※この作品はR-18です。

グルメ狂いにトリガーハッピー   作:ウルサス第二師団

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R展開まで行きたかったけど五千字行っちゃったのでとりあえず投稿!すまねぇ!次回ちゃんとするから!



AM 00:32 世忘れ

「やばい、寝てた」

 

 龍門の夜を走るバスの中。数える程の客しかいない車に揺られ、寝落ちしていたレプリカは目を覚ます。

 車内表示を見る限り、このまま寝ていたら目的地───自宅近辺───を乗り過ごしていただろう。

 彼は慌てて停車ボタンを押す。

 

『次 止まります』

 

 安堵のため息を吐きつつ、男は車窓を見る。

 広がるのは電光の群れと摩天楼。星の光すら霞ませるそれを見て、レプリカは微笑む。

 

「…カジミエーシュとは大違いだやっぱ」

 

 過去がレプリカの脳裏をよぎる。カジミエーシュ、炎国から離れた地。度を越した資本主義都市国家。

 その地の電光の八割は企業広告であり、レプリカはその国にあまり良い印象を持っていない。

 

 人の命が文字通り見せ物な上に、息をするように暗殺が行われる。それに加えて、その要因の殆どが「儲け話」や「企業間競争」なのが輪を掛けて最悪だ。

 道理やルールがある分、龍門(ここ)の方がよほどマシではなかろうか、とレプリカは内心で毒を吐く。

 

「いや、五十歩百歩ってやつか」

 

 あくびを噛み殺し、そんな事を言う。

 そんな風に考え込んでいれば、バスは目的地に停車する。眠たげな目を擦り、眠気で重たい足を引き摺りながら代金を支払ってレプリカは降車を終えた。

 

 途端、冷たい風が彼の身を刺した。

 風に当てられ、レプリカの緑青色の髪が揺れる。

 そよぐ一つ結びにつられて、彼は空を見上げる。

 必然、そびえ立つマンションに視線が行く。このマンションはレプリカの自宅である。

 そして彼の部屋の電灯は、出勤前に消したにも関わらず見事に光っていた。

 原因は言わずもがな、同僚であるレミュエル(エクシア)だ。

 

 本来、帰宅先に人が待っているという事実は、おおよそ温かいものであるはずなのだが───本日のレプリカ(アルテオ)にとっては、腹を括る必要のある事実であった。

 

 レプリカの部屋は八階の端にある。このマンションの最高階は十階。部屋の階層が高く、また端に近い程家賃は高い。八階ともなれば、殆ど住人が入っていない。

 これはレプリカにとってメリットのある環境だ。

 例えどれだけ騒ごうが、迷惑を被る住人自体がいないのだから。マンション自体の防音性は高いが、念には念をというやつである。

 

 8階の端の部屋、805号室に着いた。

 レプリカは渋々と社員証を外す。

 そして彼はおっかなびっくり自宅の扉を開ける。

 すると、玄関には一人の少女が待っていた。

 紅玉のような快活そうな瞳。

 艶のある赤いショートヘア。

 頭の上にある光輪と、背中の羽。

 言わずもがな彼女こそエクシアである。

 

 レプリカを出迎えた彼女は、左手にいかつい金属加工用ヤスリを持っていた。

 それでも表情は笑顔であり、レプリカの帰宅を喜んだ。

 

「おっかえりーアル!さぁ角を」

「おッじゃましましたぁ!!」

 

 真っ青な顔のレプリカは3秒で扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 PM 11:08 龍門 住宅地 マンション『アマリリス』

 天候:晴天 星模様:満天

 

 あの後、エクシアは大慌てで先の出迎えをジョークだと説明し、レプリカも気を取り直してようやく帰宅した。

 そして入浴を終えた彼は部屋着に着替え、既に温められていた常備菜を夜食として食べ終えた後、レプリカの帰宅を待つ間に、とっくに夜食も風呂も済ませていたエクシアと適当な会話を続けている。

 

「今回のは本当に命の危機を感じたからな俺は。復唱しろ〝角の中には神経が通ってる奴もいる〟サン、ハイ」

「〝角の中には神経が通ってる奴もいる〟」

「よーし、忘れないでくれ本当に。そして広げている削り用品をしまってくれ今すぐにでも」

「えー、せっかく勉強したんだしさせてよ! 今回は本当に大丈夫なんだって!」

「………………ほんとぉ?」

 

