乙女ゲームのR-18ルートに突入してしまった… 《もしかしたら あったかもしれない『はめふら』R-18ルート》 作:帆速やこぬ
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「ただいま~」
「おかえり、義姉さん」
メアリの屋敷でのお泊り会から帰宅すると、キースが真っ先に出迎えてくれた。
「昨日は楽しめた?」
「うん……それがね、ピクニックの疲れが残ってたのか、お風呂に入ったら寝ちゃったらしくて……。目が覚めたら朝だったんだよね」
「義姉さんは一度寝るとなかなか起きないからね。メアリ、がっかりしてたんじゃない?」
「そうなの。悪い事しちゃった。今度何か埋め合わせしないと」
夕方から、夕食も食べずに朝まで寝てしまったとメアリに聞かされて、そんなに疲れていたのかとびっくりした。
そういえば、変な夢を見たもんな……。
メアリに媚薬を盛られて、エッチな事をされる夢。そういえば、アランも加えた3Pの夢も見た気がする。ジオルド、キースに続いて、メアリとアランとなんて、あまりに変態過ぎる夢に、さっき思い出した時は身をよじって悶えてしまった。
それに、お泊り会を楽しみにしていたメアリにあまりに申し訳なくて、迎えの馬車に乗り込むまでいっぱい謝ったが、意外にも、当のメアリはそんなに気にしていないみたいなのが救いだった。
“お気になさらないでください。そういう時もありますわ”
“きっとピクニックやお茶会でお疲れだったのですわ”
“また今度、ソフィア様とマリアさんも一緒に、お泊り会をしましょうね”
メアリは本当に優しいな。
昨日はメアリを慰めてあげなくちゃいけなかったのに。
「それで義姉さん、今日はどうするの?」
「ソフィアのお見舞いに行こうかと思ってて……」
「……やあ、カタリナ」
アスカルト邸の応接室に通され待っていると、ノックの音がし、入ってきたのはニコルだった。
「ごきげんよう、ニコル様。ソフィアの具合はいかがですか? あ、これお見舞いのお花と果物です」
お見舞いの品を受け取りながら、ニコルは微笑んだ。
「ありがとう。ソフィアも喜ぶよ」
「熱が出たと聞いたのですけど、下がりました?」
「それなんだが……」
ニコルが深い溜め息を吐きながら、窓の外に目線を外す。なんだか顔色がよくない。
「――天気もいいし、少し庭を歩こうか」
「昨日……いや、もう一昨日か、皆で出掛けただろう?」
「はい」
白やピンク、赤紫の秋桜の揺れる花壇を眺められるベンチに並んで座り、ニコルは事の顛末を聞かせてくれた。
きっかけは、一昨日のピクニックでの事。
私たちは森の中を散策中、もう使われていない古いお屋敷を見つけた。
探検と称して中に入り込み、だいぶ痛んで一足ごとにギシギシと軋む廊下を進んだその奥の部屋に、蓋の閉められた大きな長持があった。
長持はさながら棺桶のようで、誰かが「開けてみよう」と言い出した。
ちょうどその時太陽が陰ったせいで部屋が薄暗くなり、何とも言えない雰囲気で、開いたら出てきてはいけないものが出てきそうだった為、誰も率先して開けようとはしなかった。
誰が開けるかで譲り合いの応酬となり、最終的には意地を張ったアランが開ける事になった。
結局長持の中は空っぽだったのだが、その一連の出来事がインスピレーションになり、帰宅したソフィアは魅了の力を持つ吸血鬼の王子が永い眠りから蘇り、血と真実の愛を求める話を徹夜で執筆していたのだと言う。
そう、確かにあの時、突然ソフィアは「降りてきましたわ!」と目を輝かせ、帰るまで何かそわそわとしていた。
それがまさか、小説を書くのに夢中になって徹夜し、寝不足でお茶会を欠席していたのだとは。
しかも憑りつかれたような妹の様子が心配でずっと傍で見守っていた為、ニコルもほとんど寝ていないらしい。
ソフィアは一昨日帰ってから昨日の朝まで書き続けて、午後に少し仮眠をしただけでまた昨日の夜も書いていたそうだ。
「でもよかった」
「よかった?」
「ソフィアが熱を出して苦しんでいるのではなくて、よかったです」
ニコルの驚いた顔が微笑みに変わる。
「ああ……そうだな」
なんとなく会話が途切れ、もともと無口なニコルは話し疲れたように小さく息を吐く。
ソフィアの具合が悪い訳ではないと分かってホッとしながら、しばし暖かな日差しと少し涼しくて気持ちがいい秋の風に身を任せる。
昨日寝過ぎたせいか、それとも変な夢を見たせいか、今朝からなんだか少しだるくて身体がふわふわしている感じがする。
ソフィアが眠っているなら、私はおいとました方がいいかな……。
そんな事を考えていると、ニコルがゆっくりと肩に顔を寄せてきた。
「!!?」
――ええ!? 何?
固まる私に対し、ニコルからはなんのリアクションもない。
やがてニコルのスウスウと穏やかな息遣いが聞こえてきて、理解した。
――眠ってる……
そりゃ無理もないよね。ソフィアに付き合ってずっと起きていたんだから。
納得しつつも、眠ってさえ魔性の魅力が健在のニコルの寝息は、耳元で聞こえるだけで心臓に悪い。ちょっと体勢を変えさせてもらおう……。
起こさないようにそっとニコルの肩を支えて、太ももに頭を乗せる。
――わあ……睫毛長―い。髪サラサラ。肌もスベスベ……
綺麗な顔に見惚れていると、ふと、ニコルが眉をしかめた。
――あ、木漏れ日が眩しいのかな?
ニコルの目を片手で覆ってあげると、ニコルはしかめた眉を戻し、また安心したように眠り始めた。
――いつの間にか眠ってしまっていた…?
カタリナと話していて、つい気が緩んだようだ。
目元を覆う温かな感触を持ち上げ、それがカタリナの手だと気付く。
目の前に、彼女の眠っている顔があった。ほんの少し身体を動かすだけで口づけできてしまいそうな近さ。
そう気付いてしまった瞬間、ドキリと心臓が音を立てる。
――何を考えているんだ。カタリナはジオルドの婚約者だぞ
自戒しつつ、それでも頭に感じる太ももの感触に、ずっとこうしていたいと願ってしまう。
いや、それはともかく、なぜ俺はカタリナに膝枕をしてもらっているのだろう?
気持ちよさそうに眠る彼女の寝顔を眺め、そっと目を覆ってくれていた手を握った。
――少しだけ……
カタリナの指にキスをし、手を伸ばして頬に触れる。
そのまま、柔らかな唇に触れ、慌てて手を引っ込めた。
彼女は全く目を覚ます気配がない。
起こさないようにゆっくり起き上がり、無防備過ぎるカタリナの横顔を見つめる。
彼女の顎を軽く持ち上げると寝息の漏れる口元が微かに開いた。
――確かめたい
指にまだ残る唇の感触を。
今、静かな庭にその衝動を抑えつける者は誰もいない。
そっと顔を寄せ、あと少しで唇が触れるという瞬間、強い風が吹いて秋桜の花びらを巻き上げた――。
「……お兄様の意気地なし!」
双眼鏡を覗きながら歯噛みする。
カタリナ様がお見舞いにいらしたとメイドが伝えてくれた為、窓からお兄様とカタリナ様が庭を歩く姿を見守っていたけれど、もう少しでキス、という瞬間にお兄様は身を引いてしまわれた。
家族以外にはあまり表情を変化させないお兄様も、カタリナ様は特別。
二人並んで歩くお姿は、恋人と言っても差し支えない仲睦まじいご様子で、妹としてはなんとしてでもお兄様の恋を成就させたい。
――ここはやはり、わたくしが一肌脱がないといけないようですわね!
でもどうしたらお二人に、一線を越えさせる事ができるかしら…?
周りを見回し、机の上に書き散らかした小説の原稿に目を留める。
「そうだわ!」
原稿を手に取り、目を走らせる。
「これ…ではないわ……ええっと……」
目当ての箇所を見つけると、急いで机に座り、ペンにインクをつけた。
「ここを、こうして……」
頭の中で描いた脚本に使う小道具が出来上がる。
「さあ、こうしてはいられませんわ!」
この勢いで、他に必要になりそうなものを揃えてしまいましょう!
