これがアンドロイドの次なる進化なのだ――熱を帯びるカムスキーの言葉は右から左へ抜けていき、何を言っていたかよく覚えていない。ただ、コナーにいくつか質問をし、念入りにメンテナンスを、とたっぷり時間をかけてコナーの身体を弄り回していたことだけは憶えている。
カムスキーの屋敷を後にし、自宅に帰った時には日が暮れてすっかり夜になっていた。
途中のドライブスルーでLサイズのピザを買ったとき、コナーはカロリーがどうのこうのとお決まりの文句を口にしたが、無理に買い物を止めない。帰って普段通り料理できる体調でないのを察しているらしい。車の中でいつものコイン遊びをしても、指の上を転がすともたつき、投げては足元に落として一度も成功しない。
テレビの電源を入れた。ソファに座り、冷めたピザを片手にデトロイト・ギアーズの試合の再放送を流す。隣に腰掛けるコナーはじっと黙っている。こめかみは黄色と赤を行ったり来たりで、一度も青に戻らない。
液晶の向こうで選手がダンクシュートを決め、派手な歓声が上がる。高揚をもたらす熱気が俺の耳に入っても、反対の耳へ抜けて何も残らなかった。
コナーが硬貨を出し、右の人差し指の上で回す。指先から逸れた硬貨は、音を立てて床に転がり落ちる。コナーの指先は、微かに震えていた。
「おい、コナー……大丈夫か?」
「はい。プログラムは正常に作動しています」
「そうじゃねぇ」
コナーより先に床のコインを拾い上げる。ついでにテレビを消した。
余韻さえ残らない石のような静寂が満ちる。
「お前、いつから人間の記憶が視れるなんて芸当できるようになったんだよ」
「……ジェリコでリタを探したときに」
そうだ。あのとき、コナーは指でリタの涙を拭いてやっていた。様子がおかしいと思っていたが、あのときに気付いちまったのか。
「ですが、ただ触れるだけでは視ることは出来ませんし、顔認証などであれば全く問題ありません。血液、DNA分析も同様です。スキャンをしながら、対象の眼球に触れることで……人間のメモリーを読み取れます」
「で、昨日俺が見た悪夢も、お前は視えたわけか」
鎌をかけると少し間があって、コナーはこくりと頷いた。
「……先ほど見ていただいたと思いますが……腐敗が始まっていなければ、死んだ人間であっても記憶は読み取れました。ナノマシンが作る微弱な電気を眼球から脳に直接流し、一時的に人間の脳を再起動させることが出来ましたから」
「……電気ショックで死者の記憶まで拝めちまうってことかよ……」
「はい」
二、三度指を曲げてストレッチし、コナーは膝の上に手を乗せる。まだ震えは止まらない。
「お前……休め」
「僕はアンドロイドですよ。疲れることはありません」
コナーは首を振って平気だと弁明する。だがLEDは正直だ。赤く悲鳴を上げて俺に異常を知らせている。
「人間ならな、あんな惨い映像見てショック死するやつだっている。変異体は自己破壊する傾向にあるって、お前言ってたな?もうお前の身体は一つしかねぇんだろ」
「……はい」
「なら、なおさらだ。お前もPTSDとか、そういう病気になっちまう。いや、もうなってるだろ……だからお前、身体がおかしくなってんだ。とにかく休め」
あんな映像見せられた後で、俺自身まだ頭が信じられないでいる。何か飲んで一息つこう。ソファから腰を上げたとき、
「ハンク……待って、ください」
手を掴まれた。
振り返る。コナーの震えが、俺の手に直に伝わってきた。
「……怖いのか」
「分かりません……ただ……一人に、なりたくない……これは、いえ、これも……恐怖なのですか?」
上目にコナーが問いかけてくる。俺の瞳の中に答えを探しているようだった。
ソファにもう一度腰掛けたとき、
「……ハンク」
「なんだ」
「試していいですか?」
「あ?」
顔を向けた途端、コナーが俺にしがみついてきた。
「お、おい、なんだ」
「……欲しいんです」
胸に沈めていた顔を上げ、真剣な眼差しを俺に向けてくる。照明の反射のせいか、紅茶色の瞳は潤んでいるように見えた。
言葉の意味に逡巡する間に、コナーが俺の胸に自分の左耳をつけてきた。
「……あなたのメモリーがあると……とても落ち着くんです……」
コナーのこめかみが、何度か正常を示す水色になった。思わず胸を撫で下ろす。
……あれか?今の俺は、こいつにとっての『ライナスの毛布』ってやつか?
「……嫌ですか?ハンク……」
「……落ち着くんだろ。とにかく、このままでいいから休め。しばらくこうしててやるから。ったく、本当、デカいアンドロイドベイビーだな」
「……ありがとうございます……」
一言二言反論するかと思ったが、コナーは大人しく瞳を伏せた。
ずっと床に伏せていたスモウが歩み寄って、コナーの顔に鼻を近づける。心配しているらしい。コナーが腕を解き、スモウの毛に指を滑らせた。
それでもLEDが信号機みてぇに三色の間を行ったり来たり。楽になるかどうか分からんが、しばらくコナーの背中をさすってみる。やがて震えが止まった。
「……お前、しばらく俺の部屋で寝てろ」
「いえ、大丈夫ですよ……あなたのベッドが狭くなってしまいます」
「病人のお前をここに放置して、朝起きたらシャットダウンしてました、なんて寝覚めが悪すぎるんだよ」
「……分かりました」
ようやく離れて起き上がったコナーのこめかみがまたレモン色になった。震えてはいないようだが、一刻も早く休ませた方が賢明だと、すぐに寝室へ連れて行く。
「パジャマ出してやるから、ちっと待ってろ」
「はい」
ベッドの使用範囲を気にしているらしく、コナーはちょこんとベッドサイドの隅に座って動かない。
コナーのパジャマを見つけて手渡す。
立ち上がったコナーは腕を交差させ、着ていたニットの裾を持ち上げて脱いだ。窓際のチェアに服をかけ、その場でシャツのボタンを上から規則正しく外していく。首につけているコインネックレスが現れ、ゆらゆら揺れた。
視線が自然と吸引された。見た目はどうしたって男なのに、性を持たない超越的な身体。
カムスキーは、アンドロイドを枯れない花と呼んでいた。そう、そこに立っているのは――永遠を望む人間が創り出した夢のフェイク。
「……コナー」
「はい?」
コナーの手が止まる。ボタンが全て外れたシャツから覗く、月のような淡色の肌。
気を取られ、自分でも何故呼びかけたのか分からなくなった。次の言葉が喉から出てこない。
