※この作品はR-18です。

グルメ狂いにトリガーハッピー   作:ウルサス第二師団

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 エクシアの色恋が見たかったから書いた
 後悔はない、解釈を頼む(切腹の構え)


静的安全
PM 10:34 帰路


 PM 8:34 龍門 繁華街 レストラン「海乃月」

 天候:晴天 星模様:満天

 

 豪奢なカーペットの上に、一本の歯がころりと転がっている。元々その歯を持っていたであろうヴァルポの男は、縛られて悶えながら呻き声をあげていた。

 

 本来なら、この場は静謐ながらも優雅に食事を楽しむ場だったのだろう。飴色の華美な調度品に、照らすだけでなく鑑賞の役割も付随された暖色の照明。ともかく、店内の全てがそれを物語る。

 しかし、今この場は悶えるヴァルポの男と、一つのテーブル席に座して一皿のパイ料理を味わうフードを被った男以外、誰もいない。

 

 座る男の格好は、場の雰囲気に沿わないもの。

 良く言えばラフであり、悪く言えば無粋。白を基調としたパーカー付きの上着を身に付け、下は黒いスキニーですませ、腰元には一振りの長剣をぶら下げている。

 顔、髪はパーカーによって隠されたまま。

 マナーのマの字も知らなそうな装いであるが、カトラリーを動かす所作は見事なまでに完璧だった。

 

 やがて、男は食事を終える。

 卓上のもの全てを綺麗に纏めた彼は、かなり上機嫌そうに店を見渡すが、当然店内には誰もいない。

 すると、彼の顔が一転してかなり不機嫌そうになる。

 

「…………ああ、そうだったよクソッ…店主も逃げちまってんだ…礼も言えねぇなんて今日は厄日か? オイいつまでピーピー泣いてんだ。店ごちゃごちゃにされた店主の方がテメーの億倍は泣きてぇだろうが」

 

 男の不機嫌はヴァルポの男へと向けられる。

 縛られたままのヴァルポは大きく震えた。

 

「で? なんだっけか? ああ、言わなくていいぞ? お前さん確かにこう言った〝店主のせいでオレ達は割りを食った、これはその報復だ〟って」

 

 ヴァルポの襟を掴み、事情聴取のように男は詰め寄る。

 その時、ヴァルポには彼の胸元で揺れる社員証らしき物が見えた。薄いプレートカードには〝ペンギン急便 従業員:レプリカ〟と書かれている。

 

 彼はそれを見た瞬間、喉からヒュッと音を鳴らした。

 

 ペンギン急便───その名を知らない者はこの龍門にはいない。運送会社と銘打っているが、抱える戦力・人脈・コネクションのどれもが一級品。

 事実彼らに目をつけた組織は必ず手痛い報復を受け、それどころか比喩なく「潰される」事もある。

 彼等は所謂龍門の常勝者である。それ故に彼等の起こす騒ぎが市民たちからイベントとして親しまれてもいる。

 唯一、龍門近衛局は苦言を呈すが、ほぼ毎回ペンギン急便側が被害者である事、損害費をきっちり出す事、この二つが要因となって半ば放置気味だ。

 

 それが、ヴァルポの男が喉を鳴らした理由である。

 だがそんな事など知るかと言わんばかりに、レプリカという男は朗々と語り出した。

 

「この店の料理はな、まぁ何処にもあるような味だ。普段なら先ず行かねェさ。魚団子に至っては露店のジジイが売ッてるやつの方が10倍美味いし安い。

 けどパイ料理だけは別だ。よーくコーヒーに浸かった肉は香ばしく、生地の歯切れの良さと食感は格別だ。添えられたバジルにトマト、フレッシュチーズも加えてみりゃどうだ? あまりの旨さに頭が飛ぶぜ? まだまだ語り足りないが、こんな具合にクソ高ェが払う価値がある程の味があッた。そして俺は今日それを楽しみにしてたわけだ。仕事終わりの癒しにしてたわけだ」

 

 始まったのは食レポである。

 恫喝でもなければ恐喝でもなく、淡々とこの店の料理への評価だけを何故かヴァルポへ向けて話し続ける。

 ヴァルポは訳の分からない事態に混乱すれど、レプリカは徐々に苛立ちをその声に宿らせていった。

 