「……ソフィア、あなた才能あるんじゃない!?」
応接室でお兄様と一緒にお茶を飲んでいたカタリナ様にお願いをして、書きかけの小説を読んでいただく。
原稿を最後まで読んだカタリナ様は、興奮で紅潮した顔を上げる。
「面白い! 凄く面白いよ、ソフィア!」
「ありがとうございます」
褒められれば素直に嬉しい。それが大好きなカタリナ様の言葉であればなおさらだ。
「ですが、実はこの後、登場人物二人がどういうやり取りをするかで、迷っていて……」
さあソフィア、ここからが演技の見せどころよ。お兄様の為にも頑張らなくては!
カタリナ様の手を取り、グッと迫る。
「そこで、カタリナ様にお願いがあるのです」
「――これを、お嬢様に?」
蔵書室の前で困惑の表情を浮かべるアンに、駄目押しの一言を付け加える。
「カタリナ様の許可は取っていますので」
「……かしこまりました」
アンは一礼すると、衣装を抱えて蔵書室の中に入っていった。
アンが戸惑うのも無理はない。これから、部屋の中で待っているカタリナ様にドレスを脱いでいただき、渡した衣装――下着になってもらうのだから。
純白の下着は、上は胸元で細いリボンを結ぶサテン地のベビードール、下は左右で紐を結ぶタイプで、たっぷりとオーガンジーのフリルが付いた可愛らしいデザイン。揃いのフリルの付いた絹の靴下とレースのガーターベルトもあり、まるで砂糖菓子を纏っているかのような特別感がある。
いつか着たいと思って背伸びして購入したものだったが、さすがに子供体形のわたくしには似合わなくて、時々取り出しては眺め、溜め息と共に引き出しに仕舞い込んでいたものだ。
サイズも大き目だった為、カタリナ様にはぴったりのはず。
先程カタリナ様に読んでいただいた小説では、吸血鬼に囚われたヒロインが、脱いだドレスにシーツなどで詰め物をした人形を身代わりにし、城からの脱出を試みるもののあえなく捕まってしまうところで止まっている。
本当はここでハラハラドキドキの脱出劇を演じたヒロインが間一髪で逃げおおせる場面を書いていたのだけれど、お兄様とカタリナ様の仲を進展させる為に急遽書き換えたのだ。
扉の外で待っていると、程なくアンが出てきた。
さすがはアン。手早い。
彼女には別室に控えてもらい、部屋に入る。
落ち着かない様子のカタリナ様が、両腕を抱くようにして振り返った。
「ソ、ソフィア! この恰好、凄く恥ずかしいのだけれど……」
純白のベビードールを纏ったカタリナ様は本当に綺麗で、光にうっすらと透ける身体のラインは女のわたくしが見てもドキリとしてしまう。
「とってもお似合いです! 思った通り、いいえ、思った以上ですわ!」
「そ、そう? ところで、その手に持っている短いベルトは何?」
小道具に使えそうなものを雑多に放り込まれた箱の中からそれを取り出すと、カタリナ様は不思議そうに目を留める。
「これは小説のひらめきを得る為の小道具ですわ」
「あの……ソフィア? 私、今どうなっているの…?」
書きかけの小説の続きをどう展開させるか、二つの案で迷っているというソフィアにお願いされて渡された衣装に着替えたものの、ひらひらとした純白の下着はなんだかとても気恥ずかしい。
子供の頃からの親友で、ロマンス小説仲間でもあるソフィアの頼みであれば、一肌でも二肌でも脱ぎたいとは思うけれども、まさか本当にドレスを脱ぐとは思わなかった。
ソフィアは私を椅子に座らせると、短いベルトを手首に取り付ける。
なるほど。手首に着けるものなのね。
「カタリナ様、申し訳ありませんが、少し腕を上げていただいてもよろしいですか?」
「こう?」
両方の手首に着けたベルトの間は短い鎖で繋がっていて、ソフィアはその鎖を椅子の背もたれの上部の飾り部分に引っ掛けた。
「……あれ?」
いつの間にか足首にも着けられたそれで椅子の脚に固定されていて、動けなくなっている。
「ねえ、ソフィア? 動けないのだけれど……」
「それでいいのですわ。カタリナ様にはこれから、どう感じてどうしたいと思ったかを教えていただきたいのです。カタリナ様の希望が、物語を動かしていくのです!」
「うん、それは聞いたけど……」
さすがにここまで本格的にやるとは思ってなかった。
まあ、いいか。ソフィアの才能を開花させる手伝いができると思えば、多少の恥ずかしい思いなど安いものだ。
「では、このまま少しだけお待ちくださいね」
「え!? ちょっ、ソフィア!?」
部屋を出ていった、と思うとパタパタと足音がして、すぐにソフィアは戻ってきた。
「お待たせしました、カタリナ様!」
「全然――」
待たされてないよ、と言おうとしたところに、ニコルの驚く声が被る。
「カタリナ!? なんて恰好を…!」
「え!? ニコル様!? ソフィア、どうして!?」
私、ほとんど下着なんですけど! っていうか、椅子に拘束されちゃってるんですけど!?
反射的に身体を隠そうとしたが、腕も脚も固定されてしまい動かせない。わずかに膝を閉じられただけだ。
「だって相手役が必要でしょう? 魅了の力を持つ吸血鬼の役ならお兄様をおいて他にありませんわ!」
えええ!? 相手役はソフィアがやるんじゃないの!?
「あの、あのね、ソフィア。さすがに私もニコル様の前でこの格好は恥ずかしいし、貴族令嬢として殿方の前でこの恰好は、色々とまずい気がするのだけど」
「どうしても……駄目、ですか?」
ソフィアが凄く悲しそうにする。
「そう…ですわよね……我儘を言って申し訳ありませんでした。カタリナ様に褒めていただけた事が嬉しくて、つい調子に乗ってしまいました」
しゅん、とうつむいてしまったソフィアはこちらに近づくと、しゃがみ込んで足首と椅子の脚を固定している拘束具を外し始めた。その悲しそうな姿にとてつもない罪悪感を覚える。
「あ……」
ええい、仕方がない! 可愛いソフィアの為だ!
「だ、大丈夫よ、ソフィア! このまま続けて」
見上げるソフィアの顔が、ぱあっと輝く。
「本当ですか! ありがとうございます、カタリナ様!」
「では、お兄様。このセリフを読んでください」
「……本当に、これを言うのか…?」
「もちろんですわ」
「だが……」
渋るニコルに、ソフィアが声を潜める。
「お兄様は来年の春には卒業なのですから、数少ない機会を最大限に活かさなくては!」
「………」
ニコルは溜め息を押し殺すと、上着を脱いで傍らの椅子の背に掛け、シャツの首元のボタンを外して緩めた。
「カタリナ様、役になりきっていただく為に、お兄様のセリフ中のヒロインの名前は“カタリナ”と呼ばせていただきます。カタリナ様もどうか、セリフを返す時はお兄様の名前を呼んでください。舞台は、吸血鬼の王子が住まう古城の一室。逃げようとして捕まってしまったヒロインは王子に拘束されてしまいます。王子に告げられる愛がひたむきな愛がよいか、狂気の愛かで迷っていますので、両方をお兄様に演じていただきます。カタリナ様は、どちらがより胸に響いたか、お教えください。――では、ひとつ目の案です」
ニコルが前に立つ気配がした。
「カタリナ――」
憂いを含む、涼しくて優しい声。いつもこの声で呼ばれ見つめられると、心が浮足立ち、穏やかではいられなくなってしまう。
「――あなたを愛している」
――ひぁえええええ…!!
小説のセリフだと分かっていても、思わず卒倒しそうになる。
「初めて出会い惹かれた日から、ずっとあなただけを見つめてきた」
まるで本当に愛を告白されているように感じてしまうのは、ニコルの魔性の魅力のせいだろうか?
「いつもキラキラと輝くあなたは、どんな人波の中からでもすぐに見つけ出す事ができた」
ひとつセリフを言う度に、少しずつニコルが近くなってくる。
「あなたを見ているだけでこの胸は高鳴り、言葉を交わせば温かなもので満たされた」
ニコルは椅子に圧し掛かるように、私の膝の間に片膝をついた。
――近い近い近い近い!