「ハンク?」
コナーが俺の目の前に歩み寄ってくる。
「いや……なんでも、ねぇよ……」
「心拍数が上がってます。ストレス指数も……やはり、僕と一緒では……あなたが休めないのでしょう」
お得意のスキャンで俺の嘘を見抜こうとするが、ベッドで寝るのを拒絶されたと勘違いしていた。
こめかみを赤くしながら、コナーはパジャマを拾い上げた。なんでもないというような澄ました顔が一瞬、寂しさを匂わせる。
「ですので、ハンク」
肩を掴んで寄せ、唇を唇で塞ぐ。プラスチックとは到底思えない、マシュマロに触れているような柔さ。
コナーは目をぱちくりさせ、パジャマを足元に落とす。理解が追い付いてないと口で言う代わりにこめかみが真っ赤に叫ぶ。
「落ち着くんだろ?」
今度は軽く啄ばんでみる程度に口づけて宥める。危害を加えないと教えるように。
「……ハンク、先に言っておきますが」
「……なんだ」
「潜入捜査で必要な場合があると、セクサロイド機能が搭載されてます。貴方が望むならプログラムを起動しますが……お望みですか?」
「お前、情緒ってもんは搭載されてねぇのか」
溜息をこぼす。
表現が下手くそだ。そんなところ俺に似たってしょうもねぇ。
お望みですかって?病人のくせに、こんなときまで俺を気遣ってるつもりなのか。それとも嫌われないようにご機嫌取ってるつもりなのか。
でも、病気してるこいつが本当に望んでいること……こいつを治すのに必要なお薬が何かはよーく分かった。効くかどうか今すぐ実行して確かめようとする俺も救いのねぇ馬鹿だが、こいつの言いたいことと俺の言いたいことは同じ。
「ちゃんと言ってみろよ」
「何をですか?」
「お前が本当に望んでいることを」
言いたいことをこいつに言わせようとする自分の意地悪さに辟易しながら、次の一手を誘導する。
コナーはプレゼンテーションの方法でも検索しているのか、こめかみをくるくるさせて黙っている。
「お前の言葉で言ってみろ」
追いうちをかける。怖気づいたようにコナーは、自分の爪先に目を落とした。
よく回るオツムを持って言いたいこというくせに、こんなときばかりポンコツになる。
「……僕の……」
やがて鳶色の眼が上目に、俺の眼をしっかり捉えた。
「僕のメモリーを、あなたで……埋め尽くしてみたい……」
透き通るような眼差し。
返事をする代わりに、コナーの首の後ろに腕を回した。
「……僕は……あなたが欲しいんです……」
曇りない言葉が、俺の
ゆっくりと顔を近づけ、数秒、口元に目線を落とした。
「……なら、お前、そのプログラムとやらは起動すんなよ」
承諾を聞く前にもう一度唇を重ねた。
何度か挨拶代わりにコナーの口の表面を、唇でノックしてみる。
鼻先がぶつかりあう距離でコナーを見つめるが、棒立ち状態。プログラムとやらの助けがないからか妙に大人しく、そわそわして初々しい反応が俺のささやかな嗜虐心に火をつける。
再び口づけ、そのまま舌を突き出し、コナーの薄い唇を
「もっと、しても、いいですか……?」
いつもバカデカイ声を出すメガホンから、しおらしい声が零れた。
さっきソファでしたように俺に抱きつき、コナーも唇をくっつけてきた。ちゅ、というソフトなリップ音は、何年ぶりに聞いたか分からない。
俺の伸びきった髪に指を入れ、隠れっぱなしの耳をコナーが撫でてくる。
密着しながら唇を唇で挟み、何度も
「ハン、ク……もっと……」
びっくりするほど淫靡な声音を間近で上げる。
凭れかかる肩を押してベッドに倒した。ギシリとスプリングが音を立てて過重を訴える。
「ん……んっ……」
覆い被さり、背中に回した手でコナーを軽く抱き寄せた。
顎を掴み、舌を押し付け口腔をこじ開ける。舌先をフックのように曲げて、唇の内側をなぞってみた。それから上顎、歯列、舌のライン。人間そのものとしか思えない触感と温もり。
コナーも真似して同じように答える。絡み付く、しっとりと濡れた舌。口からどちらのものか分からない唾液が溢れ、俺の髭まで濡らす。
「もっとほしいか?」
「……はい……ほしいです……」
息継ぐがてらじっと見据えると、コナーも俺の背に腕を回してねだる。
返事代わりに、コナーの下唇を優しく噛んだ。
舌の先端と先端をくっつけ、ちろちろ確認し合い、絡め取った舌の先を吸い上げる。
「……ハ……ンク、もう、一回……」
「そういうとこも人間そっくりに造ってあるのか?……大分敏感に出来てるじゃねぇか」
望み通り口の中を探り、アイスクリームを溶かすようにお互いの舌で触れ合う。口に溜まった唾液が零れる前に、コナーがじゅるじゅる音を立て、大げさに吸いこむ。
「そんなに欲しいかよ」
「はい……あなたのデータがあると……システムが安定します……」
吸いきれなかった唾を口端から垂らし、コナーが俺を見上げてくる。
自分の舌でコナーの舌を包み、味わいながら、背中に回した腕を上下に動かして撫でる。骨のデコボコした硬さがなく、なんだかシルクのタイでも触っているようだった。
うなじに触れたとき、極々わずか、へこんだ箇所を見つけた。
「そこは、接続口です……」
指先でなぞると、コナーの身体がぴくりと跳ねた。
「ハンク……ッ」
「くすぐってぇか?」
「違和、感、が……」
「こんなとこ、誰も触ったことねぇんだろ?だから余計感じるんだ」
アンドロイド特有の性感帯ってところか。普段はシャツで隠れ、皮膚機能で迷彩されているから、誰も知らない。
たった今見つけた弱点に顔を近づけ、舌で凹凸をなぞり上げた。
つけたままのコインネックレスを指にかけ、コナーの首を引き上げながら耳たぶを口に挟んでみる。やはり人間と同じ柔さ。息を耳孔に吹きかけると、微かにコナーの身体が揺れる。
「ちゃんと感じるみてぇだな。それともプログラムとやらの反応か?」
「……ちがい、ま、す……」
「どっちが違ぇんだよ……」
「うっ……あッ……」
舌の先を丸めて耳の中に回し込むが、コナーは喘ぐばかりで答えない。
身を起こし、ネックレスを持ち上げていた手を緩め、ボタンが外れたままのシャツの内側に滑り込ませる。温めたミルクのような微熱を感じた。
シャツを肩からずらす。
「ちゃんと見せろよ」
コナーは大人しく従い、そのままシャツを剥ぎ取る。
間近に顔を寄せ、虫眼鏡で目に映らない大発見を探す学者のようにきちんと拝んでみた。