「いいか、いいか? よーく聞くんだ男よ。

 想像してみろ…お前は今、でかーい仕事を終えて疲れ切ッてる。雀荘で遊ぶ気力は無く、適度に安らかな時間を過ごそうと思ッてた。

 ようやく辿り着いた食事処…落ち着いた店内、静かな空間に食器がぶつかる音だけが微かに響き、数多の料理の匂いが鼻腔をつく中、お気に入りの食事にありつけた。

 自分だけの時間だ。誰にだッて必要だろ? そういうの。だがそこに邪魔が入ッた…どうだ? 今ちょッとイラッとしただろ? わかるぜ俺はそういうの。

 さらに邪魔は騒ぎになり…食事処は台無しになッた…ほら、そうともなりゃ…物騒なやり方で邪魔を片付けるのは当然の話だし…それだけで怒りが収まるわけもねェ。

 ここまで言えばわかってもらえるか? いや、分かりやすく今やろう」

 

 ばさり、とフードが剥がれる。

 あらわになったのは、長い緑青色の髪と瞳。側頭から生えた溝付きの、捩くれた黒い角。

 種族は鬼か、ヴィーヴィルか、魔族(サルカズ)か。

 判別はつかないが、ともかく憤怒の形相を浮かべる彼に、角はこれ以上なくぴったりだ。

 

 かちゃり、と鞘がついたままの剣を手に取る。

 柄から鞘まで真っ黒かつ片刃のそれは、そこかしこについた細かい傷によって、長年使い込まれたことを知らしめる。

 

 彼はそれを何度か握りしめて、よしと頷いた。

 

 そしてそのまま大きく、まるでボールを迎え入れる打者のように構えて───ヴァルポの男の頬を鞘付きの刃で思い切りひっ叩き、店の外まで吹っ飛ばした。

 

「───憂さ晴らしすんならちッたぁ周りに気ぃ配れやこの**龍門スラング**!!!」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 PM 10:34 龍門 ペンギン急便

 天候:晴天 星模様:満天

 

「ただいま帰りましたよーっと…」

「おう、遅かったな。女でもひっかけに行ってたか?」

「ワンナイトラブ騒動を期待してんならお門違いですっての。そういうのは卒業済みですよ」

「そうかい、円満そうで安心したぜ。痴話喧嘩で社員が二名とも鬼籍入りなんざ笑えねぇ」

 

 疲れ切った顔で帰ってきたレプリカを、新聞紙を読みながら迎えたのはサングラスをかけたペンギンだった。

 えらく発言がダーティーなこの一羽は、驚くべき事に世界的なミュージシャンかつラッパー兼、ペンギン急便の『ボス』…つまりレプリカの上司に当たる。

 本名は不詳。付いた名は『皇帝』『帝王』『E-Bro』『エンペラー』。出身にも謎が多い奇妙なペンギンだ。

 

「…何か今日不機嫌ですね? どっかから喧嘩でも売られました?」

「…それならまだ良かったんだがな…」

 

 ため息を吐いたペンギンは、一枚のメモ用紙をレプリカに押し付ける。

 急なことにやや面食らいつつも、レプリカは恐る恐るそれを受け取り、紙面に緑色の目を向けた。

 そこには〝明日アップルパイ抜き〟と乱雑な文字で書かれており、それを見た途端にレプリカは冷や汗をかく。

 同時に、吐き捨てるように皇帝が呟いた。

 まるで尋問かのようにゆっくりと、しかし若干棘のある声色で。

 

「お前が連絡の一つも寄越さなかったおかげで、俺ぁ随分と迷惑したぜ? 不機嫌なお前の女が運転したせいで、ウチの車は一台逝っちまったよ」

「あー…その、ボス。俺はまっすぐ帰ろうとしたんですが…ちょっと近衛局にいたわけで…その、な?」

「ああ、分かってる。テメェがわざわざ『海乃月』で騒ぎをでかくしたのも、そのせいで長い時間取調べを受ける目に遭ったのもな。言っとくがエクシアのやつはこれ全部知ってるぞ」

「うわはははやべー全部バレてる」

 

 すぱぁん! とペンギンの羽がスナップを効かせて音を鳴らす。

 

「いっッだい!?」

 

 言わずもがな楽器は緑青色の角付きである。

 痛みに悶える彼をよそに、皇帝は携帯電話をレプリカの眼前に放り投げる。

 