 エクシアの前にずらり、と並ぶ小物。研磨剤。仕上げ粉。保湿クリーム。クリーニングクロス。

 正直なところ、ここまで用意がされていて断るのもな…というのがレプリカの内心だ。

 エクシアも両手を合わせて頼み込んでいる。ここまで来ると、断り切った方が、後味は悪くなるだろう。

 なので、緑青色の男は折れた。

 

 一つ結びの髪を解く。長い髪はさらりと流れ、レプリカはそこに指を通して髪を分ける。

 露わになったのは角の根元。側頭部にあるそれは、黒く捻れて溝があるもの。

 

「……どーぞ!」

「やりぃ! なんだかんだで折れてくれるの好きだよ!」

「テメェの銃軒並みジャンクにしてやろうか? ん?」

 

 大人しく差し出された角を、楽しげに触るエクシア。ぺたぺたと触れながら〝ひと回り大きくなったね〟と思ったとおりの言葉を吐き出す。

 レプリカはそれに簡素な相槌だけを返した。

 不器用なのか、素っ気無いのか曖昧だ。

 

「えっとー、まず布に研磨剤を馴染ませて、溝を埋めない程度に優しく撫でる…こんな感じ?」

「…なんだ、ちゃんとした勉強だったのかよ」

「大変だったよ、ネットは胡散臭い話しかないし、リターニアの本は変な話ばっかでそのくせ内容は薄いし、かと言って炎国のだと内容バラッバラでさぁ…結局、極東の本が一番だったんだよね」

 

 そりゃそうだろうとレプリカは笑う。

 リターニアは筋金入りのアーツと貴族の国家。詩的な表現ばかりの本に当たる可能性は高いし、本来の内容が希釈されたものもままあるだろう。

 炎国はそもそもとして、人種も人の数も多すぎる。まとめようにも、資料が山ほどあるのだ。よほど高い本でなければ、良い結果は得られない。

 その点、極東は書籍に関してはまだ信頼出来る。向こうは紙媒体の文化が根強いのか、内容が細かいものが多い。

 無論ハズレもあるが、刀一本がバカみたいな値段で売れる極東から商品を取り寄せるのだ、商売人は他の商品の質には拘りたいだろう。

 となると、書籍に関しては極東が一番だ。

 

「極東…ホシグマに譲って貰ったのか?」

「あたり! バーで会って話したら〝もう暗記しきってるのでよければどうぞ〟って。かっこいいよねぇ」

「姉御肌だなあの人ホント」

 

 レプリカはエクシアに頭を預けたまま、カラカラと笑っていたが、急にその顔を歪ませた。

 

「…っ…」

「あ、ごめん。痛かった?」

「いや、違う」 

 

 角の付け根辺りに、鋭い痛みがあった。

 レプリカは頭に手を伸ばして、そこに触れる。

 まるで頭の中を直接掴まれてるような感覚だ。

 頭痛ともまた違った感覚。

 角に触れれば触れる程、痛みが激しさを増していく。

 いやそもそもこれは痛みなのか?

 困惑の中で思わず手を頭から離すと、エクシアが心配そうな顔で覗き込んでくる。

 

「…なんかヤバイんじゃないのそれ」

「……大丈夫だ、心当たりはある」

 

 レプリカは深呼吸をして、角に手を伸ばす。

 

「…多分、成長痛だ。久しぶりに来たな…。

 これだから中に神経入ってると嫌なんだよ」

「……そっか、なら良かったけどさ。無理しないでよ」

「分かってるっての。俺だって死にたくはないんでね」

「ならよし!……ところでさ、角ってずっと伸びるの? クロワッサンからその辺りの話全然聞いたことなくてさ」

 

 エクシアの問いに、レプリカは肩をすくめる。

 

「知らん、こっちが知りたい。けどまぁ、この調子だとほったらかせばずっと伸びるんじゃないか?」

「うへぇー、この先ずっと削らなきゃじゃん……」

「サラッと言うなぁ」

 

 仕上げ粉で角を磨くエクシアに、そんなことをぼやいてはあくびを一つ。深夜も深夜だ。日付も変わる頃合いで、瞼はほんの少し重い。

 けれど寝るには惜しい。

 そんなふうに考えながら、レプリカは自身の角を削る手に触れる。

 

「びっくりした、どしたの急に」

「べっつにぃ、…うん、まぁいいか」

「?」

「ん、角削ってくれありがとうって話」

 

 不思議そうに首を傾げるエクシア。

 彼女も角削りを終えたのだろう。

 工程は保湿液を塗り終え、乾拭きまで終えている。

 そしてその後、小道具の片付けまで終えた。

 