肌理、ほくろといった細部を再現した皮膚。当然と言えば当然だが一切のかさつきや湿疹、肌荒れがなく、シャワーを浴びた後のような湿り気を帯びて、どこまでも滑らか。
アンドロイドは署でも街中でもどこでも何度も目の当たりにしている。同じように造られているはずだが、目の前のこいつはもっと人間と機械のいいところばかりをパッチワークしているように思えた。
「こうして見るとよく出来てんな、お前の身体」
陶器のような白い肌に指を滑らせる。
ティーンの頃に付き合っていたガールフレンドから、ささくれだった指で腿をなぞったときに痛いと殴られたことを思い出した。
あのときより皺が刻まれ、ごわつく老いぼれの手に、コナーは文句の一つ言わない。
「……もっと……」
「ん?」
「……もっと、触れて、ください……あなたを感じたい……」
コナーが俺の腕に自分の手を添え、導く。肩、胸、腰、腹、聴診器のように手を当てて触れるたび、コナーは目を細めた。
「……どう、ですか……?」
「どうって言われてもね……でも、意外と……柔らかいとこもあるな……」
ふくよかな肉とはまた違う感触。機械らしい硬質さはあるが、同時に弾力もある。
肩幅や胸板だってそこそこある大人の体型だが、俺より小さく細いから華奢に感じる。脇や胸に体毛はなく、体臭がないことも手伝って、現実離れした無垢を色濃く漂わせていて。
「イライジャが言っていたと思いますが、僕は捜査のために――」
何かを解説しようとする唇を唇で封じる。
小さく舌打ちして睨んだ。
「……お前な、空気ってもん読めよ」
他の野郎の名前なんざ聞きたくもない。ムカつく創造主なんざ、特に。
苛立って首筋に噛みついた。歯型が残りそうなほど強く。
「……っ……あ……ハ……ンク……」
「罰だよ、罰」
もう一度、噛み千切ってしまうほどに歯を立てた。
「……ブルーブラッド、が……流れたら、汚れますよ……」
「死にたくねぇなら俺のことだけ考えてろ」
コナーの肩に腕を回し、反対の手で逃げないように頭も押さえつけ、再び食らいつく。
舐めて濡らした部分は艶めいて分かるが、伸ばしたゴムが元に戻ったかのように痕がつかない。皮膚を何度か吸い上げたが、鬱血もしない。
「……なんだ、痕は残せねぇのか」
「……いえ、設定を変更、すれば……ハンク、残して……」
「んじゃ、そうしろ」
もう一度、鎖骨の辺りをしっかり吸う。今度はちゃんと赤い点が生まれた。
「……僕も……いいですか……?」
コナーの手が伸びてきて、俺のシャツを引っ張った。
「あなたの……データを、ください……」
「それでお前元気になるのかよ。安上がりだな」
着ていたシャツのボタンを外して投げ、肌着一枚になる。
堪えられないのか、コナーがアンダーシャツをめくり、胸と腹の間に舌を寄せた。
「ジジィの汗なんぞ臭ぇだけで旨くもなんともねぇぞ」
「……いいえ……あなたの……データだから……」
抱きついたコナーの舌が、胸と胸の間の谷に溜まった汗を掬い取る。飽きずに何度も、何度も。
「……なら、別にいいけどよ」
コナーに好きに舐めさせながら、肌着も脱ぎ捨てた。
こいつが作る飯でへこみ始めてはいるが、未だたるむ腹の肉に手を添え、コナーが上目にねだってくる。
「もっと……いろんなデータが……ほしい、です……」
「だったら俺にも寄越せ」
嫣然と濡れた舌を見せて煽るコナーを再び下敷きにした。
激しく唇を奪う。それからどしゃぶりのキスを唇から首、鎖骨へ浴びせる。
心臓のない胸を愛でれば、鼓動に似た何かが生まれるのだろうか。胸の一番遠い場所から、円をだんだん小さくするように舌を這わせてみた。
コナーの身体が小刻みに跳ねる。
「ハ、ンク……っ……」
「欲しいってんなら、俺をもっとその気にさせてみろよ」
色づく胸の先端を舌先でタッピングする。人間同様にうっすら突起が生まれ、刺激をきちんと認識したコナーは身を捩らせた。コナーの言う設定なのか、それともこいつを造ったサイバーライフの趣味なのか、ロゼワインのような淡い色付きの乳首には女っぽい妙な艶めかしさがある。
唇で挟み、時折歯を滑らせてグミのようなそこを舐り回すとコナーの身悶え、あえかな吐息を零した。
「はっ……あ、ぁ……」
「こういうとこも人間そっくりか」
親指と人差し指を使って軽く摘む。強弱をつけて触れれば、コナーの身体も同じように揺れる。
人差し指と中指で突起を挟み、上に擦り上げた。
「……ぅ、うっ……」
「お前、本当にプログラムとやらは使ってねぇだろうな?」
「……起動、した、ら……っあ……ト、レイシー、たちの……っ……よ、うに……もっと、上手く……あなたを、満、足、させ……」
「絶対使うなよ……そのままのお前がいいんだよ」
反対の胸に爪を立て、弾く。
「ぁ……ッ……」
コナーの身体が弓なりに浮いた。
掠れた声を響かせながら、俺の髪を掴んで抑えつけ、求めてくる。
「なぁ、ここもセンサーか何か搭載されてんのか?」
片方を吸い上げながら、舌を使って摩擦を与える。高性能ボディらしいから、舌の裏側の柔さと真ん中のざらつきの違いなんかも分かるのだろうか。もう片方を指で転がしつつ、反応を窺った。
「は……あ……ぅ、んぁ……ッ」
「ついててもついてなくても、どっちでもいいけどよ……」
そのまま体温のない身体が昂ぶるように、唇を使って熱を
「へそは人間の感じるところらしいが、どうだ?」
「っ、う……」
小さな窪みに舌を使って圧をかける。喘ぎながら俺の背に腕を回し、爪を立ててイエスだと知らせる。
「あ、あッ……」
何かの地図を作るように、唇を使って上半身のあらゆるところを赤く侵略していく。蚊とか蜂に刺されたかのように見え、思わず鼻を鳴らした。
「なぁ、お前虫に刺された人間の気持ちって分かるか?」
「……いえ……」
「虫に刺されると痒くなって、かじりたくて仕方なくなる。刺されたところを掻くと確かに気持ちいいんだよな。でもずっと続けてると血が出て痛くなる」
「……痛みと、快楽は……同じ、だと……おっしゃるのですか……っ?」
「だからお前も今、俺を感じるなら新しい感情を憶えたってことだろ?」
さらに下に手を伸ばし、チノパンに手をかける。
コナーは抵抗しない。それどころか、俺にうっすら濡れた眼差しを向け、シーツから僅かに腰を浮かせた。望み通り、パンツのジッパーを開き、下着ごと腿までずり下ろす。性のない特殊な下腹部がそのまま露わになった。
