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美貌より愛嬌かもしれない
初めてのことに、エレオノールはもちろん緊張していた。緊張するけれど、さっき風呂でノアにされたことを思い出すと、どうしても違う気分になる。ノアの指の、ゆっくりとなぞる動きがエレオノールの頭から離れない。
上手だった。
五百年も生きていればきっといろんな経験をしているのだろう。
「続き、しようか」ノアが囁いた。
胸が高鳴るのが分かる。うん、と小さく首肯した。ノアはベットの方にいって先にブーツを抜いで、上衣を脱いだ。エレオノールは改めてノアの半身を見た。
ため息が出る。
「ノアの身体、きれいだ」
アルブの里の祭りの宴でも上半身を開ける男の身体を見たことがある。それと比べて、ノアの身体は太く、たくましく、きれいだった。
「そうか?」とノアは言って頬をかいた。
それきり、エレオノールはまごついて、次に何をすればいいか分からなくなってしまう。
「エルも見せてくれ」そう言われて「おう」と、跳ねあがるように返事をしてブーツを抜いで、ベットに上がりこむ。上衣のボタンに手をかけた。
暖かくなった部屋で上衣のボタンを一つ一つ外して、するりとはだけた。
まず上半身が下着だけになる。
風呂の中で愛し合ったとはいえ、エレオノールはやっぱりまだ緊張してきた。
脱いだ衣類はベットのすぐ横の椅子の背もたれに掛けた。
蝋燭のわずかな明かりで、ノアの漆黒の瞳がキラキラとしている。
ズボンに手をかけて、おろした。
「…どうだ」
新婚初夜。
純白の下着に身を包んで、エレオノールはノアの前に膝立ちになった。ノアにはあんな風に茶化されてしまったし、ある意味でエレオノールはすでに初夜の取り組みに失敗している。それでも仕切り直しのチャンスがきたのだ。
僥倖だ。
エレオノールは自分に自信があるわけじゃない。ノアは甘やかしてくれるが、それでもやっぱり自信がない。
「でも女として生まれたからには――」そんな風に思っていた。
雷公だかなんだか知らないが、そのれよりも一人の女だ。それを全うしたかった。立派な下着に身を包めば、少しは胸をはって異性の前に立てる……ような気がした。
「手をどけてくれないか」ノアが言う。
おずおずと手をどけて、ノアの言う通りにした。彼がごくりと生唾を呑んだのが分かった。
ノアの目……目がわたしに……釘付けになってる――胸が高鳴る。
ノアが、わたしを、狙ってくれる…腹の底から泡立つ気持ちがある。
「きれいか?」
「きれいだ」ノアが即答する「――本当に。息を呑むほど」
・・・
正直なことを言えば、エレオノールのあまりの美しさに俺の性欲は霧消した。
かすかな部屋の光……ほぼ闇の薄暗がり。
その闇の中に白銀色の長い髪と、碧い瞳が浮かんでいる。美しい顔立ち、白い無垢な肌。すらりと伸びやかな手足、くびれた腰、そしてまさに今からノアを受け止めようとしている女性らしい柔らかいふくらみ。
薄暗がりに、ただただエルの真っ白な裸体が浮かんでいる。
否が応でも視線を吸い込まれた。まるでこの世のものとは思えなかった。
停止した思考の中で、もともとこの世のものじゃないのか……と脳裏に浮かんだ。
俺がどうにかできるものか?本当に?
