乙女ゲームのR-18ルートに突入してしまった… 《もしかしたら あったかもしれない『はめふら』R-18ルート》 作:帆速やこぬ
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――おっかしいなぁ……こんなん本当に習ったっけ……?
授業が始まり、“二度目の一年生だし余裕!”と思っていたのに、なぜか勉強の記憶がすっぽり抜け落ち、この世界でも授業についていくのがやっとだ。
ま、前世でも試験前に一夜漬けで詰め込んだ勉強は、試験が終わった瞬間に消えてたけど。
出された課題に手をつけたものの一向に進まず、羽ペンを置いて身体を伸ばす。
――ああ~…身体がなまっちゃう……
身体に染みついて――いや、この身体はほとんど畑仕事をしていないから、魂に染みついている畑仕事のルーティーンのせいで、どうもうずうずと鍬を握りたくなってしまう。
――だめだめ! 今回は諦めるって決めたでしょ!
自分に言い聞かせ、気分転換に散歩に出る事にした。
外はぽかぽかと暖かく、春の風が気持ちいい。
あてもなく歩いていると、不意にどこからか香ばしくて甘い香りが漂ってきた。
――こっちは――食堂だっけ?
あまり外から回った事のない場所なので、検討をつけて窓から中を覗く。
食堂の調理場みたいだ。
昼時の混雑が一段落したところらしく、片付いてピカピカに磨き上げられた調理場には、料理人の姿はまばらだった。そしてその片隅にいたのは―――。
「キャンベルさん! 何しているの?」
「きゃっ」
急に、しかも窓から話しかけられて驚いたマリアが、きょろきょろとしてから笑顔になる。
「クラエス様!」
「お散歩していたら、すっごくいい香りがして」
それを聞いて、マリアがクスクスと笑う。
「なになに? どうしたの?」
「いえ、わたしもちょうどクラエス様の事を考えていたので、空耳かと思ったんです」
そう言ってマリアは、オーブン用の鉄板に並べられた美味しそうなカップケーキを持ち上げた。
「わあ、焼き立て!? 美味しそう! すっごくいい香り!! もしかして、キャンベルさんの手作り?」
「はい。この前お約束したので――」
「私の為に!? 嬉しい! ちょっと待っててね、すぐそっちに行くから!」
「あ、でしたら外で召し上がりませんか? お天気もいいですし」
「素敵! じゃあ私とキャンベルさんが出会った、あの広場で食べましょ! 私はお茶の準備をして行くわね!」
「分かりました。ここを片付けたら、わたしも向かいますね」
――待たせちゃったかな!?
メイドにお茶を淹れてもらい、ポットが冷めないように包んだり、栓をしてこぼれないよう工夫したり、座るところに敷く布を用意したりで、あっという間に30分くらい経ってしまっている。
広場まで荷物を持って急いで行くと、マリアが数人の女の子たちに囲まれているのが見えた。
――ああっ! 急がないとこの後の展開は――…!
「キャンベ――」
声を掛けようとした瞬間、女の子たちがマリアの抱えていたバスケットをはたき落とした。
芝生の上に、コロコロとカップケーキが転がって散らばる。
「ああっ」
――前回ならいざ知らず、今回は阻止できたはずなのに!
そう思うと自分に腹が立った。
「――あなたたち! 一体何をしているの!!」
マリアを庇うように女の子たちの前に立ちはだかる。
「ク、クラエス様……」
「これは、あの、貴族として平民に立場をわきまえるようにと指導を……」
こちらの剣幕に青ざめ、動揺する女の子たちを、できる限りの悪役顔で睨みつける。
「大人数で寄ってたかって、貴族令嬢として恥ずかしくないの!?」
ビシッと言ってやると、女の子たちは「申し訳ありませんでした」と口々に言いながら、大慌てで退散していった。
「キャンベルさん、大丈夫? 遅くなってごめんなさい」
「い、いえ、助けてくださり、ありがとうございます」
「本当にひどい娘たちね! 言いがかりだけでなく、食べ物を粗末にするなんて!」
ぷりぷりしながらカップケーキを拾い上げ、ぱくりとかぶりつく。
「クラエス様!?」
――わあ、美味しい~
なんか思い出の味よりも美味しい気がする。
どうしてマリアの作るお菓子は、こんなに美味しいんだろう?