 それを見計らってから、レプリカはよしと頷き棚の方へと手を伸ばした。

 そして棚の中から袋を取り出す。

 取り出した袋の口を縛る紐を解き、中から平べったい青色の缶を出した。表面を見るに、どうやらそれは保湿クリームのようだ。

 エクシアはそれを見て目を剥く。

 

「…それ結構高いやつじゃなかった…?」

「物と食には拘るもんでね。塗ってやるし、プレゼントだ。角削りのお返しな」

「わぉ、ありがたいねぇ!」

「そこ座ってな、床上じゃなんだろ」

 

 エクシアがソファに座った。

 それと同時にレプリカが青い缶を開ける。

 中には白い軟膏が入っていた。

 開封時に部屋中へに甘い匂いが広がる。

 花の蜜のような香りだが。

 だがどこか懐かしい気持ちにもさせる。

 そういえば、サルゴンには見事な花園があると、誰かが言っていた気がするなとレプリカは考えつつ口を開いた。

 

「ほんとは誕生日にやるつもりだったんだけどな…ほら、手ぇ貸せ」

「はーい」

 

 差し出された手に男は指を乗せ、まず薬を手に取る。そしてそれをエクシアの手の甲に薄く伸ばしていった。

 ひんやりとした感触が手のひらから腕を通って首筋を通り、背中まで抜ける。

 ハンドマッサージも兼ねているのか、優しい手つきが、何度も銃を握った手を包む。

 エクシアはその心地良さに、ふぅっと息をついたを

 

「お気に召しましたかね」

 

 まるで跪くような体制で、レプリカが笑って問いかける。

 

「さいっこうだよ」

「そりゃ何より、顔も今やるか?」

「お願いしようかな」

 

 レプリカは返事を聞くなり、缶の中からもうひと掬いし、今度は顔に広げていく。

 鼻先に香るのはラベンダーに近い香りで、やはりこれも懐古的な気分になる。

 ほんの少しだが、レプリカの胸中に切なさがよぎった。彼はそれを誤魔化すかのように、言葉を吐く。

 

「……今日の仕事はどうだった?」

「誰かさんが帰りの連絡をすっぽかしたからイマイチだったよ」

「悪かったって…不本意だったんだよこっちも」

「まぁ、いつも通りで安心したけどさぁ」

 

 言葉を交わしながら、レプリカはクリームを肌の上に滑らせていく。

 最後に額を撫でるようにして、クリームを塗り終えた。

 その頃にはエクシアの顔はすっかり綺麗になっていて、彼女は満足げに笑みを浮かべる。

 それを見て立ち上がったレプリカに向けて、赤い瞳が間近に迫る。鼻先が触れ合うほどの距離で見つめ合い、二人は微笑んだ。

 

「……ん」

 

 ゆっくりと唇を重ねる。

 互いの熱を確かめるように何度か啄み、やがて離れていく。

 

「えへへ、あたし幸せだ」

「……こっちもオーバードーズかってくらいには」

「例えには悪趣味じゃない?」

 

 ケラケラと笑うエクシア。その頬に手を添えて、レプリカはもう一度顔を近づけた。

 赤い髪の女は期待するように静かに目を閉じる。

 二度目のキスは先程よりも長く、少しだけ深いもので、互いに相手の舌を追いかけて絡ませる。

 そのままソファに押し倒そうとするレプリカだったが、エクシアがそれを手で制した。

 不思議そうな表情をする彼に対して、エクシアは悪戯っぽく笑いかける。

 そして耳元で〝ちょっと早いんじゃない?〟と囁いた。

 

「なら、いつだよ。バァカ」

 

 顔を上げ、見下す形で緑青色の角付きが笑う。

 笑顔のまま、赤い髪の女の耳に手の甲で触れる。

 

「あはッ、ダメだってば……」

「わかってるよ、スキンシップだけだろ。明日に響く」

「そういうこと言わなきゃいいのに」

「俺が甘ったるいこと言うと笑うだろお前」

「……そーだけどさぁ」

 

 クスリと笑ってエクシアはレプリカの首に腕を回す。

 ただの戯れと青年は油断したまま。

 だから力もそれほど入っていない。

 それを理解すれば、彼女はニヤリと笑う。

 そしてそのまま身体の重心をレプリカの方へと傾かせ、自重を使って彼をそのまま押し倒す。

 

「オマエっ!?︎」

「ヘヘッ、捕まえたりぃ〜」

 

