熱で溶けて 作:モスコミュール
scene1 暗躍
盛り媚薬である。盛り媚薬とは、媚薬の粉を皿に盛ることである。
ある種のおまじないである、と斎賀仙は述べる。
「盛り媚薬結界──!」
媚薬を山積みにした皿を、部屋の四隅に配置する。これで媚薬結界の完成であった。
今日、妹夫婦が帰省してくる。この部屋は、その妹夫婦の寝室にするのだ。
つまりこれは。
「姉さんからあなたへの餞です──」
scene2 帰省
嫌な予感しかなかった。百の本能はアラートを鳴り響かせていた。
「実家に帰るだけなのに?」
「草餅め」
そして、丹月は、そんな本能が欠如しているらしい。これだから。百はため息をついた。
「いいか、丹月」
「はい」
「最近、わが姉は──甥もしくは姪に、お姉さんと呼ばれたい、らしい」
しばらく考えたらしい丹月は、苦虫が口の中に入った表情になる。
「あっちの2人が、もうそういう話になってるとか?」
「全くかは別として、そんな話は聞かないな」
「……つまり」
「考えてみろ。ショッキングピンクの青春を夢見ていた私の姉だが」
「最悪の夢見手」
青春をなんだと思っているのか。
「そんな姉が丸くなって、甥っ子もしくは姪っ子を欲しがってもおかしくはないだろう?」
「その気持ちは否定しないけど、前身が邪悪」
あと、お姉さんと呼ばれたいという願いもよく考えると、イマイチはっきりしない。
「その上で、だ。どうすれば、叔母になることができるかを、考えるだろうな」
「理路整然とした説明を受けても、納得できないことって世の中結構あるんですね」
scene3 入室
あいも変わらず、部屋が大きいなと、丹月は思う。もともと、家を出る前に使っていた部屋だそうだから、言ってしまえば子供部屋なのだが、普通に学生マンションの一室よりも広いような気がする。
洗面所からここまで来るのに少々手間取っていた丹月よりも一足先に着いていた百は、ベッドに腰掛けていて。
「なんで窓を全開にしてるんですか?」
「換気、だな。ところで、丹月」
百が唐突に自分のTシャツをたくし上げはじめて、蠱惑的に微笑み。
「身体に異変が起きている」
「やべえもん盛られません!?」
状況があほらしすぎると言うのに、なんか反応をしっかりしてしまっている丹月の下半身。
「お前も盛られているな」
「そうだね?!」
丹月は、ベッドに近寄っていく。百が、両手を広げて向かい入れる。軽く肩を押すと、あっさりと倒れ込んでいく。
「人間の理性って所詮物質によって制御されるんですね」
「賢者モードになるのは、早いんじゃないか?」
scene5 廊下
百に誘われるようにして、結果として壁際に追い込んだ。すっかり向かい入れる準備が万全になっていた百に、丹月は挿入しつつ、片足を持ち上げながら。
「プライバシーどうなってんの?」
「まさか、隣の部屋で壁に耳を押しつけているとは思わなかった……あっ♡」
「廊下のほうがマシっておかしいよね」
scene9 食事
「スッポンに、マムシに、なめこに」
「そろそろ、姉さんにお灸をすえる必要がありそうたな」
scene12 浴室
「もうさっ」
「いつまで、止まらないんだお前は」
「そっちこそ」
「んっ……出たな。胸からあふれそうだ。……全く、またシャワーを浴びなければならないじゃないか」
scene20 ラスト部屋(2回目)
「何回目だろ」
「んっ…………いいとこあたって♡」
scene21
「なにゆえ、私がこのように野良猫やカラス達の糞を集めなければならないのですか。それはたしかに、媚薬結界を作成しましたが、まさか換気した結果庭中の生き物たちがこのように発情するとは予測できるはずもないでしょう。…………はい。空調のフィルター掃除も、ですね。待ちなさい、明らかに百の部屋以外の空調のフィルターも混ざっていませんか。そこまで、私がする必要はないのではないですか。ところでこのゴミ袋の中身は…………そうですか、結界に仕様した媚薬をここに集めて…………待ちなさい、もしかして私はいま、その媚薬の空気を吸ったのでは………………