「悪かったな、こんな小さなパーティーのためにはるばる絃神島まで来させちまって」
「構いませんよ。第四真祖の主催するパーティーに参加することは、立派な公務の一つですから。お父様は何か言いたげな顔をしていたような気もしますけれど……」
ラ・フォリアはそう言って、意味深に小さく微笑んだ。
場所は矢瀬家の保有するホテル会社が運営する高級ホテルのスイートルーム。凪沙の誕生日を祝う盛大なパーティーが終わり、ようやく一息つけたところである。
その言葉に古城はやれやれと首を振って、
「あの人はラ・フォリアがうちの後宮に入るってなったときにも相当ごねてたし、やっぱり俺のことをよく思ってないんだろうな。成り行きで''血の伴侶''にしてしまった責任を取るってことで納得してもらったけど、それにしても不満そうだったし」
どんな顔をして会えばいいんだろうな、と困ったように呟いた。
「私と古城が結婚したことは、絃神市国とアルディギア王国が友好国であるという証という風に世界では見られていますし、お父様の一存でどうこうなることではありませんよ。事実、私と古城は愛し合っていますし、その恋路を邪魔することは誰であろうと許しません」
きっぱりと言い切ってしまうラ・フォリア。自分が古城の婚約者だと主張し出した頃から何度も似たようなことを言い続けているが、今の古城にそれを訂正するだけの気力は残っていなかった。
「……そうだな。それにしても、俺を一人で呼び出してまで頼みたいことってなんだったんだ?」
素直に思ったことを訊いてみる。
パーティーの片付けを矢瀬に任せ、古城に二人きりで頼みたいことがあると言ってラ・フォリアは古城をここまで連れてきたのだ。
そのため、近くに小柄な監視者や華やかな髪型の少女の姿はない。
ラ・フォリアはその言葉を受けて、一度目を瞑って深く呼吸をしてから、意を決したように言った。
「私も────後宮としての役目を果たそうと思いまして。具体的に言えば、その……そういう行為をして、私と古城の間に子をもうけたいと。今日はそれをお願いしに来たのです」
本当に覚悟を決めているのであろう、いつも気丈な態度を崩さない彼女にしては珍しく、顔を赤くして嘆願するように古城を見上げてくる。
だが古城はそんな彼女を見て取り乱したように、
「ま、待てよ。さっきラ・フォリアも言ってたけど、結婚して後宮に入ったのは友好国としての証であって、実際にラ・フォリアがその役目を果たそうとする必要はないんだぞ? そんなに無理をしなくたって、お前はもう十分に王女としてよくやってるよ」
「ですが、雪菜や浅葱さんとはすでにそういうことをしたのでしょう?」
そう言われてしまうと、古城としては何も言い返す言葉がない。
そんな古城を責め立てるように、ラ・フォリアは続ける。
「でしたら、私としては恋敵に後れをとるわけにはいきません。それとも私では不満ですか、古城?」
ラ・フォリアはパーティーの時に着ていた煌びやかなドレスを脱ぎ、すでに薄手のネグリシェに着替えている。
その裾をもって不安げに見つめてくるラ・フォリアの蒼の双眸を見て、古城は少し怯んでしまう。
「……そういう訳じゃない、けど……」
なおも身を引くようなことを続ける古城に、ラ・フォリアは不安に瞳を揺らしながら訊いてくる。
「では、私と古城の子供が第二世代の吸血鬼として絃神市国の重要な戦力として役に立つから、といえば古城は納得してくれるのですか? そのほうが私らしいと、あなたは思うのですか?」
古城の返事を待たず、しかし、とラ・フォリアは続ける。
「そうではないのです。古城には今の私を、策謀家として知られるアルギディアの王女ではなく、一人の女の子として見ていただきたいのです」
呆ける古城の手を引いてベッドのほうに連れて行き、最後に言った。
「なぜなら────あなたが好きだから。心の底から愛しているからです。そこに国としての利益やあなたが第四真祖であることは関係ありません。私は、あなたの子供が欲しい」
そう言って、潤んだ上目遣いで見上げてくる彼女はとても魅惑的で、蠱惑的で。
その白い首筋を見つめていると、どうしようもなく強烈な飢えと渇きがこみ上げてくる。
「抱いてください、古城」
その言葉を最後に、古城は自分の理性が崩壊していくのを感じた。
青白い肌に牙を突き立て、甘く本能的な官能に身を浸していく。
*
古城が気が付いた時には、目前のラ・フォリアは小さく身体を痙攣させて浅い息を吐いていた。
首筋には古城の行為を象徴するかのように、キスマークのような牙の痕が残っている。
「普段なら、ここで終わりにするんだけどな…………」
何かを確認するように、古城は呟く。
ラ・フォリアも何かを言おうとしている様子だが、呼吸が整っていないのか、口から出た声は言葉になっていなかった。
「……でも、
身体が熱い。心の底から湧き上がる感情が、すべて目の前の少女に向けられているのがわかる。下半身のモノも、役目を終えるまでは縮んでやらないと言いたげだ。
「……いいんだな、ラ・フォリア」
「そんなの、訊くまでもありませんよ」
目は潤んで、呼吸も荒い。そんな状態で、ラ・フォリアは今までに見たことのない、しかしひどく魅力的な笑顔で答える。
「──―私でよければ、喜んで。来てください、古城」