「例えあなたが別の人と結ばれる運命なのだとしても、俺は一生、あなたを愛し続けるだろう」
最後は耳元に囁くように。
「愛している、カタリナ。誰よりも、心から」
完全に不意打ちで、腰が抜けてしまいそうだ。
「だから、どうか逃げないで。今だけでも、傍にいて欲しい」
もう……だめ…!
「――こちらがひとつ目です。いかがでしたか? カタリナ様――カタリナ様?」
「~~~~~~」
「カタリナ?」
心配そうに覗き込むニコルとソフィア。
「あ……大丈夫……」
やばい……ちょっと意識が飛んでた……。
ソフィアは少し考え込む表情をし、閃いたように小道具の箱から何かを取り出した。
「カタリナ様、次はこれを着けましょう」
「アイマスク…?」
「これで目隠しすれば、落ち着いてセリフに集中できると思います」
「うん……そうだね」
この恰好で目隠しまでするのはかなり恥ずかしいけど、ニコル相手ではそのくらいしないと次のセリフもちゃんと聞けないかもしれない。一度引き受けた以上は、最後まできちんとやり遂げないといけないよね。
ソフィアにアイマスクを着けてもらい、深呼吸する。
「ではカタリナ様、お兄様。次の案にいってもよろしいでしょうか?」
――大丈夫かなあ。これ以上ニコルの魔性の魅力に当てられて……
不安に思いつつ頷くと、ニコルも頷く気配がした。
カタリナは、花だった。
手を伸ばせば届くのに、決して触れる事のできない柵の向こうに咲く、花。
ただ眺める事しかできず、手折る事は許されない。
もとより、地に根を張りどんな時も楽しそうに風に揺れる彼女を無粋に手折る気などないが、それが許された唯一の人間――婚約者であるジオルドは俺の幼馴染みだ。
友人を裏切る事もできず、さりとて彼女への気持ちを止める事もできない。
会う度に想いは募り、とっくに彼女以外の女性は目に入らない。婚約者がいて当然のこの歳で、見合いすらした事がないのは自分くらいのものだろう。
考えないようにしてきたカタリナへの想い。
ソフィアの書いた台本は、それをそっくり言葉にしたものだった。
さすがは妹。よく見ている。
演技などした事はないが、セリフというにはあまりに実感のこもった言葉は、演技をする必要などないほど自然に口から出てきた。
“愛している”と、“傍にいたい”と、彼女に伝える事ができて満足だった。
正直に言えば、今のカタリナの白い下着で拘束された姿は目のやり場に困るものだが、それでも綺麗な身体を少しでも目に焼き付けようとしている自分がいる。
光沢のある純白の生地は柔らかな丸みを帯びた乳房に添い、その中心にツンと尖った突起を露わにしている。胸元で結んだリボンからたっぷりと縁どられたフリルの裾が腰まで落ち、そこからカタリナが身動きする度チラチラと覗く腹部やへそ、下半身をわずかに覆う下着、太ももまで剥き出しになった肌は滑らかに光っていて、普段ドレスに隠されている部分にドキリとしてしまう。そして拘束具で椅子に固定されている姿は、否が応にも淫らな想像を掻き立てられる。
彼女の綺麗な水色の瞳は目隠しのせいで今は見えないが、その分、ぷるんとした唇が無防備にさらされていた。本当に、なんの抵抗もなく口づけできてしまえるほどに。
もしソフィアが傍で見守っていなければ、理性を保てずに唇だけでなくカタリナの全てを奪っていたかもしれない。
――いや、たぶん無理だ
自嘲気味に笑う。
さっき誰も見ていない庭ですら何もできなかったのだ。
ソフィアがいなくても手を出す事などできないだろう。
大切に思っているからという理由だけではない。友人を取るか、愛する人を取るか、ただ決断できずにいるのだ。
自分の優柔不断さと意気地のなさに嫌気が差す。
おそらくソフィアはそんな兄を心配し、応援のつもりでこんな事を始めたのだろう。
「さ、お兄様」
促され、小説をめくって次のセリフを確認し、少々戸惑う。
ソフィアがこの後、何を期待しているのかが分からない。
このまま抵抗する事のできないカタリナに手を出す事を望んでいるのなら、それはない。
王子の婚約者。
公爵家の令嬢である彼女に、王族に連なる機会を破棄させてまで差し出せるものが、自分にはない。
そう……もし彼女と結ばれる可能性があるとすれば、それはただひとつ。
カタリナ自身が俺を愛し、望んでくれる以外に道はない。
だがカタリナが誰かひとりを選ぶという事は、それ以外の人間の絶望を意味する。
彼女を愛しているのはジオルドだけではない。
カタリナを中心にした幼馴染みたち。皆、彼女を愛している。
普通に接してくれる数少ない友人たちを蹴落としてまで出し抜きたいかと言われれば、そこまでを望まない自分がいるのもまた事実だった。
「――俺のもとから逃げ出すとは、どんな仕置きが必要かな?」
ト書きには“静かな怒りを込めて”とあるが、さすがにそんな難しい演技はできない。仕方がないのでカタリナの耳元で抑え気味に言ってみた。途端にピクンと反応したので、よい演技だったのかもしれない。
首筋からだろうか、耳元に屈むと甘い香りがし、深く吸い込みたい誘惑に駆られる。先程キスを我慢したのだ。このくらいはいいだろうと自分を許す事にした。
「二度と俺から離れられぬように縛り、その身体にたっぷりと刻み付けてやろう」
そもそも、どうしてソフィアが拘束具などを持っているのか。
ちらりとよぎったが、とりあえずは演技を進める。
カタリナのしどけない姿に動揺して追及できなかったが、後できちんと、なぜこんな物がここにあるのかを問いたださねば。
「その美しい瞳も唇もしなやかな身体も、声も視線も血の一滴に至るまで、お前の全ては俺のものだ」
カタリナが喘ぐように息を吐く。
「なぜ、逃げ出したのだ? そんなに……俺が嫌か? 俺の言葉が信じられぬか? 答えろ、カタリナ」
「……いいえ、そんな事は」
「俺の愛が受け入れられぬか?」
「いいえ――いいえ、ニコル様」
「どうしたらお前は、俺を愛してくれるのだ? どうすれば、ずっと傍にいてくれる?」
「…………」
「そうだな……もう、待つのはやめよう。心が手に入らぬというのなら、その身体から奪ってしまう事にしよう――…」
「これがもうひとつの案です。どちらにしようか迷っているのです。カタリナ様でしたらどちらがお好みですか? どちらでお兄様に迫られたら嬉しいですか?」
さあ、どうです、カタリナ様?
お兄様に真っ直ぐに愛を囁かれ、純粋に求められるのがお好みか、それとも強引に迫られるのがお好みか。
特に2番目のお兄様の演技はずっとカタリナ様の耳元で囁かれていて、カタリナ様もずっとそわそわと膝を動かしていた。
これはだいぶ、カタリナ様をその気にさせる事ができたのでは?
それに敢えて、お兄様の気持ちを代弁するようなセリフにしたのだ。こういう事が苦手なお兄様でも気持ちを込めてセリフを口にできたはず。
これで少しでもカタリナ様が、お兄様を意識し始めてくれれば。
お兄様とカタリナ様がお付き合いし、そのまま結婚されれば、わたしは大好きなカタリナ様の義理の妹という事になる。
家族になり、ずっとお傍にいられるのだ。
想像しただけで幸せ過ぎて、眩暈を起こしそうになる。
「――カタリナ様?」
目隠しを外そうと近づき、カタリナ様の異変に気が付く。
光沢のある生地のベビードールは、明らかに演技を始める前までと違うはっきりとした突起がツンを張っている。そして純白の下着の股間には、シミができていた。
「まぁお兄様、見てください!」
意図せずして自分の想いを口にしたのが恥ずかしかったらしく、後ろを向いていたお兄様が振り返る。
「カタリナ様、お兄様の演技でこんなに感じてくださっていますよ」
思わず、といった感じでお兄様の視線がカタリナ様の身体を撫で、一点で留まる。
「ま、待ってソフィア! これは、その、違うの…!」
カタリナ様は一生懸命身をよじるが、拘束されているので隠しようがない。
「―――…」
顔を赤らめながらも視線を外せずにいるお兄様を見て、ここは強引にでも押し進めようと決心する。
「ちょうどいいですわ、お兄様。もっといっぱいカタリナ様を感じさせて差し上げましょう」
ここは目を逸らし、見ないようにするのがマナー。そう分かってはいても、カタリナの姿から目が離せない。
――いつも溌溂と明るいカタリナが、下半身を濡らしている……
その事実にドクドクと心臓が鳴った。
彼女も息が乱れ、頬が赤い。
普段なら絶対にしない、いや、できないだろうが、相手が拘束されて動けず目隠しをしているからか、それとも隠してきた気持ちを口に出してしまったからか、一歩踏み出してもいいのではという気になっていた。
気付けば再びカタリナの太ももの間に膝をつき、耳元で囁いていた。
「――カタリナ」
カタリナがビクリと身をすくませる。
「どうして、濡れているの? セリフの内容に? それとも耳元でずっと囁いていたから?」
「あの、ニコル様、違うんです、これはその……そう、汗です。ちょっと汗をかいてしまって……」
「そうなのか? じゃあ、確かめてみよう」
「お手伝いいたしますわ」
目隠しで状況が分からないカタリナが抵抗する間もなく、ソフィアは手際よく足首の拘束を外すと、肘掛に脚を跨がせた。
そしてコソッと、聞き間違いかと思う言葉を耳打ちする。
「お兄様、目隠しをすると、感度が上がるそうですよ」
――カンド? ……感度!?
