熱で溶けて 作:モスコミュール
端的に言えば今の丹月は。
「動けないんですけど」
「私が動けなくしているから、当然だ」
「そういうことじゃないんだよなあ……」
下半身にガッチリと重り━━というか百が乗っかっており、そしてどこをどうされているからなのかはさっぱり丹月には分からないのだが、上体を起こそうにもままならなかった。
「武術の悪用…………」
「考えてみろ、丹月。斎賀は基本的に女家系であり━━こういう技には需要があって然るべきだろう」
「正当な使い方!?」
さいがりゅうすげえや。
どういう時に活かされるのか。
と、まあ、冗談は一旦置いておいて、だ。
「なんで、百さんに、俺はソファで押し倒されたの?」
「分かりやすく言うならば、ストレス発散、あたりか?」
「疑問で返さないでください」
百は普段のジャージ姿ではなく、カジュアルめの仕事着で、要するに仕事から彼女が帰ってきて極めて早々のことであった。
「それに」
衣擦れの音。
あえて焦らすように。
丹月に見せつけるために。
徐々に百の素肌が顕になって。
そして、百は自らの胸を誇示するように、上体をすこしそらす。すると、物理現象に従って、その豊かな双房が形を変える。
ごくりと、生唾を飲み込む音がした。
「お前も、その気になっただろう?」
「なってないです」
「じゃあ、妙に、私にさっきからあたっている、この硬いモノは?」
「…………」
いつのまにか、丹月の拘束が解かれている。上体を起こす。目が合う。
ちろりと歓喜を内包した熱がはらんでいる。
「私はどうなってしまうのだろうな」
丹月の瞳に、どうしようもない期待を抱える女が映った。
ゆっくりと、体勢が逆転する。
「どうしてほしい?」
「お前はどうしたい?」
質問に、質問でかえされる。
だから、男は。
「お望みのままに」
「じゃあ……お前の成すがままに。けれど、激しくはしすぎるなよ?」
「善処します」
甘やかな声が響き渡るのに、そう長い時間は要しなかった。
◆
じんわりと、互いが互いに溶け合って、その境界が曖昧になっていく。
「草餅め」
「ん?」
囁かれるその声には、まだチリチリした熱の残り火が灯っている。
コツンと額同士が触れ合って、ゆるゆるとその熱を分け合っていた。
「丹月」
「どうしたの百さん」
決して同じ人間ではなくて、それゆえに一つになることを求めるのかもしれない。
「につき」
ゆるゆると腕が体に回って、再び距離がゼロになる。けれど、焦がすような熱さはもうなくて、じんわりじんわりと広がっていって、そしてどこかに散っていく。
「めずらしい」
「そういう気分なんだ」
背中に腕が回された。
心地よいあたたかさ。
やがて穏やかな眠りがやってきた。