間欠泉の異変以来、幻想郷じゅうで温泉が湧き始めた。人里も例外ではない。出たからには使わねばは勿体ないと、里の名家や妖怪の賢者を中心に、公共の入浴施設が建てられはじめた。外の世界出身の女子高生が興味を持ち、外の風呂文化を輸入したことで、ちょっとした入浴ブームが訪れている。
そうした流れにおける最先端が、この銭湯だ。稗田が援助し、河童が技術的に協力した。サウナや個室シャワーまである。幻想郷における風呂のメッカ、地底は旧都にも劣らない。
維持費がかかるので、入湯料は高めだ。里人の平均的収入からいって、けっこうな贅沢になる。萃香にとっては、なんの問題もなかった。番頭は霧になってやり過ごせばよいからだ。堂々たる無銭入湯だった。
金をかけているだけあって、浴場はいっとう豪華だった。柔らかな足裏から伝わるのは、岩風のタイル床のざらついた感触だ。上方に取り付けられた採光窓から差し込む光が、落ち着いた雰囲気をつくっている。賑やかさを好む萃香としては、マイナスポイントだった。
昼下がりなだけあって、人気の湯場といえど客入りは少ない。彼女のほかに二、三人いる程度だ。全員男だった。男湯に入ったのだから当然だ。
ただ、女が入ってきたとは、誰も気付いていないらしかった。萃香の体つきは平たく、男女を分かつ部位をタオルで隠しておらずとも、遠目には判別できない。湯けむりが邪魔したのもあったろう。
そもそも、風呂場で見知らぬ他人の身体をじっと見つめる輩は変だ。まして相手が頭から角を生やした、明確に人外と分かる者となれば、ガンをくれる里人など皆無だった。
小さく鼻を鳴らす。若干、拍子抜けだった。もうちょっと注目を浴びたり、なんならいやらしい視線を向けられると思っていたし、それが狙いだったからだ。
性別を問わず、鬼は好色だ。萃香も例外ではなく、かなり開放的なタイプの助平だった。男どもが素っ裸で過ごす空間と聞いて、興味を持つのはある種当然だった。
期待通りとはいかなかったが、だからといってノコノコ帰るのも決まりが悪い。先客相手に、楽しませてもらうことにする。
ひんやりしたタイルをぺたぺた踏みながら、洗い場に向かう。空席がいくつもある中で、あえて他の客のすぐ横を選んだ。木椅子に腰掛ける。ほどほどに脂の乗った尻が、クッション代わりにむにりと潰れた。
隣の男を横目でうかがう。実際のところ、男と呼べるほどの齢に達していなかった。
寺子屋に通うくらいの年頃だろうか。坊主頭で、日に焼けたあばた面だ。いかにもなわんぱく小僧といった風体だった。
腕や脚は小麦色をしているが、日を浴びない胴体まわりは生っ白い。二次性徴前の、まだ男女の別がほとんどない体つきだ。胸筋も薄く、あばらがほんのりと浮かんでいる。寸胴で、腹筋が見えることもなかった。
「……えっ、ええっ……?」
向こうも、視線をよこしてくる。三秒ほどおいて、椅子ごと身体を引いた。隣に座ったのが、本来男湯にいてはいけない性別だと気付いたのだろう。
ぽかんと、ちょうど「お」の口のままこちらを見つめている。いったい何事か、判じかねているのだろう。
が、困惑は次第に、別の感情へと変わっていた。なにせ目の前にいるのは、少年からすれば――少なくとも外見は――同世代の少女だ。まして、寺子屋では見かけない美少女となれば、なおさらだった。
秀でた眉と、長く上向いた睫毛の象る二重瞼、くりっとした目に飴色の瞳。低めで小ぶりな鼻先と、柔らかな頬、薄めの唇。浴場ゆえ髪を下ろしているのが、ふだんの快活さとは少し異なった印象を与える。見た目の幼さゆえ、思慕の対象にはほとんどならないが、萃香の見目の良さは確かだ。
一糸まとわぬ体つきはといえば、これもまた愛くるしかった。成熟した女性らしい豊満さがあるかといえば、全くノーだ。平らかで、くびれもほぼない。
一方で、二次性徴前のふっくらした体つきには、これくらいの年頃にしかない魅力が秘められている。健康的な色合いの肌には、染みのひとつもない。がさつで豪快な性格とは裏腹な華奢さが、可愛らしさをあふれさせている。未熟だと単に切って捨てるにはもったいない、大人とは趣の異なる美を宿していた。
首筋はすらりとし、肩は丸くなだらかで幅も小さい。腕はぷにぷにと柔らかで、筋肉の存在を感じさせない。どこからあの怪力が出てくるのか、不思議に思えるほどだ。
女性の胸を特に「乳房」と称するが、彼女の場合は厳しい。房と呼べるだけのボリュームがない。カップでいえば間違いなくA、ともすればAAだった。
揉むのはもちろん無理だろうが、つんと上向くわずかな膨らみは、見つめ愛でる楽しみを提供する。湯けむりにほんのり濡れ、つやつやと輝いているのが、なおさら魅力を強めていた。
乳暈はバストサイズ相応に小さく、色も淡い。輪郭のはっきりしたタイプではなく、地肌からグラデーションを描くタイプだ。それらに比べると乳頭は大きめで、小豆くらいはある。ぷっくりした姿で、自己主張していた。
