※この作品はR-18です。

管理人さんの良いシゴト、亜人の人妻はお嫌いですか?   作:37級犬築士

2 / 3
住民の紹介です。まずは二人


森の妖精と炎の竜

 バブル期に建てられた温泉旅館、といっても温泉は別の場所にあり、これ自体は景観のいい山の傾斜に立つレトロな旅館だ。

 

 

 

 昭和の匂いを漂わせる建築様式、令和になった今となればその郷愁感はよりひとしおだろう。そんな旅館が改築され、人が住むアパートとなった今も設備と外観と、そして名前も引き継がれている。

 

 

 

 西日が美しく映える位置に立てられた旅館、黄昏時の美しさを込めて、名を琥珀館。

 

 

 

 この建物こそが、彼女達デミの住まう、なんとも魅惑的な女の園とのことだ。そして、俺は今日から、その魅惑的な琥珀館の管理人となるのである。

 

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、紹介だけど……一つ忠告」

 

「忠告、ですか」

 

「ええ、まず驚かないこと……皆女の人だからね、男の子が来るって不安だし、だから第一印象は大事。さっきみたいなうっかり、相手によっては命足りないから」

 

「……はぁ」

 

 

 

 命が足りない、普通なら冗談と受け取るのだろうが、ここはデミの住まうアパートだ。 

 種族によっては牙も爪も、中には特殊な能力だってあるだろう。

 

 

 

……まあ、さすがに

 

 

 

 後姿を見る。身長は2mと少し、さすが八尺というべきか、ここまでインパクトのある女性はそうないことだ。

 

 

 

 驚きはない。だから安心して挑める、はず

 

 

 

 

 

「……さあ、この部屋ですよ」

 

 

 

 冴子さんが立ち止まった。旅館らしい鍵の無い檜の引き戸。女性が住まう部屋というには防犯性に問題を感じる。

 

 

 

……心配がない、そもそも男が来ることはないから

 

 

 

 だけど、今こうして自分という男が来てしまった。後付けの工事でも、近いうちに施工をするべきか

 

「あ、今から会うのはエルフよ。文人君エルフに会ったことは……ま、ないわよね。」

 

「……まあ、そうですね

 

 エルフ、これまた知名度のあるデミときたものだ。

 

 この世界とは違う、別の世界から渡り歩いてきた種族。魔法を操り、自然と共に暮らし、そして殺生を嫌う。講義を受けずとも知識は十分にある。それほどに一般的なのだ。

 

 しかしエルフとくれば、これは中々に問題はないかもしれない。冴子さんのインパクトにやられてしまったが、それほど身構えなくてもいいかもしれない。

 

 案外、デミの住まうアパートというのも普通の……

 

 

 

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

 

 

 

「冴子さん……もう、いきなり入るのは……って、――――ッ?!?」

 

「あら、着替え中だったようね……ふふ、ごめんなさ……」

 

 

 

「!?」

 

 

 

 勢いよく引き戸を閉じる。デミだとかエルフだとか、これはそういう問題じゃない。いや、さっきも同じ様な目にあったばかりだけど。エロが連鎖してしまった。

 

 金髪で碧眼、特徴的な長い耳、間違いなくエルフだ。物語でよく知られるあのエルフだ。実際に見るのは初めてだけど、でも、今は種族の話よりも、よりも

 

 

 

「冴子さん、今のは、そのッ」

 

「ええ、わかっているわ。タイミングが悪かったようね、ノックしなかった私も悪いけど……まさか着替え中だなんて」

 

「……ッ!!」

 

 

 

 そう、着替えていた。下着も身に着けていない、少し衣類の散らかった部屋にあの女性は全裸で立っていた。まあ、正確にはショーツを履こうとしていた所に遭遇した。

 

 

 

 小柄な体に不釣り合いなお胸も、その先のポッチも、というか下半身の秘部も何もかも丸見えだった。髪の色と同じ金髪の痴毛までがっつりと、そうがっつりと目にしてしまった。

 

 

 

「さ、ささ、冴子さん!!」

 

「!」

 

 

 