セクサロイドの機能を使わせれば、ここに俺と同じように男ができるのだろうか?さすがに病人にそこまでさせたくない。穴はないが、人間と同じように撫でてやれば感じるのだろうか。
「……どちらが、よろしいですか?」
何のことを聞かれているか分からなかった。
「女性を模した方がいいですか?」
次に出てきた言葉にたじろぐと、コナーの身体が妖しくざわめく。
まさかと、もう一度下に目を落とす。無毛の蜂蜜みてぇな色をした肌が、綺麗に貝の形を縁取っていて。
ほとんど男を模っているコナーの全身が、そこだけ女にぽっかり変身している異様さに目を見張ってしばし言葉を失った。
「……何だ、これ……セクサロイド機能か?」
「そうとも、言えますが……変異体や人間に暴行された場合に体液サンプルを採るための……捜査機能の一つ、です……流動性化合物を使って……男女のどちらにもなれるようになっています……」
「……お前、造られてから……誰かと試したことあんのか?」
「機能が搭載されていることは把握していましたが……使うのは、初めて、です……」
思わず口の端だけ上げて笑ってしまった。正直に告白するコナーを見下ろし、
「……なら、俺がお前の処女と……ついでに童貞ももらっていいってことだな?」
「……はい……」
言質をとってからズボンを全部脱がせ、ベッドの外に捨てる。
間抜けな顔だと最初に言ったが、こうして見ると美術館の大広間にでも飾られてる彫刻みてぇだ。人間らしく見えるようにあえて不完全さを付加し、捜査のためとはいえこんな変態じみた機能を搭載させ、サイバーライフは目の前の精巧で妖艶な四肢を造り上げた。
そういや、こいつは相手の理想のパートナーとなれるように造られてると言っていた。つまり、派遣された先のパートナーが男女のどちらであれ、こういう関係になったときでも相手を満足させられるように出来ているってことなんだろう。
セクサロイドのお色気機能もあるとはさっき言っていたが、つまりこいつは人間とセックスすることが大前提に造られている。それはパートナー……人間が満足するように望みを、いや、人間の膨らみ続ける欲望を叶えてもらうための性処理道具も兼ねているということなのか?それは飼い主だったサイバーライフのために、あえてそういう機能を持たせられているということなのだろうか?それが意味することは?
コナーは、ジェリコで会ったアレクサンダー・ウェインが自分を造ったと言っていた。ともすれば洗濯洗剤のCMにでも出ていそうなあの男を含め、開発した連中の、理想の実現に対する
コナーが俺の存在をお薬だとラベリングし、身も心も委ねてくれることに不思議な安堵を憶えながら、膝を持ち上げて開いた。そのまま太腿まで手を這わせ、茂みのない花びらにそっと触れてみる。
「……ぁ、う……んッ……」
「……本当……よく出来てんな……」
内側は柘榴のように鮮やかに色づき、ローションも何もつけていないのに潤っている。
割れ目をなぞってみる。ピーナツ1個分ぐらいの膨らみ、桃色の襞、肉の洞窟への小さな入口。指を何度も往復させるたび、粘着質な水音が響く。
「ハンク、待ってッ……感度、レベルを……調、整、します……ッ」
「そんなの最初から全部MAXにしとけ」
指示を出し、しばらく指であやし続ける。
コナーは息を弾ませ、俺の指先を迎え入れたところから、さらに柔らかく潤んでいく。
「舐めても害はねぇよな?」
「……うっ……う、んッ……ハ……ン、ク……ッ」
「どっちだよ……まぁいい、試すぞ」
こめかみを真っ赤に染めて曖昧な返事だけするのがじれったい。
屈んで顔を近づける。造り出された果実のような陰部からはアンダーヘア特有の臭いはせず、愛液に似た何かが溢れて膜を張っている。
果肉の縁を舌で撫でた。無味無臭と思いきや、仄かに甘い。
「ん、んぅ、あっ、はぁ……ッ」
温くなぞり上げるたびに、コナーの足が爪先までピンと張りつめ、身体が小さく跳ねる。
こいつの体液には催淫作用でもあるのだろうか。舐めても舐めても溢れてくる潤いに、勝手に舌が誘引されてしまう。
「ここ、性犯罪者どものネズミ取りみてぇだな……ああ、サイバーライフはそういう目的でこんな機能つけたってわけか」
「っあ……は……う、ぅ……ッ!」
コナーは意味をなさない呻きを漏らし続ける。指を使って果肉をめくり、溢れてくる蜜を舌先で一滴残らず拭い取っていく。
「こいつを使えばどんな野郎でも大満足するだろうよ」
「……あ、なたが……満、足、でき、るなら……光栄、です……っ」
「ありがてぇけど、俺をムショの連中と同じにすんなよ……止めるぞ」
「……ん、ぅ……嫌、です……」
「嫌って言うんなら、もっと足広げろよ」
いやいやと弱々しく首を振るが、コナーが嗚咽に似た声を上げつつ浮きっぱなしの足を動かす。
コナーの足を腰に絡ませてから、舌を働かせつつ、指も使って丹念に扱き続ける。
濡れ具合を確認し、頃合いを見計らって、親指と人差し指でぷくりと膨らんだ豆を摘み取った。
「あ、あッ……!」
膝を抱えていた先端を剥きあげる。そのたびに上がる甘く掠れた声が、俺の耳から全身に欲情を塗りたくり、理性を腐らせていくのが分かった。
もっと可愛がってやろうと、女の芽にそっと口付けを落とす。腰に巻きつかせたコナーの足から、力が抜けていくのが分かった。
「中も確かめさせろ。いいよな?」
返事を待たず、左手で媚肉をいじりながら、右の中指を小さな穴の奥へ入れた。
ふかふかと柔らかく潤んだ壁が、俺の指を包容する。内部はうだるような熱さ。
指の付け根までゆっくり挿し込むと、ちょうど指先が最深に触れる。間接を曲げて内部を押し上げた。
「は、う……ぁあッ……」
「おい……分かるか?」
同じものが全て中に入ったのだと分かるよう、左の中指を立てて見せる。
こめかみを真っ赤に染めながらコナーはこくこく頷いた。
「んなことしなくてもお前の場合、スキャンとやらで全部見えんだよな」
強弱をつけながら、間接のラインに合わせて抜き差しを繰り返す。
一度指を外に出し、付着した蜜を試飲する。やはり、甘い。
コナーの作った女は充血したように一層色を放ち、淫靡に収斂を繰り返して俺を誘っている。もう一度中指を侵入させたとき、俺の掘削工事を中止するなと抗議してるのか、きつく締め付けてきた。
なら、もっと拡張しようと人差し指も内側に入れる。
