※この作品はR-18です。

魔宝戦姫はふたなりチンポにガチ恋する   作:人の心を捨てないと書けない

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サファイアタイガー
猫宮 真央【1】


「…はぁ、疲れたぁ…」

 

 ベッドの上で寝転ぶ少年、真央。今日も学校だけでなく、魔宝戦姫として戦わねばならず疲れが実質2倍となっていた。

 うとうと、と意識が落ちて行く。夕飯を食べ終わった後の自由時間。それは普段であれば趣味に使うのだが、今日の彼にはそんな余力は余っていなかった。

 

「ふぁぁ…んんぅ……。 ……!?」

 

 体が眠りにつく…それを阻害する様に、彼のポケットの宝石が光る。

 怪人が現れた合図だ。

 

「………もう、ジュエル・アルター、セット!」

 

 窓を開け、宝石を掲げて変身する。彼には戦わないという選択肢は無い。怪人に抵抗できるのは、自分達だけなのだから。

 

 

「兄ぃ(おにぃ)、先に風呂入るー? …って、いないし」

 

 真央は…いや、サファイアタイガーは窓から外へ飛び出した。宝石が導く場所へと、屋根から屋根へと飛び回る。辿り着いたのは、人気の無い山奥の公園。

 

「……? 誰もいない…」

 

 そこには、仲間たちはおろか怪人すらいない。その気配も感じ取れない。

 公園内は静寂に包まれている。

 

 

 ……嫌な予感がする。

 

 

 サファイアは、一度この場から離れて仲間と合流しようと考えた。そもそも、何もいないのだからここに長居する必要はない。

 

 

 パキッ…

 

 

「………!」

 

 奥の林の暗がりから、枝が折れる音がした。その音は一定の間隔で、静かな公園に響く。

 間違いなく、誰かの足音だ。

 

 サファイアはすぐさま、魔力で作った矢をつがえ、足音のする方向へ弓を構える。

 

 鬼が出るか蛇が出るか、サファイアは警戒を緩めない。足音はだんだん近づき、その何者かの輪郭がぼんやりと見えてきた。

 背丈は人と同じくらいで、すらりとした体型。そして、月明かりに照らされたその姿は、長い緑の髪が特徴の…

 

「…エメラルド?」

 

 自分のよく知る人物であった。

 

「そんなの構えて、どうしたのよ」

 

「あ、ご…ごめん」

 

 サファイアはすぐに弓を下ろして、矢を魔力へと霧散させる。どうやらエメラルドは早く到着していたようだった。

 

「…その、エメラルド。怪人は…?」

 

「怪人…あぁ、それなら奥よ。二人で戦いましょう」

 

「皆んなを待たなくて良いのかな?」

 

「えぇ、そこまで強くは無さそうだったわ」

 

 

 …なんだろう、この感じ。

 

 

 頼れる仲間で、幼い頃から一緒に成長してきたエメラルド…涼葉と合流できたというのに、サファイアの胸騒ぎは収まらなかった。

 

「…うん、行こう」

 

 嫌な予感はするが、エメラルドと一緒なら大丈夫だろう…と、サファイアは一先ず林に近づく。やはり、中は真っ暗で何かを視認できる環境では無い。

 

「…ねぇ、エメラルド。本当にここに何かい…ぎいっっ…!?」

 

 

 幼馴染を疑いたくは無いが、少しだけこの状況を不審に思ったサファイアはエメラルドに確認を取ろうと振り返った。しかし、その動作は途中で止められた。

 

「がっ…うぁっ……!」

 

 サファイアを電流が走るような痛みが襲う。地面にはサファイアを中心とした不気味な円が描かれていた。

 

「がぁっ……! …はぁっ…はぁっ…!」

 

 不気味な紋様は姿を消したが、痛みで体が動かず地面に突っ伏す。

 

「エメラルドっ…だいじょう……ぶ?」

 

 痛む体に鞭を打ち、エメラルドがいる背後を見る。しかしエメラルドは地面に倒れ痛みに悶えておらず、余りにも平然と立っていた。

 

 

 

 エメラルドは巻き込まれなかったのか? だとしても、心配の言葉一つかけないのはおかしい

 

 

 

「エメラルドじゃない…君は、一体…!」

 

 

 

「うふっ…あははっ……。ダメ元でやってみたけど…不用心なのね。サファイアちゃん?」

 

 エメラルドの姿をした何者かはひとしきり笑った後にそう言った。そしてその姿がぐにゃりと歪んで、別の姿へと変化した。

 

 とんがり帽子を被り、黒いマントが付いた学生服のようなものを身につけた…人間と遜色ない見た目だ。

 帽子の隙間から漏れ出す金色の髪が月明かりを反射している。

 

 

「……!? にん、げん?」

 

「人間とは違うわ。私はウィッチ。基本は同じだけど」

 

 サファイアはもっと異形な物が化けていると思っていたため、そのギャップに驚かされる。今までと違い、人の姿をした敵ということもあり若干の抵抗はある。しかし、その誰かに化けるという力の恐ろしさをサファイアは理解していた。

 

 

 

 僕に化けて、エメラルドや皆んなの元に行かれたら…

 

 

 