胸郭から骨盤にかけては、ストンと落ちる寸胴だ。とくに腹は、腹圧がまだ弱い年頃にありがちな胃下垂体型、いわゆるイカ腹だった。セクシーさはまったくないが、つるんとした原っぱは視線を惹きつける。くりっと窪む臍は良いアクセントとなり、身体全体において重心のような役割を果たしていた。
女性の腰回りは成熟するにつれて広がっていく。萃香の場合は、それがほぼない。つるん、ぺたんとした骨格だ。
股座の三角州にも、陰毛はほとんど見られない。辛うじて、髪色よりやや濃い山吹色の産毛が生えつつあるといった風情だ。
裂け目はといえば、すっと通った一本筋を描いている。ただ、男を知らぬ少女特有の無垢さは感じられない。むしろ、うかつに手を出した者をぱくりといく、食虫花のごとき妖しさを漂わせていた。
鬼ほどになれば大地を踏みしめて割るのもたやすいし、特に萃香は巨大化もする。その支えとなるはずの脚は、大腿四頭筋やハムストリングスの存在をうかがわせない。足先などは見るからに柔らかく、土踏まずがわらび餅のごとき感触をしているのは間違いなかった。
つまるところ萃香は、一般的な男性が発情する体つきをしていない。ただ、彼の場合は例外だ。見た目は同じ年頃の女の子が、素っ裸でいるのだ。どぎまぎするのが当たり前だ。
内心で、舌なめずりする。たまにはこういうのを「食う」のも、悪くなかった。
外の世界にくらべ大らかな人里においても、褒められる行いではない。が、知ったことではなかった。鬼の倫理観は、人間と大いに異なっている。
「くくっ」
小さく喉を鳴らしながら、素知らぬ顔で、身体を洗う振りをする。それとなく少年のほうへ姿勢を向け、じっくりと素肌を見せつける。
手桶に湯を汲み、頭から被る。大きく腕を持ち上げ、腋窩を晒す。つるりとした、ほんのりと赤らんだ窪みを。
石鹸を手に取り、丸い掌に塗り広げる。泡立った指を、己の身に這わせていく。首筋からデコルテをなぞり、胸元へ。採光窓から差し込む光を反射し、肌はぬるぬると輝いている。
双丘と呼ぶのも口はばったい平野を、ヌルついた掌でこねる。先端の尖りを、指先でぴんっ、と弾く。ぴりぴりした性感とともに、充血して膨らんでいく。
両手で互い違いに腹を撫でる。中指で、くりくりと臍を弄ぶ。ゆっくりと、さらに下へと向かわせていく。
すとんと落ちる腰回りから、太腿。内腿へ掌を進めながら、脚を開いていく。
と見せかけて、おもむろに立ち上がる。彼に背を見せつける。下ろした髪で、背中はほとんどうかがえない。だからこそ逆に、体格に比してぷりっとした尻が目立つ。
肉付きが薄いといっても、そこそこの脂は乗っている。下から持ち上げるように、石鹸を塗り込んでいく。ぐい……っと持ち上げられた肉は、掌が通り過ぎればぷるんと弾み落ちる。ぐい……っ、ぷるん、を数度繰り返してやる。
そうした動き一つ一つを、少年の目は全て追いかけていた。指の動きについてくる、水槽の中の金魚のように。開きっぱなしの口から、惚けきっているのが見てとれる。頬が紅潮しているのは、のぼせたからではあるまい。
「触ってみる? そんなに気になるなら」
「……えっ」
たっぷり見せつけた後、ふたたび木椅子に座る。少年は相変わらず忘我していた。こちらの声かけに対し、反応が数秒遅れるくらいには。
反応したあとも、応えはなかった。何を言われたか分からない、とばかりの表情を浮かべている。
「あんなにじぃっと見てさ。気になるんでしょ?」
「それは、あの、その」
「そうだ、ちょっと洗いにくいから、手伝ってくんないかな」
視線について指摘すれば、見るからに狼狽する。他人をじっと見るのが失礼だということくらいは、躾けられているらしい。そこへ、堂々と見つめる大義名分を与えてやる。悪さをした後ろめたさも相まって、少年はおずおずとながら頷いた。
「洗ってほしいのは~……ほら、ここっ」
また少年に身体を向ける。腰をやや前方に突き出しながら、ぱかりと膝を開く。少女の未成熟な園が開陳される。
外見年齢に相応の、すっと通った筋が露わになる。ただし、見た目からはかけはなれた淫らさを匂わせている。それはわずかにヒクつく様であったり、湯や石鹸ではない液体でヌメる姿に根ざしていた。
「うわ、わ……ッうわ」
彼が女性器を見るのは、きっと初めてではないだろう。もっと小さい頃、母親に風呂へ入れられたときに、見たかもしれない。あるいは姉妹や異性の幼なじみがいれば、その子のそれを見たかもしれない。が、そうした記憶のいずれとも、萃香の秘部は異なっているに違いない。でなければ、今のように目をむいて、じっと見入るはずがなかった。
「ほら、そんな遠くじゃ洗いにくいでしょ。もっと近くで見なって」
誘うまでもなかった。じりじりと、誘蛾灯に誘われる虫のごとく、引き寄せられてくる。最終的に、木椅子から降り、内腿に鼻息を感じるほどの距離まで近づいてきた。そこが本来何のためにある場所か知らずとも、いやらしさは感じ取れるらしい。
「じゃあ、まずはここ。このぷっくりしたとこを触ってみて。そっとね」
彼の手をとり、己の身体へと導く。欲情に充血し、自己の存在を主張し始めた陰梃へ。萃香と同じくらい小さな手がおそるおそる触れてくる。