どこでそんな言葉を覚えた。いや、ロマンス小説だろうと想像はつくが。
「え? え?」
カタリナは椅子の上で秘部を突き出す格好になっている。
「お兄様、カタリナ様のお尻を少し前にずらして差し上げると、やりやすいのでは?」
「……ああ」
カタリナの腰を掴んで座面の前にずらすと、浅く腰掛けた状態で突き出された秘部が一層広がった。ジワリとシミが大きくなる。
「どうやって確かめようか、カタリナ? とりあえず触れてみようか」
「や…! だめです、ニコル様! そんなところに触れないで!」
だめ、と言いながらも下着のシミはどんどん大きくなっていく。
「汗なら恥ずかしがる事はないだろう、カタリナ?」
シミの部分を指で押すと、ぷちゅっと音を立てる。
「ひぁっ…!?」
カタリナの甘い喘ぎを聞きながら、秘部の柔らかな感触を楽しむように指をうずめる。
んっ、んっ、と押し殺した息を漏らすカタリナの声が聞きたくて、生地を突き破ろうとでもするように肉の割れ目に添って指を突き立てた。
濡れた下着は隠された秘部の奥を暴くように透け、ひだの間に食い込んで割れ目が露わになる。
「お兄様、いかがですか?」
「……透明な体液がどんどん溢れてくるようだが、下着越しだとよく分からないな。直接触れてみないと」
「この紐を引けば、簡単に脱がす事ができますわ」
ソフィアがわくわくと目を輝かせながらアドバイスする。
止めもせず、むしろ積極的に加担する妹にどんな態度を取ればいいか一瞬悩むが、それを察知したソフィアが先回りするように耳打ちした。
「わたくしにとってはどんな経験も、小説に活かす事のできるかけがえのないものなのです。だからどうか最後まで見守らせてください、お兄様!」
「……ソフィア、カタリナの目隠し、外してくれるか?」
「はい」
視界が急に明るくなり、一瞬、何も見えない。
もともとそれほど明るい部屋ではなかったので、目はすぐに慣れた。
だけど目の前で繰り広げられる光景は、1時間前までは想像もできないものだった。
――どうして、こんな事に?
椅子に拘束され、これ以上開かないくらい脚を広げて下半身を突き出し、そこにニコルがしゃがみ込んでいて、ソフィアも目を輝かせて覗き込んでいる。
ニコルが上目遣いでこちらを見た。
「カタリナ……よく見ていて」
私の腰に伸びた手が下着の紐にかかると、シュルと小さな音を立てた。
はらりと解かれた紐が落ちたが、まだ大事な部分は布地で隠されている。
だが反対側の紐も解かれたのに、下着が落ちないのを見て、ひとつの可能性に思い当たる。
ニコルが下着に手をかけた。
「お願いです、ニコル様! 取らないでください…!」
懇願は聞き入れられず、ゆっくりと濡れた下着を引き剥がす。
秘部からトロトロと愛液が溢れ、下着との間に糸を引いた。
「――こんなに糸を引いているのに、まだ汗だって言い張るの、カタリナ?」
頬に血が上り、耳まで熱くなる。
――恥ずかしくて死んじゃう!
ニコルの指が秘部をゆるゆるとなぞると、愛液がお尻の穴を伝い、椅子の座面にまで溢れ出した。
「……汗ではなさそうだけど、ちゃんと確かめよう」
ニコルのサラサラとした髪が太ももくすぐったと思った次の瞬間、キスをするように柔らかな唇が押し当てられ、舌が敏感な部分に擦りつけられていた。
「あっ、やっ…やぁあぁぁぁ……んんっ」
――うそ! うそ! ニコルが、幼い頃から優しいお兄さんだったニコルが、私のあそこに顔をうずめて舐め回してる……!
「はい、お兄様。こうして広げておけば、舐めやすいでしょう?」
ソフィアが指でひだを広げ剥き出した秘部を、ニコルが優しい舌遣いで舐め取っていく。
ぺちゃぺちゃ、ちゅる、ずる、といやらしい音が、静かな蔵書室に響いた。
「お兄様……わたしもカタリナ様を味わってみてもよろしいですか?」
「ん」
――うそ!? うそうそ! ソフィアまで!?
戸惑う間もなくニコルと場所を交換したソフィアが、私の脚の間に顔をうずめた。ちろちろと小さな舌が愛液を舐め取り、敏感な肉を優しく、だけど容赦なく刺激する。
「ソフィアっ、だめっ! そんな、ところ!」
「あら、カタリナ様、“そんなところ”だなんて。とっても美味しいですよ。ね、お兄様?」
「ああ、それに甘酸っぱい、いい匂いがする」
――アスカルト兄妹がなんかおかしい…!
最近、こんな事ばかりだ。
そう思ってから、それらが全て夢だったのだと思い出す。
じゃあ、これも夢?
夜の学生寮に忍んできたジオルド。夜中のベッドに潜り込んでしまったキース。媚薬とディルドを使って気持ちよくなろうとするメアリ。メアリと一緒に3Pをするアラン。
実際に体験したように感じた出来事は、全て夢だった。
あんなにも身体中を愛撫され、絶頂を繰り返し、求められ、愛していると囁かれたのは全て夢だったのだ。
それなら今のこの状況も、夢なのかもしれない。
だって魔性の魅力を持つニコルと親友であるソフィアに拘束されて、兄妹でこんなエッチな事をされるなんて、どう考えても異常なシチュエーションだ。
――そうか。これも夢なんだ、きっと……
なら、覚めるのを待つしかない。
でもこんなに気持ちがいいのなら、もう少し覚めなくてもいいかな……。
「――お兄様、ここが、女の子の一番敏感な場所ですわ」
ソフィアが、尻の穴まで丸見えのカタリナの性器を片手で広げて陰核を剥き出す。
顔を出した一際赤いつるんとした突起は、小さいながらもよく熟れた果実のようで、なんだかとても美味しそうだ。
いつの間にか妹の手には一冊の本があり、真剣に目を走らせている。
「ええっと……“初めは、舌が触れるか触れないかのタッチで、細かく震わせるように刺激する”のがいいそうです。それから、“舌先で剥き出すように周りを優しく舐める”」
「…………」
妹よ、その本は――いや、今は何も言うまい。
「さ、お兄様」
「ああ……」
俺もソフィアも、今日はどうかしている。
その自覚があるのに、一度着いてしまった火は、燃やし尽くすまでは消えそうにない。
子供の頃から大切に想ってきたカタリナを拘束し、こんなにいやらしい恰好をさせた上、妹と二人で好き勝手に弄り回すなんて、ついさっきまで考えた事もなかった。
これから自分がしようとしている事は、ジオルドや幼馴染みたちだけでなくカタリナをも傷つける行為だと頭では分かっているのに、沸き上がる欲望を前にもう自分では止められない。
ずっと、カタリナが欲しくて欲しくて欲しくて欲しくて、仕方がなかったのだ。
こんな機会、二度と訪れないかもしれない。それに今止めたところで、彼女との間にしこりを残し、距離をつくる事になるだろう。もしかしたら顔も合わせてもらえなくなるかもしれない。
ならばいっその事、思いを遂げてしまおう。
「……とても可愛いよ、カタリナ。愛している」
顔を赤らめ涙目のカタリナが見つめる。
「ニコル……様……」
濡れた唇から喘ぐように呼ばれ、気付けば彼女の敏感な場所に舌を伸ばしていた。
「あぁ…! んっ……」
ぷりっとした感触が舌先に心地良い。
「だから、全部食べてしまうね、カタリナ」
ちろちろと舌先で陰核をかするように舐められ、初めは少しくすぐったいだけで、そんなに気持ちがいいとは感じなかった。
なのに、全体を舐め回され、じっくりと焦らされるように責められていると、いつの間にか自分でも驚くくらい身体が昂っていた。陰核を中心にジンジンと痺れるような気持ちよさが広がり、奥から熱い愛液が流れてくるのが分かる。
「お兄様、見てください」
「……?」
「ほら、カタリナ様の陰核がこんなに」
「――!」
つられて見下ろすと、陰核が見た事もないほど勃起して剥き出しになっていた。
「大きいと、とても感じやすいそうですよ」
――なにこれ…!?