あっという間に1個食べてしまい、2個目に手を伸ばす。
「クラエス様、そんな気を遣っていただかなくても……また今度焼き直しますから…!」
「落ちたのは芝生だし、全然平気よ!」
笑ってみせると、不意に後ろから声を掛けられた。
「――僕にもひとつ、いいですか?」
「ジオルド様!?」
忘れていたが、そういえばこれはジオルドのイベントだっけ。
「ジオルド様! いつからいらしたのですか?」
「キャンベルさんが絡まれているのを見かけて、助けに入ろうとしたところに君が来たのですよ、カタリナ」
最初から見てたんなら、お菓子を落とす前に助けてくれればいいのに。
――ま、落ちたって無駄にはしないけど
2個目にもかぶりついて、口の中に広がる絶妙な優しい甘さとバターの香り、口どけの良さに、自然と笑顔になってしまう。
「美味し~…」
マリアがオロオロと、一生懸命止めようとする。
「あ、あの、地面に落ちたものですので、お二人に召し上がっていただく訳には――」
「――と、キャンベルさんは仰っていますよ、カタリナ?」
「芝生に落ちたから汚れていないし、問題ないわよ! そんな事よりもこのカップケーキ、とっても美味しい!」
ジオルドはなんだか優しい目でこちらを見ると、落ちているカップケーキを拾い上げた。
「では、僕も」
かぷ、と控えめにケーキをかじり、笑顔を見せる。
「……ああ、本当にとっても美味しいですね」
「王子様が拾い食いなんてしていいのですか、ジオルド様?」
「君がそれを言いますか? そもそも、君があまりにも美味しそうに食べるから――」
「それは私のせいではなく、キャンベルさんのお菓子作りの腕がいいからです」
ジオルドはクックッと笑いながら、ケーキをかじる。
なんだかいい雰囲気になったので、止めるのを諦めたマリアと改めて布を敷き、お茶を淹れた。
なぜかティーカップが3つ入っていたので、ジオルドにも渡す。
――う~ん……マリアと二人で、まったりお茶するつもりだったのに……
この世界のジオルドとはまだ、いまいち距離感が掴めずにいる。
なんとなく入学前よりはこちらに興味を示しているような気はするのだけど。
「――カタリナ、君が女子生徒たちを追い払う姿、凛々しく、立派な姿でしたよ」
ふんぞり返って悪役顔で睨みつけただけだけど、と思ったが、隣でうんうんと力強くマリアが頷いてくれているので、素直に受け取る事にしよう。
「クラエス様、先程は本当にありがとうございました」
「お礼なんて言わないで。きっとあの娘たちも、キャンベルさんがこんなに素敵な女の子だって知ったら、仲良くなりたいって絶対に思うんだから」
マリアが耳まで赤くなりながら、嬉しそうに笑う。
「クラエス様がそう仰ってくださるだけで、わたしは幸せです」
――ああ、もう、可愛い! 食べちゃいたいわ!
ふと、ジオルドが私の口元を見て微笑んだ。
「カタリナ、口についていますよ。僕が取ってあげましょう」
そう言って私の唇の端についていたケーキの欠片をつまみ上げ、自分の口元へと運ぶ。
――え、まさかそれ、食べるの!?
ドキドキと見守っていると、横から急に手が伸び、ジオルドの手首を掴んだ。
「――ジオルド様、袖が汚れていらっしゃいますよ」
いつの間にか傍に来ていたキースが、ジオルドの袖をぽんぽんと払う。
その反動で、つまんでいた欠片は芝生に落ちて見えなくなった。きっとその後、蟻さんのおやつになる事だろう。
「キース……また君ですか」
溜め息を吐いたジオルドが、黒い笑顔でキースと相対する。
「せっかくの婚約者との楽しい時間を、邪魔しないでもらいたいですね?」
「おや、それはおかしいですね。その婚約者を、ついこの間まで随分と冷たくあしらっていらっしゃったようですが?」
「そうですね、少し誤解があったようです。ですから今までの分も、これからは大切にしていきたいと思っていますよ」
会話の内容はよく分からないけれど、どうやらキースは私の為に怒ってくれているようだ。
――だけど今はマリアもいるのだし、会話はちゃんとみんなに通じる内容じゃなくちゃ、だめだよね!