「……ンッ」
びりっ、と走る電気的刺激に、小さな声が漏れる。予想外だったのか、少年は弾かれるように指を離した。眉尻が申し訳なさげに垂れ下がっている。
「ああ、いいよいいよ。むしろもうちょっと、強くしてもいいかな」
「こ、こう?」
「ンッ……は、っ。そう、いいじゃん……あっ、は」
とん、とんと、指先でノックしてくる。と思いきや、円を描く動きで撫で回してくる。勝手が分からないので、試行錯誤しているのだろう。拙い手つきだが、予想がつかないので面白い。
「あは……っ。女の子が声を出し始めたら、裂け目のほうも撫でてあげるといいよ。やってみようか」
節くれのほとんどない指が、潤いを帯び始めた肉貝をなぞり始める。にち、くちっと、粘っこい音が鳴る。ぞわぞわとこみ上げてくる性感に、溜息を漏らす。
「あ、は。ンッ、ふ、んぅ」
「お、お姉ちゃん?」
「ん? ああ、気にしなくていいよ。これは気持ちいいときに出る声だから。ほら、肩まで熱いお湯に浸かったりしたとき、つい出ちゃうだろ?」
続きを促す。少年は頷くと、膣口愛撫を再開する。まだ遠慮があるのか、尺取虫が這うぐらいのペースだった。じわじわと責め立てられていく感覚は、これはこれで悪くない。
「いいよ、そのまま中も洗ってよ。ゆっくりね」
少年の手をとり、指を体内へ導く。一見すると経験の浅い淫口は、あっさりと異物を呑み込んでいく。少年は目を丸くする。「おしっこするところ」へ指を突っ込むことに、躊躇しているのだろう。
「はっ、あ、あぁ、ん……」
それでも、言われたとおりにせねばと思っているらしい。おそるおそる、膣内を探ってくる。
細かな襞を、指の腹が擦る。快楽神経が刺激され、悦びがこみ上げてくる。下半身だけ、熱い泥沼に浸かっているかのようだ。
こちらが痛がったり、苦しんだりしていないと察したのだろう。少年の手つきが、次第に大胆になってくる。鬼相手に、物怖じしない子だ。うまいこと育てば、将来大した性豪になりそうだった。
「あは……いいね。上手じゃんか。じゃあ、今度はこっちが洗ってあげようか」
少年を振り払い、湯を浴びる。全身にヌルヌルと纏わりつく石鹸を洗い流す。
「いや、いいよ、おれは」
「遠慮しなくていいって」
女の子に身体を洗ってもらう。そのことへの気恥ずかしさゆえか、少年は気後れしているらしい。もちろん、許さない。腰に巻き付けたタオルを、強引に剥ぎ取った。膝の間に手を差し込み、股を閉じられなくする。
露わになったペニスは、ペニスと呼べるほどの立派さを備えていない。二次性徴もまだなのだろうから当然だ。
ぴんっと尖っているあたり、勃起はしているのだろう。それでも細くて小さく、指くらいのサイズしかない。唐辛子を思わせるフォルムだった。先端まで皮を被っており、男根本来の雄々しさもない。性的に未発達なのだと感じさせる一物だった。
「うッ、うう」
少年の喉が小さく鳴る。眉尻は申し訳なさげに垂れ下がっていた。異性に、しかも今日初めて出会った異性に陰茎を見られる羞恥。まして、手ずから清めてもらうことへの申し訳なさ。複数の、どちらかといえば負の感情がない交ぜになった表情だ。
「膨らんでるね? こんなにしてちゃ苦しかったろう。楽にしてあげようね」
気にせずともよいと、声色で示してやる。こんなところで呵責に苛まれていてもらっては困る。今から、忘れられない思い出をくれてやるのだから。
「ふふ……」
「ひッ!?」
包皮の上から、ソレの形をなぞる。とたん、少年は身体を跳ねさせる。木椅子がガタンと音を立てた。
皮越しにちょっと触っただけだ。大人なら、なんとも思わないくらいの刺激だろう。だが、彼はまだ子供なのだ。おそらくは、自慰すら覚える前の。
小さな陰茎は、そのぶん神経も集中している。感じやすいのも無理はなかった。
「ほぉら、気持ちよくしてあげようね」
「ッ……! アッ、アッ、アッ」
親指から薬指までの四指を使い、根元から亀頭にかけてカリカリと擦る。海を泳ぐクラゲの、触腕の動作に似た動きだ。寸胴の腰を震わせながら、少年は未知の感覚に翻弄されている。
「皮はちゃんと剥くようにしなよ? そのほうが、大人になってから色々良いからさ」
「はっ、アッ、あ! ッひんっ、それむり、むりむりぃっ」
竿の先端に空いた包皮の穴を、指先でくりくりと刺激する。小指を浅く抜き差しすれば、ちゅぷッ、ちゅぷっと空気が音を立てる。
皮を隔ててすら、雷に打たれたかのごとき反応を見せるのだ。内側に入り込もうとする動きを、堪えられるわけもなかった。首を左右に振りながら、涎すら垂らす勢いで、無理無理と繰り返している。
その竿の先から、ネトつく汁が分泌される。湯でもなければ、石鹸でもない。先走りやカウパーと呼ばれる欲望の汁だ。ほんのり生臭く、萃香の情欲を煽る。
「んふ――ちゅッ」
人差し指ですくい取り、丁寧に舐める。甘露だった。腹の奥がツーンと疼く。
「え、あ。あっ、あぁああッ……!」
自分の体液を、美少女が、頬を窄めて舐めている。ろくな性知識のない少年には、その行動が理解できない。