「くっ…! シャイン……」

 

「アロー」

 

 矢を作り出し、それを放とうと弓を構えた。しかし、ウィッチはそれよりも早く魔力の矢を打ち出す。

 

「いっ……!?」

 

 それはサファイアの腕に当たり、ウィッチは間髪いれずに魔力の球で追い討ちをかける。

 

「ぐうっっ…! ぎっ…がはっ…」

 

 後ろに吹き飛ばされて、遊具の滑り台に背中をぶつける。手に持った弓は遠くに飛んでいってしまった。

 

「ごめんなさいね。あなたが苦しんでいるうちに術式を仕込んで置いたの」

 

 背中を強く打ち、呼吸もままならず枯れたような息が漏れるばかり。その場から逃れて、なんとか仲間たちと合流しなければならない。

 土汚れなど気にせず、這いずりまわる。

 

「大丈夫よ。殺すつもりは無いわ。生捕りにしろって言われてるんだから」

 

 苦しむサファイアに近づき、そう伝えるウィッチ。

 

「…げほっ……げほっ………っ! はぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!」

 

 サファイアに残された最後の手段、それは不意打ちだ。瀕死の自分に油断して不用意に近づいてきた所を襲う。隠し持っていた短剣でなけなしの力を振り絞り、ウィッチに振り上げる。

 

「そんな! まだ動け…」

 

 動揺を見せるウィッチの姿がサファイアの目に映る。サファイアは油断して瀕死に追い込まれたが、その油断を突いてこの状況を打開できた。

 

「なんて、ね?」

 

 両手でしっかり振り上げ、あとはその体を貫く。それだけのはずなのに、腕が動かない。

 

「私は油断してあげない。惜しかったわね」

 

「…はっ…はっ…そん、なっ…」

 

 

 もう力は残っていない。膝を付いて、その場にへたれこむ。ウィッチはサファイアの顎を指で押し上げる。

 

「ふふ、可愛いわね。喜んでくれると思うわ」

 

 ウィッチはその手に持った杖で地面に何かを描き始めた。しばらく経った内に、二人の姿は公園から消えた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 猫宮、と表札の出た家のインターホンを鳴らす。今出まーす、と陽気な声がスピーカー越しに響く。

 

「どちら様で…って、涼葉さん! お久しぶりです!」

 

「うん、久しぶり」

 

 出てくれたのは、私の幼馴染の真央…の妹の聖(ひじり)だ。子供の頃は真央と一緒に遊ぶとなると、絶対に一緒に着いてきていた。そのため、私とも仲が良く、私にとっても妹と言えるような存在だ。

 

「聖、あいつ…いる?」

 

「兄ぃですか? うーん、それがいつの間にかどこかに行っちゃったみたいで…」

 

 一声かけてくれればいいのにー。と、ぼやく聖。

 

「…そう、ありがと」

 

「何か用でしたか? 帰ってきたら伝えておきますよ!」

 

 自信満々に胸を張る聖。特に伝えたい事はなかったのだが、何か理由はつけておかないといけない。

 

「…ノート借りてて、明日返すって伝えてくれる?」

 

「はいっ、わかりました!」

 

 まったくの嘘っぱちだが、聖がそれに気づく事は不可能だ。挨拶を済ませて、その場を去る。

 

 

 

 

 

 珍しく夜中に怪人が現れて、私たちは戦うことになった。宝石の導くままに着いた場所には、真央を除いた四人と怪人がいた。

 

 難なく倒す事はできたが、真央がいないことが引っかかった。

 

「疲れて寝てるんじゃ無いですかぁ?」

 

「これで三件目だからね。疲れているのも無理はないさ」

 

 詩織と蒼依先輩はそう言って特に気にした様子もない。ただ、なぜか気にかかる。

 

 

『おかけになった電話は、電波の届かない所にあるか…』

 

 

 電話をかけてもメッセージを飛ばしても、反応は帰ってこない。

 

 寝てるから反応ができない。そう考えれば自然だろう。だというのに、私の不安は大きくなるばかり。居ても立っても居られず、彼の家に直接訪問することにした。

 

 

 

 

「なんで、家にも居ないのよ」

 

 道端に落ちていた缶を蹴っ飛ばす。こんな八つ当たりをしても、ちっとも気分は良くならない。

 

 真央は、家族に何も伝えずに外へ出た。きっと、怪人出現の合図に反応して出たのだろうと思う。なのに、私たちとは合流していない。

 

 考えても、全然わからない。

 

 …いつの間にか、メッセージの通知がある。

 

「…!」

 

 そのメッセージの送り主は…少し期待したのだが、母だった。

 内容は、もう遅いから帰ってこいとの催促だった。…気づけば、もう11時だ。

 

 親としては心配だろうから、こんな連絡が来るのは当たり前だ。まぁ今の私なら暴漢に襲われようと、抵抗どころか返り討ちにできるだろうが、私が魔宝戦姫である事は知らないから仕方がない。

 

 結局、もやもやを抱えながら家に帰った。朝になって学校へ行けば、きっとまた会えるだろう。そう自分に言い聞かせて、眠りについた。

 

 

 

 杞憂であったのか、真央は翌日に学校へ来た。

 

 

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