 甲高い、まだ幼げな少女のような声が響くと同時に戸が開けられた。急いで着替えたのかちょっと着崩れしていて、この人は俺のことも見ずに真っ赤な顔で冴子さんに食って掛かる。しかし、見た目のあどけなさのせいか感情は追いつかず可愛らしいままなのが少しおかしい。

 

 

 

「冴子さん!冴子さん!」

 

「あらあら……ふふふ」

 

 

 

「……」

 

 

 

 仲睦ましく、わいわいがやがやと口論が止まらない。もう、俺に見られたことは気にならないのだろうか。

 

 

 

「…………はッ!?」

 

 

 

 と思ったが、気づいてしまった。うん、めっさこっち見てる

 

 

 

 とにかく謝罪、見てしまったものは見てしまったのだ。ごちそうさまではなく、もうしわけございませんと、今ここでしっかり謝れば印象も

 

 

 

「……えっと、君、どこの子」

 

「?」

 

 

 

 子、今この人は俺に対して子、と……そう言ったのか。

 

 

 

「あの、この子って冴子さんの知り合いなの?知り合いのお子さん?……えっと、中学生かな」

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 あぁ、このパターンだ。そうだ、そうなんです、俺は大学を経て、今はもう23なのに、なのに、如何せんながら見た目はそうは見られない。

 

 この姿のせいでバイトも探すのも大変だった。飲食で働いてればまずその店の手伝いと勘違いされるし。

 

 

 

「あぁ、違うのよ……この人、昨日言ってたでしょ」

 

「言ってたって……それ、たしか管理人さんが来るって話でしょ」

 

「ええ、だから彼が……文人君がそうなの」

 

「はあ~……って、ええ!!」

 

 

 

「……」

 

 

 

……本当に、この勘違いのされ方……きついな

 

 

 

 目の前のエルフさんは身長が160ぐらい、そしておれはそれよりも低い150、一の位は伏せさせて欲しい。まあ四捨五入すれば切り上げだから……靴を履けば

 

 生まれ持ってのコンプレックス、背の低さ。八尺の冴子さんと並べばそれはもう幼く見えるのだろう。

 とりあえず、裸を見たことの件はうやむやになりそうだが、また少し心を削がれてしまった。

 

「ご、ごめんね…………あ、でもそっちも………ぁ、けどそれは冴子さんの、困るぅ」

 

 あわあわと、独り表情をコロコロと変えて慌ただしく、なんというか可愛らしい小動物を眺めている気分だ。

 

 悪そうな人ではないし、というか良い友達になれそうな、年の近そうな人で安心した。

 

「……その、これでも23歳です。文人っていいます。ノックもせず、こちらこそすみませんでした」

 

「へ、あぁご丁寧に……もう、冴子さんのせいですからね、この気まずさ」

 

「あはは、ごめんなさいね……くす」

 

 反省の色はない。普段からこういう調子なのか、二人の関係せいが軽く見受けられた。

 

「……あぁ、うん……あ、自己紹介が遅れ……ちゃったね。私、エルフのデミで、森野翠と言います…………下のみどりで呼んでください」

 

「翠、さんですか?もしかして生まれはこちらで」

 

「いえ、一応こっちの世界に永住権を取得しています。結婚してますから」

 

「はぁ、なるほど」

 

 和名だから少し気にかかったけど、なるほと結婚をしているからで…………から、で

 

「へ?」

 

 結婚、今この人結婚って 

 

「ぷふ」

 

「もう、冴子さんわらっちゃ可愛そうですよ。えっと、文人くん、エルフはね、見た目が変わりにくいから……………その、これでも三桁、年あるのよね。人換算で三十路ぐらいだから、おばさんだとかは思わないで欲しいかな…………なんて」

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇

 

 

 

 

 

 

 

「さ、次の部屋だけど……あら、どうしたのかしら。悶々としてるなら、トイレはそこよ」

 

「……」

 

「ふふ、睨まないで。ごめんなさい、冗談はよしこさんね」

 

 

 

 一難去って、いや厳密には幸福でプラスだったと思うけど、とにかく次の部屋だ。そうは慣れてない部屋で、というかあまり住人がいないのか空き室も多い。一階を経てもう次の階に

 

 いくつもの部屋が並ぶ中、次の住人の部屋はすぐにわかった。というか、そこだけ明らかに

 

