※この作品はR-18です。

"伴侶"たちとの初体験   作:夕張ぺぺ

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真夜中二時のヒメゴト

 うだつの上がらない平日を乗り越え、ようやくやってきた休日。

 古城は自室のベットに横になって、ぼんやりとネットサーフィンに励んでいた。

 

 窓からは夕陽が差し込み、室内を橙色に染め上げている。普段ならば、凪沙が夕飯の支度を始める頃合いだ。

 

 しかしそこで古城の耳に入ったのは、凪沙が料理の準備に取り掛かる音ではなく、インターホンが鳴る音だった。

 

 重い腰を上げて対応に向かおうかとも思ったものの、古城が自室のドアを開ける寸前に、隣の部屋から元気な凪沙の声が聞こえた。

 

 

「はーいっ! ちょっと待っててね、今開けるから!」

 

 

 とても宅急便に対する反応とは思えなかった。

 

 誰かが来る予定でもあったかな、と古城がリビングに出て記憶を遡ろうとしたところで。

 

「お、お邪魔いたしますわ……。古城も久しぶ……って、なんですのその顔は?」

 

「いや、どうしてカス子がここにいるんだ?」

 

 凪沙に連れられて暁家のリビングに顔を出したのは、凪沙のクラスメイトであり、古城の"血の伴侶"を纏めた後宮の一員でもある、香菅谷雫梨・カスティエラその人だった。

 

「は……? 私が今日泊まりに来るということは、一週間ほど前から決めていたはずですけれど。それとも、凪沙が伝え忘れただけですの?」

 

「雫梨ちゃんと話したその日に古城君に伝えたけど、古城君は雪菜ちゃんの方を見てぼーっとするばっかりで、ちっとも聞こうとしてなかったんだよね」

 

 当の雪菜は今日は獅子王機関の支部へ報告に行っており、夕食には参加しないのだが、そんなことは雫梨には関係のない話だ。

 その言葉を聞いた雫梨は、その真っ白な額に薄く青筋を立てて。

 

「わたくしは一発くらいこの男を殴っても構いませんわよね?」

 

「悪かったって! お前とは最近顔を合わせてなかったから忘れてただけで、別に出てけっていってるわけじゃねーよ」

 

「忘れてたって……は? 恩莱島で半年近く貴方を監視していたのは誰だとお思いで? 数週間顔を合せなかったくらいで忘れたって言うんですの!? この無節操には拳一発じゃとても足りませんわ!」

 

「そんなこと言われたって仕方ねーだろ!」

 

 凪沙と共に荷物から炎喰蛇(ハウラス)を取り出そうとする雫梨を取り押さえながら、古城が叫んだ。

 

 実際、古城は今まで通りに学園の生徒として振舞うと同時に、第四真祖としての公務をこなさなくてはいけなかった。

 

 未だ夜の帝国(ドミニオン)としての歴史の浅い『暁の帝国』では、解決しなければならない問題も山ほど存在する。

 実務的な部分は人工島管理公社や浅葱がそのほとんどをこなしているため、古城がやることは書類へのサインくらいなものではあるのだが、それでも一般の高校生に比べて時間が少ないことは事実だった。

 

 だから学年も違う雫梨と顔を合わせる機会が少なくなり、少し頭から抜けるのも仕方のないことだ、というのが古城の主張であった。

 

「その飄々とした態度がムカつくって言ってるんですの! 久しく会ってなかった"伴侶"との再会なんですから、少なくとももっと嬉しそうな顔をするべきですわ!」

 

 そこまで口にしたところで、"伴侶"という言葉に照れてしまったのか、雫梨は顔を赤くして俯いた。

 

 そんな彼女の様子を見て、古城は薄くため息を吐いて。

 

「カス子に会えて嬉しいよ。久しぶりに顔を見られて安心した。……ほら、これで満足か?」

 

「雫梨ちゃん、本当にどうしたの? 学校ではそんなに暴力的になることなんてなかったのに……」

 

 労わるような凪沙の声で冷静さを取り戻したのか、雫梨は落ち着いた声で。

 

「わたくしは別に……そこの軟弱な男に腹が立っただけですわ。一通り怒って溜飲も下がりましたし、お夕飯の支度をしましょう?」

 

 そう言って、彼女はいつものように気丈な態度で鼻を鳴らした。

 

 一見すれば、普段の彼女とは全く違わないように見える。

 