とはいえ、分からないなりに、本質的ないやらしさを感じ取ったらしい。喉仏すら浮かんでいない喉から、上ずった、悲鳴じみた嬌声がこぼれた。おそらくは人生初の、絶頂に至ったのだ。
といっても、白濁した汁を勢いよくぶちまけはしない。じわ、と薄ら白い汁を滲ませただけだ。精通はしていても、勢いよく射精するほど成熟しているわけもなかった。
「あっ、はッ、あっ、あぁ、あぁ」
全身を駆け抜けた得体の知れない感覚は、少年にとってたいそう衝撃的だったに違いない。瞼をぱちぱちと瞬かせている。瞳は見開かれていたが、どこかを見ている風ではなく、うつろだった。
「ふふ……お疲れ様。洗ってくれてありがとうね?」
惚けたままの彼に、軽く口づける。バードキスだ。舌を入れるにはまだ早すぎる年齢だろう。
もしかしたらファーストキスだったかもしれない。鬼を相手に、初めてのベーゼを迎えたのだ。きっと将来は大物になるだろう。なので、カウパーを舐めた口で接吻したことについては、大目に見てほしかった。
少年は精根使い果たしたようで、ぐったりと脱力している。しばらく使い物にならなそうだと、放置して次の相手を探しにいく。
湯船に浸かったもう一人の客は、しわしわの老爺だ。もうアレも使い物になるまいと見過ごす。
こちらはどうかしらんと、サウナを覗いた。途端、顔面を熱気が襲う。萃香は平気でも、他種族にはまあまあな苦痛だろう。人間は物好きだと、あらためて思う。
中は六畳間ほどで、L字型に木製ベンチが設けられている。都合よく、先客が一人いた。四十代にさしかかるくらいの中肉中背だ。次はアイツにしよう。飴色の瞳が捕食者の色を孕んだ。
横にどっかと腰掛ける。男はチラリと、渋い目を向けた。空いているのにわざわざ隣へ座ることや、子供がサウナに入ってくることを、苦々しく思ったのだろう。
「は?」
次の瞬間、目を丸くした。現れたのが鬼だと、しかも女児だと気付いたのだろう。瞳に焦りが浮かんでいた。まさかここは女湯だったか!? 俺は間違えて入ってたのか!? と表情が語っている。
「あっ、父ちゃん」
また、後ろにも視線が向けられていた。振り向けば、先ほど弄んだ少年が立っている。
考えてみれば、彼くらいの年頃の子供が、一人で銭湯に来るほうが珍しい。二人が父子だったとして、なんら不思議ではなかった。
しばし思案する。少年の復活が存外に早かったのは予想外だが、それはそれで悪くない。年端も行かぬ少年に、獣じみた大人のファックを見せてやるのも、年長者のつとめだろう。
「ついてきちゃったかあ。まあ、いいよ。さっきやってたようなこと、ホントはどうやるのか、君の父ちゃんに見せてもらおうか」
「あの……鬼の御方……? 息子と何をされてたので?」
「うん? すぐ分かるよ。そんなことより、気持ちいいことをしようか」
「エッ」
男は明らかに、戦々恐々とした様子だった。我が子の前で威厳もへったくれもない。いくら鬼でも、故もなく取って食ったりはしないのだが。
とはいえ、多少怯えてくれていたほうが、コトを円滑に運ぶぶんには都合がよい。男の腰に手をかける。巻き付けられたタオルを、強引に剥ぎ取った。
もじゃもじゃと陰毛の繁茂する下半身が露わになる。黒ずんだ男根は、股からぶら下がっている。ナマコを思わせる、グロテスクなたたずまいだ。
――いいね。
ペニスとはこうでなくてはならない。心中で舌なめずりした。
「ちょ、ちょっと待って、何を、アッアッ」
柔らかな指が、ぐったりしたソレに伸ばされる。竿全体を優しく包む。反射的に閉じようとした膝を、腕を挟み込んで遮る。
男の声には焦りがあらわれていた。女児が無邪気に触るのとはわけが違う。なにせこちらは鬼なのだ。外見は幼くとも年齢を重ねている。女が男のソコに触れることの意味を理解している。
「ぉッ、お、ぉお~ッ……!」
息子の前で、童女じみた見た目の人外に、男根を弄ばれる。どれほど気まずいだろう。もっとも、だからといって容赦してやるつもりなどなかった。絡めた指で、根元から先端まで扱き始める。
手首のスナップを効かせた手淫だ。ときおり掌で、亀頭をぐりぐりと擦り回す。妻でもしてくれない情熱的手技は、男を否応なしに昂ぶらせる。肉幹はすぐに充血しはじめ、ムクムクと膨らんで、あるべき姿になっていく。
ビィンッと反り返った、立派な一物になった。長さにして二〇センチ弱。大理石から彫りだしたかのごときシャープなカリ首と、力強く浮かぶ裏筋が特徴的だ。やや歪曲したフォルムは、実に萃香好みだった。お前は半分ココから出てきたのだぞと、近くで見ている少年に教えてやりたいくらいだ。
「アッ、ぉッ、おっおッ、ぉわあああッ」
男は腰を引き、どうにかして愛撫から逃れようとしていた。もちろん許さない。半ば身体を密着させ、太腿同士を絡ませあって、身動きを取れなくする。
生意気をした罰だと、亀頭を撫でくり回す。ついでにと、もう片手で陰嚢を優しく揉みしだく。男性最大のウィークポイントを、二箇所同時に磨き上げられるのだ。情けない声があがるのも、無理はなかった。
