熱で溶けて 作:モスコミュール
天気予報というものはあくまで予報であり、突然の天候の変化には対応できなかったり、あるいはその強さを予期しきれないこともある。
今の丹月と百はそういう状況にあって、端的に言えば二人ともずぶ濡れとなってしまっていた。
「折り畳みが、無意味だ……」
「そもそも、こうも横殴りに降られては傘も、雨具の意味を為していないな……」
百の真っ赤なジャージも、すっかり雨を吸い込んでしまい重そうな赤茶色にすら見えてくる。そもそも、大人二人が一本の折り畳み傘(丹月のもの)ではいささか防御力が不足するのも当然のことではあった。
「ところで、なんですけど、百さん」
「なんだ?」
「どうして、ウェスト部分を手で押さえておられるのでしょうか」
「知ってるか? ジャージという衣服は万能ではあるが」
万能ではないだろ、とツッコミを入れたいのを丹月はこらえる。
「水を含むと些か重くなってくるんだ」
「ずり落ちかけてるのかあ……」
仮にも。
仮にも、成人女性がそれをするのは、普通によろしくない。
「百さん……お巡りさんの世話に俺はなりたくないので、どっかで雨宿りしましょう」
「しかし、丹月。 このビシャビシャの状態で入れる店など、あると思うか?」
「服のTPO以外は常識的に判断できるんだよなこの人……」
それはその通りであった。ただ、丹月には考えは一応あった。
「ありますよ」
「本当か」
「はい、そこは個室なんですけど、冷暖房が完備されていて」
「ほう」
「お風呂とドライヤーも備え付けられていて」
「うん」
「寝具までおいてあるんですけど」
「……………」
思いっきり、侮蔑の目。ただ、丹月は頑張って勇気を出した。というか、そろそろかなり寒くなってきているのだ。
「現状だと、三百メートル先に、お城の形をしたその施設があるんですよ。 代案があるなら、お願いします、割と切実に」
舌打ちが答えだった。
◆
冷えた身体には、乾いたタオルがあるというだけでもかなりありがたい。
「百さん、先にお風呂入ります?」
「ナニをするつもりだ?」
「しねえわ。強いて言うなら、服を乾かす努力」
どうやら百も、身体を温めたい気持ちはあったようで、それ以上なんかしら粘ったりすることなくさっさと浴室へと向かう。
しばらくして、水音がしてきたタイミングを見計らって、丹月も浴室付近へと向かう。
なにも覗きたい訳ではなく、単純に百が脱ぎ捨てたずぶ濡れの服達を回収するためだ。
だが。
(やけに、気になる……)
水の流れる音が、丹月の耳に大きく響き渡ってくる。
そもそも、同居しているのだから、こういう状況はしょっちゅうだ。さらには、そういうことの回数も、そこそこ重ねていて慣れてはいる、はずだ。
だから、これはきっとシチュエーションの──そういうための施設にいるということのせいだ。
頭では分かっている。
だが、下半身が熱を帯びてきていることもまた自覚していた。
(だめだ)
無心になる必要がある。
衣類をバスタオルにくるんで水気を絞り、ドライヤーやら空調の風があたる位置に干しておけば、三時間後には最低限の不快感は無くなるだろう。
ドアが開く音がした。
「待たせ……」
「こっちも、大体どうにかし……」
「なんだその格好」
変なタイミングで、声が揃った。
丹月は自身の服も乾かすために、下着を除いてほとんど脱ぎ捨てていて、要するに裸体に近いものを晒しており。
百はというと、着替えを回収されていたために、部屋に備え付けのバスローブしか着るものがなく。
互いに肌色がやけに艶かしく映る。
「うわあ……」
「私はともかく、お前がそのリアクションするのはおかしい」
「正直に反応しますか? えろすぎる」
「通報するか」
「捕まりたくないから、逃げます」
適当に返しながら、丹月はバスタオルをつかんでそのまま風呂場へと駆け込んだ。
温かいお湯を浴びるだけで、人はかなりリラックスできるということを身をもって実感する。とはいえ、じっくり浴びるにしてもシャワーだけなのでかかる時間はたかが知れている。
「これかあ……」
丹月もまた、着替えがないのは百と同条件であり、従って身に纏うものといえばバスローブとなる。
「上がりました~、って百さん?」
ベッドの上で、百は横たわっている。すうすうと規則正しい寝息が丹月の耳に届いた。
「あー……」
そもそも、水に濡れるということは意識するにせよ、しないにせよ、体力を奪っていく。それに加えて、かなり身体が冷えていたはずだ。なら、シャワーでさっぱりして、身体も温もった上で次に来るのは、眠気だ。
「そりゃそうなるか」
丹月はすぐとなりに腰かけた。頬に指を当ててみる。
「んぅ……」
意外なほどにその寝顔はあどけない。
丹月はしばらく眺めていても、飽きはこなかった。ただ、くわりとあくびが出る。いつしか、丹月も眠りの世界に落ちていった。
自分のものではない、温かさが最初にあって、それが徐々に違和感になってきて、丹月は目を開く。ぱちりと、百は瞬きをした。
ベッドのうえで、少し身体を傾けると、それだけで百の吐息に触れる。
「あー……何してんの?」
「寝顔を見ていた」
「何かついてました?」
「目と鼻と口が、あるな、と」
「眠ってなくてもありますよそれは」
口の中がやけに乾いていた。身体が少し軽くなっているように思える。
「どれくらい、寝てました?」
「お前がいつから眠っていたのかが、分からないが」
百の囁く声が、顔にかかる。
「少なくとも、30分程じゃないか?」