 しかし、古城はそんな彼女の瞳に奇妙な既視感を覚えたことが、どうにも気になってならなかった。

 

 

 *

 

 

「結局なんだったってんだよ……」

 

 豆電球だけを付けた薄暗い室内の中で、古城は呟くように独りごちた。

 

 あの後、特に何事もなく夕食を取り、順番に風呂に入るところまではいった。

 

 しかし、二人が入浴した後に入浴した古城は、浴室に残る二人の痕跡が妙に気になってしまったのだ。

 

 湯舟に浮かぶ純白の長髪や、浴室に確かに残る甘いシャンプーの残り香。そして脱衣所に無防備に置かれた、仄かに雫梨の匂いのするバスタオル──。

 

 入浴してしばらくしても、それらが脳裏を過ってしまい、どうしても心が落ち着かなかった。

 

「……よし」

 

 古城は心の中で密かに決意を固めた。

 

 目を閉じて寝入りを待つことを諦め、枕元のスマートフォンを手に取った。

 空いた手で机に置かれていた箱ティッシュに手を伸ばし、数枚取り出す。

 

 そしてパジャマのズボンと下着に手をかけ、膝上まで下ろした。

 

 皆が寝静まる家の中では、布擦れの音を一際大きく感じる。

 

 スマートフォンの画面に目を戻し、タブがシークレットモードになっていることを確認してから、検索ボックスにお気に入りのサイト名を入力──―

 

 しようとしたところで、部屋のドアが遠慮がちに数回叩かれた。

 

「古城……、起きていますか?」

 

 続けて聞こえてきたのは、囁くような雫梨の声だ。

 起きていたとしても、イヤホンをしていれば聞こえないだろう、その程度の音量。

 

 古城は慌ててズボンを引き上げて下半身を隠してから、小さな声で答えた。

 

「まだ起きてるぞ……一応。どうしたんだ?」

 

 その質問には答えず、雫梨はドアを少しだけ開けて部屋の中に入ってくる。

 

 薄いパジャマしか着ておらず、長い白髪を下ろした彼女は、外での凛とした姿に比べればとても無防備に思えた。

 

 彼女は古城の言葉を無視して、ベッドの真ん中あたりの位置に腰掛けた。

 

 そして表情豊かな彼女にしては珍しく、憂いを帯びた表情で古城のことを見つめてきた。

 

「どうしたんだ? こんな時間に」

 

 先程の質問を繰り返すように、古城が訊いた。

 

 いつもの通りなら、凪沙が就寝してから数時間は経っているはずだ。彼女一人だけが起きていたのは不自然だとも言える。

 

 眠れなかったりしたのだろうか? 

 

 しかしそんな古城の内心を知ってか知らずしてか、雫梨は静かに言った。

 

「古城、一度身体を起こしていただけませんか? 寝転がったままでは話しにくいと思いますの」

 

「い、いや……そうだな……」

 

 固くなったままの下半身を隠すために寝転がった体勢のままでいたのだが、こう言われてしまっては成す術もない。

 古城は下半身から毛布が剥がれないよう、腰を引くようにして体を起こした。

 

 不思議と、雫梨の視線は下半身に向いたままだ。

 そんな古城の様子を見て何かを確信したように雫梨が言った。

 

「古城……もしかして貴方、一人で……えっちなことをしようとされてましたの?」

 

 薄暗い中でも、彼女の顔は少し赤らんで見えた。

 

「いや……別にそういうわけじゃないけど……」

 

「じゃあ、この毛布を捲ってみてもいいんですの?」

 

 沈黙する古城を見て雫梨は、やっぱり、と呟いた。

 

 しかし雫梨はすぐに気を取り直したように。

 

「これはもしかして……わたくしが泊まりに来たから……なんですの?」

 

「……そうかもな。最近は忙しくてあんまり出来てなかったし」

 

 どうして年下の女の子にそんなことを言わなきゃいけないんだ、と古城は心の中で嘆いた。

 これが彼女がこんな時間に訪ねてきた理由なのだろうか。

 

 そんな嘆きを無視して雫梨は、何かを決心したようにこんなことを言った。

 

 

「……なら、わたくしが手伝って差し上げますわ」

 

 

 一瞬、古城は彼女が何を言ったのか理解できなかった。

 

「…………いや、手伝うって言ったって……」

 

「わたくしが触ってあげると言ってるんですの。ふ、不満だとでも言いたいんですの?」

 