それでも、感じてはならぬと自戒する理性はあるのだろう。男は全身に力をみなぎらせて、快楽を堪えていた。幼女にしか見えない者にイかされるのは、社会的にマズいとでも思っているのかもしれない。
「こーんな小さな子にイジられて、息子の前で気持ちよくなるの、楽しいねぇ?」
「ぐッ、う、うう」
耳元で囁いてやる。精神的なダメージを負ったか、噛みしめた奥歯のさらに奥から、悔しげな呻きを漏らす。親指と人差し指で輪をつくり、竿を優しく扱けば、掻き消されていった。
対する少年はといえば、思い切り前屈みで、内股になっていた。もじもじを通り越して、へこへこと空腰を振っている。
膨れ上がる情動をどう処理していいか分からないのだろう。どんぐり眼に、助けてくれとばかりの色を浮かべる。あとでねと、視線で返事をした。
「ほぉら。あんたばっかり気持ちよくなってないでさ。私のも弄ってよ。あんたの息子に、女の悦ばせかたってのを教えてあげな?」
そのうちに、自分も愉しみたくなってくる。恥ずかしげもなく大開脚し、二人に自らの恥部を晒す。
割り開かれた内腿の間で、秘貝はしきりにヒクついている。とろりとろりと、ネトついた蜜を分泌している。下腹に響く甘ったるい淫臭を漂わせていた。
「お、お……おお」
一本筋を描いた恥丘に対し、すさまじいギャップだ。背徳や退廃を象徴するかのごとき光景に、男は一瞬で魅入られる。見開いた目は血走っていた。サウナで血行が良くなっているからではないだろう。
こちらが導いてやるまでもなく、自然と手が伸びてくる。節くれ立った、タコのある指が、恥裂に触れる。
「んふ……あは。そうそう。最初っからそうしてればいーのに」
揃えられた人差し指と中指が、秘貝を擦り上げてくる。ぬっちぬっちと、およそ人肌を摩擦しているとは思えぬ濡れた音が鳴る。期待に疼く穴が、どれほど淫らに蕩けているかを示していた。
「あ、っは! ンッ、あ、は……。上手じゃん。奥さんのこともそうやって悦ばせてあげてるんだ?」
中指と薬指が――この二指を選ぶのがそもそも玄人めいている――体内に侵入する。襞を探り、ぞりぞりと擦りながら、奥へと忍び込んでくる。
「はッ、アッ、アッ、あ!」
狙いを定めたのは、膣道半ばの臍側、特にザラついたあたりだ。女性最大のプレジャーポイントのひとつ、Gスポットを、リズムよく擦り上げてくる。
いかな鬼でも、そんなところを嬲られれば弱い。甘く痺れる性感に、切ない声をあげながら腰をくねらせる。
「あっは、いいじゃん。あんた」
ぢゅくっ、ぢゅくッと、ほじられる淫穴から卑猥音が響く。少年では味わえなかった満足感を楽しんでいた。息子がいるということは――どんぐり眼が似ているあたり、実子のはずだ――少なくとも一回は「経験済み」だ。しっかりと性知識もあり、少年よりはるかに巧みだった。若い芽を弄ぶのも良いが、やはりこうでなくては。
「ふぅッ、ふぅッ、ふぅッ」
ご褒美に、男根を扱く手の動きを、少しだけ激しくしてやる。とたん、男も指の動きを強めてきた。美味しい美味しい人参をぶら下げられて、がぜんやる気を出したのだろう。目の前にいるはずの息子すら、眼中にないらしい。
「父ちゃん、ロリコンなの?」
その息子の言葉で、自らの行いを客観視したらしい。ぴしりと音が聞こえそうなくらい凍り付いた。効果てきめんだ。
「ケンジ、どうした。いや、これは違くてな。この御方は鬼だし、鬼に求められたらホラ。それに父ちゃんはこう、な?」
「だってお姉ちゃんくらいの子供に、必死になってるじゃん。そういう人をロリコンって言うんだって、慧音先生が言ってた」
寺子屋の教師は何を教えているのだろう。おかげで、せっかくの雰囲気に水を差されてしまった。今度アイツの家の飲み水を酒と入れ替えておこうと決意しながら、フォローに回る。
「坊や、あんたの父ちゃんは、ロリコンはロリコンでもいいロリコンだよ」
「そうなの?」
「そうだよ。だって見てみなよ、こんなにカッコよくちんちん勃起させてるんだから」
男のモノを指さす。いくらか我に返ったとはいえ、肉体的興奮が覚めるわけでもない。一物は相変わらずギンギンと苛立ち、反り返った姿を晒している。剛直と呼ぶに相応しい姿だ。
「あんたもこれくらいカッコよくちんちん勃起させれるようになりな」
萃香の感性は、いささか独特すぎたらしい。少年は首を傾げていた。が、己の父を圧倒する「お姉ちゃん」の言うことなのだ。そういうものかと、最終的には納得した様子を見せた。
「さて……と。ちょっと私も、収まりがつかなくなってきたからさ。ここじゃ誰が入ってくるか分からないから、場所を変えようか」
ちょうど良い区切りだ。柔らかな玉袋を掌の内に収めつつ、男に告げる。心臓なみの急所を握られている以上、断る選択肢は彼にない。こくこくと頷いた。
父と息子を引き連れ、サウナを出る。浴場もかなり蒸し暑いのだが、今ばかりはひんやりと心地よく感じられた。とはいえ、全身を蕩かすとろ火のごとき情欲を醒ますほどではない。やはり、セックスでなくては。
