乙女ゲームのR-18ルートに突入してしまった… 《もしかしたら あったかもしれない『はめふら』R-18ルート》 作:帆速やこぬ
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――声が聞こえる……
聞き覚えのある声だが、誰のものかはっきりと思い出せない。
その声は、心の奥に抑え込んでいる部分を暴き、見透かしたように囁く。
“お前が愛する者を、他の者も狙っているぞ”
“他の者に奪われてもお前は平気なのか”
“愛する者を自分だけのものにしたくはないか?”
――まだ大丈夫
今はまだ、カタリナは恋愛に関心がない。例え誰かが事を進めようとしても、別の誰かが必ず止めに入る。何より、僕には婚約者というアドバンテージがある。最後には誰よりも彼女を愛している僕を、きっとカタリナは選んでくれるはず。
“本当にそうか?”
嘲笑うような声がしたか思うと、いつの間にか辺りは夜になっていて、クラエス邸の庭に立っていた。
目の前に暖かそうな明かりの灯った窓がある。
今は何時だろう?
こんな暗くなる時刻に、婚約者とはいえ人の家の庭に立っているのを見られたら、常識を疑われてしまう。早くこの場を立ち去らなければ。
――本当はできるだけ長く、許されるなら一晩中でも、カタリナと一緒にいたいのですけどね……
いつだって暗くなる前に来る迎えの馬車に、キースに追い出されるように乗り込み、並んで見送る二人が小さくなるのを悔しい思いで見守りながら、帰路につくのだ。
カタリナと並んで見送り、同じ屋敷に戻るのが自分ならどんなにいいだろうと思いながら。
当たり前のようにカタリナの傍にいられるキースに嫉妬しない日はないし、だからいつも3日と空けずにクラエス家に顔を出すようにしていた。
カタリナとキースに血の繋がりはない。そして僕と同じようにカタリナを狙っている、最大にして要注意のライバルだ。
ちらりと、窓の向こう側に人影が見えた気がしたので近づいてみると、カタリナだった。
「カタリナ!」
名を呼んだが、彼女は気付かない。もう一度呼ぼうとした時、ソファに座る彼女の隣にキースが座っているのが見えた。
楽しそうに話しながら、時折顔を見合わせて笑っている。
やがて、ふと真顔になったキースがカタリナを見つめ、肩に手を回した。戸惑いの表情でキースを見つめ返すカタリナ。
顎に指がかかる。
――やめろ
キースがゆっくりと顔を寄せると、カタリナは目を閉じた。
――やめてくれ
二人の唇が重なり、キースの腕がカタリナをしっかりと抱き寄せる。
「カタリナ! カタリナ!」
人の屋敷の窓を叩くなんて不作法極まりないが、そんな分別もできないほどに動転し、ただやめさせたい一心で、大声で叫ぶ。
だが二人はこちらに気付かずに、額をくっつけ幸せそうに笑い合っていた――…。
「――今のどうでした!? アラン様!」
カタリナの声にハッと顔を上げると、そこは城内のピアノ室だった。
ピアノの前に座ったカタリナが、後ろに立っているアランを振り返っている。
弾いた曲が会心の出来だったのか、褒められる事を疑わない目で見つめられたアランは、カタリナの輝く瞳に思わず見惚れてから慌てて目を逸らす。
まるで僕などここにいないように、二人はお互いしか目に入っていないようだ。
「あー、そうだな。まあまあ、かな」
「ええ~? まあまあって、どこらへんがですか?」
「例えばここの小節――」
アランがカタリナの真後ろに立つと背中に屈み、肩越しに数小節弾いてみせる。
背の高いアランにすっぽりと覆われてしまったカタリナは耳まで赤くなった。
「……っておい、ちゃんと聞いているか?」
「あの、アラン様……その……ちょっと近過ぎませんか……?」
「え? ……ああ、すまない」
謝りながらも、アランがカタリナから離れる様子がない。
「……アラン様?」
「お前……なんか甘い匂いがするな」
「え!? えっと、さっき食べたお菓子の匂い、ですかね?」
真っ赤になりながら立ち上がろうとするカタリナの後ろから、するりとアランは椅子に座り、彼女の腕を引いて自分の膝の上に座らせた。
「アラン様!?」
そのままカタリナを後ろから抱き締めて、首筋に顔をうずめる。
「……ああ、やっぱり。……凄く、いい匂いだ……」
「!!?」
――やめろ、アラン! 彼女に触れるな!
身体が動かない。
――カタリナは僕の婚約者だと、何度も言ったでしょう!