今まで見た事がないほど、突き出てしまっている。
ニコルの舐め方は凄く優しくゆっくりで、夢の中ではみんな強引に快楽の高みへ引っ張っていかれる感じだったのに、ニコルのそれは自然と高いところに、気が付いたら到達していた感じだ。腰がひとりでに浮いてしまう。
「あっ……二、ニコル様っ、気持ち、いい…っ」
恥ずかしいのに、気が付けばはしたなくねだってしまっていた。
「あっんっ…ニコル様ぁっ……もっと! もっと、して! もっと舐めて! もっと吸って! もっと舌で転がして…!」
「カタリナ様、とっても興奮してらっしゃいますね。でもお兄様、ここであまり強くし過ぎると、かえってオーガズムに達しない事があるそうですわ。きちんとカタリナ様の様子を見ながら調整してください」
「分かった」
ニコルの舌の動きが熱を増す一方で、ソフィアが私の膣に指を滑り込ませた。
「ザラザラしている、ところ……」
膣内で指を曲げ、探るように刺激する。ソフィアの細い指がトントンと軽く押すように少しずつずらしながら刺激すると、ある場所で身体が反応した。
「はっ、う!?」
「あ……ここですわね」
念入りに刺激されると、突然ゾクゾクと身体が震えて熱いものが込み上げ、目の前に星が飛んだ。
――くる…! 何か、凄いのがキちゃう!!
「ああぁっあぁぁぁっ!?」
強烈な快楽の波に飲み込まれ、頭が真っ白になる。熱い何かが噴き出す感覚。
――私、もしかして漏らしちゃった……?
「まあ! カタリナ様が、潮を!」
――し、お?
全力疾走の後のように荒い息を吐きながら、気持ちよさで何もかもどうでもよくなる。
――ソフィアが手に持ってる本……今度、貸してもらおう……
「カタリナ、大丈夫か?」
慌てて拘束具を外しながら、ニコルとソフィアが心配そうに覗き込む。
ニコルが私を抱え上げて、長椅子へと横たえてくれた。
「……ニコル…様?」
まだ息が整わない。
「どうして、びしょ濡れ……?」
ソフィアが、用意していたらしいタオルを渡し、ニコルが雑に拭って前髪を掻き上げた。そんな仕草も色気があって様になっているのは、さすがニコルだ。
――あ、さっきソフィア、しおって言った? 私、潮吹いちゃったの?
「私の……せい?」
「俺の事はいいから。カタリナは大丈夫か?」
「なんだか、ふわふわします……」
ニコルに陰核を、ソフィアに浅いところを同時に責められて、生まれて初めて潮吹きをしてしまったらしい。まだあそこがジンジンする。
「すまない、カタリナ。俺もソフィアも調子に乗ってしまった。謝って済む事ではないが――」
「お兄様、ここからがいいところなのに――」
「駄目だよ。カタリナの意思を無視して、拘束して無理矢理に、なんて絶対に駄目だ。ごめんな、ソフィア。本当なら最初に俺がきちんと止めてやるべきだった」
「――ニコル、様……」
「どうした、カタリナ?」
呼ばれて顔を寄せたニコルの頬を両手で挟むと、口づけをする。
「まあ…!」
嬉しそうにソフィアが声を上げ、ニコルが慌てる。
「カ、カタリナ!?」
「潮吹いちゃうくらい気持ちよくしておいて、ここでやめるなんて、ひどいです、ニコル様」
「でも、その……無理矢理だっただろう? 嫌じゃないか?」
「全然。ニコル様に愛されて、いやな訳ないじゃないですか」
「っ――! カタリナ!」
ニコルが私の両肩に手を置き、真っ直ぐに見つめた。
「ニコル様?」
「ちゃんと言わせてくれ。今から言うのは、ソフィアの書いたセリフじゃないから」
深呼吸をひとつ。
「愛している。ひとりの女性として、誰よりも、心から」
想いを告げ、改めて口づけを交わす。
柔らかな唇は、どれだけ味わっても飽きそうにない。
何度も何度も重ね合わせ、吸い、甘噛みし、やがて滑り込ませた舌で口の中を舐め合う。
唇や唾液が甘いなんて、初めて知った。
「……お兄様。少し、がっつき過ぎでは?」
気付くと、カタリナを長椅子に押し倒して唇を貪っていた。
「舌は、力を抜いて優しく絡める方がいいらしいですよ」
「うん……なあ、ソフィア」
さすがにさっきまでの異常な状態から少しは冷静になった今、妹の見ている前でというのはとても気まずい。
「あ、わたくしの事はお構いなく」
そう言われても。
「わたくしの事は……そうですね、妖精とでも思ってください。お二人を真実の愛へと導く妖精ですわ」
目を輝かせてそこまで言われると、追い出すに追い出せない。
「先程も言いましたが、物語を描こうとすれば、こういう場面の描写は絶対に必要になるのですわ。その時の為にどうしても自分の目で見ておきたいのです! カタリナ様もどうか、お願いします!」
「……どうする? カタリナ」
「私は、ソフィアなら一緒でも構いません」
どうせ夢なのだし、と胸中で付け加える。
それにソフィアならいいかなという気持ちもあるのは本当だ。まさか3Pという訳はないだろうし、ソフィアは純粋に知識欲に燃えている、という設定の夢なんだろう。
「カタリナがいいなら……」
ちょっと残念そうな様子にきゅんとする。
――ありゃ? ニコル、もしかして断ってほしかったのかな? 本当は二人きりで楽しみたかった、みたいな…!?
そう思うと、俄然やる気になってくる。
「それよりも、ずるいです、ニコル様。私ばかり恥ずかしい思いをさせて。私にもさせてください」
ニコルの胸元に添えた手をゆっくりと下へ滑らせていく。
――わあ、自分から男の人の股間に手を伸ばすって恥ずかしいな
キスくらいではなんともなっていないだろうと思ったけれど、意外な事に少し張っていた。
「カ、カタリナ! これは、その…!」
「……よかった、ニコル様も感じてくれていて」
焦るニコルにそう言うと、すりすりとズボンの上からさすってみる。
「カタリナ!?」
グッと硬さが増し、更に張ってニコルの息が少しずつ荒くなってきた。思い切ってズボンの前を開いて中に手を入れてみる。
「うっ……くっ」
強く握り過ぎないように気を付けながら添わせた手を動かしていると、ニコルが苦しそうに喘ぎ始めた。
「ニコル様、気持ちいい、ですか?」
「いいよ、カタリナ……凄く上手だ……」
――手の中でどんどん大きく硬くなっていくのって、楽しいかも!
ニコルも気持ちよくなっていくのが、文字通り手に取るように分かる。恥ずかしいのに嬉しくて、熱さが手を伝って私の身体まで火照らせる。
――どうせ夢なんだから、もっと大胆になってもいいかも
「ニコル様、ここに、キスしてみても?」
「!?」
前を開けたズボンからそそり勃つ陰茎に、カタリナが顔を近づける。
その光景だけで熱いものが込み上げてきそうになるのに、更に温かい息がかかったと思うと、綺麗な唇の間から伸ばされた舌が、ちろちろと陰茎を舐め始めた。
――色事とは無縁だと思っていたカタリナが、こんなにいやらしい事を…!?
