今回の挑戦者は……。
プロローグ:0階層
そう、この日ハジメはどうかしていたのだ。
トータスから帰還後、ハジメたち一行は日常を謳歌していたのだが珍しくこの日は誰も家にいない日。
あの半ニートのユエまでもが珍しく外出をしている。
決してハジメが置いていかれたとかハブられたとかそういう事でも無く、本当に今日たまたまハジメを除く両親を含めて家族全員が用事でいないのだった。
さらにこんな日に限って……なぜかハジメの煩悩が爆発していた。はっきり言ってしまえば欲求不満というやつだ。
最初はエロ本やエロゲーで解消しようと思ったがユエを筆頭に周りに美女美少女が集まっている状態、トータス転移以前ならばまだしも現在はエロゲーはまだしもエロ本からは少々手が遠のいている。
はっきり言ってしまえば……おかず不足。
ならば買いに行くのかと言われればいまいちエロ本の気分ではない。さらにいえばグラビア雑誌などは論外、そんな雑誌の女性よりも美女美少女が周りにいるのだから。
そして、この日のことをハジメはこう回想した。
『この日はマジでどうにかしていたんだよ……』
朝から煩悩と性欲と暇を持て余していたハジメは閃いてしまう。そう――――――
おかずが無ければ、作ってしまえばいいと。
こうしてこの瞬間稀代の変態錬金術師と化したハジメは煩悩と性欲の赴くままに、技術の粋を集めて作り始めたのは、そう。
エロゲー。
普通の恋愛シミュレーションの延長にあるエロゲーではなく、ジャンルは異種凌辱脱出ゲーという、普段ハジメがふと思い浮かんでユエたちで妄想してはあり得ないなと切り捨てているようなモノ。
だがこの日のハジメに限っては、家に一人だけということに加え絶対に邪魔をされないという状況もあり、普段は考えもしないような熱く燃えたぎるリビドーをエネルギーにその妄想を具現化していってしまう。
……ある意味、トータスから帰還するために作成した〝導越の羅針盤〟と〝クリスタルキー〟よりも集中して作っていたかもしれない。
――――――十数時間後。
……『それ』は完成してしまった。
稀代の変態錬金術師が食事も風呂も寝る間すら惜しんで朝から深夜遅くまで作り上げた『それ』。
ハジメは非常に満足げに見て頷き、眠気と戦いつつとりあえずお風呂へ行くかと作業部屋から出て行く。
ある意味、当初の性欲と煩悩を発散するという目的を達成してしまいどちらも落ち着いてしまったせいか、それとも休みなく集中力を注いでいたせいか、完成した『それ』をそのまま置きっぱなしで。
もしも部屋で寝落ちをしていたら、もしも帰ってくるのがもう少し遅かったら、この後二人が巻き込まれることは無かっただろう。
そう――――――ユエと香織が。
「……ただいま」
「ハジメ君こんばんわー」
ユエに続いて私もハジメ君の家に足を踏み入れる。
今日は珍しくユエと少し遠くまで遊びに出掛けていたのだが、朝聞いた話だとどうやら今日は家にはハジメ君だけがお留守番らしい。
ハジメ君のご両親は二人で夫婦水入らずの旅行へ、シアはバイト先の女性先輩たちと遊んでそのままお泊りを、ミュウちゃんはお友達の家にお泊り、ティオとレミアさんは作った会社の商談らしく遠方へ、そんなこんなで現在南雲家にはハジメ君一人が留守番をすることになってしまったようだ。
「いやー、ハジメ君の家がこんなに静かなの初めてじゃない?トータスから帰ってきてから」
「ん、そうかも。……ハジメはもう寝ちゃってるのかな?」
そういえば今日は遅くに帰れそうという連絡を入れたものの、ハジメ君からの返信はまだ来ていなかった。
つまり今、ハジメ君は自分の部屋で寝ているということで……。
「……どこへ行こうとしているのバ香織?」
「ん?別にどこへ行こうと良いでしょ?ハジメ君のご両親にもいつでも来ていいって言われてるし」
ハジメ君の部屋に行こうとしていたところ、いい笑顔を浮かべるがしっと腕を掴むユエに、同じようににこりと微笑みを返す。
一瞬、二人の間に静寂が走り抜け、
「……もう帰っていいよバ香織。お持て成しはした」
「何もしてないよね!?というかユエこそ手も洗わずどこにいくつもりなのかな?ユエはアホなのかな?」
「寝ているハジメを癒すのは正妻の務め」
「それ正妻である必要ないよね~~~???」
音を立てずに、二人で全力で歩き始める。むろん、ハジメ君の部屋に向かって。
……お互いの頬をつねりながら。
そうしてハジメ君が寝ていることを完全に失念したユエと私はハジメ君の部屋の扉を蹴破るようにして部屋の中へ入ったのだが。
「……あれ?」
「居ないねハジメ君……」
部屋は暗いがベッドにもハジメ君がいるようには見えない、というかそもそもここにいたような形跡が全くなかった。
何と言うかこう、ハジメ君の匂いが薄い気がするのだ。そう、匂いが!
「靴はあったよねユエ」
「ん、出かけてはいないはず。となると、工房のほうかも」
今度は特に諍いなく二人で階段から地下工房へ向かったのだが、予想に反してこちらももぬけの殻だった。
だが、ついさっきまでここにいた形跡がある。そう、匂いがある!
「……さっきまではここにいた。ならばお風呂かお手洗い」
「そうだね。ならリビングで待ってよっか……って、ん?」
二人で部屋を工房から出ようとしたときふとそれが目に入った。
作業台の上に置かれたこぶし大の宝玉が機械の台座に取り付けられた物体で、何やら魔力を放っているように感じる。
恐る恐る近づいて覗き込むと横からユエも覗き込んできた。
「……また知らないアーティファクト。ハジメが作ってたっぽい」
「そうみたいだね。見たところ完成は……してるのかな?」
「……ぷぷぷ、香織にはハジメの作った物が完成しているかどうかも分からないんだ」
「はーーー!?分かりますけれどぉ!ハジメ君が作った物ならば分かりますけれどぉ!!アホユエこそすぐに気が付かなかったくせに!」
「バ香織みたいにむっつりスケベじゃないから、部屋を物色したりしないだけ」
「スケベじゃないよ!?」
じたばたむぎゅぅーと、途端にユエと私は取っ組み合いになり……この部屋が危険な場所だということをすっかり忘れてしまう。
そして、以前同じことをして――――――開発中のアーティファクトを暴走させたことすら忘れてしまっていた。
ガゴンッ。キィィィィィィィィィィィィィィィ。
どっちかの肘が見事にそのアーティファクトへとクリーンヒットし机の上から落下した直後、甲高い音を立てて中央の宝玉が桃色の輝きを放ち始める。
「……ユエさんやユエさんや」
「……なんだい香織さんや」
「私、これとすごい似た状況を体験したことあるの」
「ん、奇遇だけれど私も」
フリーズした思考の直後、お互い一瞬で冷静になって離脱を考えるが、お互い心のどこかで『間に合わないだろう』という思考と『ハジメが危険物を放り出しておくわけがない』という信頼が私たちの離脱行動を一瞬遅らせ――――――。
私たちは部屋一面を覆い尽くす桃色の光に包まれて、意識を手放した。
次回から本格的にダンジョン凌辱が始まります。
基本的には1話に2階層ほど入れる予定ですが、場合によっては1話だけの可能性もあります。
この小説は原作未読でも読めますか?
-
原作がっつり読んだ方が良い
-
シュチエーションだけなら未読でも読める
-
原作触れておけばより面白い