叫びたいのに声が出ない。
アランはカタリナの首筋から肩に、口づけをしている。
「あの……アラン様……?」
戸惑った顔のカタリナが振り返ると、その頬に手を添えて彼女の唇までも奪ってしまう。
「……んっ…………」
アランの唇が、荒々しく貪るように彼女を求める。
初めは抵抗するようにアランの胸を突いていたカタリナの手から、だんだんと力が抜けてゆく。
たっぷりとキスをされ身体に力が入らなくなったらしいカタリナが、くたりとアランの胸に身体を預けた。
「おい、大丈夫か、カタリナ?」
唇を濡らし、潤んだ瞳で見上げたカタリナに、アランに残っていた最後の理性が飛んだ。
「……!」
アランは彼女を軽々と抱き上げると耳元に囁く。
「―――このまま俺の部屋に連れていくけど、いいか?」
――気が付くとまばゆいシャンデリアの光と喧騒に包まれ、城内の大広間で令嬢たちに囲まれて立っていた。
舞踏会の真っ最中のようだ。新しい曲が始まると、感嘆の溜め息が上がる。
ダンスの中心に目をやると、どうやらニコルが踊り始めたらしい。
相手は――
「……カタリナ」
カタリナが、ニコルと踊っている。あまり感情を表に出さないニコルも、彼女といる時だけは優しい笑みを浮かべ、とても幸せそうに見える。
そしてカタリナも。
他の令嬢たちと違い、カタリナはニコルを友人以上には特別扱いしていない。こっそり“魔性”と呼んでいる彼の魅力に対しても、理性を失い倒れるような事はない。
それでもニコルの整った容姿に落ち着いた態度、物静かで優雅な物腰、耳に残る低く甘い声に、平常心ではいられない事も知っていた。
今もニコルと何か話しながら微笑む彼女の頬は紅潮し、綺麗な水色の瞳はキラキラと輝いている。
こんな時のカタリナは本当に綺麗だと思う反面、勝手だとは分かっていてもその笑顔が自分だけに向けられるものではない事に、焦りと不安と苛立ちを感じてしまう。
子供の頃から勉強も剣術も色々な事が特に苦労なくできてしまう代わりに、何をしても楽しいと感じられなかった。忙しかった父や母に甘える事が許されなかった事で、期待する事を諦めた。カタリナとの出会いは、執着を捨てたはずの自分にとって新しい執着だった。
灰色だった世界に鮮やかに色をつけてくれたカタリナが大切で、大好きで、だから同じ屋敷で暮らし常に一緒にいられるキースに、僕以上に気の合う様子で遊ぶアランに、人目を引く容姿と年上の余裕を感じさせるニコルに、女の子同士という武器を最大限に活かすメアリに嫉妬し、ニコルをたきつけるソフィアや、ただ純粋にカタリナを悦ばせようとするマリアにまで苛立ちを覚えた。
それらの感情は、ただ一言で言い表せる。
カタリナを愛している。
そして、皆もまた、カタリナを愛している。
カタリナが別の男と話をしているだけで心が乱され、いつだって余裕など無かった。
今も、何とか取り入ろうと取り囲む令嬢たちの輪の中から、さりげなくカタリナを視界に入れている。どんな時でも必ず、彼女の姿が目に入る位置と、何かあった時にすぐに駆けつけられる距離にいられるようにしているのだ。
ダンスが終わる直前、ニコルがカタリナの耳元に何かを囁き、カタリナが微かに頷いたように見えた。
ただの疑心暗鬼かもしれないが、そろそろもう一度踊ってもいい頃合いのはずだ。
彼女を誘う為にそちらに向かおうとした途端、次の曲の相手はぜひ自分にと令嬢たちが殺到し、カタリナから目を離してしまった。
「……!」
一瞬の事なのに、彼女の姿が見えない。
不安に駆られ、広間を見回しても、やはりカタリナは見当たらない。
ふとバルコニーへ目をやり、閉じかけた扉に彼女のドレスがちらりと見えた気がした。
それを追って外に出てみると、カタリナが誰かを探すようにキョロキョロと見回している。
「――カタリナ」
バルコニーにある太い飾り柱の暗がりから、声がした。
彼女が暗がりへと駆け出す。
「……ニコル様!」
ニコルの広げた腕の中に飛び込んだカタリナは、嬉しそうに見上げる。
二人はしっかりと抱き合うと、唇を重ねた。カタリナの腕がニコルの背中に回される。
何度も何度も唇を組み替え、求め合うキス。
長い事そうしていた二人がようやく唇を離すと、カタリナは乱れた息のまま、とろけるように幸せそうな顔でニコルを見つめた。
「愛しています。ニコル様」
――嘘だ
「私が愛しているのはニコル様。ちゃんとジオルド様に伝えます。婚約を解消したいって」
――嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!
――ああああああぁぁぁぁぁぁッ!
声にならない叫びを上げる。
――いやだ! もうやめてくれ! 僕のカタリナに触れるな! カタリナは僕のものだ!! これ以上僕に見せないでくれ!!
嫉妬の炎で身体中の血が沸騰し、逆流しているようだ。
彼女が僕以外の誰かのものになるなんて、考えただけで気が狂いそうだった。
“ならば、どうするべきか分かるだろう?”
とっくに気付いていたが、考えないようにしてきた事
彼女のペースに合わせ、まだ先だと思っていた事
――誰よりも先に、誰にも奪われないうちに、愛する人を自分のものにする――
ハッと気付くと、そこはいつもの生徒会室。
会長の席ではシリウス・ディークが忙しそうに書類を決裁していた。他の生徒会メンバーはまだ来ていない。
会長がふと手元の書類から目を上げ、苦笑する。
「起こそうかとも思ったんですが、今日はそれほど忙しくありませんし、みんなが来るまで眠っていても大丈夫ですよ、ジオルド王子」
どうやら小春日和の陽気に、眠気を催してしまったようだ。
「いえ、仕事に集中します」
バツの悪い思いで引き攣った笑顔を返すと、気を引き締め直し、目の前に積まれた書類を手に取る。
何か夢を見たような気がするが、もう思い出せなかった。
――熱い……それになんだか苦しい……
身体の芯から溶けてしまいそうなほどの火照りに、私は目を覚ました。
まだ眠りに落ちてからそれほど経っていないと思うけれど……。
窓から入る月明りが部屋をぼんやりと照らしている。
――あれ? おかしいな。アンが部屋を出る前にカーテンを閉めてくれたはずなのに
寝ぼけたまま毛布を下にずらし、ようやく異変に気付いた。
「え!? ジオルド様!?」
ジオルドがベッドに一緒に横になって、後ろから私を抱き締めていたのだ。
なんでジオルドが私の部屋に? それもベッドの中で私を抱き締めているの?
びっくりし過ぎて言葉が出てこない私に、ジオルドはいつも通りの笑顔でとんでもないセリフを口にする。
「ようやく起きてくれました? 結構長い事、君の身体を愛撫していたのですが」
「ええ!?」
その言葉でジオルドの熱い手が、パジャマの上から乳房を包み、もう片方の手が太ももの間に滑り込んでいる事に気付く。
――これって…!?