信じられない思いと、求められて嬉しいという気持ちで、どうにかなってしまいそうだ。
「ああ……くッ――」
根元から先までたっぷりと舐め上げられ、丹念に余すところなく舐め回されて吸われ、カリの下に舌を引っ掛けながら亀頭を唇で擦る。経験した事のないほどの気持ちよさに、あっという間に達してしまいそうだ。
ニコルの男性器は、夢の中で見た誰のものよりカリが出っ張っていて、硬く反り返っている。
綺麗な顔に似合わない猛々しさだ。
凄く男くさくて、こんなところからというか、むしろここから魔性の魅力のフェロモンが出ているのではないかと思ってしまう。
しゃぶっているとクラクラしてきて、つい夢中になってしまっていた。
血管が浮き、ビクビクと震えながら太く硬くそそり勃つ陰茎に興奮してしまい、はしたなく舌を使ってしまう。
「カタリナ……カタリナ……」
うわ言のように名前を呼ぶニコルの息遣いや陰茎の痙攣から、絶頂が近いのが分かる。
――ニコル、もうイキそうなんだ……
舌だけでなく手も添えて、絶頂へと導く。
「ニコル様、我慢しないで、いっぱい気持ちよくなってください」
「ま、待ってくれ、カタリナ、そんなにしたら――」
――君を汚してしまう…!
制止したのに、むしろカタリナはカリ下を舐めながら、手を使って扱き始めた。
温かな口の中で絶え間なく動く舌と、絶妙な加減で握る手の動きに我慢なんてできるはずもない。
「はあっ――うっくッ!」
手と口とが織りなす刺激で、最愛の人に向けて勢いよく射精してしまう。
――こんなに……気持ちがいいものなのか……
愛する人との睦事は身体がとろけるほど気持ちよく、頭が痺れて思考を奪う。
もう、目の前の快楽しか考えられなくなっていた。
とても1回出したくらいでは満足できそうにない。
飛び散った白濁液がカタリナの顔だけでなく髪まで汚し、胸元に伝う。友人の婚約者である最愛の人を自分の精液で汚してしまった背徳感に悦びを感じてしまっているのを押し殺し、さっきソフィアが渡してくれたタオルで彼女を優しく拭った。
「すまない、カタリナ。汚してしまった」
「いっぱい、出ましたね」
カタリナが上目遣いで見上げる。
「これで、おあいこ。ね、ニコル様」
「―――――っ」
にっこりと笑うカタリナが愛おしくてたまらない。もっともっと、彼女が欲しい。
思わず欲望が口からついて出る。
「すまないカタリナ……全然足りないんだ。もっといやらしく舐め回して――深く咥えて…!」
――お兄様とカタリナ様、いい感じだわ!
それもこれも、わたくしの一押しがあったからこそ。
大満足の溜め息を吐き、二人を見守る。
すでに欲望と本能に導かれて貪りあう二人の為にできるのは、邪魔しないようにする事だけだ。
まさかここまで上手くいくとは思わなかったけれど、カタリナ様がお兄様を受け入れてくださって本当によかった。
カタリナ様はいつだって考え方が革新的だけれど、性に関しても大らかな感性をお持ちのようで本当によかった。もし結婚するまで指一本触れてはならない、みたいな古風な考えだったら、こうも上手くはいかなかっただろう。
二人の求め合う姿と喘ぎ声や息遣い、愛液と精液の匂いで、こちらまで変な気分になってしまう。
――いけない、いけない
わたくしまで理性を失ったら、この場を収める者がいなくなってしまう。
本当ならお二人で思う存分愛し合っていただきたいけれど、控室ではアンが待っている。
事を成就し、且つ、怪しまれないタイミングを見計らわなければ。
――でも……
本をギュッと抱き締め、ごくりと唾を飲む。
お兄様があんなにたくましいものをお持ちなのにも驚いたけれど、それを美味しそうにお口に含んでしゃぶっているカタリナ様の姿に、下半身が熱くなってきてしまうのが止められない。
お兄様を求めてくださるカタリナ様が、今まで見た事のない色っぽい目つきや表情を見せる事に、なぜだかこちらまでゾクゾクしてしまう。
「わたしくも……」
――も?
今、何を考えたのかしら?
……ニコル様の……長くて、突かれたら奥まで届きそう……
一度出したにもかかわらず萎える事なく、ビクビクと脈打つ姿にゾクゾクしてしまう。
太いけれど太過ぎなくて、口に含むと奥まで入り込んでくる。ちゅぼ、ちゅぼとしゃぶっていると、ニコルの息が荒くなってきた。
「いいよ、カタリナ……本当に、凄く――上手だ」
褒められて嬉しくなってしまい、もっと奥まで咥えてみる。
長くて根元までは口に入らないと思ったけれど、喉まで入れればいけるかもと、飲み込むようにしてニコルの陰茎を喉の奥まで咥えると、ニコルが聞いた事のない声で喘いだ。
「ああッ! す、凄いっ!気持ちいいよ、カタリナ! もっと――もっと飲み込んで!」
息ができなくて苦しいけれど、飲み込むようにごくんとすると、それが息継ぎになり、刺激にもなった。
もっともっととねだるニコルが愛おしくて何度も何度もしていると、それと分かるくらいはち切れそうになってくる。
――ニコル、またイキそう……
太さだけでなく、熱さも、ドクドクと脈打つ力強さも、高まっているのが分かる。
「カタリナっ――うくッ!」
口の中にたっぷりと濃い精液が噴き出し、溢れる。
あまりに濃いので、飲み込んでも喉にくっついてなかなか落ちていかない。
ニコルの目を見つめながら熱い精液を飲み下すと、ニコルの顔が真っ赤になった。
――やだ、恥ずかしそうなニコル、超可愛い…!
顎を伝い、喉にまでこぼれた精液を指ですくって舐め、まだまだ萎えずに震える陰茎の先から出てくる精液も吸い出すように舐め取る。
「はッあぁ……ま、待ってカタリナ、もういいよ。凄く――よかったよ」
――魔性の魅力って、精液にも含まれているのかも……
ニコルの精液を飲んでから、欲しくてたまらなくなっている。このたくましいもので、貫いて、奥まで突いて、いっぱい掻き回して、最後には熱い精液を注いでほしくてたまらない。
「ニコル様……」
「ん?」
「ニコル様ので……いっぱい淫らな事、して」
あまりにストレートな言葉にビクリと下半身が反応する。
「そうだな。こんなに可愛いおねだりをされてしまっては、ね」
頬にキスをすると、綺麗に拭ったはずなのに自分の精液の匂いがした。これをさっき、カタリナは美味しそうに飲んでくれたのだ。
「可愛いよ、カタリナ」
額や耳たぶ、首筋にたっぷりとキスをしながら、ベビードールの上から乳房にそっと触れる。
布地の上からでもはっきりと分かる突起が愛らしい。
敏感な突起を指で擦ると更にキュッと硬くなり、カタリナがこらえきれずに息を漏らした。
何もかもが愛らしく、愛おしくてたまらない。
「どうして声を抑えてるの? 気持ちよく、ない?」
「は、恥ずかしくて……」
思わず吹き出しそうになって、くしゃみのふりをして誤魔化す。
さっきまであんなに乱れて、恥ずかしいセリフを言っていたのに。
「カタリナ、君の恥ずかしい声、いっぱい聞かせてほしい。恥ずかしい部分も、恥ずかしい恰好も全部、隠さないで俺に見せて」
胸元のリボンを解くと、形のいい乳房が露わになる。
「とても綺麗だ」
優しく指と手の平を使ってみずみずしい感触を思う存分楽しむ。
「はっ……あん、んっ……んっ……」
柔らかいくせ弾むように指を押し返す感触は、どれだけ楽しんでも飽きそうにない。
敏感な中心に触れないように気を付けながら、たっぷりと乳房を愛撫していると、カタリナがまた、可愛いおねだりをする。
「二、ニコル様ぁ、焦らさないで! 乳首、触って…!」
乳輪はふっくらと膨らみ、ピンと勃った乳首は期待で充血し、真っ赤に尖っていた。
「そうだな。こっちも凄く美味しそうだ」
乳首にキスするように乳輪ごと口に含み、ちゅっと吸う。
「ああぁぁ! 気持ちいいっ! ニコル様っ気持ちいいっ」
舌先で転がし、舌全体で舐めながら、もう片方の乳首もコリコリと指先で弄る。
と、ソフィアが長椅子の陰から声を掛けてきた。
「お兄様……わたくしにも、お手伝いさせてください」
「ソフィア?」
涙目で顔を赤らめる妹の表情を見て、頷いてみせる。
乱れるカタリナを見て興奮してしまったか、除け者にされたように感じて寂しくなってしまったか。
「カタリナ様……」
二人でカタリナの乳房に吸い付くと、彼女は戸惑いながら喘ぐ。
「あっんっ…そんな――二人でっ!?」
たっぷりと舌と唇で愛撫し吸っていた乳首から口を離すと、テラテラと濡れて唾液が幾筋も流れた。
乳首へのキスを続けながら、カタリナの秘部へと指を滑り込ませる。
――熱い
トロトロと愛液が指に絡み、溢れ出して太ももにまで滴っている。
柔らかな秘肉とコリコリとした陰核を楽しみながら、おもむろに彼女の中へ指を入れる。
「あぁ…!」
「……ソフィア、どの辺?」
何が、とは言わなかったが、ソフィアはすぐに分かったようだ。
「指を曲げたところの少しザラザラしたところですわ」
言われた通りにしながら探り、優しく擦っていく。
「はっ……あっ…あっ……ひぅッ!?」
中心から少しずれたところで、ビクリとカタリナの身体が跳ね上がった。
「そこ、だめ!? ニコル様っ!」
ソフィアが手を伸ばし、愛液をすくい取った指で陰核をそっと扱き始める。
「ソ、ソフィア!? 両方同時はだめ! またキちゃう! またおかしくなっちゃうぅっ……!!」
カタリナの腰がガクガクと痙攣したと思った瞬間、再び潮を吹いた――。
「……?」
パタパタと水の滴る音がする。
「また、潮を吹いたね、カタリナ。そんなに気持ちがよかった?」
「え?」
うそ……また? 本当に?
