熱で溶けて 作:モスコミュール
◆劇的ビフォー
「中途半端な格好してんね」
「中途半端?」
ばったりリビングで夜中に遭遇した百は、ジャージの上着だけ身に纏って、そのまま冷蔵庫を漁っていたのだ。世間的に正常な男性にとっては目の毒で、それは丹月も例外ではない。
「どこがだ」
「自覚ないってことある?」
「減るものではないだろう別に」
0cm。
「それに、今更お前に見られたところで……んっ」
10秒。20秒。
ドンと、丹月の胸板が押される。うるんだ瞳の婚約者が、肩で息をしている。
「……急すぎる」
「誘われてるのかなって……んうっ」
丹月の両の肩に置かれた手が、一気に引かれて再度0cm。今度は百から。
二人の間で、百の乳房がふにゃりとつぶれる。
「んっ…………んちゅ……ちゅぱ……ふうううっ」
舌がこじ開けて侵入してくる。負けじと、絡め返した。
冷蔵庫の機械音に、水音が混ざる。
「も、やめ……ふっ……は……んうっ…………ぷはっ」
ようやく、終わる。息が荒い。
「どっち?」
「そっち」
急かすようにギイと音を立てて扉が開いて、バタンと閉じた。
◆劇的アフター
「狭い」
「分かってたことでしょ」
「あまり頻繁にするべきものではないということはよく分かるな。しかし本当に──玲の言う通りだな」
「…………思うんですけど」
「なんだ」
「女性ってその辺、割りと赤裸々に共有するよね」
「男だって似たようなものだろう」
「いや……なんつうかこう、ジャンルが違うというか」
「ジャンル?」
「俺達のはファンタジーというか、共通の妄想つーか」
「具体的に言え」
「AVとかそういう創作物について語り合うのとは、モノが違うなあ、と」
「……こちらからすれば、そんなもんを互いに共有しあうな、とも思うが」
「よし、この話題は終わりにしましょう」
「続けても良いぞ?」
「止めてください、多分に俺の方が立場が弱くなります」
「元からお前の立場はそこまで強くな……いやなんでもない」
「シンプルな暴言止めてください」
「んっ…………」
「一暴言に対して、ささやかな逆襲」
「草餅め…………」
「ひぁっ………………」
「…………本当に不毛なので止めましょう」
「…………そうだな、さすがに虫刺され跡が多くなりすぎる」
「じゃあ意図的に話の腰骨を折ろうと思うんですけど」
「意図的に折られてやる」
「ケ○リンってあるじゃないですか」
「ケ○リン…………?」
「え、嘘通じない? 銭湯とかに置いてある洗面器に書いてあったやつ、見たこと無いですか?」
「そもそも、銭湯に行くことがあまりなかった」
「文化の違い……」
「まあ、ケ○リンは解熱鎮痛薬の事だが」
「知ってるじゃん!」
「実物を見たことはないが」
「余計になんで知ってるのさ」
「常識だろう」
「どこの世界の常識なんですか。……うわあ、お湯の量半分になってる」
「二人で同じ浴槽に浸かるものじゃないな」