「あっ、あの、ジオルド様、こういう事は、まだ早過ぎるのでは!?」
「僕たちは婚約しているのだから、このくらい当然でしょう」
言いながらジオルドが私の身体から手を離したのでホッとしたのも束の間、そのまま起き上がると私の上に馬乗りになってしまう。これでは逃げられない。
「でもここは学生寮ですし、誰かに知られたりしたら……」
「大丈夫ですよ。知らないんですか? このくらいの“交流”は、皆やっているんですよ。そんな事よりも――」
グッと顔を寄せて耳元で囁く。
「もう服の上からでは我慢できそうになかったんです。直に触れさせてください」
「え? ちょっと!?」
ジオルドはパジャマの裾を胸元までたくし上げた。乳房が露わになる。
「凄く……綺麗ですよ」
微笑むジオルドの瞳の奥に怪しい光がチラつくのは気のせいか、それとも突然欲望を剥き出しにされたからなのか。
裸を見られている恥ずかしさと、ジオルドの舐め回すような視線から胸元を隠そうとした手を、ジオルドが掴んでベッドに押し付ける。それほど力を入れているようには見えないのに、動けない。
「いつまでも眺めていたいですが、それよりも今は――…」
そう言ってジオルドは手首を掴んだまま、私の胸元に顔をうずめて乳首に吸い付いた。
「ああっ……ジ、ジオルド様っ!?」
眠っている間にされた愛撫ですでに硬くなった乳首は敏感になっていて、ジオルドの唇と舌の更なる愛撫でゾクゾクと背筋に快感が走る。
「ふふ……今、鳥肌が立ちましたね。それにさっき服の上から触っていた時よりも……ほら、こんなに硬く尖って――君も感じてくれているんですね」
ぺろりと唇を舐めながら、身体から力が抜けてしまった私の手首を離すと、乳房を両手で掴んでたっぷりと揉みしだく。ジオルドの指が沈み込み、手の中で自在に形を変える乳房と、硬く尖る乳首を唇でこすり、舌先で転がし、舌全体で舐め回し、強く吸いつき、しゃぶり回される。
「あ、ああっ…ぁんっ……んっ」
気持ちよ過ぎて恥ずかしい声が出てしまうのを抑えられない。
きゅんきゅんと下半身の敏感な部分まで疼いてしまう。
――こんな……こんな気持ちいい事、私、知らない……!
「しっとりと汗ばんだ肌が手に吸い付いてきて、柔らかいのに張りがあって……最高の触り心地」
満足の溜め息とともに囁くジオルドに、快楽の波に飲み込まれてしまいそうなのを何とか抑えて、こんな事はやめるよう説得してみる。
「だめです、ジオルド様……こういう事は、その……本当に好きな人と、お互い合意の上でするものだと……」
そうだ。ジオルドはマリアが好きなはず。
これって性欲のはけ口ってやつなのかな? 男の人って好きでなくてもできるって聞いた事があるし。
でももしこの先マリアがジオルドと結ばれた時、こんな事を知ったらきっと悲しむ。それに見合い話を断る為の防波堤なだけでなく、こんな風に愛のない身体だけの関係を持つなんて、悲し過ぎる。
「――ジオルド様……こんな事が知られたら、マリアが悲しみます」
「マリア? どうしてここで、彼女の名前が出てくるんです?」
ジオルドが心底驚いたような声を上げて、ようやく愛撫の手が止まった。
「だって、ジオルド様は、その……マリアの事が……」
「……ああ、なるほど。ようやく分かりました。そんな誤解をしていたから、どんなにアプローチしても僕の好意を受け入れられなかったのですね」
納得がいったという顔をして、ジオルドが苦笑する。
「今まで何度も言ってきたではないですか。“婚約は絶対に解消しない”って。それはもちろん、“あなたを愛しているから、誰にも渡さない”という意味のつもりだったのですけど」
突然の愛の告白に、嬉しさよりも驚きと戸惑いの方が強い。
「ええ!? あ……ええ!?」
「まったく君は……本当に鈍いですね……」
溜め息をひとつ吐いてから、ジオルドは艶然と微笑んだ。
「だから、お仕置きです」
これ以上ないほど敏感になった乳首をキリッとつまみ上げられ、ふるふると乳房ごと揺さぶられる。
「やっ、あああっ、痛いっ……ああっ」
乳首からちぎれてしまいそうなほどの痛みなのに、同時に言いようのない快感が押し寄せる。
なにこれ!? なんで!? 痛いのに気持ちがいいなんて、私、Mだったの!?
「ゆ、許してっ、許してください、ジオルド様……!」
「ひどい……です……ジオルド様……」
涙を流すカタリナの表情は、ゾクゾクと嗜虐的な悦びをもたらした。
「ああ、いけませんね。そんなに可愛い顔をされたら……」
何度も何度も妄想したカタリナの身体に直に触れ、たっぷりと愛撫を施して彼女に快楽と痛みを与える事ができた悦びと、ようやくカタリナを自分のものにできるという達成感、彼女に愛されたいと願う皆を出し抜いた優越感で、下半身はとっくに硬く張りつめている。
だがさすがに彼女を満足させる前に自分だけ先に果ててしまうのは、男としてのプライドが許さない。
それにせっかくの二人の初めての夜を、焦って進めてしまうのはもったいない。今まで焦らされてきた分、じっくりと楽しみたい。
――いいじゃないか
夜はまだ長い。時間はたっぷりある。
深く息を吐いてなんとか下半身を落ち着けると、膝立ちになって上半身ごと屈み、カタリナに折り重なる。
「……ジオルド様?」
顔を寄せて目に溜まった涙を舐めとる。塩辛いはずなのに、不思議と甘い。
カタリナの水色の瞳を真っ直ぐに見つめると、月明りだけの薄闇の中でもキラキラと輝く彼女の瞳は、本当に綺麗で愛おしい。すべすべとした頬を撫でる。
「すみません、意地悪をしてしまって。改めて言いますが、子供の時からずっと僕は君の事を愛しているんですよ。君と出会えた事も、婚約できた事も、本当に幸運だったと思っています。だけどそれは、なかなか想いが伝わらない切なさと、周りから愛され過ぎている君を独占できない焦燥感とも隣り合わせでした。特にこの学園に入学して寮での生活が始まってからは、顔を合わせる機会が増えた分、愛しい君を僕以外の誰かに奪われてしまうのではないかという不安で気が変になりそうでした。ですが――」
カタリナの額――婚約するきっかけとなった傷のあったその場所に、優しくキスをする。
「――それも今夜で終わりです。だって君は今ここで、僕のものになるんですから」
「ま、待ってください。ジオルド様が私を、その……あ、愛してくれているのは分かりました。でもなんていうか、やっぱりまだ早いっていうか、順番が逆っていうか、私の気持ちが置いてきぼりっていうか」