「ほら、どうだ?」
「はっ……あ……」
何度もストロークしながら中をかき回す。
息苦しそうな顔をして嬌声を漏らすコナーの顔がもっと歪むように、指をバラバラに動かして泳がせる。
「もう一本増やすか?」
「……は、い……っ……もっと、ほし、い……で、す……」
なりふり構わず快楽を望む姿は、俺の良心を奪うに値する殺傷力があった。
徐々に昂ぶっていたが、今の誘いで完全に
風俗店の捜査してたときだって機械らしく澄ました顔してたくせに、お薬ほしさに随分素直になるもんだ。
「増やすぞ」
「そこ、は……あぁッ……!」
薬指も中に投入して行き止まりを圧迫したとき、コナーの身体が大きく跳ねた。そのまましばらく、思うまま指を遊泳させた。指の動きに合わせて、コナーの内側から淫らな歌声が響き渡る。水の歌声のボリュームが増すにつれ、ロープが巻き付いているかのように締め付けがきつくなって指が痛みを覚えた。
こいつに正気ごと絞殺されるんじゃないかと、身の危険を感じて引き抜く。
「あ……ハ、ン……ク……止、めな……」
「今更止めるかよ」
まだるっこしい。下着ごと服を全て脱ぎ捨てた。
「……なぁ、一応スキンした方がいいか?」
「し、ないで、ください、ハンク……ラテックスや、ポリ、ウレタンを……スキャンしたくない……」
コナーが俺の腕を引っ張り、手繰り寄せる。
「……あなたが、いい……」
うっとりした声で、俺を誘う。
とはいえ、もう何年女と無縁の生活を送っているのか。エレクトしてはいるが、この老いた肉体で、フィニッシュできるかどうか。
後戻りできるわけでもない。半ば
一息に捩じり込む。
瞬間、猛烈な締め付け。
「ッあ……お、前ッ……どうなってんだよ……」
「……忘れ、たんですか……?」
意識ごと窒息しかけながらもコナーを見下ろす。
コナーは俺の頬を両手で包む。
細かいことをいちいち覚えちゃいない俺に、機械の忘れることない記憶力を見せつけてほくそ笑んでいるように思えた。
「僕は……あなたの、望む者になると……」
「……はっ……挿れた奴の望む身体になるってことかよ……どんだけ良く出来てんだ……」
入った瞬間に、相手の太さや長さに合うよう内側が伸縮するということらしい。確かに、今、フィットしている。いや、しすぎている。こんなとこまで徹頭徹尾、理想の相手になれるようプログラムされてるってのか。
なら、こいつの頭に住んでるプログラムの殻を剥いて、さっさと素っ裸にしてやろう。
狂暴すぎる快感に酩酊しながら、コナーの両足を脇に抱える。
「……おい、動くぞ……」
「どうぞ……好きなだけ……」
――こういうとき、疲れを知らないアンドロイドというのは恐ろしい。
もう何年も枯れていた肉欲が一気に覚醒し、衝動のまま腰を動かした。
「あ、んぅ、ああッ……」
甘ったるい呻きが鼓膜をくすぐる。
俺の灼熱に合わせてコナーは蛇のように巻き付き、熱が蠢く。
人間なら間違いなく名器の殿堂入りする機械の胎内に、主導権を奪われないよう抵抗し、あちこち貪った。
「セクサロイドは……試したことねぇが……お前、多分あいつらより……ヤバいぞ、これ……」
「……よかっ、た……あ、なたが……満、足、できて……ッ」
規格外の締め付けは一切緩まない。これも機械特有なんだろうか。本当に絞め殺されそうだ。
ぞくぞくするほどの、極上の躰。俺だけが知っていて、俺だけが味わうことを許されている雄の優越感。
「お前、いつも言ってるよな?」
「い、つも……?」
「俺のアンドロイドだって……お前の全部、俺のものなんだろ?」
「はい……はいっ……」
こくこく頷くコナーのガラス玉みたいに綺麗な深い瞳がはっきりと俺を捉えている。嬉し泣きを憶えたのか、潤いを瞳に溜めながら健気に俺に酔いしれていくのが分かり、そそられるものがあった。
抱えたコナーの足を舌で舐め、何度か吸い上げて刻印を残す。俺のものだという確かな印を。
コナーの膝裏に自分の腕をひっかけ、足を押し開かせてマウントしながら抉る。
速度を変え角度を変え、内部のあらゆるところに自分を引っかけるたび、濡れっぱなしの結合部は卑猥な生演奏を聞かせてくる。
「……ふ、ぅあ……んんッ……」
「感じるか?」
「はい……ッ……あなたの、データが……いっぱい、流れ込んで、きて……嬉しい……」
ふやけた眼をして、コナーが俺の背中に腕を回す。
「ハン、ク……もっと、近、く、に……」
「はいはい……」
コナーのわがままに付き合い、抽挿しながら覆い被さる。
ぴったりくっついてやると、コナーは背中に爪を立てながら、俺の腰に両足を絡ませ離そうとしない。
「ぅ、んぁ……はっ……あぁッ!」
「……耳元で……デカい声出すな……」
コナーの首に腕を回して唇を奪い、しばし消音。静かになったところで、反対の手を使ってコナーの胸を愛撫してやる。
「っあ、ぅん、はぁッ……」
コナーが俺の頭を押さえて自分の胸に押し当ててくる。助長するように僅かに俺の髪をかき上げ、コナーが啄むような小さな口づけを耳たぶにくれてきた。
露出した耳をコナーの胸に当てながら速度を落として中を抉る。ポンプの音でも聞こえるかと思ったが、聞こえるのは俺たちの乱れた吐息だけ。
「……はぁ……あ、あぅ……」
髭を使ってコナーの胸をなぞりながら、唇のスタンプを落とした。
腕の中に閉じ込めながら、白くすらりとした喉を見せながら恍惚を浮かべて。
時折うっすら開かれる紅茶色の瞳が、俺を何かの的のように捉えようと視線をぶつけてくる。
「あ、あっ、ハンク、ぅん、あぁ……ッ」
コナーがしがみつき、俺の肩に頭を預けてくる。
疼きを送れば送るだけ、俺に絡みつく熱く濡れたスポンジのような感触が、激しい収縮を繰り返す。
「なぁ……どうだ?……教えろよ……」
汗ばんだ身体を押し付け、腰を揺すりながら感想を聞くと、コナーは必死に首を動かした。
「あなたを、ください……もっと……」
「……煽んな……ッ」
甘ったるい声が頭の中に蔓延し、くらくらした。
致死量すれすれの快楽を服毒させられ、喚き散らしたい衝動のままピストンを加速させた。
はちきれかけていた昂ぶりをコナーの最奥に押し付ける。悦びに塗れたまま、一気に俺の名前を解き放ってスプレーした。
同時にコナーの爪が皮膚を突き破りそうになるほど鋭く立てられ、ぞくりとするほど官能的な声で俺の名前を呼ぶ。
しばし、飛びかけていた意識を残存させようと肩で息を繰り返す。
