馴染めるようサポートしてあげてね。公私とも支える必要があるので、さっそく今夜から二人を同じ部屋にするわ」
レリィが男女相部屋を指示すると、周りで聞いていた女子生徒がロマンスの気配を察知し、黄色い声を上げる。
ライは年ごろの男女が同じ部屋はまずいですよ、間違いがあったらどうするんですかと抗議したが、レリィには「ライくんが暴走しなければ間違いは起きないんだから、全部あなたしだいよ」と微笑んで軽く受け流された。
学園長に何を言っても無駄だと感じ、説得対象をノクトに変更する。君も男と相部屋なんて嫌だよねと同意を求めるが、ノクトの返答はライの期待と違った。
「No. 学園長の指示なら従うだけです。安心してください、私からは襲いませんので、学園長も言うとおり全てはライさんの倫理観と貞操観念しだいです」
据え膳と責任を同時に投げられたライは、同じ男子のルクスに助けを求める。だが彼も学園長には苦労させられてきたのか「一度言い出したら聞かない人だから頑張って」と応援されてしまう。
かくして後輩系美少女とのドキドキ同棲生活は始まった。不幸中の幸いは、彼の異性のタイプがグラマラスな年上女性――学園で言うならセリスティア・ラルグリス先輩――であり、ノクトとは正反対だったことだ。
僕さえしっかりしていれば間違いは起きないのだから、ノクトに女の子を感じなければいいのだ、徹底して彼女のことは可愛い妹とでも思うことにしよう。
それはナイスアイデアかに思われたし、実際それで上手く行った時期もある。僕は絶対にノクトを異性として見ない、妹に欲情するはずがないとライは繰り返し自己暗示を掛ける。
涙ぐましい努力。自らを騙す行為。そうやって押さえつけていなければ不安に感じるほど、ノクトに女の子を感じてしまっていることから、全力で目を逸らす。
国を代表してやって来た留学先で間違いを起こせるはずがない。初日に「あなたが暴走しなければ間違いなど起きない」と念入りに釘を差されたことも効いている。
だが意識しないようにすればするほど、ふとした瞬間に気づかされてしまう。自分がノクトに向ける感情の在処に。
欲情の対象と同じ部屋で生活しながら発散する手立てがない日々は地獄だった。
近ごろは現実で手が出せないものだから夢の中で毎日のようにノクトを抱いている。それも彼女に自分のものを舐めさせたり、両足を自分の腰に絡ませ抱っこした状態で挿入し、そのまま廊下に出て他の生徒と遭遇するかもしれないスリルを楽しむといった、とても現実のノクトには言えない変態っぽいプレイを夢の中では積極的に行った。
妹分の可愛い後輩に薄汚れた欲望を叩きつけてやりたいのが自分の本音かと思うとぞっとする一方で、翌朝目覚めたときは彼女から隠し通すのが大変なくらい勃起していた。
「ノクトが可愛すぎてつらい」
「惚気なら他でやってくれないかしら」
クルルシファー・エインフォルクの返しは辛辣だった。同じ留学生の彼女なら少しは相談に乗ってくれるものと期待していたのに。
つまらない話に付き合わされて退屈といった感じに彼女はため息をつく。
放課後の空き教室に二人はいた。学園は広いが他の生徒の目を躱して離せる場所は意外と多くない。密会には不向きな造りをしている。
ライの相談は言わずもがなノクトに関することだ。
相変わらずノクトは、こっちの気も知らないで誘惑に次ぐ誘惑を仕掛けてくる。先日の黒ビキニ微乳もとい美乳見せつけ事件は一瞬、本気でラインを超えかけた。前からノクトって着痩せするタイプなのかもとは感じていたが、今回のことで疑惑が確信に変わった。
水着姿を見る前は細いな、華奢だなとしか思わなかった腰のラインが艶かしく、自分を誘ってるように見えた。腕を回して抱き寄せ、戸惑う彼女に口づけしたいと夢想する。
普段は冷静なノクトの焦った声が聞きたかった。
黒ビキニをずらして美乳の頂点にある突起を吸い上げ、あのジト目がとろんと蕩けるのを眺めながら、時間を掛けて彼女の肌を味わいたい。
ノクトがユメに出てくる頻度は明らかに増えた。夢の彼女は現実より積極的で過激に迫ってくる。
ベッドで寝ているライに彼女のほうから跨ってくる。乳輪を指でなぞりながら乳首を口で吸い出す。子供にミルクをあげるために必要な女性と異なり、ただ快感を貪るためだけに存在する男の突起が、後輩女子に舐められてムクムク勃起する。
男も乳首を舐められて感じるなど知らなかった。戸惑いながらもノクトの頭を掻き抱き、彼女の頭頂部にキスすることで愛おしさを伝えようとする。
クールな美少女の顔が、へにゃっと緩んで照れくさそうに上目遣いで見上げてくる姿が、ますます彼女を愛おしく感じさせてキツく抱きしめる。
裸で抱き合うと広い範囲で肌と肌が触れ、彼女の熱やドキドキ感が触覚を通して伝わってくる気がした。ノクトの肉体は細身でも女の子らしい柔らかさがあり、一晩中でも抱きしめていたいほど気持ちよかった。肌が合うとはこういうことを言うのか。
ライはノクトのお尻に手を伸ばす。
「んっ♡ ふぅっ……はあンっ♡」
左右の尻肉を交互に持ち上げ、ねじり、円を描くように揉んで感触を楽しむ。
「ん……あふ……はぁっ♡」