「ちょっと二人とも! キャンベルさんのお菓子を味わう気がないのなら、残りは全部、私がいただくのでお帰りください!」
できるだけ怖い顔をして上目遣いで睨みつけると、ひるんだジオルドとキースは少し赤くなりながら、素直に頭を下げる。
「キャンベルさん、騒がしくして申し訳ありませんでした」
「僕もすみませんでした。ご一緒させていただいてもよろしいですか?」
「は、はい、もちろんです。賑やかな方が楽しいですよね」
「あ、でもティーカップが足りないかも――」
キースがすかさず私の隣に座り込む。
「では僕は義姉さんと共用で」
「なっ――」
それを聞いたジオルドが、手にしていたカップケーキを取り落した。
「……キース、君とは少し、話をする必要がありそうですね」
「待ちに待った、読書会~♪」
今日はこれから、ソフィアと約束していた読書会だ。
嬉しくてつい廊下をスキップしていて、向こうから来る人影に気付き、何事もなかったかのように普通に歩く。
――見られてないよね? セーフ!
すれ違う令嬢に、公爵令嬢らしく優雅に会釈をし、見えなくなったところでまたスキップする。
寮の自室に戻り、お願いした通りに部屋が準備されている事に満足して、本棚の蔵書を見回した。
ラインナップが“にわか”っぽいのは仕方がない。集め始めたのが、つい半年前からなのだから。時間も限られていたので、前回読んだけれど絶対もう一度読みたいものばかりを厳選して揃えている。
まあソフィアにも「最近ロマンス小説に目覚めた」って言ってあるし。
今日の参加者は私とソフィアとマリアの三人だけだ。
“読書会”と銘打つからにはもう数人呼ぼうかとも考えたが、この世界のソフィアはかなり内気で内向的なので、初めは少人数で始めた方がいいと思ったからだ。
お菓子はマリアが差し入れると申し出てくれたのでお言葉に甘え、本棚からお気に入りを数冊抜き出して、テーブルに重ねる。
この辺りなら、マリアにも貸して読んでもらっているし、前回のソフィアにも高評価だったから、会話に困る事はないだろう。
うん、と大きく頷いていると、ノックの音がした。
メイドが案内してきたのは、大きなカゴを抱えたマリアだった。
「クラエス様、お招きいただきありがとうございます。これ、少しですがクッキーです」
色々な形をした可愛いクッキーが、カゴに山盛りに入っている。
クッキーが少し小さめなのは、きっと読書しながらつまみやすいようにだろう。
「わあ、可愛い! こんなにたくさん、ありがとう! 焼くの大変だったでしょう?」
「実はわたしも楽しみで、昨日から準備していたんです。ですので、今日は焼くだけだったのでそんなに大変ではなかったです」
「大切に、美味しくいただきます」
そっとカゴをテーブルに置いたタイミングで、再びノックの音がする。
ソフィア、来たかな?
「ようこそ、アスカル――…」
ソフィアの後ろから一緒に入ってきたニコルを見て、思わず言葉が途切れてしまう。
「あ、あの……お招きいただき、ありがとうございます。それと、兄の――」
――ああ~そっかぁ……今までのカタリナの素行が悪いから……
いじめられたりするのではないかと心配で、お兄ちゃんがついてきたのだろう。
「突然の訪問、申し訳ありません。ソフィアの兄の、ニコル・アスカルトです」
間近で久しぶりに見るニコルの魔性の魅力に、クラクラしてしまうのを必死で抑える。
「あ、はい! 存じておりますわ、生徒会長。カタリナ・クラエスです」
「本日は読書会という事で妹が招待を受けておりましたが、これまであまり人付き合いをしてこなかった為、少し不安でしたので不躾を承知で同伴いたしました」
「いえ、アスカルト様――ソフィア様が安心して楽しんでいただけるのであれば、私は別に構いませんわ。キャンベルさんも大丈夫よね? 生徒会で、もう顔を合わせているだろうし」
「はい、わたしも構いません」
「あ、でも――会長が退屈なのでは? ロマンス小説は読まれるのですか?」
「いいえ、あまり……」
「そうですか……」
うーん。女の子三人の中に男子ひとり、しかも無口なニコル。間が持たないし、そもそもまだ女子三人だってそんなに仲良くなれていないのに――…。
「あ! 閃きましたわ! でしたら義弟も呼びますね。男性ひとりでは会長も肩身が狭いでしょうし。三人とも義弟のキースはご存じですよね?」
クッキーを生贄に、キースを召喚! ――という訳で、メイドにキースを呼んでくるように頼み、銘々好きな椅子に掛けてもらう。
お茶が行き渡ったところで、こほん、と咳払いをした。
「アスカルト様が二人いらっしゃるので、ソフィア様、ニコル様とお呼びしてもよろしいでしょうか? もちろん、私もカタリナとお呼びください」
「あ……はい……」
「どうぞ、カタリナ様」
マリアがおずおずと手を上げた。