コナーの腕が背中から滑落し、シーツの上にとさりと沈む音が聴こえた。
勢いに任せてそのまま中に出したが、こいつの身体に不具合でも起きないだろうか。冷静になった俺は自分の名残を掻き出そうとゆっくり引き抜く。
植え付ける土壌が整備されていない接合部から、白い種がどろりと溢れていく。
「……あなたの、データが……」
無駄遣いを咎めるような口ぶりで自分の下腹部に目を向けるコナーに、顔をしかめた。
「……まだ足りねぇって言うのかよ」
「……ほ、しい、です……」
シーツに横たわっていたコナーの腕が胸へ、それから腰、尻と、俺の身体に沿ってゆっくり下降し、俺の
「発情期か、お前は……」
「採取も……駄目ですか?」
コナーが濡れた指先を口に含み、意味深に俺に見せつける。
鎮火しつつあった情欲が、油を注いだように再び全身を焦がしていく。
「……ください……」
コナーはもう一度俺の竿に触れ、項垂れて鼾をかかないよう、器用に指を動かしてねだってくる。
「ほら」
コナーはいたずら小僧のように目を輝かせ、俺の根本を手で包み込んだ。ぐるりとゆっくり旋回させてから腹の方へ倒したり揉みこんだり、感触を確かめてから裏筋に一度ささやかな接吻を落とす。
そのままフレンチキスみたいに音を立てながら、唇で掴んで柔く食んでいく。
根元もスキャンしたくなったのか、コナーは片手で竿を持ち上げる。玉をじっと見つめ、舌の中央でぺろりと舐めあげたり、舌先を使って小突いてくる。くすぐったい。
「……おい、こっち見てみろ」
「ん、ぅんっ……」
ケーキでも食べているようなとろけた顔して、上目遣いに俺を舐めてくる。
コナーが再び竿を口にサンドした。顔を左右に動かしながら、舌をペロペロ動かし愛撫してくれる。
さらに溝になっている部分を上下に舐めてきた。身体を奔り抜ける火花に思わず吐息を零す。
「……っ……おい……コナー」
俺を攻める術を学んだらしく、ちらちら俺の反応を窺いながら、汁を吐き出す鈴口を薄い唇で何度も啄んできた。
根元を指で包んでから舌で軽く先端に触れ、コナーはキャンディを転がすように俺を確かめてくる。
俺の容を何かのキャンバスにでも見立てているのか、舌で快楽をデッサンしていくコナーを眺めている内に、人知れず口元が緩む。
すっかりご満悦になった俺は無意識に腰を動かし、怒張を押し込んでコナーの喉を抉った。
「んんッ……」
コナーが呻く。だがその声に苦痛の色は見えない。
コナーの口腔内に全て収まると、湯船に浸っているような温もりに包まれ心地よさが増幅してきた。
刺激に反応した玉がゆっくり上がっていくのを感じながら、コナーの首に手を回し、逃がさないよう奉仕を続けさせた。
窮屈な口の中で、コナーは筆のように舌を動かして筋を何度も往復する。さらに手を使って根元を揉み扱いてくるもんだから、口との相乗効果で思わず呻いた。
「……初めての癖に、頑張るじゃねぇか」
ご褒美だと言わんばかりに頭を撫でた。
コナーはまた嬉しそうな顔して舌先を使って
ずしりと重たい血が熱とともに再び溜まり、ロケットのように発射したい衝動に襲われ始める。いつぶち込もうかと野蛮なことを考えながら、コナーの下半身に目を落としたときだった。
「……おい、お前……いつの間に変えたんだ」
「……あなたの、データを……んんッ……残したかった、ので……」
「穴塞いで蓋したのかよ」
「……ふぁい……」
さっきまで女だったコナーの下腹部は、いつの間にか男に切り替わっていた。
作り物の雄は誰が見ても分かるほど大きく膨らみ反り返っていた。血管がそれらしく浮き出てはいるが、女の時と同様に体毛がないからか生々しさが欠けている。少年の無垢な象をそのまま成人サイズに拡大コピーしたような、外見年齢に釣り合わない造形が、かえって卑猥に見えた。
「そんなに勃たせて、またしたくなったのか?ん?」
からかう口調でコナーを覗き込む。
「……あの、ハンク……ど、う、すれば……」
「続けろ」
「んっ……!」
コナーの頭を押さえて先端を喉に命中させ、そのまましばらく咥えさせた。
やがてコナーは亀頭を素早く舐めながら、手で扱くスピードをゆっくり落とし、リズムをずらしながら俺を攻めてきた。歓びの吐息を零すと、コナーは俺の全部を頬張ってストロークを繰り返しつつ、ぐちゅぐちゅ音を立てて吸引する。
人間だったらジジィをしゃぶる真似なんぞしたくないだろうが、コナーは飽きずに竿にこびりついたままの
口から俺の体液をどろどろ流しつつ、プラスチックの無機物が一匹の獣に変貌していくのをじっと眺めて堪能する。
たっぷり舌に乗せた雄のホイップを見せびらかしながら、
「……あの、もう一度……」
「あ?」
「……もう一度、データがほしいです……」
懇願するコナーが舌なめずりした。
三半規管の機能でも失ったように、頭がぐらついた。
「好きなだけ、って……言ったじゃないですか……」
潤んだ瞳で、なりふり構わず誘ってくる。
「ハンク、お願いします……」
「んじゃ、遠慮なく」
欲動に身を任せ、プールに飛び込むような勢いでコナーをベッドに組み敷いた。
こいつがボルテージを上げてくれたおかげで全身、オツムの中まで野獣モードに入っている。
こいつが楽になるために肌を寄せて試していたはずが、俺の方がコナーを隅々味わいたくなり、年甲斐もなくうずうずしていた。
――もっと、こいつを征服したい。
「足広げろ」
もじもじした様子で、LEDも頬も赤く染めたコナーは赤子がおむつを替えるときの体勢をとった。
屹立した作り物の瓜をそっと握る。人間と同じように先走りを零す入口を親指で擦ると、コナーの口から甘い呻きが漏れた。
「ふ、ぅう……」
車のギアチェンジをするように握ったままあちこち動かすたび、コナーが身を捩らせる。
面白くなり、ぱくぱく収斂を繰り返す小さな割れ目を人差し指で塞いでやった。
「あの、ハンク……ッ」
蜜を指で堰き止めたまま、コナーの男をぐるぐる旋回させた。
「……早く……」
「早く、何だ?」
「……データ、を、ください……」
あられもなく膝を開いたコナーが、後ろが見えるようさらに足を持ち上げる。
野郎のものとは思えない白く滑らかなケツの中にある、濡れた穴が姿を現す。淡く色づくそこが僅かにひくつき、俺を誘うのを見て、自然と口の端が上がった。