「置いてきぼり? カタリナは僕の事が嫌いですか?」
「そんな事はないですけど……」
「ならいいじゃないですか。僕たちはいずれ結婚するんです。今から深く繋がる事に何の問題が?」
そのまま、何かを言おうと口を開いたカタリナの唇を、唇で塞ぐ。
「でも、ジオ――んんっ」
感触を確かめるように何度も何度も重ね合わせる。
押し返そうとしていたカタリナの手からだんだんと力が抜けていき、やがてすがるようにシャツを掴んできた。
「……んっ………んん……」
カタリナにもっと僕を受け入れてほしい。僕を求めてほしい。
「――ねえカタリナ、唇を開いて」
「……?」
素直にカタリナが唇を開く。おそらく、これからされる事を理解していない。
ぴったりと重ね合わせた唇の奥に、舌を差し入れる。
「んっ!? ………んんっ」
カタリナの舌に舌を絡め、甘い唾液を味わう。
お互いの吐息に、ちゅく、ちゅく、と唾液の絡む音が混じる。
「――カタリナ、もっと舌、絡めて」
求めると、恥ずかしそうにしながらも彼女は舌を動かし始めた。とたんに密着度が増し、格段にキスがよくなる。
「次は舌を出して……」
女性が口から舌を出すのは抵抗があるだろうが、気持ちよさで感覚が麻痺してしまっているのか、カタリナは言われた通りに舌を出した。
その舌先を吸うと、反射的に彼女は舌を引っ込めてしまう。
「……駄目ですよ、引っ込めちゃ」
「す、すみません……」
「では今度は、僕がしたみたいに、カタリナからしてください」
舌を出して待つと、おずおずと彼女は顔を寄せて舌先を舐める。
唇を重ねないまま舌だけを絡ませるのも、いやらしくて凄くいい。なにより愛しい人が不慣れな様子ながらも一生懸命に応えようとしてくれるのが嬉しい。
舌先を絡めたまま唇をしっかりと重ね、今夜した中で一番深いキスをする。
「んっ………んんっ……はぅっ…………」
――こんなにも、愛する人と交わす口づけは気持ちがいいのか……
頭の芯が痺れてボーッとし、彼女の舌を貪る以外の事が考えられなくなる。それに舌を絡めだしてからずっと、カタリナはそわそわと膝を合わせている。
きっと彼女も、我慢できないくらい感じているはずだ。
僕のシャツを掴んでいたカタリナの手から完全に力が抜けて、ベッドにぱたりと落ちた。
「カタリナ……?」
名を呼ぶと、甘く乱れた息遣いで彼女は潤んだ瞳をとろんと開いた。
上気し甘くとろけきった表情に、強く欲望を掻き立てられる。
――もっともっと、感じさせたい
キスだけで一晩過ごせてしまえそうだったが、この後の行為への誘惑には抗えなかった。
カタリナを、僕のものにする。
勢いに任せて、脱力した彼女のパジャマを全て脱がせた。
今彼女を覆っているのは、下半身の大切な部分を包む薄い下着1枚だけだ。ツンと上を向いた形の整った乳房も、適度に筋肉の付いた引き締まった身体も、毎日あんなにお菓子や美味しいものを食べているのになだらかに秘部へと続く下腹部も、すんなりと長い脚も、全てが美しい。
カタリナが視線から逃れようとするように上半身をよじる。
「隠さないで。お世辞ではなく、本当に君は綺麗ですよ」
「……ジオルド様、そんなに見ないでください……恥ずかしい……」
「恥ずかしい、ですか? なら僕も……」
膝立ちだったのを崩し、カタリナの下腹部に下半身を当てる。
「……!」
硬く盛り上がりドクドクと脈打つ感触に、カタリナはびくりと身をすくめた。
「ふふ……怖い? でもこんな風にしたのは、カタリナですからね。君以外の女性に、こんなに欲情したりしません」
――誰もが憧れる美しい王子様の口から“欲情”なんて言葉が出て、幻滅どころかゾクゾクしてしまう私は変態なのかな……
「カタリナ、僕の服も脱がせてくれませんか?」
ジオルドに熱い吐息とともに頼まれるとイヤとは言えず、言われた通りにシャツのボタンをひとつずつ外していく。男の人のシャツのボタンを外してあげるのが、こんなに恥ずかしくてドキドキするなんて初めて知った。ぎこちなくシャツを脱がせると、たくましく成長したジオルドの上半身が露わになる。ジオルドは着痩せするタイプのようで、肩から胸板にかけての均整の取れた筋肉と引き締まったお腹と腰回り、綺麗な肌はまるで彫刻のようだ。思わず見惚れてしまう。
初めてのキス――それも指先まで痺れて身体に力が入らなくなってしまうような濃厚なキスをされ、雰囲気に流されてしまっている自覚はあるのに、ジオルドに愛され、求められているのが嬉しいと感じてしまっている。
初めは怖いと思った、お腹に押し当てられているジオルドの下半身の硬くてビクンビクンする感触も、私を求めて興奮しているからだと思うと凄くドキドキする。
――でも、だからと言って私、このまま流されてしまっていいのかな?
ジオルドは身体を起こして私に並んで横になると、もう1度額に口づけをし、まぶたにも優しく唇を添わせる。
破滅フラグの事も踏まえて、ちゃんと考えなくちゃいけないのに、ジオルドに与えられる気持ちのいい事のせいで頭が上手く回らない。こんな事まだ早いし、いけないと思うのに、自分ばかりが気持ちよくしてもらっているのもよくない、自分も返さなきゃと思ってしまって、求められると応えなければいけない気になってしまう。
今夜のジオルドはなんだかおかしい。いつもはもっと余裕があって、ここまで強引じゃない。
それがこんなに欲望を剥き出しにしてくるなんて、何かあったのだろうか?
「ひゃうっ」
そうだ。さっき、子供の頃から好きだったとジオルドは言っていた。
だとすると、ずっと今まで、私はジオルドに対してひどい事をしてきたのかもしれない。
“婚約を解消する気はない”と言うジオルドに、何度も“婚約を解消してくれていい”と言ってしまった。好意的な言葉は全て、社交辞令だと思ってスルーしてきた。
たぶん、気付かないうちにたくさん傷付けてしまったのだと思う。
そういうのが溜まりに溜まって今夜の強引な行為の引き金になってしまったのだとしたら、私は責任を取らないといけない、のかな。でも――…。
「んんっ」
ジオルドの事は好きだし、かっこいいとも思うし、今まで破滅フラグの最大要因である事を警戒しつつも、何だかんだ仲良くしてきた。愛していると言われて正直とても嬉しいし、ときめいた。でも愛されている事が分かったからといって、すぐにこんなエッチな事を受け入れられるかと言われれば、ちょっと抵抗がある。
できれば少しずつ、ちゃんと段階を踏みたい。
でも、こんなに興奮してやる気満々のジオルドを、止める事なんてできるだろうか?