 

 

「……あの、ドアが一枚だけ鉄製なんですけど。」

 

「そうそう、前にうっかり燃やしちゃったのよね……アリスちゃん、暴れん坊だから」

 

「……アリス」

 

 

 

 なんともかわいらしい名前だ。もしかするとさっきの翠さん、エルフのような温厚で普通の種族なのかもしれない。

 

 普通、でもあの人あの見た目で経産婦なんだよな。見た目16~7ぐらいで、制服似合いそうな感じだけど

 

 

 

……どこかギャップがあるのか、ならツンデレとか、よくある暴力系ヒロインみたいな感じか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしも~し、アリスちゃん起きて……あぁ、やっぱりまだ寝てたのね」

 

「……」

 

「もう、お酒の瓶散らかして……あ、管理人の仕事にゴミの管理もあるから、住人の資源ごみの分別もしないといけないわ。それでこの人、瓶と缶は三日ごとに回収しないとすぐゴミ屋敷になるから、要注意ね」

 

「…………冴子さん」

 

「なにかしら」

 

「……見間違えじゃなかったらいいんですけど」

 

 

 

 視界一面に広がる汚部屋、旅館の部屋を改造したそれは一部屋で奥行きもあり、備え付けのベッドも大きく、本来であるならいい感じの部屋になってるはずなのだろうが、それを覆す圧倒的な酒盛り後の残骸

 

 アリスちゃんと冴子さんは言ったが、目の前にいるのは

 

 

 

 

 

「……ぁ、あぁ……んがッ」

 

 

 

 

 

「……なんか、竜がいます」

 

 

 

 想像とは正反対、アリスちゃんはアリスさんだった。目算で身長は190越えは確実、手足を覆う血のような濃い赤のウロコに、ファンタジーな翼と力強い尻尾。

 

 ベッドに突っ伏した頭には角も生えてるし、間違いなく竜だ。ドラゴンさんなのだ

 

 

 

「もう、新しい管理人が来るって伝えていたのに……アリスちゃん、アリスちゃん」

 

「ん……なんだよ、まだ飲んでる最中だってのに……おい、うるせえな、ガンガン響くんだよぶっ殺すぞ……」

 

「駄目、女の子がそんな言葉づかいして……それより挨拶して、新しい管理人さんが来るって話、覚えてないの」

 

「……ぁあ?」

 

 

 

……ばっさぁあッ

 

 

 

「!!」

 

 

 

 翼が翻った。重く大きく体を動かして、そのアリスさんという方はベッドから起き上がり、そしてこっちを睨んだ。

 

 当然というべきか、服も着ておらず見えてはいけない部分ががっつりと見えている。張りのある弾力に飛んだ豊乳、すらっとくびれた体つきに、そして秘部も

 

 

 

「!!……ふ、服ッ、服着てくださいッ」

 

「お前……おい」

 

「……へ、あ、あの……すみま」

 

「だ、ダメよアリスちゃん!!」

 

 

 

 自分よりはるかに大きな異形の女性が迫ってくる。爬虫類特有のぎらついた眼で、まさに蛇に睨まれた蛙だ。逃げようが、無い

 

 

 

……や、やられる……殺られるッ!!

 

 

 

 

 

「――――ッ!!」

 

 

 

……ガシッ

 

 

 

「……え」

 

 

 

 体に走る衝撃、でもそれは弾かれるでも殴られたのでもない。ただ、これはそう抱きしめられている。

 

 

 

 酒の匂いが強く鼻について、それでいてどこか良い匂いを感じてしまう。がっしりと丈夫なのに、触れている部分は柔らかくて暖かい。

 

 顔を包み込む柔肌の感触、息苦しくもどこか郷愁に駆られる、なんだろうか。この感覚は

 

 

 

「……は、ああっ!?」

 

 

 

「!?」

 

「あら、危ない……もう、急に抱きしめたり離したり、文人君が困るじゃない」

 

 

 

……もにゅぅ

 

 

 

「……」

 

 

 

 離れた。不安定な状態で保持されていたから、抱擁が解けて転倒しかける。それで今度は冴子さんの豊満に包まれた。抱きしめられて、頭の上に感じる重量感を考えないようにしながら、今一度アリスさんの方を伺う。

 

 

 

「あの、今のは……どうして」

 

「……」

 

 

 

……バタンッ!!