足元を見ると絨毯が水浸しで、甘い痺れが身体の奥に残り、なんだかふわふわと力が入らない。
――潮吹きってこんなに気持ちがいいんだ……
「カタリナの気持ちがいいところ、覚えたよ」
身体中が敏感になっていて、ニコルの囁きだけでゾクゾクと感じてしまう。
――ニコルとソフィアに、中の気持ちいいところ、知られちゃった……
「たくさん弄ってあげるね」
カタリナの綺麗な水色の瞳が潤んでいる。
まるで宝石のようなその瞳を盗んでしまいたいと、その瞳に自分だけを映す事ができたらと、何度願った事か。
その願いが今、叶おうとしている。
それが友人を裏切る事になると知っていても、もう止められない。
お互いの恥ずかしい部分を舐め合い、オーガズムに達し、上ってしまった血は簡単に収まるはずもなかった。なにより、彼女から“欲しい”と求められたのだ。愛する女性に求められ、応えない訳にはいかない。
ソフィアが、オーガズムで放心しているカタリナのほとんど脱げかけたベビードールを脱がせると、もう彼女を覆うものは白いガーターベルトとストッキングだけになってしまう。
長椅子の端に正座するように座るソフィアに膝枕するカタリナの下半身をグイっと持ち上げると、秘部だけでなくアナルまで丸見えになった。ソフィアが膝裏に手を入れてカタリナの脚を固定する。
「やっ……ソフィア!?」
カタリナは恥ずかしがって大切な部分を隠すように手で覆ったが逆にそれがそそり、自分から開かせたくなってしまう。
「――ねえ、カタリナ。これじゃできないよ?」
「で、でも、こんな明るいところでこんなに丸見えな恰好、やっぱり恥ずかしいです」
「恥ずかしがるカタリナも可愛いけれど、このままだと愛してあげられないな」
「うう……」
「……そうだな、ならこっちを……」
手で隠しきれていなかったアナルに舌を伸ばす。
「はああぁぁ!」
カタリナがビクンと仰け反った。
「だ、だめ! ホントにだめ! ニコル様、汚いですっ! そんなところ――!」
「汚くなんてないさ、カタリナのなら。それにそんな事言いながら、声が濡れているよ。ほら……こんなにひくひくさせて……」
舌先でつついたり舌を這わせながら、少しずつ穴の中に舌を捻じ込む。
「あぁっ、お尻っ! ぁんんっ……」
最初はギュッとしまっていたアナルからゆっくりと力が抜け、奥まで舌を入れて中を掻きまわすように舐めてやると、カタリナはもう抑える事なく甘い声を上げ始めた。
「カタリナ、濡れ過ぎじゃないか? こっちにまで愛液が垂れてきている。さ、もう隠すのはやめて、素直になって」
耳まで赤くしながらも、カタリナは隠していた手をずらした。
「そのまま指で広げて、奥まで見せて?」
「ええ…!?」
涙目で逡巡し、少ししてから震える指でカタリナはひだを広げて秘部を剥き出した。
口内のような緋色の肉の先端で勃起した陰核が震え、透明なものだけでなく精液のように白い愛液が絡みついている。
――愛する人が、恥ずかしさで震えながらも性器を広げて求めてくれている――
そう思うとゾクゾクと悦びが背筋を駆け、下半身をいきり立たせた。
もどかしい思いで服を脱ぎ捨て、陰茎を秘肉に添わせるとくちゅくちゅと愛液と柔らかな肉が音を立てる。
「ふふ……当てただけでいやらしい音がするね」
ソフィアが押さえていた手を離してもらい、改めてカタリナの膝裏を押さえてぐっと倒す。
これで二人の繋がった部分がしっかりとカタリナにも見えるだろう。
耐えきれないように声を漏らすカタリナが愛おしくて、彼女の愛液を陰茎にたっぷりと擦り付け、先を入り口へとあてがった。
「入れるよ、カタリナ」
こくりとカタリナが頷く。
カタリナを見つめながら、ゆっくりと挿入する。
自分でも見た事がないほど反り返って硬くなった陰茎が、彼女の中へと押し込まれていく様子と、火傷しそうなくらい熱くトロトロに濡れ、ギュッと締め付けてくる感触だけでオーガズムを迎えそうになる。
同じようにカタリナも視覚と触覚から犯される感覚に、震えていた。
「はっ……あぁっ、入ってくる! ニコル様のっ、熱くて硬いの…!」
「凄い……あんなに大きくなったお兄様のものが、根元までカタリナ様の中に……」
ソフィアも興味津々で繋がっている部分を見つめている。その両手はカタリナの乳房を包んで愛撫し、時折乳首を優しくつまんでいた。
「カタリナ、苦しくないか?」
愛する人の身体を自分のものにできた征服感と友人を裏切った罪悪感、妹の前で睦事を行う背徳感で気が変になりそうだったが、なにより彼女の身体が気になる。だがカタリナは少し苦しそうに息を吐きながらも、俺を見つめて微笑んだ。
「大…丈夫、です。ニコル様の好きに、動いてください」
「痛かったり苦しかったら、ちゃんと言うんだよ」
初めは慣らす為にゆっくりと抜いては差し込み、抵抗がなくなってきてからは少しずつ激しく。
腰を引いて、打ち付ける、ただそれだけの動きがこんなにも気持ちがいいとは。
「はっ……あ、くっ……う」
声が抑えられず、まるで獣のように下品に、淫らに、愛する人の奥を求めて腰を動かす。
「凄いっ…! 凄いの! ニコル様っ」
カタリナの中は突く度にひだが包み込んで絡みつき、飲み込むように痙攣し、まるで奥へ奥へと誘っているようだ。それがまた彼女に身体の奥から求められているようで、下半身を猛らせる。
「あっん、いいのっ……ニコル様の、凄い奥までくるの! あぁ…! 突かれると奥が気持ちよくて、引く時も気持ちいい! ソフィアに敏感なところを同時に弄られて、おかしくなっちゃいそうに気持ちいい!!」
乱れるカタリナは最高に可愛かった。
突かれる衝撃で乳房が縦横無尽に揺れてソフィアの小さな手からこぼれるさまも、甘い喘ぎ声も、恥ずかしがりながらも繋がる部分から目が離せずにいるのも、全てが愛らしい。
「ニコル…様も、気持ちいい、ですか……?」
上目遣いで聞くカタリナに、精一杯微笑んで見せる。
「もちろん。愛する人の熱で、身体の芯から溶けそうなほど気持ちがいいよ」
「よかった……」
「もう少し、激しくしても大丈夫かな?」
「はい」
「ソフィア、すまない。長椅子から下りてもらってもいいか?」
「はい。わたしの事はお気になさらず、お二人で思う存分愛し合ってください」
太ももに乗せていたカタリナの頭をそっと下ろして椅子から立ち上がると、ソフィアは本棚の陰へと入っていった。
改めてカタリナの脚を開くと肩まで抱え上げながら折り重なる。
「いくよ」
――ニコル、凄い汗……
ハッ、ハッと荒い息を肩で吐きながら覆い被さるように上になるニコルから、流れる汗がぽたぽたと落ちてくる。
激しく突かれる度に肉と愛液が絡まってブチュブチュといやらしい音を立てて飛び散り、引く時にはニコルの陰茎に愛液がドロドロと纏わりついていた。
下半身を天井に突き出す体勢のせいで、ニコルの太いのがズッポリと入っているところが目の前に見えて、まさに“突き立てられている”感じが、犯されているようでゾクゾクする。溢れる愛液がお腹にまで垂れてきていた。
こんな……こんないやらしい体勢で、優しいお兄さんだったニコルから性欲を剥き出しにされて、身体の奥を突かれてしまうなんて……。
エッチな夢を見始めてからひとりエッチするようになったからか、たっぷりと前戯されたせいか、初めての痛みはない。むしろニコルのものを受け入れた瞬間から気持ちよさしかない。
――もしかしたら、魔性の魅力のせい?