「あ……ふっ」
でも、止めないと。流されて、こんな事――でも、でも――…
耳元でするピチャピチャという音と、ぬるぬるとした温かい感触に、思考を邪魔される。
――ああ、もう! さっきからジオルドが耳を舐め回してきて、頭が回らない!
ジオルドの舌が耳を這い、耳たぶを噛み、少し乱れた熱い息が、甘い毒みたいに耳から流し込まれる。
耳への愛撫を続けながらジオルドの長い指が唇をなぞり、ゆっくりと顎、首筋、乳房へと滑っていく。敏感な乳首を指先で弾き、へそから下腹部まで来て指を止めた。
「カタリナ。この指、この後どこにいくと思います?」
「……ふぇ?」
「質問を変えましょう。君はどこに触れてほしいですか?」
どこ? どこって?
「選択肢は二つ。このまま太ももと膝を通って足先か――」
ジオルドがいやらしく囁く。
「――それとも、今一番敏感で、熱くなっている部分?」
「!」
反射的に太ももを固く閉じると、ジオルドが忍び笑いを漏らす。
「そこが君の、“今一番敏感で熱くなっている部分”?」
「そんな……事、言え…ません……」
「それは残念。君にねだってほしかったのに」
いつも思いもよらない方向に思考を加速して周りの声が耳に入らなくなるカタリナだが、今は触れる度にピクンと反応を示し、ただ僕の与える刺激に集中してくれているのが嬉しかった。
今だけは、何も考えず快楽に溺れてほしい。一緒に気持ちよくなってほしい。
恥ずかしさのあまり顔を両手で隠してしまったカタリナの下腹部に手を当て、するりと下着に滑り込ませる。
「あぁっ…! んぅっ、ああぁっ」
触れた瞬間にビクンと身体が跳ね上がり、想像以上にたっぷりと濡れたそこは、柔らかく指に絡みついていやらしい音を立てた。
「ふふ、本当に可愛いですね、君は。こんなに濡らして……。僕の愛撫がそんなに気持ちよかった?」
「だ、め…だめです、んんっ……そんな――ところ…んっ」
抵抗の言葉は弱々しく、甘い喘ぎに掻き消される。
どれだけ自分が濡れて感じているのかを自覚させる為にわざと、くちゅ、ぷちゅ、といやらしい音を立てて弄る。しばらく続けてから、愛液が溢れてくる入り口へゆっくりと指を押し入れると、カタリナがブルルッと震えた。
「ジ、ジオルド様の指っ、入って――… 」
指1本でもキツいのに、ゆっくり抽送すると、ピクピクと中で痙攣して更に締め付けてくる。
女性の初めてはとても痛いと聞いているから、様子を見ながら時間をかけて入れる指を増やすと、少しずつだが確実に彼女の中は受け入れ始めた。2本の指が苦しくなさそうになったところで一旦抜き、今度は指を上に滑らせる。
指先にしっかりと突起を感じられるほど硬く尖る陰核をコリコリと撫でつけた途端、カタリナがビクッと仰け反った。かなり敏感になっているそれを剥き出すようにして優しく弄ると、ガクガクと腰を振り、震え出す。
「だっめっ、ホントにだめ! そこはっ! だめぇ……!!」
ガクン、と一際大きく身体が跳ね上がってからベッドに落ち、焦点が合わない目から涙がこぼれる。
軽いオーガズムを迎えたようだ。
「まだまだ気持ちよくしてあげますからね、カタリナ。覚悟してください」
ようやく膝が緩んだところで下着も脱がせてしまう。
「――さあ、よく見せて? まだ誰にも見せた事のない部分を」
カタリナは無意識に膝を閉じようとしたが、その前に強引に脚を大きく開く。
月明りに照らされ浮かび上がる彼女の秘部はトロトロに濡れ、小さな突起が震えている。
邪魔な下着がなくなったところで、今度は深くまで指を押し入れた。
慣らす為にゆっくりと少しずつずらしながら刺激していく。
「――んっ………んぁっ」
指が溶かされてしまいそうなほど中は熱く、奥からどんどん愛液が溢れてくる。
こんなにもいやらしい恰好で、恥ずかしい部分を広げられて感じてしまっている婚約者を前に、湧き上がる欲望が止まらない。
中できゅうきゅうと締め付ける指を引き抜くと手の平にまでこぼれてきた愛液を、彼女の目を見つめながら舐めとって見せた。
「あ………」
カタリナも、恥ずかしさに顔を赤くしながらも自分の愛液を舐める様子から目を離せないでいる。
「君は唇も涙もそれに愛液も、全部が甘くて美味しいですね」
林檎のような甘酸っぱい香りを楽しみながら、カタリナの広げた長い脚の間に屈み込む。
顔を近付けると舌を伸ばした。
「あ、ああっ!? ジオルド様っ! そんなところ…っ…あっ…あっ…んっ…あぁっ……!」
愛おしい彼女から溢れる愛液を一滴も漏らさないよう舌全体でしゃぶりつくように舐め、勃起した小さな突起を舌先で転がし、チュッチュッと吸う。
「……!?」
だんだんと興に乗ってきたところで、突然頭を押さえつけられた。
まだ快楽の受け入れ方が分からないカタリナに、太ももでがっちりと頭を挟まれてしまっていた。
「カタリナ……」
こんなにいいところでもやっぱり彼女らしさは健在で、吹き出しそうになるのをこらえて思案する。さすがに初めての女の子に、自分で脚を押さえて開かせておくのは難しいだろう。
――今夜のところは、ね。これからいやらしい事をたくさん教え込んで、僕好みに仕込んであげますから
色々な体位を試してみたいし、いやらしい下着を着けさせたり、僕の目の前で自慰をさせたり、僕のものをしゃぶらせたり、淫らな言葉でおねだりさせるのもいい。誰かに見られてしまいそうな木陰や窓辺でするのもいいし、服を脱がさずにしたり、目隠しをしたり、玩具を使ったり、拘束具や縄で縛ったりもしてみたい。
カタリナとしたい事ならたくさんあるが、自分の思い通りには絶対にならない事も彼女の魅力のひとつだと理解しているので、そこは駆け引きや経験の積み重ねで超えていけばいい。
今はむしろ、それが楽しみだった。
――ジオルドのサラサラとした金髪が、私の太ももの間で揺れている……
自分でも見た事のない場所を広げられて舐め回され、指まで入れられているのに、身体は勝手に反応し、奥から熱いものが溢れ出てくるのが自分でも分かる。
恥ずかしいのに気持ちよくて、求められるのが嬉しくて、何も考えられずに身体を甘くとろかせていく愛撫に身を任せていると、興奮しているらしいジオルドに陰核を甘噛みされる。
「んあぁっ!」
突然の未知の刺激に耐えられず、ついジオルドの頭を太ももで挟んでしまうと、彼は苦笑いしながら顔を上げた。
「まあ、これはこれで素晴らしい感触ですけれど」
そう言って太ももに頬ずりをしてキスをする。
「そうですね……」
ジオルドが何か思い付いたように枕を引き寄せ、私の腰の下に押し込んだ。
「!? …やっ……いやです、ジオルド様っ、こんな、格好……!」
恥ずかしい場所を丸見えにされ、しかも身体を起こす事ができない。
「ああ……凄くいい眺めですよ。下から見る乳房のラインもいやらしくて凄くいい。それにほら――カタリナからもよく見えるでしょう?」
ジオルドの舌が愛おしそうに舐め回す様子も、私の中に指を突き立てる様子も、動かす度に飛び散るように溢れる愛液も丸見えで、恥ずかしいのに目を離す事ができない。
――乙女ゲームの美しい王子様、誰もが憧れる王子様が、悪役令嬢である私の恥ずかしい部分に顔をうずめて舐め回しているなんて、こんな事、絶対におかしい……!