 彼女はそう言いながら、毛布越しに古城の下半身に触れてくる。

 

 彼女の顔は薄暗い中でもハッキリと分かるほどに真っ赤になっていた。

 本来であれば彼女は、キスすら恥じらうほどに恋愛経験に疎いのだ。

 

「貴方がわたくしのことを忘れたとか馬鹿なことばかり言うから、わたくしがどんな思いをしたか……ああもう、思い出すだけでも腹が立ってきましたわ! ほら、さっさとズボンを脱ぎなさい!」

 

「ちょっ、おいカス子……っ!」

 

 止める暇すら与えられなかった。

 古城の意思など関係ないと言わんばかりに、雫梨は強引に下着ごとズボンを下ろしてくる。

 

「うっ……お、大きいですわね……少しだけですけど」

 

「……お前、あんなに強引に来た割には慣れてないんだな」

 

「当たり前ですわ! が、学校の教科書以外で男性のモノを見る機会なんて、今までありませんでしたし……。ですが、同じクラスの女の子の話を聞いて、何をすればいいのかくらいはわかっているつもりですから。貴方はそこで静かにしておいてください……っ!」

 

 雫梨が古城の下腹部に向ける視線は、未知のものに遭遇した時のように怯えが多分に含まれていて、見ていてとても安心できるものではなかった。

 

 それでも一生懸命に気持ちよくなってもらおうと、その真っ白な指で全体を握るように大きく手を動かして刺激を与えてくる。

 

 

「ま、まだ大きくなるんですの……っ!?」

 

 

 彼女の手の中で、剛直が少しずつ膨らんでいく感覚が古城にはあった。

 

 彼女は教科書を除いて一度も男性器を見たことがないと言っていた。想定よりも大きくなったモノは、彼女には実際の大きさよりも余程大きく感じられることだろう。

 

 

 それでも懸命に刺激を続ける雫梨の手管に、古城も快感を感じ始めていた。

 よく見てみれば、雫梨の表情にも、初めの羞恥とは違った艶っぽい色が浮かんでいる。

 

 しばらくしたところで彼女はふと顔を上げ、古城と目を合わせた。

 

 

「……男性は手での刺激だけでなく、視覚的にも刺激があるとより興奮すると伺いました。古城が見たいと言うのなら、わたくしは……脱いでも構いませんわよ」

 

 

 その言葉は、感情の昂ってきた古城にはとても魅力的な提案だった。

 今までに何度か見たことのある彼女の扇情的な裸身を思い出し、古城は鼻の奥にツンとした金属のような匂いを感じたが、小さく頷いた。

 

 古城に見つめられながら脱衣することへの羞恥を感じながらも、彼女は着ていたパジャマのボタンを上から外していき、真っ白なフリルで彩られた可愛らしい紫色の下着を露わにする。

 

 そして上に着ていたパジャマを完全に脱ぎ去り、上半身に着ていた下着すらも──―。

 

「わたくしはお世辞にも大きい方ではありませんし、浅葱さん達に比べると少し物足りないかもしれませんけれど……」

 

 彼女は古城を見つめて、弱弱しく微笑んだ。

 

「前にも言いましたよわよね……。貴方は第四真祖で、夜の帝国(ドミニオン)の領主で、なんだって持っていて。……そんな貴方に対して、わたくしが渡せるものなんて、これくらいしかありませんから」

 

 古城の目線の先にあった、彼女の小さくも形の良い双丘の頂点にある二つの突起は、色素の薄いピンク色をしていた。

 

 彼女は古城のモノを握っていない方の手を頭に当てて。

 

「古城はこの鬼族(オグレス)の象徴たる角をよく触りたがっていましたわよね。……今だけは特別に、触ることを許して差し上げますわ」

 

 

 その一言を最後に、彼女は屈んで、握っていたモノを口内に迎え入れた。

 

 肉質的な熱さと共に、彼女の小さな舌で先端付近を刺激され、古城も声を漏らしてしまう。

 

 古城の視線の先にいる雫梨は、露わになったその双丘も、美しく手入れされた純白の長髪も、頭に小さく生えた一対の乳白色の小さな角も、どれも甲乙つけ難いほどに魅力的で、どうしても目が離せなかった。

 

 

 快楽に浸っているうちに、古城に小さな悪戯心が芽生えた。

 

「……ひゃっ! そ、そんなに急に触らないでくだ…………うっ……ふぅ……、こっちに集中させて……はぁっ!」

 