「あの、わたしもカタリナ様とお呼びしても……?」
「もちろん! 私も、マリアさんと呼んでもいいかな?」
「あの、でしたら……わたしの事はぜひ、さん付けではなくマリアと――」
「本当? ありがとう、マリア! ――ソフィア様もよろしくお願いしますね!」
今までの癖でつい名前で呼びそうになってしまっていたけれど、これで少し近づく事ができた。
先程から少しそわそわとしていたソフィアが「あの……」と本棚を指す。
「見てもよろしいでしょうか、カタリナ様?」
「もちろんですわ! 読書会ですもの。それにどんな本を読んでいるのかって気になりますよね」
「では、お言葉に甘えて」
つい、と立って行ったソフィアが本棚を眺め始めた。
「――これは全て、カタリナ様がお選びに?」
なんだか驚きとウキウキが交じったような顔で振り返る。
「え? ええ、お気に入りだけを厳選して実家から持ってきました」
「これも――これも。本当に面白いものばかり。わたくしと趣味が合いそうですわ」
ソフィアがふわりと笑う。この部屋に来て、初めて見せた笑顔だった。
「――――…」
ニコルが少し驚いたようにハッとし、こちらを見る。
「そう言ってもらえると嬉しいですわ。ソフィア様のお好みはどんなものなのですか?」
「わたくしは――」
指を折りながら作品名を上げるソフィアはもう、部屋に入ってきた時の不安そうな様子は全くない。
楽しそうに本の話をするソフィアに、マリアも巻き込む。
「あ、それでしたら――マリアもこの前読んで、“面白い”って言っていたよね」
「まあ、マリアさんはどのシーンがお気に召しました?」
「えっと……伯爵と主人公が月夜のバルコニーでダンスを踊るところがドキドキしました」
三人できゃあっと沸く。
――よかった……この世界のソフィアも変わらない……
久しぶりに前回のようにソフィアと話せて、涙が出そうになる。
その後キースが合流してからはニコルの相手をしてもらい、読書会なのに本も読まずに女子トークで盛り上がった。
ソフィアとはかなり打ち解けられた気がする。マリアとも仲良くなれたみたいで、友人と楽しそうにする姿をニコルに見せる事ができてよかったと胸を撫で下ろす。
――急にニコルが来た時にはどうなる事かと思ったけれど……
結果オーライだ。
ソフィアとはまたこの三人で集まる事を約束し、マリアには数冊お気に入りを押し付けて、会はお開きとなる。
「……カタリナ様」
帰り際、ニコルに話しかけられた。
「は、はい?」
「……………」
「あの……ニコル様?」
そのまま黙ってジッと目を見つめられる。
黒い瞳に映る自分を見上げ、なんだろうと思いながら見つめ返していると、数十秒後、ようやく解放される。
あと数秒見つめ続けられたら、魔性の魅力に当てられてひっくり返っていたかも……。
「君は……大丈夫そうだね」
ニコルは呟くとフッと息を吐き、改まった様子で手を取った。
「ご相談があるのですが――」
ドキドキしながら、生徒会室の扉をノックする。
すぐに扉が開き、ニコルが出迎えてくれた。
ほんの少しだけ寂しい気持ちになる。
前回はいつも、シリウス会長が――ラファエルが優しい笑顔で出迎えてくれたのに……。
――ラファエル、元気にしてるかな……
きっと魔法省で頑張っていると思うけれど、今の私には確かめようがない。
つい思考が別の方向へ行きかけて、慌てて頭を振る。
ニコルが生徒会メンバーを呼び集めた。
「皆、少しいいかな? ――以前から話している通り、今回の生徒会は優秀な一年生がたくさん入ってくれたけれど、二年生が俺ひとりなので圧倒的に人が足りていない。なので彼女に補助員として手伝ってもらえるようお願いした。もちろん教師の許可は取ってある」
この前の読書会でニコルに持ち掛けられた“相談”。
前回も生徒会の二年生はたった二人だったけれど、バリバリと大量の仕事をこなしていたラファエルがいなくなり、ニコルひとりでは人手が足りないらしい。
そこで今回は特別に補助員として生徒を生徒会に勧誘する許可を得て、次点の生徒たちにお願いしていたが、ニコル耐性がない為に皆仕事にならず、数日で辞退してしまったそうだ。
だからニコルは、自分が傍にいても様子がおかしくならず、見つめても卒倒しない生徒を探していた。
それにたぶんだけど、ソフィアと仲良くできる人間である事も条件に入れていたのだと思う。
そういう訳で、私に白羽の矢が立ったのだった。
ちなみに入学試験の結果は79位で前回よりもひとつだけ上がったが、平均点に変わりなく、逆に自分で感心してしまった。
もしかしてこれが、“強制力”ってやつ? とも思ったが、たぶん違うだろう。
破滅エンド回避の為の準備が忙しかったのと、一度受けた試験だし余裕! とあまり勉強していなかったせいだ。
――とにかく、前回と同じように生徒会室に自由に出入りできるのは、なんか嬉しい!