「あっあぁっ! 気持ち、いいっ! ジオルド様! おかしくなっちゃう! 私、おかしくなっちゃうぅ…!」
それを聞いてジオルドはニッと笑うと、一気に絶頂に導く為に指を激しく突き動かし、敏感な突起を強く吸いながら舌先で擦り立てる。
さっきのとは格段に上のオーガズムに、気付けば悲鳴にも似た喘ぎ声を上げてしまっていた。
「あああぁぁぁぁぁっんんっ……!」
腰の枕を外し、苦しそうな体勢を解くと、全力疾走でもしたような荒い息を吐くカタリナがくたりとベッドに横たわる。
とろんとした目には何も映っていないようだ。オーガズムの余韻で、まだピクピクと身体が痙攣している。
「ふっ……くっ……」
少し体勢を変えただけで、パンパンに張った下半身は今にも爆発しそうだ。
たっぷり時間をかけて前戯をしたせいで、こちらも全然余裕がない。
刺激しないよう気を付けながら何とか身に着けていたものを全て脱いでしまうと、解放された陰茎がそそり勃つ。まだ射精はしていないものの先走りが溢れ、自分でも見た事がないほど膨れ上がっている。
「……!」
脱力していたカタリナが、それを見てビクリと身をすくめた。
欲望を剥き出しにした男性器は、生まれて初めて目にする女性にはとても恐ろしいものに映るだろう。ましてや子供の頃から一緒にいるのだ。嫌悪と拒絶が先にきてもおかしくない。
「――触れてみますか?」
少しずつでいい、慣れてほしい。そう思い、声を掛けてみた。
嫌がるかとも思ったが、涙目で見つめていたカタリナは意外にも頷き、ゆっくりと身を起こす。
「どう……したら?」
伸ばしかけた指先を戸惑うように泳がせるカタリナの手を取り、そっと根元を握らせる。
「あ……」
「どうですか?」
「……熱くて……硬い、です……」
「少し、動かしても?」
赤くなりながら頷く彼女の手に手を重ね、ゆっくりと上下に扱く。
正直に言えばカタリナの温かな手で握られただけで果ててしまいそうだったが、彼女の不器用な手つきと、簡単に絶頂を迎えるような情けないところは見せられないというプライドで、まだ何とか我慢できていた。
握る強さと扱く速さをカタリナに覚え込ませる。
「ふっ……ック………いいですよ、カタリナ……凄く上手です」
しばらく続けてから手を離しても、感覚を掴んだ彼女はしっかりと手を動かしている。
「ジオルド様、あの……気持ちいいですか……?」
上目遣いのカタリナに恥ずかしそうに聞かれ、ドクンと心臓が高鳴った。
そろそろ限界だ。
「愛しい君にしてもらっているんです。気持ちいいに決まっているじゃないですか。どのくらい気持ちがいいのか見ていてくださいね」
そう言って再び彼女に手を重ねると、今度は少し強く握り、ペースを早めた。
「はあっ……あぁっう……ぅくッ!」
自分でも恥ずかしくなるような喘ぎ声を上げて、一瞬膨張した陰茎の先から大量の精液が勢いよく噴き出し、カタリナにかかる。
頭が痺れ、下半身が溶けてしまったかと錯覚するほど気持ちがいい。
長く我慢した事で激しく噴き出した白い体液が、彼女の顔や髪、乳房、腹やへそをドロリと伝い、自分の精液で汚されたカタリナを見て、ゾクゾクと悦びが全身を駆けた。
一度出せば少しは落ち着くだろうと思った勃起も、全然治まらない。むしろ更に硬く反り返っている。
――こんなの、前世で見た事のあるお父さんのともお兄ちゃんのとも、それに子供の頃見たキースのとも全然違う!