しかしエレオノールの自信のない「……どうだ」の声に、あっという間に現実に引き戻された。不安が伝わってきたのだ。
もっと自信満々でも良さそうなものだ、でもそうじゃないらしい。
よくよく見ると彼女の身につけている純白の下着の上品な装飾部分が、彼女が身じろぎをするたびにキラリ、キラリと輝いている。
エルの下着は二枚ほど洗ったが、それらとは全然違う。
「身につけている下着もきれいだな。銀糸……いや、白金か?ノアによく似合ってる」
そう言うと、エルはいかにも嬉しそうに、身体をくねらせた。
その仕草がいじらしく、愛おしかった。
彼女の心意気にこたえなければいけない。
下着を見て、初夜のことをからかったのは悪いことをしたと思った。
「おいで」と声をかけると、音もなく腕の中にすべり込んでくる。
ふたたび、下半身に衝動がかえってくる。
彼女の身体はすっかり火照っていた。
ビスチェを丁寧に脱がせると、美しい胸があらわになった。
「きれいだよ、エル」
言うと、声にならない甘いため息で返事をしてくる。
手のひらで腹をなぞり、胸を指でなぞる。
胸の先端を指ではねると、鼻を抜けるような甘いため息をついた。
「気持ちいいか?」
「わからん……慣れない感触だ」
そのまま口に含み舌でゆっくりとこねると、かぼそい声をあげて両手で肩にしがみついて来た。初々しい仕草が胸を打つ。
下着の中に右手を滑りこませると、すっかりうるんでいる。そのまま指をかけて下着を抜くと糸を引いた。膝立ちのままだったので、片足ずつ上げてもらい引き抜いた。
「汚しちゃったな。もう少しはやくに脱がせればよかったよ」
きっと大切な下着だ。
「いいんだ、今日のためだから」と、エルは顔を赤くして応えた。
――愛らしい。
エルの後頭部に手を添えて、ゆっくりと押し倒した。
大切にしなきゃいけない。
なによりもまず、エルの緊張をほぐすところからだろう――
「緊張してるか?」
目の前に横たわったエルに声をかけてみるものの……全身がこわばっている。
「そりゃあ、まあ、緊張するぞ…」
「寒くはないか」
「寒くない……」
「じゃあさっき風呂ではどうだった、緊張したか……」
ささやき声で話しかける。
「あれは――」
つられてエルもささやき声になった。
「緊張もあったし、でも…その…気持ちかったぞ」
――これ?
「ぁぅ」
風呂の中でしたようにした。彼女の中心に指を割り込ませ、芯を上下にゆっくりとなぞる。温かく潤みきって、しかし乙女と言うだけあってか柔らかさはない。
あまり強い刺激は禁物だ。
「これが良かった?」
かぼそい声で喘ぐものの、返事がない。
「エル……」
中指に滑らかにまとわりつくものに、エルの性的興奮を感じる。
「気持ちいい?」
無言で、碧い瞳を伏し目がちに合わせてくる。
「……気持ちいい…ノア、上手だな」
まだ、身体の変な所に力が入っているのが分かる。
「エル、力を抜こう。緊張してるな、変な力が入っているぞ。大丈夫だから、任せてくれ。そうだな――まずゆっくり息を吸って」
言うと、素直にエルは深く息を吸った。
「吐いて」
ノアに言われて合わせるように、エルがはぁーと息を吐く。
「ふふ、子供みたいだ」エルがはにかむ。
「一緒さ。何年経っても身体なんて、そう変わらないだろ?」
「……そうだな」と言ってくすぐったそうに笑った。
「走れば息が上がるし、腹はすくし、飲めば酔うし」
言いながら、エルの白銀色の髪と、碧い瞳に見とれる。
「なぞれば――感じる」
……はん
エルの初心な反応。
「じゃあ、また吸って」言うと、エルはふたたび息を吸う。
「ゆっくりと、少しずつ吐いて」
エルがふたたび息を吐く。
合わせて彼女の性器を指でなぞった。
「はぁ……ぁぁ」
とがった耳もとで「そのまま息を吐き続けて」とささやく。
はぅ……と小さく喘いで、エルは素直に言われた通りにする。
彼女の吐息に
「吸って」
スー……
「吐いて」指でまさぐる。
エルはなめらかに喘ぎ声を洩らし始めた。
「ん、上手に感じられるようになったな……」