向かった先はシャワールームだ。サウナでかいた汗を洗い流すための場所だった。ダークブラウンの壁で仕切られており、個室になっている。あるべき用途とは異なるが、お誂え向きだった。
本来は一人用なので、三人が入るといささかならず手狭だ。大人二人だったら、おそらく入りきらなかったろう。
「ほぉら。良いロリコンさん。あんたが好きなもんだよ」
壁に手をつく。体格に比してぷりぷりとした尻を、男に向けて突き出す。恥部から何から丸見えの、無防備な姿勢だ。
ついでに、先ほどじっくり耕されてほぐれた淫貝を、己の指で割り開いてやる。外見童女とは信じがたい、蕩けた襞がヒクつく様を見せつける。
「あはッ!」
背後で、獣じみた気配が膨れ上がる。職人らしきごつごつした手が、平らかな腰をがっしりと掴む。大人を挑発しやがって、逃がさないぞと言わんばかりだ。実際簡単に振り払えるのだが、楽しませてくれる限りにおいて、そうするつもりはなかった。
「あぁあん……っ」
ぺちッ、ぺちッと、尻を硬いもので打たれる。煮えたぎる男根は、ほとんど炸裂寸前だ。剥き出しの粘膜に擦りつけられる。伝わる熱さに、思わず法悦の声を漏らす。
早くぶち込んでしまえとばかりに、腰をくねらせて誘う。粘膜同士が擦れ合い、くちッ、ぬちっと音をたてる。肉槍が、穴に対して垂直に押し当てられた。いよいよ、刺し貫こうとしているのだ。
「あの……ふ、二人とも、何してんの、それ」
目の前で繰り広げられる光景が、少年にはさっぱり理解できないらしかった。声には困惑と、なんなら怯えすら含まれている。無理もない。自分の父と、同世代くらいの女の子が、「おしっこするところ」をくっつけ合おうとしているのだから。
「あは。よぉ~く見てなよ、今からすっごくイイことするから。まあちょっとヘンに思うかもしれないけど、オトナはみ~んなやってるからッ、はっ、あぁああああッ!」
言葉は最後まで紡がれなかった。息子に要らんことを言うなとばかりに、男が腰を突き出したのだ。雄杭は物理法則に従って、濡れに濡れた肉沼を穿つ。ぶぢゅりッ……! と、狭穴を割り開く音が鳴る。ストロークを締めくくったのは、尻肉と下腹が打ち付けられる、小気味よい破裂音だった。
「あっは、ふっとォ、これイイッ……っは!」
二〇センチほどもある彼のモノは、里全体を見渡しても結構な業物といえる。まして萃香の体格では、さらに野太く感じられる。みちみちと己の内側が押し広げられる感覚は、目の裏にチカチカと火花を散らす。漏れた声に普段の快活さはなく、娼婦のごとき淫猥さをまとっていた。
「ぉッ、お、ぉおお~ッ……」
ほとんど同じことが、彼にも言えた。つるりぺたんとした少女の、キツいキツい穴へ強引にねじ込んだのだ。締め付けは強烈だ。しかもその穴がヌルヌルと蕩けており、無数の襞が絡みついてくるのだから、もう正気ではいられない。すっかり理性を失い、獣の唸り声を漏らしていた。
「うおおッ、おお、ぉおッ!」
「あっはぁッ! すっごッ、あんたホンットいいじゃん、あはぁッ、あっあっ!」
間髪を入れず、素早く腰が繰り出される。どぢゅッ、ぼぢゅッ! と、えげつない抽送音が響く。あわてて、シャワーの栓を全開きにした。ぬるま湯が頭からぶちまけられる。セックスサウンドを掻き消していく。
「ぉッ、あっ、ア! あっはッ! あぁッ、くはッ……――!」
相手を気遣うだけの知性を、男はまるきり捨て去っていた。体重を乗せた、重量級のストロークを繰り出してくる。萃香が見た目通りの童女なら、絶対にやってはいけないタイプのピストンだ。
下からしゃくり上げる腰の動きに、身体が半ば浮く。爪先立ちになり、壁に身を預けて、どうにか支えていた。ゴリッ、ゴリッと肉襞を豪快に抉られるたび、他の手段では決して味わえないエクスタシーが駆け抜けていく。
ばすん、ばすんと腰がぶつかるたび、ヒップはぷるんぷるんと弾む。薄い尻肉でも、激しく抽送されれば肉が震えるのだ。
「フゥウッ、うぅうっ、おぉッ、おおッ、ぉおッ」
男は野獣と変わらぬ唸り声をあげている。ペニスから伝わる幼女膣のすさまじさに、翻弄されているのだ。腰が止めようにも止まらぬといった様子だった。もっとも、そもそも止めようとなど思ってすらいないだろうが。
「あっはッ、やっばい顔。子供の前でそんな顔晒しちゃっていいの?」
もはや揶揄すら聞こえていないらしい。うぅうぅと唸りながら、ひたすら男根快楽を貪っている。大した変貌っぷりだが、下手に畏まられたり、萎縮されるよりずっとよかった。
「と、父ちゃん。代わってよ。おれもそれやりたい」
少年が不満を口にする。わがままとは言えまい。目の前で獣のファックを見せられながら、何もしてもらえていないのだから。
「んぅ、はっ。駄目だよ、コレは大人のするコトだから、あんたにはまだ早いって」
少し前までなら、セックスのセの字も知らない餓鬼を筆下ろしするのも悪くないか、と思えていたかもしれない。が、今は駄目だ。激しく楽しい交尾を放り出してまで、枝豆の鞘じみたものを可愛がってやる気にはなれなかった。
「そうだ、そうだぞぉケンジ、コレはお前には早いッ、父ちゃんに任せておけッ、おッ、ぉッ、おおッ」