綺麗な顔をして一見華奢なジオルドには不釣り合いなほど大きくて猛々しいそれは、初めて目にした時はびっくりしたし怖かったけれど、気持ちよくて興奮しているのは自分だけではないのだとちょっとだけ安心もした。
触ってみるかと言われた時は躊躇したものの、一回出してしまえばジオルドも満足してくれるかと勇気を出してみたけれど、とても落ち着いた感じはしない。
っていうか、さっきよりもっと凄い事になっている。
そして、それを見た私までなぜかドキドキと昂ってしまっている。
――男の人って、こんなに熱くて、硬くなるんだ……
ジオルドがこんなにエッチな事を、それも、私としたいと思っていたなんて――。
そう考えただけで下半身が痛いくらいに疼いてしまっていた。
「……大丈夫ですか?」
ジオルドがシーツの端を持ち上げ、身体を伝う精液を優しく拭ってくれる。
「すみません、カタリナ。汚してしまって」
「……ジオルド、様……」
「なんですか?」
「……………怖い……です……」
一瞬、ジオルドは悲しげに顔を歪めてから、すぐに笑顔に戻す。
「……やっぱり嫌、ですか? ……そうですね、僕もかなり強引にしてしまいましたからね」
かぶりを振る。
「ジオルド様がこんなに本気で真剣に愛してくれているんだと分かってしまって、もう子供の頃のようには戻れないのが、怖いんです」
「カタリナ……!」
驚いた表情が本当に嬉しそうな少年のような笑顔に変わり、ジオルドは私を思いっきり抱き締めた。
「ジっ、ジオルド様!?」
たぶんこれは、無意識に表情をつくり本心を隠すクセが付いてしまっているジオルドの、素の笑顔。
「ようやく僕の気持ちを分かってくれたんですね。嬉しいですよ、カタリナ」
それから、ふと真顔になったジオルドが、唇が触れそうなほど近づいた。
「君の、気持ちは……?」
子供の頃からずっと傍にいる私の婚約者。たくさん迷惑も心配もかけてきたのに、いつだってジオルドは優しかった。いつも美味しいものを用意して、頻繁に顔を見せにくれた。困った時には助けてくれた。
それは、単純に親しい友人として、あるいは防波堤代わりの私への罪悪感からかと思っていたけれど、本当は愛されていたからなのだと、大切に想ってくれていたからなのだと知って、ジオルドの破滅フラグへの警戒心も含めた気持ちの全部が、一気に好感度に変わってしまった。
乙女ゲームの攻略対象。ドSで腹黒な美貌の王子様。
どうしてよりにもよって悪役令嬢の私を好きになったりしたのか、私なんかより素敵な人は周りにたくさんいるのに、と不思議に思う気持ちはある。でも前世を思い出してから重ねた日々は確かに現実で、ゲームの登場人物でしかなかった人たちは、今はみんな大切な友人であり家族だ。
だからと言って、急にジオルドを男性として見る事ができるかと問われたら――…
――いや? ……見られるか
こんなにも強引にジオルドが男性である事を見せつけられ、自分が女性である事を自覚させられて、それなのにいやじゃなかった。嬉しいとすら感じてしまった。
「ジオルド様……ひとつ、聞いてもいいですか……?」
「もちろん。君に隠すような事は何もないですから」
何と言ったらいいのか一瞬迷い、結局直球で聞く事にする。
「ジオルド様は、私を……国外追放にしたり、殺したり……しない、ですか?」
質問が意外だったのか、ジオルドはキョトンとした。
「……それはどういう……」
言いかけ、首を振ると、ジオルドは真っ直ぐに私を見つめた。
「カタリナ。君を国外追放にしたり、殺すなんて事は絶対にありません。もし君が国外追放になるような事があれば、僕は王族の身分を捨てて君と共にこの国を出ます。君に害をなすなんて事は絶対にありえませんし、誰にも手出しなどさせません。僕が一生をかけて君を守ると誓います。何度でも言わせてください。僕は、君を愛している」
「ジオルド様……」
これまでの努力が報われた喜びで、胸の中に温かなものが流れ込み、満たされる。
自然と涙が溢れた。
マリアではなく私に“愛している”と真剣に言ってくれたジオルドは、もう破滅フラグ要因ではない。
好きになってもいいのだ。それなら。
もの凄く恥ずかしいけれど、ジオルドの手を取り、なんとか目を見ながら言う事ができた。
「……優しく…して、くださいね……?」
顔を赤らめ、目にいっぱいの涙を溜めて微笑むカタリナが、僕の気持ちにようやく応えてくれた。
自分から、この手を取ってくれた。
愛する人に愛される。どんなにか、この瞬間を待ち望んだだろう。
カタリナの額にそっと口づけをし、額をくっつける。
間近で見る潤んだ水色の瞳はとても綺麗で、長いまつ毛には小さな涙の粒がキラキラ光っていた。
初めては、やはり顔を見ながらしたい。
キスをしながら、カタリナをゆっくりと押し倒す。
舌を絡ませ合い、お互いを味わいながら彼女の太ももに手を滑らせると、ちょっとだけ抵抗があったが、おずおずといった感じで恥ずかしそうに彼女は脚を開いた。
「力を、抜いて……」
とうとう、カタリナを自分のものにできる。
その悦びで、全身が痺れるような幸福感で満たされる。
彼女のそこは、あれだけ舐め取ったにもかかわらず溢れそうなほどに濡れていて、すぐに僕を受け入れてくれそうだった。
「カタリナ――なるべくゆっくり入れますけど、痛かったら言ってください」
狭い蜜壺に、メリメリと引き剥がすような感触を感じながらゆっくりと挿入していく。
「――――ッ!」
カタリナはギュッと目をつぶり、声にならない悲鳴を抑えるように耐えている。
初めて味わう痛みに震える彼女を気遣い、少しずつ挿入していったが、本当に痛いのだろう、無意識に身体が逃げようとしていた。
「カタリナ、あまり苦しいようなら、一度抜きましょうか?」
「い、いいえ、大丈夫…です………続けてください、ジオルド様」
息も上手くできないのか、苦しそうな息遣いで瞳に涙を溜めたカタリナがぎこちなく微笑む。
――なんとか、気を紛れさせてあげないと……
せっかくの二人の初めてを、嫌な思い出にはしたくない。
ようやく繋がる事ができた愛する人に気持ちよくなってほしいし、二人で気持ちよくなれなければ、意味がない。
一旦挿入を止め、そっと乳房を愛撫する。
一番敏感な部分を避けて柔らかな肉に指を沈め、たっぷりと揉み続けてからおもむろに乳首をつまみ上げた。
「あぁッ」
焦らされ、期待でピンと勃った可愛い乳首をクニクニとこねる度に、彼女の中が痙攣する。
その痙攣に合わせてなんとか奥まで挿入すると、カタリナの中は燃えそうなほど熱く、痛みをこらえているせいでギュウギュウと強く締め付けた。
まだとても動かせる状態ではなさそうだ。
痛みに耐えているカタリナには申し訳ないと思いつつも、彼女の純潔を手に入れる事ができた悦びでゾクゾクと身体が震えてしまう。
「大丈夫ですか、カタリナ?」
閉じていた目が開くとぽろぽろと涙がこぼれた。
「ジオルド様…の……全部、入っ………?」
「ええ、君の奥まで。少し、このままでいましょう。君の痛みが治まるまで」
優しく涙を拭ってから、彼女に折り重なるように身体を倒す。
「僕の首に、手を回してみてください」
カタリナが素直に手を回してギュッとしがみつくと、胸に乳房の柔らかい感触が押し付けられる。早鐘のような鼓動が自分のものなのか、彼女のものなのかも分からないほどしっかりと抱き合いながら唇を重ね、貪るように舌を絡めた。
「んんっ……んっ……」
少しは痛みから気が紛れているだろうか、たどたどしい舌遣いで応えているカタリナから洩れる息が、次第に甘く潤ってきた。締め付けも少し緩んできたような気がする。
――そろそろ動いても、大丈夫だろうか?