 

 

 

「!……あの、アリスさん。俺、何か失礼を」

 

「――……だ」

 

 

 

「?」

 

 

 

「アリスじゃねえ……あたしはアーレスだ、アーレス・デュカキス……さっきのは、忘れろ」

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

〇

 

 

 

 

 

 一方的な自己紹介、それ以上は何も引き出せず俺と冴子さんは場をあとにした。とりあえず、俺が新しい管理人だと理解してくれたから、一応は問題ない。たぶん

 

 

 

「……」

 

「ごめんなさいね、あの娘難しい子だから……ちょっと人づきあいが苦手なのね」

 

「……それは、そういう種族だからで」

 

「いえ、まあ少し複雑なの……あ、種族は竜種、サラマンダーよ。いっぱい炎吐いて、あとは炎に強い……とにかく炎って感じのドラゴン娘さんね」

 

「いや、説明が雑……まあ、とりあえず理解しました。一人だけ扉が鉄製なのも」

 

「そう、前酔っぱらって壊したのね……引き戸なのに押して開けようとして」

 

「……はあ」

 

 

 

 見た目強キャラだから納得がいく。鉄製なのは防火仕様なのだろう

 

 

 

「でもね、危ない娘じゃないのよ。まあ、ちょっと頭に血が昇りやすいけど……でも本当は」

 

「……はい、優しい……と思います。たぶん」

 

「あら、なら良かったわ……よっぽどいい感触だったのかしらね」

 

「……ノーコメントで」

 

「あらあら……ふふ」

 

「…………」

 

 

 

 なんか、この人楽しんでいる。人がエロめかしいことに戸惑う様を見るのがそんなに良いのか。まあ、この人からしたら俺はずっと子供で、それは年の差も身長差も全部込みで、まあ年上の美人にされるのなら腹は立たない。ちょっと、嬉しい

 

 冴子さんのからかいも、翠さんのあどない姿も、そしてアーレスさんの抱擁も。

 

 

 

……結局さっきのは聞けずじまい、冴子さんも

 

 

 

「文人君、次で今いる住人は最後よ。いいかしら」

 

「……はい」

 

 

 

 そっと、冴子さんが俺の手を引く。どこか、さっきの件から離れようと、急いてるみたいに。

 

 

 

「……あの」

 

「わかってる、気になるのね……ここにいる住人」

 

「……はい」

 

「アリスちゃんのこと、それに翠さんも……」

 

「……」

 

 

 

 立ち止まる。そして振り返り、冴子さんは

 

 

 

「へ……」

 

「ふふ……気を使ってくれてどうも、やっぱり、血はつながってなくても旅人さんの子ね」

 

「……ッ」

 

「あの人たち、皆既婚者なの……でも、今は独り身。私も含めてね」

 

「……ッ」

 

「皆この街にいる理由、そしてこの場所に……あなたのおじさんの旅人さんの宿に居続ける理由、それもいつかは……ちゃんと知って欲しいの」

 

「おじさんの? それに、ここにいる、皆が……」

 

 

 

 全員元人妻、なんともインパクトのある経歴か

 

 

 

 というか、その感じだとおじさんはこの冴子さんや翠さん、それにさっきのアリス……アーレスさんにも面識があるというのか。

 

 

 

 

 

……おじさん、いったい何者だったんだ

 

 

 

 

 

「さ、この部屋で最後……あら、いいかしら?」

 

「……」

 

「あぁ、さっきので興奮したのなら待ってもいいわよ……そこ、右曲がったらトイレ「いいえ、それは大丈夫です」

 

 

 

「あら、そう……残念」

 

「……」

 

 

 

 それに、この人も不思議だ。八尺のイメージ的には正解だが、なんとも底は見えない。まだ初対面だし、それが当然だろうけど

 

 

 

 それでも、見えないことは気にかかって仕方ない。

 

 

 

 

 

 




今回はここまで


この作品の投稿はスローペース、他にも色々かいてますので
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。