 古城は彼女の頭にある一対の角を、左右の手のそれぞれで捏ねるように触れてみる。

 どこか固い部分もありながらも触り心地が良く、触れる度に雫梨が反応してくれるのもたまらない。

 

「……やっぱりあなたは監視対象にしておくべきでしたわ」

 

 口ではそう言いつつも、彼女は口や手を使った奉仕を精一杯に続けてくれる。

 そんな彼女の健気さに、古城は深い愛おしさを感じた。

 

 モノには元々の二つの刺激に加えて、不規則に彼女の吐息が吹きかかることで、古城の快感も頂点に達しつつあった。

 

 

「……カス子っ、……悪いけど、もうすぐ限界みたいだ……」

 

 

 彼女に迷惑をかけたくないという思いから、一言かけてみる。

 しかしその言葉を聞いた雫梨はふと手を止めて。

 

「カス子じゃなくて……きちんと名前で呼んでください。そうしないと、出させてあげませんわよ?」

 

「雫梨っ……! もうすぐ出すぞ……っ!」

 

 

 古城には、彼女の熱っぽく潤んだ瞳が少しだけ微笑んだように見えた。

 

 

「わ、わたくしももう…………っ!! ……っっ!!!! ……はぁ……っく……」

 

 

 古城の剛直が何度か痙攣するのと同時に、彼女の体も数回跳ねた。

 

 そして彼女は数度呼吸を整えるように鼻だけで呼吸をした後に、口の中の液体を嚥下した。

 

 

「話には聞いていましたけど……に、苦いですわね……。妙にネバついていて口に絡まりますし……」

 

「……無理に飲んでくれなくたって良かったんだぞ?」

 

「いえ……これはわたくしがしたかっただけですから」

 

 

 一通り話し終えたところで、古城は全身に酷い倦怠感を覚えてそのままベッドに倒れこんだ。

 

 剥き出しになったままだった剛直を雫梨が近くにあったティッシュで拭き、ズボンを引き上げてくれたことを肌だけで感じる。

 

 そして沈みそうになる意識の中で、古城は心伝えたかった一言だけを口にした。

 

 

「ありがとうな、雫梨…………」

 

 

 *

 

 

『雫梨ちゃんは古城くん起こしてきてーっ! 私は先にご飯準備しちゃうから!』

 

 うっすらとした意識のなかで、古城は懐かしい声を聴いたような気がした。

 

 そのまま眠りに戻ろうとする意識を何とか繋ぎとめ、薄く目を開けると、真夏の日差しがカーテンの隙間から洩れている。

 

 朝がやってきたことだけは理解できた。昨日のことは果たして現実だったのか、朧気な意識の中ではうまく考えられなかった。

 

 とりあえず体を起こそうと視線を上に向け、目を開くと、こちらを見下ろす白い長髪の少女と目が合った。

 

「朝は苦手だと聞いていたのですけれど、こんな時間から起きているのですね。攻魔高専でもそうしていてくれればどれだけ良かったか……」

 

 奇しくも彼女と初めて出会った時と同じような状態だな、と古城は思った。

 もっとも、記憶の中にあるような優しい瞳ではなく、こちらを責めるようなジト目で見つめられていた訳だが。

 

「……うるさいな、カス子。起きてないんじゃなくて、目が覚めないからまた眠りに戻っちゃうだけなんだよ」

 

 

「それなら、何か目が覚めることがあればいいという訳ですわね?」

 

 

 古城が覚えているのはそこまでだ。

 

 気が付いた時には唇に何か柔らかいものが押し当てられ、ふんわりとした花のような香りを鼻に感じていた。

 それが離れた後の唇には、薄っすらと塗られたリップクリームの甘い後味が残っている。

 

 驚愕に目を見開いた古城を尻目に彼女は窓際まで歩いていき、カーテンを大きく開いた後に振り返ってこう告げた。

 

 

「もう、忘れたなんて言わせませんから」

 

 

 それがとても眩しく感じてしまったのは、起きたばかりの目に入ってきた真夏の朝日のせいだったのだろうか。

 




更新遅れてすみません!

今回は本番はなしでした。隣の部屋で妹が寝てたら流石にね…。

拙作にも関わらずメッセージや感想を送ってくれた方、そしてお気に入りなどをしてくださった方も、本当にありがとうございました!


次回の予定は未定。
続けるなら霧葉か夏音だと思います。



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