そうかも。きっと魔性の魅力って、エッチしたいと思わせたり、エッチした時に凄く気持ちよく感じさせたりもするんだ……。
子供の頃から知っているニコルに、性器だけでなくお尻の穴まで見られて舐め回されて、恥ずかしいのに身体の奥に甘い痺れときゅんと痛みが走る。
これで私はゲームの攻略対象四人全員を相手に、エッチな妄想を夢で見ている事になる。
――いくらなんでも変態過ぎない…?
魔法学園に入学してからずっと、いつ起きるかもしれない破滅イベントに無意識に緊張していて、そこから逃れたい気持ちがこんな夢を見せているのだろうか?
時折舌を絡ませたキスをしながらも、少しでも奥をえぐろうとするようなニコルの抽送は止まらない。
ニコルの黒曜石みたいな綺麗な黒い瞳と見つめ合っていると、気が遠くなってきてしまう。
――あ、やばい――
「ニ、ニコル様…! もう、イク! イっちゃう…!」
――行く? どこへ?
知らない言葉だが、彼女の様子からオーガズムが近いのだろうと理解する。快楽の高みへ行く、みたいな意味だろう。
「いいよ、一緒にイこう、カタリナ」
カタリナが処女ではない事はとっくに気付いていた。挿入する時、引き剥がすような感触はなかったし、なにより乙女の証がなかった。
でもだから、何だというのだ。
決して手に入らないと自分に言い聞かせ、諦めようとしていた。
なのに会えば会うほど愛しさは募り、どうしても諦めきれなかった。
カタリナの初めての相手が誰なのか、気にならない訳ではないが、今はどうでもいい。
濡れた唇から漏れる甘い喘ぎ声を聞きながら水色の瞳に自分だけを映し、今この瞬間この腕の中でカタリナを狂わせているのは、ジオルドでもキースでもアランでもなく、自分なのだ。
それだけで充分だった。
「あっ…あっ…あぁっ!」
彼女をオーガズムへと導きながら、ほんの一瞬、魔が差す。
――このまま彼女の最奥へ精液を流し込めたら、最高に幸せで気持ちがいいだろうな……
「ああッ、んんんッ……!!」
腰を浮かせ仰け反るカタリナの中が、ちぎり取る勢いで締まる。
――駄目だ。やはりできない――
抜こうとした瞬間、後ろからソフィアが背中に抱きつき、腰を落とさせた。
「抜いてはいけませんわ、お兄様!」
「ソフィア!?」
「ちゃんとカタリナ様の奥に注いで差し上げて!」
間に合わなかった。
確固たる意思があればソフィアを押しのける事ができたかもしれないが、最後の瞬間の迷いのせいで――いや、心のどこかで望んでいたせいで、止められなかった。止めたく、なかった。
彼女の奥へと精液を吐き出し、更に奥へと誘うような膣の痙攣を感じながら、身をとろかすオーガズムに飲み込まれる。
――ああ……愛する人の奥に射精するのは、こんなにも気持ちがいいのか……
快楽の波に身を委ねながらも、弛緩したカタリナに囁く。
「まだだよ」
抜きかけた亀頭で、陰核の裏側をグリグリと突き上げた。
「ッ…!? そこ、だめです! ニコル様ぁ! 今イッたばかりなのに、また――イク!!」
今日3度目の潮を吹いて、カタリナの目の焦点が揺れる。
腰を高く上げた体位のせいで、勢いよく吹いた潮がカタリナに降り注いだ。
陰茎を引き抜いた膣からは精液と愛液がドロドロと噴き出すように溢れて、カタリナの胸元まで流れ出す。あまりに量が多くて自分でも驚いたが、それが彼女の乳房の隙間に溜まっていく。
「――3度も潮を吹くなんて、そんなによかった?」
カタリナは何が起きたのか分からないという顔で、肩で荒い息をしている。
自分の吹いた潮を浴びてびしょ濡れになったカタリナをタオルで優しく拭うと、その後はただもう獣のようにひたすら腰を振り、彼女の身体をこころゆくまで味わった。どれだけ出しても萎えず、すればするほど欲しくなる。
カタリナの方こそ魔性ではないか、と頭の片隅でちらりと思ったりした。
1度出してしまえば2度も3度も同じ事で、それからは全て彼女の奥へと精液を流し込んだ。
「ニコル様の! あぁっ、熱いのが! 奥に…!」
もう何度目かも分からないオーガズムをカタリナと同時に迎え、二人の体液でびしょ濡れになった長椅子に倒れ込む。
耳鳴りがし、心臓はバクバクと鳴っていたが、どこかすっきりとした気分だった。
同じように荒い息を吐いているカタリナを抱き寄せ、指を絡める。
男女のそういう事に詳しい訳ではないが、踏まえるべき段階を飛ばした自覚はある。
それはこれから、改めてゆっくりと進めればいい。
そんな事を考えていると、カタリナがふふ、と笑った。
「カタリナ、どうかした?」
「あ、えっと……ニコル様って、エッチの時――睦事の時は凄く可愛くなっちゃうんですね」
思いもかけない言葉に動揺する。
「な!? ……え!?」
子供の頃ならともかく、家族以外に“可愛い”なんて、ついぞ言われた事がない。
「私にとってニコル様は、年上でいつも落ち着いていて無口で冷静で、大人の魅力が溢れる男性って感じだったんですけど、本当は凄くいやらしかったり、饒舌になったり、私しか知らない顔をたくさん見られて嬉しかったんです」
「そうか」
もう一度、ニコルはそうか、と照れくさそうに言った。
幸せな気怠さで彼の体温を感じていると、ニコルがポツリと呟く。
「……夢みたいだ」
「ニコル様?」
幸せそうに微笑むニコルに、きゅんとしてしまう。
「ずっと叶わない夢だと思っていたんだ。愛する人に――カタリナに想いを告げ、口づけをし、深く繋がるなんて、そんな事は一生叶わないだろうと諦めていたのに」
夢の中で、これは夢ですよ、なんて言うにはあまりにシュールだ。
なので、黙ってニコルを抱き締めて、そっと唇を重ねる。
と、とても申し訳なさそうに、ソフィアが声を掛けた。
「あの……お兄様、カタリナ様、陽も傾き始めていますし、アンにも怪しまれてしまいますので、ゆっくりしたいのはとてもよく分かりますが、そろそろ身支度を整えてください」
ソフィアがなぜ拘束具を持っていたのかは、たぶん両親の寝室からこっそり持ち出したのだと思います。(; ・`д・´)⁉
エッチな本は使用人に買ってきてもらっているんでしょう。
そういう事にしておきましょう。 ( ˘ω˘))ウンウン