男の応えは、完全に逆効果だった。美味しいものを独り占めするときの言いようと同じだったからだ。少年は顔をくしゃりと歪めた。なんで自分だけ、と思っているのが丸わかりだ。
「しょうがないねぇ。ンッ、ならこっちに来な、あんっ、代わりに、別のイイコトをしたげるから」
ぱんぱんと突き上げられながら、少年を手招きする。近づいてきた彼の前で、上体を倒す。ちょうど、目線とペニスが同じ高さに来るくらいまで。
「ちゅッ」
「うわぁッ!?」
彼のモノは、先ほどと同じくピンッと尖っていた。それでも、父親のソレが萎えているときと比較してすら負けるのだ。やはり、性交を楽しむ気にはなれない。
せめて代わりにと、まず先端に口づける。性的昂ぶりに色づいた唇で、包皮に優しく触れる。少年は裏返った声をあげ、腰を跳ねさせた。
彼の眉が、奇妙な形に歪んでいる。混乱しているのだ。むしろ、若干引いてすらいる。
無理もない。そもそも、目の前で繰り広げられるファックの意味すら知らないのだ。フェラチオなど、完全に理解の外だろう。「おしっこするところ」にキスをするなど、気違い沙汰でしかあるまい。
だからといって、逃がしはしない。腰に腕を回し、がっつりと掴む。こうなればもう、人間風情が逃げられる道理はなかった。
「あむッ、んちゅぅん」
咥え込む。小さいだけあって、顎が疲れないのは助かる。
彼のモノはほとんど無味無臭だった。ほんのりと汗の香りを感じるくらいか。男として未成熟なのもあるし、さきほど丁寧に洗ったのもあるだろう。
「うわッ、アッ、アッ、あぁあああッ、んぅううッ」
少年は背を反り返らせ、膝をガクガクと笑わせていた。萃香が抱きついていなければ、崩れ落ちていてもおかしくなかった。なんら大げさな反応ではない。女どころか自慰すら知らない少年が、ヌルつく口内の感触を味わったのだから。
「ちゅぷッ、れろっ、むちゅ、んちゅる、くちゅぅうう」
もっとも、それはこちらが手加減してやる理由にはならない。求めてきたのは彼なのだ。せいぜい搾り取られてもらう。
口内で唾液を溢れさせる。ちゅくちゅくと音を立てながら、弛んだ皮を舐め回していく。竿全体をふやかす勢いだ。
たっぷり涎をまぶしたところで、竿の先端、包皮の穴に舌先を押し当てる。ゆっくりと、内側に涎を注ぎ込む感じで、優しく剥いていく。
「んひッ、ひぃッ、ひぃいいいいッ!」
優しくとはいっても、一般的なフェラチオに比べれば、だ。少年からすれば、ほとんど快楽地獄にも等しかろう。角を思い切り握って、ぐいぐいと押しのけようとしていた。意図してか無意識か知らないが、それ以上勘弁してくださいという意思表示だ。もちろん、許さない。
「んれろぉお……っ」
「アッ! ア! アッアッあぁッ、あぁあッ……!」
包皮が取り除かれ、覆われていた本来のモノが姿を現わす。流石に掃除も行き届かないのか、恥垢独特の香りが漂ってくる。綺麗にしなきゃ駄目だろうと、お仕置きの意味も込め、レロレロと思い切り舐め回す。
角を掴んだ手に、さらなる力が込められた。そうしなければ、とても堪えられないのだろう。
「んふぅ~、んちゅっ、んく……んぱっ」
「はひッ、あうッ、あぁあッ……えっ、あぁ……」
そろそろ頃合いかと、口を離す。少年が漏らしたのは、いかにも残念だとばかりの溜息だった。あれほど無理だという態度を見せておいて、ずいぶんと現金だった。
もっとも、萃香とて、口淫を完全にやめるつもりではいない。ただ、責めるところを変えるだけだ。つまり、ぷらぷらとぶら下がる玉袋へ。
「くくッ、こういうのもあるんだよ――んちゅ」
「うわッ!?」
性的に未熟なのもあって、陰嚢はつるんとしている。成長していくにつれて、黒ずんでシワシワになっていくのだろう。今のうちに唾をつけておく――文字通りに――のもかねて、優しく口づける。
少年にとってそこは、蹴られて痛くなる邪魔くさい部位でしかなかったのだろう。気持ちよくなれるなどとは、欠片も考えていなかったに違いない。思い切り、腰を跳ねさせる。
「はむッ、んふ――……れろッ……ちゅくッ、れるぅう」
これくらいのサイズならばと、陰嚢全体を口に含む。唇であむあむと優しく食みつつ、内側の双玉を舌先で転がす。
こちらはペニスと違い、臭いも強めだった。親も、ちんちんは綺麗に洗いなさいとは言っても、玉裏まで丁寧にとまでは指導しないだろう。物理的に手が届きづらいのもあるかもしれない。といっても、不快ではない。酒盗や蟹味噌と同じで、臭いモノにも愉しみかたがあるのだ。
「ッはっ、あ~ッ、あっ、あっあぁあッ」
少年はといえば、目を見開き、口をぱくぱくと開閉させている。餌を食いに水面へ上がった鯉を思わせる仕草だ。
明らかに尋常ではないが、無理もない。陰茎に陰嚢。人体においてもっとも吸収効率の良い粘膜に、鬼の唾液を塗り込まれているのだから。
人魚や封の肉など、妖怪の一部を取り入れて何かしらの作用を得る話はどこの土地にもある。鬼の涎とて例外ではない。妖気を芳醇に含んだ汁を性器に塗り込まれれば、精力は大いに強められる。少年が射精に至るまでに、さほど時間はかからなかった。