エルの深呼吸の音、しめった音、そしてかぼそい喘ぎ声。
彼女は…性的な体験を全くせずに今日まできたのだろうか。
ふと興味本位で聞きそうになった。
あまり変な質問をして恐縮させたりするのも心無い仕業だと思いなおす。
今は信頼してもらい、緊張を解いてもらうことがなにより大切だ。
ノアは、おそらく初めてとなるであろうエレオノールの性体験を、慈しみ、堪能した。
「気持ちいいか?」
「……気持ちいい」エルは頬を紅潮させている。
「もっとしてみる?」
「してくれるか?」
口づけをした。
「ぁむ……」
離れて目を合わせる。
碧い瞳がとろりと潤んで、輝きが一段と増した。
「ゆっくりと深呼吸して……そう、また吐いて」
――はぁぁ……
エルが息を吐くたびに、中指と薬指で上下になぞりあげた。
彼女はうっとりとした顔をして、瞳の焦点を合わせてくる。
「きもちい…」
「指、気に入った?」
「……こんな…クセになる」と、照れるべきなのかどうか探るような表情でエルが言う。
「もっといいのもある」
「え……もっと?」
「気に入るかな…」と言って耳元で囁く「口でやるんだ」
再び体が強張った。
「えー!ダメだぞ。そんなところ……え?……え?今のを口でするってことだな?」
思わず苦笑してしまった。
第一印象は絶世の美女だった。けれど、表情がくるくると変わって……知るほどに――なんか、愛らしいやつだ……
「そうだよ」と言ってエレオノールに口づけして、舌を中に差し込む。
「んん……ん……あふ」
――ちゅる
エレオノールの瞳がとろんとした。
「今のを、そこにするんだ」視線をエルの下腹部にうつす。
「あ……」
想像して感じたらしい。
「気に入るかどうか、やってみるか」
「恥ずかしい……はしたなくないか?」
「恥ずかしいなら、毛布をかけてやるか?」
うん、と小さく首肯した。
白い裸体の下半部に毛布を掛けて、もぐりこむとエルの身体のこわばりと脱力が半々になって伝わってくる。
毛布の暗闇の中、温かくて柔らかな太ももを持ちあげて、彼女の中心部分に口づけをする。
発情しきったエレオノールの雌の匂いとねばりけから、彼女の期待が伝わってくる。
エレオノールが戸惑ったのは最初だけだったようだ。嫋嫋としたかぼそい喘ぎ声は、そのうちはっきりと艶のある大人の女の声にかわった。
初めてでどうこうなるものじゃない。
初体験では、じっくりと快感を感じられれば上出来だろう。これから何百年もあるしな……
いたいけなエルを徹底的に愛そうとして夢中でやってしまった。
未明まで…と舌で愛撫した。
「ああ……ノア、すっごい……それ……きもちい」
彼女は繰り返し快感を訴えるようになった。
「エル……そろそろ……してみるか」
と言って、自分のものを見る。
「うん」エルはうなずく。
それを見て、入口にあてがった。すっかり感度の上がった膣口がノックするように締まるのが分かる。
「そんなの、入るかな……」
「挿れる時はあまり時間をかけてもかえってよくない。すっと行くよ」
言うと「痛いか?」とエルが見上げて聞いてくる。
「大丈夫、ちょっとだけだ」
「いや、いいんだ、痛くても」と、吹っ切れた顔でエルは言ってくる。
「痛いのも、みんな全部欲しい、ノア――」
エルは俺の首に手を回して耳元で囁いた。
――して。
胸が高鳴る。
エレオノールは思い切りがいい……いい女だ。
少し体重をあずけるとなめらかに滑り込んでいき、少しだけ抵抗を感じたあと、ぷつりと俺のものを奥まで呑み込んだ。
あうぅぅ……
エルはうなっている。
くいしめるように、ノックするように収縮を繰り返している。
「どうだ」
「痛かった」と眉間にシワを寄せて応えた。
「でもして、続けて」
「だめだ、まだしない……ちょっと馴染んで落ち着くのを待つんだ。楽になるから」
「そうなのか」とエル。
キュ、キュ、キュと甘美な締め付けを繰り返しているから、多分力が入ってしまうのだろう。
力んだままじゃ、きっとエルが苦しい。
「エル、昨日酒を飲んだとき、初めて笑ったろ」
ちょっと会話して落ち着こう。
うまく落ち着くか……?