とはいえ、前回とは違い、生徒会室の雰囲気はあまりよくない。
アランはジオルドと仲が悪い上にマリアの事をライバル視してしょっちゅう突っかかっているし、アランに惹かれているこの世界のメアリは、そんなマリアをあまりよく思っていない。
それになぜかキースは、私に近づこうとするジオルドをことごとく追い払う。
たぶん、“本当は結婚したくない”と私が言ってしまったから、気を遣ってくれているのだろう。
「ぅはあ~~…疲れたぁ~…」
ギクシャクとした空気の中でなんとか初日を終え、寮のベッドに身体を投げ出す。
前回の楽しくて和やかな雰囲気を知っているだけに、なんだかやたらと応えてしまった。
冷静に考えてみれば、これがゲーム通りの空気なのだろうとも思うが、このままの雰囲気で一年を過ごす事を考えると気が重い。
結局ニコルとは関わってしまったし、生徒会を手伝っていれば自然とアランとも絡む事になる。
二人に関わらずにいく事は不可能なので、ここはもう潔く首を突っ込んでいく事にしてもいいのかもしれない。
――でも、どうしたらいいのかな……
アランとジオルド。アランとマリア。マリアとメアリ。
でもマリアとメアリがよそよそしいのはアランがマリアに絡むからで、結局どれもアランが関わっている。
「やっぱり……アランをどうにかしなきゃ?」
そもそも、なんでアランはあんな感じになっちゃったんだっけ?
確か、ジオルドに対する劣等感が原因でひねくれてしまったはずだ。
という事は、まずはアランに自信をつけさせないといけない?
「……いやでも、“自信”って、どうやったらつくんだろ?」
前回だって、どうして急にアランとジオルドが普通に話すようになったのか、よく分からなかったし。
――そういや、ジオルドが蛇のおもちゃで驚いた姿を見て、大笑いしてたような……
あれでアランはジオルドに対して親近感を持ったのかな?
でも子供の頃の話だし、今回同じ事をやっても同じ結果になるとは思えない。
っていうか今やったら、不敬罪で国外追放になる可能性のが高くない!?
「うーん……ジオルドを貶めるんじゃなく、もっと何か別の方法で……」
なら、ジオルドにもう少しアランと仲良くなるように言って―――いや、そんなんで仲良くなれるんならとっくになっているだろう。
じゃあ、マリアに? なんて言う?
アランと話さないように? ―――アランの方から絡んでいるのに、それも王子が話しかけているのに無視するなんて身分的にも性格的にもマリアには難しいだろう。
アランと親しくならないように? ―――でもそれは、マリアが決める事だ。
「それなら……メアリに――」
でも私、メアリに嫌われちゃってるしなぁ……。
「――ん?」
あれ? マリアとメアリが普通に仲良くなればいいだけじゃない?
アランをどうにかするのが難しいんだったら、女子同士の仲から手をつければいい。
マリアがアランルートに入るのかは分からないし、別に仲良くなる事自体は問題ないのでは!?
そうだよね。前回だって仲良くしていたんだから、難しい事じゃないはず。
ガバッとベッドから起き上がって、拳を振り上げる。
「よし! そうと決まれば、女子会よー!!」
今回一番気に入っているところは”クッキーを生贄に、キースを召喚!”です。
(;゚Д゚) ホンスジトカンケイナイトコ!
ちなみに、カップケーキ拾い食いのシーンで、ティーカップが3つ用意されていたのは、キースに懐柔されているメイドが気を利かせたからです。(キースが後から駆け付けたのも)