ガン掘りするのは初めてだが、既に粘ついた液体を零して硬くなっていた俺は、何の抵抗もなく先端を押し当てる。
ペン一本入るかどうかぐらいの小さな穴を一気に穿ち、俺専用の道を開通させた。
「ああッ……ハ、ンク……っ」
「ッ……やっぱ、ケツの方が……締まりがいいみてぇだな……さっきより、持ってかれそうだ……」
中に這入った途端、意識のヒューズが飛びかけた。
コナーの足を肩に乗せてから、熱い肉のトンネルを掘り進める。
興奮に燃える身体が、コナーの体温を浴びてさらに延焼していく。
「欲しかったんだろ?」
「はい……あなた、を……感、じる……もっと……もっと、強く……ッ」
求められ、乱暴にコナーを抱き寄せて唇を貪りながら、股間をドリルみたく働かせた。深く、深く。そこだけ俺の頭と別に意思を持ったように、ひたすらコナーをほじくり続けた。
「あっ、ぅう、はっ、ああッ……」
コナーの強烈な締め付けは酸素ごと俺の思考をもぎ取っていく。
引いては押し込んできつく塞ぐたび、シェービングクリームを泡立てたときのようなくぐもった水音が響く。
「ぅんんっ、あ、あっ、ハ、ンク……」
「……本当、お前……凄ぇな……ッ」
耳をくすぐる心地いい声をもっと引き出すよう、腰を振る舞い続ける。
微睡んでいるような表情を浮かべて吐息を零すコナーの雄に手を伸ばし、指先で褒めて可愛がった。
「……んう、ぁッ……ハ、ンク……!」
びくりと腰を喘がせ、コナーの男が一層熱を帯びる。人間と同じく白い想いを吐き出し、俺の指に粘ついた。
逃がさないよう両腕を掴んで縛り上げ、ひたすら抉り、抉っていく。
コナーの足が肩からずり落ちて腰に絡みついた。
「は、ぁ、あぅ……ハ、ンク……もっ、と……」
追い上げるたび、コナーも過剰なほどの力で束縛して応えてくる。未知の心地よさに眩暈を覚えた。
「おい、まだキツくなんのかよ……くそッ」
翻弄しているのはこっちのつもりなのに、絡みつく凶暴な熱源。油断すると意識丸ごと千切られそうだった。
腕の中の躰が捩れて曲線を描く。腕を放して解放すれば、コナーは俺の身体をパズルにでも見立ててるのか密着して自分を嵌めこもうとしてくる。
濡れそぼった熱い舌が俺の口の中に滑り込んできた。舌で舌を縫い合わせていく内に、コナーの唇からだらしなく涎が零れていく。
「ぁん……ハン、ク……」
掠れた声が鼓膜をくすぐるたび、自分の名前が『ハ』と『ン』と『ク』で構成されていてよかったと心底思う。
コナーのあちこちに自分の名前を注射するたび、抑えきれないほどの情欲が膨らみ、血と共に全身を駆け巡っていく。
「おい、コナー……どうだ……データは採れたか?」
「ん、ぅ……まだ、いっぱいじゃ……ない、です……もっと……っ」
「欲しいって?」
野生に飲み込まれかけていた頭をどうにか働かせ、動かしていた腰にブレーキをかけた。
途端にコナーの顔に焦りが浮かぶ。
「何が欲しいんだよ」
「……あなた、が、もっと……ほし、い……」
「俺の何が欲しいまで言えたら、パーフェクトだな……」
それを言わせたら風俗狂いのクソどもと俺は同列になるか。いや、こいつ相手に関してはもうなっているのかもしれないと、自嘲気味に笑う。
満点の言葉ではないが、望み通りピストンを再開した。
体内でみるみる発酵した情欲が酒となって身体中を駆け巡り、深く酔いしれる。荒々しく口づけ、俺の酔いも一緒に口移ししていく。
こいつの正気を奪い尽くしても、まだ足りない。もっと俺の名前を刻みたい。もっとこいつの声を胸いっぱいに飲み干したい。こいつを自分の持ってる全てでずぶ濡れにさせたい。
「……ハ…ン、ク……ッ」
こめかみが赤く、そこだけ人間になったように激しく血を噴き出しながら、コナーが切ない声音を上げた。
俺を手離そうとしない窮屈な熱に
「ぁ、はあっ……ぅ、……エ、ラー……が……あッ……処、理……でき、な……ぃ……」
コナーは朦朧とした様子で喘ぐ。自我が処理落ちしているのだろうか。
それでも肉壺は、震えるように脈動しながら俺を激しく咥え続けて。
「っあ、ハ、ンク……ッ……だ、め、です……フ、リーズ、し、そう、で……ッ」
「それも……プログラムされた返答ってやつか……ッ?」
「ち……が……ッ」
快感が蓄積され続けてオーバーヒートしてるのか、コナーの躰が異様に熱い。
幾度も串刺し、快楽を流し込んでさらにプログラムを狂わせる。
「……ハ、ンク……ぅ、あ、んあッ、は、ぁ、ハンク……ッ」
コナーが必死にしがみつく。喉が痛むくらいに喘ぎ、救いを求めて、俺を決して手放そうとしない。
貪る。抉る。奪う。身を寄せれば寄せるほど、0よりも近い一体感。
もう、脳味噌のどこにも正常の二文字がない。全てコナーの熱に溶かされている。ただ感情の脊髄に従って、こいつに食らいつくことだけに集中した。
「ぅあ、はっ、ああッ……ハ……ン、ク……こ、われ……ッ」
「そのまま壊れちまえ……ッ」
コナーの身体が妖しく捩れ、俺も一気に上り詰めた。
溜まりに溜まっていた精の塊たちが爆発し、波のようにコナーの内側に寄せては引いて。満遍なく行きわたるよう、腰を動かしてかき混ぜた。
流し込んだ
全身を巡る野性的な悦び。そして疲労感。眩暈を覚えた俺はコナーの上に倒れ込んだ。
「……ハンク……?」
「久しぶりすぎて……バッテリー切れだよ……」
ぜぇぜぇ喘いで突っ伏しながらも、未だ俺を包む余熱を味わう。
切らした息が整ってきたところで身を起こし、コナーの様子を窺った。こめかみを何度か青く点滅させながら、ぼんやり俺を見上げている。
「……落ち着いたか?」
「はい……」
なら、そろそろほとぼりを冷ますとしよう。白い種を散布し終えた胎内から抜け出そうとしたとき、コナーが俺の腕を掴んだ。
「おい、バッテリー切れって言っただろ……」
「……ハンク、お願い……今日は……このまま……」
俺を銜え込んだまま、コナーの腕が背中を包む。
「こうして……あなたに触れて……」
ぴったり身体をくっつけたコナーは、俺をきつく抱きしめ離さない。
「……一緒に、いたい……」
耳元で囁かれる痛切な声に、俺の言葉は全て打ちのめされて。
ただ黙ってコナーの背中に腕を回して抱き寄せ、瞳を閉じた。
――そこからコナーの日常は、さらに昏く息苦しいものに変貌していった。サイバーライフだけでなくブルーリッパーと間違われて追われるようになり、同時に本格的なモルモット生活が幕を開けて。