 マウントポジションを取ったエクシアはそのまま覆い被さり、彼の胸に顔を埋める。レプリカはその頭を掴んで引き剥がそうとしたが、意外にも強い力で抵抗された。

 仕方なく諦めて、自分の上にいる女に声をかける。

 

「どけ、重い」

「うーそーだーねー!」

「……まったく」

 

 呆れた様子でため息をつくと、それを許しと捉えたのかエクシアは彼の胸板に頬ずりするようにして、顔を上げた。

 その顔に浮かぶのは満面の笑みで、レプリカはその顔を見ると苦笑する。

 

 そして、彼女の頬に手を添える。

 すると今度は男は自分から口づけをした。

 しばらく無言の時間が続く。

 男が口を離すと、彼女が首に抱きついてくる。

 男はそれを受け止め、今度は優しく抱きしめ返す。男女はお互いの体温を感じながら、静かに寄り添っている。

 その最中でふと、エクシアは呟いた。

 

「……ねぇ」

「なんだ?」

「どこに行っても、必ず帰って来てよね」

「当たり前だろうが」

 

 間を置かずに返ってきた答えに、エクシアは嬉しそうに微笑む。

 

「うん、それでこそあたしの騎士様だ」

「大袈裟すぎんだよ、あと騎士はやめろ。

 …お前が思ってるやつとは遠すぎる」

「そんなことないと思うけど」

「いーや、そうだね」

 

 微笑んだままのエクシアを見て、それを隙だと思ったのだろう。

 

「オマエの考えてるような騎士は、飼い主を襲わねぇだろうが」

 

 その言葉と共に、彼の手がエクシアの腰を抱く。

 二人の距離はまた縮まった。

 

 エクシアは目を丸くしたが、すぐに笑顔になる。

 そして瞳を閉じる。再び重なる二つの影。静かな部屋の中で聞こえる音は、口吸いの音のみ。

 しばらくして、唇が離れるとレプリカは赤い髪を撫でながら言う。

 

「…だめだやっぱ。触れるだけじゃ足りねぇ。

 ぜんッぜん足りねぇ」

 

 そう言って彼はソファから起き上がり、同時に身を起こす形になったエクシアの手を引いて立ち上がらせた。

 キョトンとした表情を浮かべる彼女に対して、レプリカは口を歪めて笑う。

 そして手を握ったまま、こう言った。

 

「やっぱ抱いちゃ、駄目か?」

「……まさか。でも急じゃない?」

「さっきまでのやり取りは何だったんだって話になるもんな」

「あはッ! それはそうだね」

 

 二人は見つめ合い、小さく笑い合う。

 

「どうせならベッドの上がいいか」

「あー……、確かに」

「だろ?ほら行くぞ」

 

 

 そんなことを言って、男は女の手を握って寝台へと歩を進めた。二人は今が深夜なことも、時間すらも忘れて行く。

 寝台の上、真白なシーツに二人は座る。

 レプリカは膝上に乗せたエクシアの手首を握り、指先を這わせる。くすぐったさに彼女は身を捩らせるが、構わずに愛おしそうに撫で続けた。

 やがて腕を伝い、彼女の肌に触れる。

 

「…優しく、は無理だよねアルだもん」

「どうだか、気分によっちゃそうするかもな」

「そっか、楽しみにしてるよ」

「ハードル上げるなよ…」

 

 言いながら、今度は彼女の太腿に手を置く。そしてゆっくりと外側に向かってなぞっていく。

 

「なんか……変な感じ……」

「嫌か?」

「ううん、大丈夫だよ。でも、ちょっと不思議だなって」

 

 女が身を捩り、男の目を見る。

 

「こうなるなんて、最初の頃は全く思ってなかったのに」

「そりゃお互い様ってところだ」

 

 つう、と滑る指はやがて天使の腹に布越しで触れた。

 




レプリカ:個人履歴
カジミエーシュ出身であるが、現在は龍門でペンギン急便に所属し、トランスポーターとして活動中。コードネームは「カーテナ」「スクーン」と多岐に渡り「レプリカ」という名もコードネームの一つのようだ。現在はペンギン急便との協定に基づきロドスの前衛オペレーターとして、現場で火力支援を行う。
健康診断
【ペンギン急便の要求により、非公開とする。】
皇帝さんからの要請? ええと、はい。わかりました…けど、いいんですかねこれ? いや、まぁ…確かに他企業の問題なら我々が関わる余地はないですが…
───医療オペレーターR.T.
……………
───シャイニング





ふと思ったんですけどサンクタの光輪って掴んだらどうなるんでしょうね?掘り下げやったら書こうかしら光輪攻め


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