「アッ、あッ、あぁッ、っひぃいいッ!」
「あっはッ、ちゅくッ、ちゅるぅうぅッ」
とうとう限界に至った陰茎から、ぴゅるッ、と汁が飛び出す。ほとんど水に近い薄さで、量も大したことはない。とはいえ、先ほど洗い場で見せた絶頂を思えば、大した進歩といえた。
「アッ、アッ、あぁッ、あぁああ……ッ」
むろん、見逃す道理はない。先端に口づけ、吸い上げる。睾丸の中身全て、精虫一滴に至るまで差し出せといわんばかりのバキュームだ。射精が終わり、解放されるころには、少年はすっかり精根尽き果てていた。床に崩れ落ち、壁にぐったりともたれかかる。
「ぉ、おッ、おおッ、おおおおッ」
「あっはッ! 悪かったって、あんっ、そんなパンパンしないで、ッ、あぁん!」
息子に好き放題をされて怒ったか、はたまた自分との交尾をないがしろにされて不満だったか。後ろから、父親が猛然と突き上げる。あえて声色に媚びを含ませ、煽ってやる。結合部からしぶく愛蜜が、シャワーと混ざり飛び散っていく。
「あーッ、すっご、これ良いッ、ほんとイイッ、っは! もっと、もっと突いてェッ」
肉と肉のぶつかる音は激しく、シャワーでも隠せないほどだ。それほどのピストンを、萃香の体重で受け止めるのは困難だった。爪先が半ば浮くほどだ。
もう、セックスですらない。穴でペニスを扱いているだけだ。オナホールに等しい扱いを、萃香は好ましく思っていた。いくら我を忘れているといっても、鬼相手にそんなことができるほど大胆な輩は少ない。思いがけず引き当てた「大当たり」に、たいへん満足していた。
「いいよぉ、そのまま出しちゃって。ほら、手伝ってあげるからさァッ……!」
なにか良くしてもらえたなら、お返しをする。人付き合いにおける基本だ。傍若無人な鬼たる萃香とて、それくらいは心得ている。つまり、相手を性的に悦ばせてやるのだ。
穿たれる穴が蠕動する。無数の肉襞の一つ一つが、雄杭に絡みついてキスする。人間ではとても再現できないうねりは、男に限界を迎えさせるのには十分すぎた。腰が最奥まで突き出される。ドヂュン! と体内に音が響いた。柔らかな子宮口を、肉の槌が思い切りノックしたのだ。同時に、ぱんぱんに膨れ上がっていた陰嚢が、ギュウッと縮み上がった。
「オッ、ぉおおッ、おっおっおっ、おっ、おぉおおおおッ!」
「あは、きた、中出し来たッ、あっ、あぁあああああああ!」
張り詰めた肉棒が、とうとう炸裂した。ぼびゅるッ、ぶびゅるッと、煮えたぎる濁液を幼い子宮へ注ぎ込んでいく。小便にも等しい、すさまじい勢いだった。
無数の精虫が鞭毛を蠢かすせいで、雄のリキッドはマグマかと思うほどの熱を孕んでいる。体内がチリチリと灼かれるかのごとき感覚は、鬼であっても堪えがたい。何億もの精子が卵子へ群がる様を幻視しながら、萃香もオーガズムへと至る。
爪先から頭頂まで筋肉が緊張し、ぴぃんと伸ばされる。形良い二重瞼が見開かれる。飴色の瞳の奥で、星が激しく瞬く。脳味噌の中は、ペニスとヴァギナでいっぱいだった。下半身から押し寄せる快楽信号が、よそごとを考えさせない。結合部から、ぷしぃっと熱い雌蜜がほとばしる。伊吹萃香がアクメを迎えた、何よりわかりやすい証拠だった。
「ぉッ、おぅ、ぉッ、おッ、おお……! ぉ、う、おおぉ……」
ぐりッ、ぐりッ、ぐりッと、男は三度、萃香へ腰を押しつけた。長い長い吐精が終わる。不意に、膝がカクンと抜ける。魂ごと奪われたかのごとき声を漏らしながら、後ろへ尻餅をついた。
自然、男根も肉洞から引き抜かれる。狭穴は離れたくないとばかりに絡みつく。亀頭が抜ける瞬間、ぢゅぽんッ! と、膣口が音を立てた。ワインからコルク栓を抜くのに似た音だった。
「ぉお……おお、ぉお……」
「はっ、ひぃ、ひい、ああ」
父子はぐったりしきっていた。口から魂が出そうなほどだ。しばらくは立ち上がれないだろう。蒸す風呂場で、鬼相手にあれだけ激しいファックを繰り広げたのだから、無理もない。
「はー……良かった……。お疲れ様。だいぶよかったよ、あんたら」
対する萃香はといえば、余韻をしっかり楽しんだ後、身体を解すために伸びをする余裕すら見せていた。フィジカルが人間とは違うのだ。これくらいでヘバるほど軟弱ではない。
「あ、ヤバ」
個室の外から、騒ぎが聞こえてくる。先ほど湯に浸かっていた老爺が通報したのだろうか、交尾がバレたらしい。シャワーがあるとはいえ、あれだけ大声を上げたのだ。気付かないほうがどうかしている。
「じゃーね、二人とも。あとは何とか言っといてよ」
こんなことで巫女に退治されるのは馬鹿らしい。さっさと逃げ出すに限ると、霧に変化していく。不意に思い立ち、少年に目を向ける。
「あんた将来有望だから。また色々教えてあげるよ。楽しみにしてな」
逃がさず骨までしゃぶりつくすぞ、と言われているに等しい。理解できなければ、綺麗なお姉ちゃんがまた会ってくれる、ぐらいにしか思えまい。ぼんやりと惚けたまま、少年は小さく頷く。再会を心待ちにしながら、萃香はとうとう、その場を立ち去った。