熱で溶けて 作:モスコミュール
ハロウィンにおけるイタズラは数多の種類が確かにあるわけであるが、とりわけ丹月がされているイタズラはジャンルが非常に精神へのダメージを、負わせすぎる類であろう。
ところで。
一説によれば、日本男児たるもの己の秘すべき所蔵物は電子で保管することこそは誉れであるとされており、丹月もその例にもれない。己の本心こそ、けして表に出してはならない。
で、あるうえで。
そうであるならば。
たとえば、同居人が丹月が進行形で秘している性癖を込めた、誉れのこもった書物を物理書籍でなぜか保持しており。
眉間にしわを寄せながら、その書物を読み込みつつ、格好を敢行しているこの現状は。
丹月をすぐさま、死に導くタイプの、現実であった。
すなわち。
「なんでメイド服を着て、俺のお気に入りのメイド系漫画を、なんで俺のベッドの上で寝転びながら読んでるんですか…………………」
丹月は自死を決意する。だが、同居人は膝から崩れ落ちている丹月に一瞥すらくべずに、粛々とページをめくり続けていた。いたたまれない。仕方がないので、丹月は切腹したときのための辞世の句をしたためるために脳内で仕度を始め。
「ちっ」
「よかったあ、ちゃんと蔑んでくれたあ……」
「キモい」
反応無しの方が、こういうときは辛いのだ。それ故の安堵のリアクションだったのだが、確かにキモい。丹月に、決して蔑れたい性癖はない。
「なぜだ?」
「疑問を抱かれるのはともかく、さすがにその疑問点は特定してほしくて、ですね」
質問しておいたくせに、百は興味がないのか変わらずページ読み込みをすすめる。
「丹月、お前……こんな…………展開が…………ありえるわけないのに…………お前…………」
「俺としては、そもそも、百さんがこんな格好でこんな展開になっていることがわからないんですけど!?」
「冷静に考えろ。メイドが、家にいて?それは実は本物のメイドではなく?恋人にしてもらったコスプレ?お前……いくらなんでもお前…………」
「流石にブーメランすぎるよ!!!!」
ご都合主義が極まりすぎている。否、ご都合かどうかは分からない。少なくとも、丹月はそう思う程度の精神ダメージを既に負っているので。普通にダメージを与える目的の可能性はそれなりにあるわけだ。なぜなら、今日はハロウィンだから。
「じゃあ、なんだ、お前は私がこんな漫画の登場人物みたいに都合のいい女だと?」
「普段はともかく、少なくとも今この場ではかなりそうだよ!」
据え膳。そういう言葉が頭に浮かんだ丹月は、きっと正常だろう。
だが。
「お前の認識は甘い。私はお前の性癖を微妙な知り合いにバラすだけの力を持ち合わせているんだぞ。ハロウィンだし」
「ハロウィンってイタズラする日であって、脅迫する日じゃないんだよ」
「イタズラする日でもないが」
「イタズラの大義名分すらなかったら、それこそ百さんはシンプルに俺のエロ本を拡散するだけの化け物になるけどいいの?」
「ちなみに、もう送信しおえてるんだが、既読だけがついて無言だ」
「……かくなるうえは!」
ということで、丹月が百を押し倒した。
押し倒したのは押し倒したのだが、丹月は開き直ってどうせなら「私にこういうことを、させたいとか思ってるんだろ」
「勝手に冤罪を代弁するの何らかの罪に問えないですか」
頭は百の腿の上。丹月の下半身は、百の掌で弄られていて。飴玉を転がすように、口で乳房の頂点をねぶる。
「こんなのが……いいんだろ?」
筒状にした掌で、時折緩急をおりまぜながら丹月の男根を上下に刺激を加えていく。
「情けない…………んん……姿………んっ……だな?」
丹月はというと、男根への直接的な刺激による快楽に、身体が反応して望まずとも勝手にピクピク動いてしまう。さらに。
「しかもだ……、こんなに…………んんっ…………一生懸命……あっ……おっぱいをすって………やん…………恥ずかしいな」
言葉は安定してつよいが、囁く声は甘やかに脳に響いてくる。
なんかかなり百はノリノリだった。その事実に当然ながら丹月もノリノリになった。そうなると、必然的にこれ以上ないほど下半身に血が集まっていく。
そして、百も百でだいぶノリノリなので、手淫の手練くだれがかなり調子がよかった。それまでの全体を擦り上げるような動きから、先の方──亀頭を刺激するような動きへとスムーズに移行する。
ノリノリで元気になる下半身。ノリノリの妙技。足すことのすなわち。
「なんだ、もうすぐ出そうじゃないか……んぅっ!?」
丹月も負けていなかった。すなわち唯一、百によって支配されていない乳房の頂点を、執拗に舌先で刺激を始める。その快楽は、生理的に身体がピクっと半ば痙攣じみた形で、反応があらわになる。
「あんっ…………生意気だな、お前。仕方がない、これでやると可哀想だから、やらないでおこうと思ったのだが……………カウントダウンもの、好きだろう?」
丹月はてきめんに焦った。口に加えていた乳首を思わず離してしまい。
「なんでバレてる!?」
こうなってはもうだめだった。反撃が返ってこないことから、百の手がめちゃだいたんになって。
「あっ……って百さん……っ!手の動きを!とめ………あっ……ちょ……やびっ……」
「たしか……こうだったな。ほら、イケ、イケ、じゅうはーち」
「猶予が中途半端すぎる!?」
「じゅうなーな。まだ出すんじゃないぞ?」
無茶だった。もう破裂寸前だった。それも分かっているようで、百はここで丹月の頭に、今度は自分から胸を押し付ける。それはもはや致死量の極めて柔らかい肉の塊。
「じゅうろーく」
「じゅうごー」
「じゅうよ」
びるびゅるるるびゅるるるるびゅーーー!
百はすぐさまそれが他に飛び散るのを防ぐために、鈴口を掌で蓋をしてしまう。しばらくぐりぐりとその蓋を動かして、最後まで残りを搾り取ってから。
丹月の白い液体を口に含んだ。そして。
「ちゅ……ちゅ〜♡ちゅるるる……ぢゅう゛ゔ゛……レロ……レロ♡じゅるるるるるるる♡」
まるで小鳥に餌をやる親鳥のように、お前も飲めやとばかりのディープキス。
「はあ……はあ…………どうだ?」
「はあ……はあ……はあ…………こんなの現実でやるもんじゃないですね」
「草餅め」