そう思った瞬間、カタリナが恥ずかしそうに囁いた。
「たぶん……もう大丈夫、です。ジオルド様」
カタリナのくるくると変わる表情の中で、楽しそうに笑っている時がもちろん一番素敵だけれど、困った時の顔もとても可愛い。
眉をひそめ、少し上目遣いでこちらを見る表情が、僕は好きだった。だから時々、彼女を困らせたり、戸惑わせたりした。
自分には少し嗜虐的な嗜好があると思っていたが、今はっきりと自覚した。
気持ちよさに声が出てしまうのを一生懸命こらえている顔。痛みに耐える顔。抗えずに僕の腕の中で淫らに喘ぐ顔。気持ちよ過ぎて涙をこぼす顔。
本当は困らせたかった訳ではなく、僕はただカタリナを気持ちよくさせたかっただけなのだ。
「君に痛みと快楽を与えていいのは僕だけですからね」
耳に唇が触れるほど近づいて囁くと、ピクンとカタリナが反応する。
初めは少しずつ、ゆっくりと引いては軽く打ち付けるように押し込む。
そうして慣らしながら奥を探ると、一番奥より手前辺りに、擦る度にカタリナが声を上げる場所があった。
「ここが、感じるんですね」
彼女の腰の下に手を入れて抱え上げるようにしてグリグリとえぐって刺激すると、彼女は耐えきれずに甘い嬌声を上げる。
途端に熱い愛液が溢れ、動きやすくなったところで、徐々に激しく動かしてみた。
抜けるギリギリまで腰を引き、一気に押し込む。血が混じった愛液が空気と混じり、打ち付ける肌と肌がいやらしい音を立てる。
「あっ……あっ…あんっ……ジオ、ルド、様っ……ジオルド様ぁっ」
カタリナが耐えきれずに仰け反る。もう痛みはないようだ。
「カタリナ―――カタリナ――…」
抽送すれば絶え間なく痙攣し、絡みつくように奥へと導く。
互いを呼び合いながら、何も考えられずただ快楽の波に溺れるようにひたすら腰を使い、激しく擦り、打ち付ける。
「愛していますよ、カタリナ――君を愛してる」
まずい。これは本当にまずい。
恥ずかしいくらいお互い息を荒げ、恥ずかしい部分をさらけ出し合い、聞いた事もない声で喘ぎ、見つめ合いながら肌を重ねる。それがここまで気持ちがいいとは思わなかった。
身体の芯から痺れて溶けてしまいそうだ。
突く度に乳房が揺れる様子も、カリが彼女の中で引っかかるのも、彼女の熱い体温も、甘い匂いも、漏れる息も、何もかもが気持ちいい。
「声、我慢しないで。気持ちよくて喘ぐ声、もっと聞かせて?」
両手はすがるようにシーツを掴み、苦しそうだった表情はいつの間にか切なく涙ぐんで、声を抑えているカタリナに囁く。彼女の最後のタガが外れた。
「あッ、あッ…んあぁっ、いいッ――気持ち、いいです、ジオルド様!」
もう何も遠慮する事なく乱れるカタリナに、こちらも最高潮に達してしまいそうなほど興奮してしまう。
繋がったままカタリナの両脚を肩に抱え上げて、激しく突く。
「ああッ、奥っ! この体勢、奥まできちゃう…!」
「君は僕のもので、僕だけのものですからね。それを今、君の身体の一番奥に刻み付けましょう」
彼女の感じる場所をえぐりつつ奥へと突き上げると、信じられないほどいやらしい音を立てる。まるで僕を飲み込もうとするような彼女の痙攣が強くなった。
「ジオルド様! もう、イキそう、です! イっちゃう――イクッ! イクッ…!」
カタリナは子供の頃からよく謎の言葉を口走るけれど、“イク”というのがオーガズムを迎えそうだという事は分かる。
「いいですよ、カタリナ! 二人で一緒にイキましょう!!」
タイミングを合わせるまでもなく、彼女のオーガズムの強い痙攣に搾り取られるようにありったけの精液を流し込む。
「ゥグッ―――ッ」
愛する人の最奥へ届くよう、しっかりとカタリナの腰を押さえたまましばらく待ち、最後の一滴まで注いだ。
「……これで君は僕のものです――愛していますよ、カタリナ」
生まれて初めて経験した絶頂に、頭が真っ白になり、目がチカチカする。
月明りの部屋に、二人の荒い息だけが響く。
とろけるような快感の余韻で身体を動かす事ができないのに、下半身の奥に注がれた熱い精液がゆっくりと流れ落ちていくのが分かる。
―――赤ちゃん、できちゃうかな……
ジオルドに愛されていると分かった今、それもいい気がする。
心地良い気怠さのまま眠りに落ちていく私に、ジオルドが囁いた。
「カタリナ、よく聞いて。本当はこのまま君と一晩中愛し合いたいのですけれど、さすがに初めての君にそこまで無理はさせられないので、今夜はここまでにします。
この後、アンが湯浴みの用意をしてくれますから、軽く身体を流したらよく眠ってください。おやすみ、愛しいカタリナ――いい夢を」
ジオルドの性格的にちょっと意地悪だったり、紳士的(王族に”紳士的”も変ですが)だったりするかな、などと妄想しながら描きました。ジオルドの焦りや不安、カタリナへの溢れる愛情が表現できていればよいのですが… (´艸`*)
ちょっと(?)強引なのも、隠しキャラの彼の影響という事でご容赦ください。
(≧▽≦)ゞタハー