「明日も『安全運転』じゃあ命に関わる。機嫌取っとけ」

「うっす…あー…ちなみに車の方は?」

「仕方ねぇが廃車だ。代車は手配してあるから気にすんな。どの道、買い替え時だったからな」

「サスペンション歪んでましたもんねー…」

 

 ぺたぺたとその場を後にする皇帝。

 遅れて聞こえたあくびの音で彼が眠いのだと分かったのか、レプリカは〝お疲れ様です、ボス〟と声を投げる。

 対してペンギンは、ひらひらと羽を振るだけだった。

 

 見送りの後でレプリカは、ちらと時計を見る。何度見ても深夜に差し掛かっている今日を恨めしく思いつつ、携帯電話を手に取った。

 そして見知った番号へとかける。内心はおっかなびっくり。足元はそわそわと落ち着かず、ソファに腰を掛けても治らない。

 

 〝帰りが遅くなるなら必ず連絡する〟 

 

 レプリカと通話相手が付き合う上で作ったルールだ。

 どうにも「帰らない」ということがあまり好ましくないようで、相手が半ば一方的に作ってきたルールなのだが「何かと物騒な世の中だし」とレプリカは悪くないルールと思っている。

 

 しかし今日のように連絡をすっぽかした日には、少し困る。ペナルティーでアップルパイは抜きにされるし、最悪自宅や隠れ家が占領されるしなんなら備蓄がテイクアウトされてすっからかんだ。

 まいったな、とため息を吐きつつ、レプリカは通話が繋がるのをひたすらに待った。

 そこから体感にして5分ほど。繋がった電話から飛び込んで来たのは、不機嫌極まった声。

 

『…あのさぁ、連絡も入れずにどこに行ってたの?』

「近衛局です…いやほんと申し訳ない…」

『謝ってもアップルパイは抜きだからね』

「…………うっす、以後気をつけます」

『うん、よろしい』

 

 揺らがないペナルティに対し、かなり不服そうな声での返事である。

 

「つか、今どこにいんだ? 隠れ家?」

『今日は家。勝手に上がってるよ。そう言えばさ、台所が若干匂うんだけど、タバコ吸い始めた?』

「…もう吸わねぇよ。一回で懲りた。菫じぃは何であんな渋い煙を肺に入れんだ? ウルサスのやっすいザワークラフトの方がまだマシだった」

『なーんだ。シガーキスとかやってみたかったのに』

「この先一生その機会はねぇよ諦めな」

 

 とんとん、と靴を履き直しながらぼやくレプリカはその場を後にする。外を出ると広がるのは、見慣れた龍門の風景。深夜に差し掛かった都市には電光が煌々と輝き、車が往来を走り、酒で赤らんだ顔をした人々が闊歩していた。

 

『あ、そうだ! 明日角削る日じゃなかった? ちょうど家だし、寝る前に削っちゃおうよ、私やるから』

「お前の角削り雑なんだよ!! ジェイに目ぇ逸らされるわアーが馬鹿笑いするわで散々だったってぇの!!」

『大丈夫大丈夫! 今度はちゃんと本とか読んで学んできたから!』

「本当に大丈夫なんだろうな…つかその本だって場末で売ってるような与太話しかないやつとかじゃねぇよな?」

 

 その中を、一人の角付きが歩く。

 尾は見られず、種族は分からない。

 

「…っと、バスきたから一度切るぞ」

『りょーかい、常備菜あっためとくよ』

「サンキュ、ああでも緑の蓋のやつは開けんな。あれ失敗作、明日カレーにぶちこむ」

『またその処理方法…まぁいいけどさ』

 

 バスに乗る前に、角付きの男は通話先の女を本名で呼び、そして彼もまた本名で呼ばれた。

 

「じゃあな、レミュエル。先に寝んなよ」

『そっちこそバスで寝落ちしないでよ、アルテオ』

 

 




基礎情報
【コードネーム】 レプリカ(本名:アルテオ)
【性別】 男
【戦闘経験】 14年(推測)
【出身地】 カジミエーシュ
【誕生日】 12/24
【種族】 ヴィーヴィルと登録されている
【身長】 169cm
【鉱石病感染状況】非公開
【物理強度】 卓越
【戦場機動】 優秀
【生理的耐性】 優秀
【戦術立案】 標準
【戦闘技術】 卓越
【アーツ適性】 優秀
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