性器に直接触れたわけでもないのに、ノクトの口から普段の彼女からは考えられない、甘えた声が漏れる。
好奇心に操られ彼女の双臀を割り開き、尾てい骨のすぐ下にある排泄穴を指で突く。予想外の刺激にノクトは背後から脅かされた猫のように身体を跳ねさせ、恨みがましい目でこちらを睨むと脇腹をつねってくる。
悪い悪い、それならこっちはどうかと渓谷に手を滑り込ませ、性交の穴をくすぐる。そっちなら悪くないとばかりに彼女は顔をライの胸板に押し付け、両手を背中に回し、向こうからも抱きつく。
心臓が飛び出しそうなほど拍動している。手を当てなくても胸の動きが分かった。
不意にノクトが笑った。彼女はライの胸に耳を押し付け、鼓動に耳を澄ます。
「先輩の心臓の音を聞いてると安心します。緊張してるのは私だけじゃないんですね」
「ノクトの心臓の音も聞かせて」
お願いすると彼女は身体の位置をずらし、顔におっぱいを押し付けてくる。谷間に耳をそばだてると確かにドッドッドッドッと聞こえた。
彼女の心音を聞いていると、ライは眠気に襲われウトウトし始める。あくびを噛み殺す。ノクトは母親が子供を寝かしつけるように胸に抱いた頭を撫でる。彼女に触れられた場所は気持ちよくて幸せのうちに意識が遠のく。
そして絶望とともに目が覚める。
毎朝その繰り返しだ。
「一人で惚けてるなら私はもういいかしら」
妄想に耽っていたライに呆れてクルルシファーが椅子から腰を浮かせる。
「何かアドバイスは?」
「ないわね」
それでも強いて言うなら、と彼女が口角を品よく吊り上げた。
「自分の気持ちに従ってしまうのもいいかもしれないわよ。いつまでもウジウジ悩んで無駄な時間を過ごすよりは、少なくとも事態を前に進めたほうが何かしら進展もするんじゃないかしら」
「僕がノクトに抱いてる感情がもっと綺麗なものなら、それでもよかったんだけどね」
「そんなになの?」
「とても女子に語って聞かせられる内容ではないよ」
「そ、そう……あなたも男の子なのね」
「健康を持て余してつらい」
クルルシファーの頬に赤みが差す。平静を装いながらも男子の性欲に動揺してるようだ。
「何か起きてもあなただけが悪いわけじゃないと思うわよ。男女相部屋にした学園長がきっかけを作ったわけだし、彼女だって自分から誘ったんだもの」
「そうだよね! そもそも悪いのは学園長じゃないか」
「それでも後輩の女の子を襲って手込めにしてしまう獣のような男の子が免責される理由にはならないでしょうね」
「どっちの味方なんだよ」
「いずれにしても元気なのはいいことよ。あなた一部の生徒の間では、その……勃起しない病気じゃないかと噂されてたから」
クルルシファーが聞き捨てならないことを言った。
「前に食堂で三人が話してたのよ。これだけ分かりやすく誘ってるのに襲ってこないなんて、つまりそういうことじゃないかって」
「なんだよ、それ……」
こっちがどれだけ我慢に我慢を重ねてるか知らないで。好き勝手に言い過ぎだろ。
「怒らないであげてね」
ライの雰囲気が変わったことを察し、クルルシファーが宥めに掛かる。
「あれだけ誘惑されても行動に移さないんだもの。三人が噂してなくとも誰かが言い出したはずよ」
それはそうなのかもしれない。だからと言って許す理由にはならない。
「どこに行くの?」
やおら立ち上がって出口に向かうライにクルルシファーが声を掛ける。
「ちょっと行くところができた。暗くなる前には帰るよ」
そう言い残してライは市街地へ駆け出していく。
「遅かったですね先輩」
買い出しを済ませて寮に戻ると部屋でノクトが待っていた。彼女は瞳の色と同じエメラルドグリーンの下着姿。フリルをふんだんに使った可愛らしいデザイン。フリルのボリュームでバストサイズを嵩増ししてるのかなんて言ったら怒られそうだ。
「隠さなくていいの」
「Yes. そうでした」
キャーと棒読みしながらノクトは身をよじり、胸を手で覆う。
これでも手を出してこないんだろうと挑発されている気がした。
「食堂で僕が不能だと噂してたって本当?」
ライは後ろ手でドアの鍵を閉めながら尋ねた。耳慣れた音が今日はやたら大きく聞こえた。
「それは……」
ノクトは後ろめたそうに目を逸らす。
「そういう可能性もあるのではと考察はしました」
「そんなに僕とエッチなことがしたかった?」
ライは大股で真っ直ぐにノクトのほうへ向かう。
「先輩?」
ノクトが下からライの目を覗き込む。いつもの優しい先輩の面影を探して。だが今日の彼の目は情欲に
「遅くなったのはこれを買いに行ってたからだ」
ライはノクトに小さな箱を渡した。
「何か分かる?」
「No. はじめて見る物です」
ノクトは興味津々で箱を裏返し、ひっくり返し、様々な角度から観察する。
箱の裏に図入りで使い方の説明があった。これは棒状の物に被せて使うようだ。その棒状の物とは男性器。つまり、これは……。
「僕が不能かノクトの身体で確かめてよ。これ使い切るまで今日は寝かせないからよろしくね」
ノクトからなんと呼ばれたいか考えたのですが、某ゲームの片目隠れ後輩と中の人繋がりで先輩にしました。
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