カムスキーはコナーを頻繁に呼び出すようになった。週に一度は必ず、三日に一度のペースのときもあった。だが、俺は一日たりともコナーを一人で行かせることはしなかった。カムスキーが次に何をするのか、コナーがどうなるのか、眼を離すわけにいかなかった。
カムスキー曰く、コナーが人の記憶を視れるのは一種の『
当のコナーは、自分に出来る数少ない任務だと覚悟を決めたらしい。
「ジェリコの船がなくなって、たくさんの仲間が死んでしまったのは……僕のせいですから」
「……お前、デモのときのこと、まだ気にしてんのか」
「ジェリコで再会したとき、嬉しかったんです。マーカスたちはこんな僕でも仲間だと言ってくれた……だから、みんなのためにも出来ることをしたいんです」
そう言って、何かを注射されようが手足のパーツを抜き差しされようが、奴の満足する結果が出るまで黙ってひたすら耐えていた。
時折、事件の捜査に当たる俺にこっそりついてきて、遺体の記憶をどこまで読み取れるか試すときもあった。
「……手掛かりになるかどうかわかりませんが、見ていただけますか?」
青い泉に横たわったコナーが、血と、悲鳴と、恐怖に彩られた生々しい最期の記憶を蘇らせる。後々苦しむと分かっていながら、俺の捜査の役に立つだろうとコナーは病を押してデータを蓄積させていった。事件の進展に繋がりこそしなかったが、無惨に殺された死者の記憶の中に手袋を填め、サーベルを手にしたRK900がいた。このRK900を、ベルカは『
日を追うごとにコナーのバグは、プログラムの力を借りて恐ろしい速度で進化を続けていく。
「読み取ったデータ量が多ければ、もっと詳細に再現できます。ですので、ハンク」
「……なんだよ」
「スモウなら作れます」
青い泉の中心に立つコナーが、ブルーブラッドを掬い上げる。コナーが手を放すが、青い血は空中に留まり、スライムのように粘度を持ったかと思えば、ヒトデみたいに伸びていく。
青から緑、黄色と色を変えながら水は膨らんでいき、ランプのように光源を発しながら一度眩く輝く。やがて水は水らしさを失い、セントバーナードに変身していた。
「うおっ……」
思わず声を上げる。
スモウそっくりの姿をしたブルーブラッドの塊が、俺の手が届くあたりまでやってきて水の上でお座りした。
ナノマシンによって再生されたそれに恐る恐る触れてみる。柔らかい毛皮の感触、毛並みのグラデーション、犬特有の匂いまで、本物と何ら変わりない愛犬の姿。映像という二次元の再生だけに留まらず、記憶に実体を持たせることまで出来るようになったらしい。
「ほう。皮膚機能のオンオフをするように、君はルルドを操作するようになったということか」
画面に表示されるプログラムの一挙一動に、カムスキーは感嘆の息を零した。
アンドロイドの創造主にしてみれば、これ以上面白いこともないのだろう。自分の生み出したアンドロイドが、人と機械の、さらにその先に足を踏み入れつつあるのだ。
血の海に沈めてはあちこち弄り回すくせに、コナーをメンテナンスするとき、べっぴんアンドロイドを慈しむのと同じように触れる。青いプールで眠るコナーを、優しげな眼差しを向けてじっと見つめる。 奴がコナーに執着しているのは一目瞭然だった。
もはやナノマシン改良のためというより、コナーで実験することが目的に差し替わって、完成を先延ばしているようにさえ思えた。
それを口にしたとき、
「マーカスたちは確かに自由を得ましたが、レビサロイドにブルーリッパー事件が立て続けに発生し、変異したアンドロイドに対する目は冷やかに転じてきている。変異体の取り締まりは厳しくなってきているようですし……人間はそのうちまたアンドロイドを排除しようとするでしょう。せっかく、君がアンドロイドたちを解放したのにね。サイバーライフが欲しいのは自分たちに従順な人形と目先の富であって、君たち一人一人の命なんてこれっぽっちも視野に入れてないんだよ」
俺の意見が心外だと言うように、珍しく怒りを滲ませた声を上げた。
水を抜いたプールの中央、ベッドに横たわったままのコナーがこめかみを黄色くちかちか光らせ、カムスキーを見上げる。
頭をぽんぽん叩いてコナーをあやすと、カムスキーは恐ろしい早さでコナーの身体を手入れしていく。昔テレビで見た、ルービックキューブを揃える速さ世界一の記録保持者みたいな手つきだった。
「コナー、負担をかけてしまっているが、マーカスや君の努力を無駄にしないためにルルドを早く完成させよう。君たちが伸び伸び生きていけるようにね」
アンドロイドのアンドロイドによるアンドロイドのための奇跡。私利私欲でなく純粋にアンドロイドの幸福を願っているカムスキーに、コナーも思うところがあったのだろうか。
「この、人の記憶を視る力……いい方向に考えることにしました」
「いい方向?」
「ええ。僕だけに神が与えてくれた特別な
「……馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ。お前の言う神様が、一回でもお前の身体を元通りに治して元気にさせてくれたことあったか?あいつは正真正銘のクソ野郎だよ」
「でも、この力があれば……またいつかもう一度、あなたの隣で捜査アンドロイドとして生きていけるようになったとき、役に立てるはずです。実験の後、自分は今度はどうなるのか想像して、怖くなるときもありますが……心配しないでください」
首から提げているコインネックレスに触れながら、コナーは平気だというように微笑む。
「僕は、あなたのアンドロイドですから。あなたの役に立ちたいんです」
「お前は俺じゃなくて、もっと自分のこと考えろ」
「考えていますよ、ハンク。だから――」
小首を傾げ、上目遣いに俺の瞳を覗き込んでくる。
「あなたは僕を望んでくれますか?」
返事は決まって、声でなく、
老いを認識していても、肉体はコナーとの記憶を蓄えようと盛って、何度も抱いた。
コナーは望むだけ応える。不具合を抱えているとはいえ、疲れも衰えも知らない特注の躰は、俺のためだけに変容し、例え俺が好き勝手に性を押し付けたとしても、それさえコナーにとっては感情の鎮静剤になると喜んで受け入れる。特に人間の記憶を覗いた日には、俺にしがみついて自ら舌を伸ばして。
――さながら互いが互いの薬になって投与し合うような日々が、静かに過ぎ去っていった。