「ん?ああ、だって飲んだことないような味だったし、美味しかったから」
「あれで心を決めたんだ」
「え?」
「ずっと一緒にいたいって」
「えー、なんだそれ」いいながら、エヘヘとはにかんで「本当か?」と聞いてくる。
「本当さ。すごく愛しい気持ちがわいたよ」
「急になんなんだ」と囁きながらペタリと俺の腕を叩く。
「エルは何で俺といようと思ったんだ?」
「ええ、どうしようかな」と、エルは得意げだ。嬉しそうにはにかんでいる。
また根元をキュウっと甘く締め付けた。
甘いむつみあいに酔ってしまいそうだ。あるいはもう酔っているんだろう。
「だって、本当に最初に見た時からノアのことカッコいいって思ったから……」
「そうなのか?」そういうものか「タイプだったてこと?」
「うん。あと、ノア、すごく優しいし」
――フフフ。
二人で忍び笑いする。
「なんだこれ、照れるな」いうと「ノアが聞いてきたんだろう?」とエルが楽しそうに言い返してくる。
口づけすると、さっき風呂で教えたとおりに応えてくれた。
エルの舌は肉厚で、ゆっくりなめらかに動いた。
――ちゅるり
彼女の口からひいた淫靡な糸が部屋の細い光を反射している。銀色の髪が光の波をつくって、さらさらさらと流れた。
碧い瞳が妖艶にひかる。
「ん、中の力は抜けたな……」
「……うん。ノア、上手だ……」
「エル」
「なんだ?」
「なんでか分かんないけど、エルが愛しいんだ」
「わたしもだぞ?」
二人、わけもなく鼻で忍び笑いをする。
少しだけ動くと、なめらかに動くのがわかる。
ぬるりとした確かな快感に、エルはほそいあえぎ声を上げた。
「痛くないか?」
「分からん、なんか……すごい……ノアの……なかで……存在感が」
軽く動かす。
ほそく、甘い声でエルが啼く。
「あ、痛くない。ん…すごい…ん…わわ…」
「……ゆっくりするから。辛くなったら言ってくれ」
エルと深くつながっていく。
彼女の息遣いは次第に荒くなって、はっきり性を感じていると分かるまでになった。
目を合わせ、手を繋ぎ、口づけを交わした。
「ノア、気持ちいい」エルが顔をしかめてしがみついてくる。
美しくて、純真で、天真爛漫で、どこかひょうきんな所があるエレオノール。
もっと深く繋がりたいと思った。
「あああ……ノア、もっと」
わかる、エル。俺ももっとだ。
でも――
「エル、痛くなったら言ってくれ」
「ダメ、痛くてもちゃんとして。中にして。一人前にして。ノアにしてもらいたい」と切なげに訴えてくる。
「――分かった」
「あと、まだしてたい」
思わず笑ってしまう「注文が多いな」
「うんと優しくするって言ったぞ?」
「そうだった」と言って頭に手を回して、口づけする。
エルは初めてだ。
あんまり色んな小細工を弄するより素直にエルと繋がろう。
エルの中で感じた最初の射精感の波に素直に従うことにした。
唇を彼女の耳に寄せて囁いた。
「エレオノール……すごく気持ちいいよ。もう出そうだ」
「きて、ノア。して。してくれるところ、顔を見せて」
首に手を回して美貌を切なげに歪めた。
――中でするよ?
エルの表情……嬉しそうだな……
細い腰を抱き、最奥でめいいっぱい精を吐いた。
・・・
「わー!ノア……なんか……わー……まだノアが中に入っているみたいだぞ!?」
翌朝、エルが大騒ぎしていた。
「なん……なんだこれ」
言いながら毛布を体にまとって、がにまたで生まれたての四つ足のようにぷるぷると足を震わせて歩いている。
「まあ、明日には治るよ」
暖炉に火を入れて湯を沸かしながら言う。
「え、治るのか!?一生このままかと思った。ノアの感触をかかえたまま、そのうち慣れて生きていくのかと思った」
「ははは、なんだそりゃ。どういう発想だ。そりゃ冥利に尽きるな」
意表を突かれてツボに入ってしまった。
「だろ、わたしも戸惑ったけど、考えてみると悪くないと一瞬思ったんだ」
と、流し目をしてくる。
「受け入れるときた……順応性の化け物か」
俺はベットにへたり込んだエレオノールの横に座った。
「大丈夫か、痛くないか?」
「痛くない、それより…ねえ」
と身体を預けてくる。
「なんだ」
「ねえ」と、エレオノールは甘えた声を出した。
――したい。
耳元で囁いた。
「まだ、だめだ」
「えーなんで」
「
「乙女に恥をかかせるのか」
口をとがらせて不満を主張してくる。
「何言ってんだ。俺だって我慢してやる」
エルはまだ不満げな表情だ。――そうだな。
覚えたての時のことは、俺の記憶にもある。
「じゃあな――」
「じゃあ?」
「昨日のはしたないの、好きか?」
エルは顔を赤くして応えた。
「好きだ」
「あれならしてあげる」
そういうと、エルは妖しい顔で笑った。
その日はほとんど一日中ベッドにいた。