その言葉を引き金にしたように、古城は自分の唇を彼女のものに強引に合わせる。
久方ぶりに触れる彼女の唇は柔らかく、その身体から溢れる花のような甘い匂いが、より一層興奮を促進させた。
それと同時に彼女のネグリシェの裾を捲り上げ、下着を白日の下に晒す。たくさんのフリルに彩られた、高級そうなブルーの下着。
待ちきれずに両手で下着に守られた胸に触れてみると、下着の固い感触と共に押し返すようなハリのある弾力が伝わってきた。
「……ふっ……んん……、はぁ……」
古城の行為に呼応するようにラ・フォリアの口から洩れる悩まし気な声。それが彼女を支配しているかのような感覚を古城に覚えさせてくる。
気の赴くままに一方的な行為を続けていると、彼女が古城の背中に手を回し、強く抱きしめてきた。
一度口を離して、湧き上がる官能を耐え忍ぶようにしながらラ・フォリアが言う。
「……他の女の子と比べて、失望したりしました?」
「そんなことをすると思われるほど、ラ・フォリアにひどいことをした覚えはないんだがな」
心外そうな顔をする古城に、少し硬直した後、彼女は呆れたような顔を見せる。
しかし愛おしそうに古城の唇に触れながら。
「本当によくそんなことを言えますね、この口は。……今は──―せめて今だけは、私だけを見ていてくださいね」
寂しげな微笑みを浮かべたあと、彼女から唇を合わせ、舌を絡ませてくる。
そして古城も、彼女の背中に手を回して彼女との間にある異物を取り払った。
初めて直に触れた彼女の双丘は、乙女の玉肌をそのまま形にしたかのような触り心地で、いくら触れても飽きがこない。
本能のままに、溶け合うように揉みしだく。
永遠に続くかのような時間で、彼女が小刻みに身体を震わせるようになってくる。
それを見て示し合わせたように唇を離し、見つめ合う。
彼女が何を求めているかはわかっていたから、古城は小さく目くばせをするだけにしておいた。
普段彼女が見せるようなものとは違う、深みのある満面の笑み。それを見て、彼女の下着をゆっくりと脱がせる。
そして自らの下半身の衣服も取り払い、竿の先端を彼女の花弁に触れさせた。
「……どうぞ」
言葉は、それだけで十分だった。
彼女の顔色を窺いながら腰を前進させ、少しの抵抗感を乗り越えて最奥に到達する。
ふと、彼女の瞳から涙が零れた。
彼女が涙を零すことなど、滅多にはない。慣れないアクシデントに、古城は焦って訊いてみる。
「大丈夫か? 痛かったのか? 無理はしなくていいんだぞ?」
そんな古城を見てクスリと笑ってから、ラ・フォリアは、瞳の端の涙を拭って。
「いえ、本当に古城と結ばれたんだなという実感が湧いてきて。今までは戸籍上は夫婦でしたけど、ほとんど会うこともありませんでしたから」
古城は、そんないじらしい彼女を安心させられるように力強く言ってやる。
「ああ。これで離れてても俺たちはずっと一緒だよ」
微笑むと、彼女も精一杯の笑顔で応えてくれた。
そんな仕草に、激しい愛おしさがこみ上げてくる。
「……動くぞ」
そう言って、腰を少しずつ動かしていく。
初めは耐えるようだったラ・フォリアの声にも、次第に甘い色が混ざるようになってくる。
「こ……古城……絶対、中に出してくださいね……」
切なげな声で嘆願され、古城は辛抱堪らないといった表情で。
「ああ……。というか、俺も限界が近くてそんなことを考える余裕はなさそうだっ……」
その言葉にラ・フォリアは照れたように笑ってくる。
初めて見るどこまでも無防備な彼女に、射精感は止まるところを知らない。
「私は、第一子は女の子がいいですね。きっと可愛くて……優秀で……その力をあなたみたいに、周りの人達のためだけに使うのでしょうね……。今から楽しみで仕方がないです」
その瞳は、夏音を見るときのように慈愛に満ちていて。
そこにいたのは、生まれた時からの柵に捕らわれない、家族との未来を夢見る純粋な一人の少女だった。
「名前は古城のご両親に考えていただきましょうかね」
「それだけは俺が許さない」
古城の返しに、彼女は小さな微笑みを浮かべる。
そしてこみ上げてきた一際大きな快楽の波に、古城は吐き捨てるように言った。
「────出るぞ!」
その声に応えてか、はたまた彼女も限界だったのか、一気に締まりがきつくなる。
そして小さく震えるラ・フォリアを強く抱きしめ、古城は最奥で果てた。
*
目が覚めた時には、部屋には明るい日差しが差し込んでいた。
最上階のスイートルームからは、絃神島の街並みと果てしない水平線がよく見える。
忌々しい夏の日差しに顔をしかめていると、横から声をかけられた。
「昨夜はお楽しみでしたね?」
からかうような声。そこにいたのは古城が初めて彼女と会った時と同じ、謀略家として真祖にも警戒されるアルディギアの第一王女だった。
初めて会った時と違うのは、彼女が真の意味で古城の"血の伴侶"であるということ。
「夫の欲求を発散させてあげるのは妻の務めですからね。またいつでも呼んでくださいね」
そう言って微笑んでくる彼女の左手の薬指には、銀色の指輪が真夏の日差しを受けて美しく輝いている。
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リクエストがあればほかのヒロインたちとの作品も作るかもしれません。