彼女も寝起きだからか、やけにしゃがれた声をしていた。
「あー、そんなもんか」
丹月が思っていたよりも、時間は経っていなかったらしい。流石に、衣服類もまだ生乾きだろう。
「ところで、なんですけど」
「どうした」
「近くない?」
「お前の方こそだろう、草餅め」
ぴったりと密着していて、丹月の脚はからめとられていた。
視線が絡んだ。
熱が交わった。
腰に腕をまわす。
軽く唇が触れた。
それならば、と。
「提案なんですけど。 ラブホテルのちゃんとした使い方しませんか」
「草餅め」
熱を帯びていた丹月の下半身へと、手が伸びてきた。
「最初から、そのつもりだったのだろう?」
「それは否定したいかなあ」
再度、唇が触れた。
「ちゅ……んちゅ……」
徐々に徐々に。深く。
「ん……ちゅ…………ちゅぱ…………ちゅ……ちゅっ」
舌同士が絡み合い始めた。
「ちゅ……んちゅぱ…………ちゅ……ぷはっ」
つう、と唾液の糸が重力に負けて落ちていく。
「へんたい」
「お互い様じゃない?」
丹月は既にはだけかけていた百のバスローブへと手を伸ばし、バスローブへと手を差し込んでいく。
「んっ……あっ……」
口から、キスをする位置を下へとずらしていきながら、手はその豊かな乳房をもて遊ぶ。
「ん…………あっ……………やっ……はあっ……あっ…………むねばっかり…………やあ…………やめっ」
「それは失礼しました」
百が纏っていたバスローブを、襟元から一気に開いた。ぶるんと、凶悪な双丘が露となる。丹月は、口づけをその丘の頂上にと移していきながら。
百はもぞりと内股を擦り合わせるように身動ろぐ。
「恥ずかしい?」
指が、太ももによって守られた秘所へと割って入った。
「聞……くな……ぁっ」
指がくちゅりと水音を立てて、指先を少し動かしていくと、少しずつだが女の身体が揺れていく。
「だいぶ濡れてる」
「ばか…………はぁん……あっ……はぁ……あっ」
チロチロと舌先で胸の突起をなぶりつつ、律動的に指先を動かしていくと、響く声があまやかに高くなっていく。
「そろそろ、挿入ますね」
「ん……」
こくりと、頷く。
備え付けのゴムを、自らに装着していると、物欲しそうに百が脚を擦り付けてくる。それはまるで、丹月におねだりをしているようで。
「百さん、めっちゃえろい」
「うるさ……」
丹月は一息に、己のイチモツを抵抗の全くない蜜壷へと差し入れた。
「あぁぁぁぁぁひぃん♡」
ゆっくりと腰を動かしていく。
「あっ……? あ……はっ……あん……はぁあ…………あっ……あっ……あっ…………あああっ♡」
「ももさん、こっちの方が好き?」
より深く、深いところへと腰を打ち付けていく。
「あっ……あっ……あぁっ……はっあ♡」
しなやかな二本の脚が、雄を逃がさないためにとがっちりと、腰を捕まえる。
「くぅ……!ももさん……!」
雄もまた、雌へと己の欲望を打ち続けていく。
「ひぃあっ!につき……♡いっ…………♡はぁぁぁぁん♡」
「ごめん、射精るっ!」
その後、ゴムを変えつつ結局三度吐精し、またもやゴムを丹月が外す。
「きれいにしてやろう」
断るひまも、受け入れるひまも与えられず、ぱくりとまるで食べてしまうかのように口へと、丹月の愚息が咥えられてしまった。
「え、あ、百さん?」
「ちゅる……じゅるるるるっ…………ちゅう…………ちゅぼばばば」
「あっ……くぅ…………まっ……………」
先ほどまでのお返しとばかりに、今度は丹月が蹂躙されていく。
「はぁ……うっ…………ちょ……!」
「ちゅるるるるるるるっ……………じゅっ…………ぷはぁ。 また、硬くなったな」
「そりゃ、なるよ……」
痛いほどに、張り詰めていた。
「そうでなくてはな」
「あの、百さん…………なぜ、コンドームの封を破いているのでしょうか」
「エチケットだ」
「そうだけど……!」
百は器用に口で、エチケットを丹月へと装着してしまうと、上半身を手で押し倒した。
「え」
女は男に股がると、張り詰めている男の棒へと腰を下ろしていく。
「次は、私がシてやる…………んっ……いい硬さだ」
「さいですか……」
「そうだ」
股がった百は、前後にグラインドしていく。その度に、丹月のイチモツは肉壷へとからめとられていき、頭の中が真っ白に染められていく。
「はあん…………どうだ……あっ……につき」
「やば……あ…………まって…………動きかえられたら…………あっ」
今までゆったりしたペースだったのが、今度は上下へと。どちゅどちゅと肉がぶつかり合う。
「あっ……あっ…………あっ……こっちの方が好みだろう……………ふっ……おまえは………」
「そ……やば………そろそろっ」
「いいぞ……イケ」
びゅるっ、びゅるるるっ、びゅる!
「ふぅぅぅぅ…………」
真っ白な快楽で埋め尽くされた丹月が、どこか冷静になった部分で、そろそろもう限界であることを悟り。
「百さん、その、そろそろ」
ぐりん、ぐりんと、これまでとは異なる動き。それは、間違いなく、まだ丹月を搾り取ろうとしている所作であって。
「そろそろ、どうした?」
「もう、む……くぅ…………っ!」
「んん…………まだ、なんだ? 硬くなってきたぞ」
ちろりと舌を唇に這わせながらそう告げる女。丹月は、己の末路を悟った。
◆
「くさもちめ」
「俺のせいだけじゃないよさすがに。 先に上がりますか?」
「……お前、まだなにかするつもりか」
「しねえよ」
百が立ち上がると湯船の中身が溢れていく。
「自宅よりはさすがに浴槽も広く作られているな」
「そうだね」