僕はいまさらながら、自分がどうしようもなくクズなことをしているという自覚だけはあった。
最後の一線を超えないからなんだというのか。
以前に咲と肌を重ねたときのことはすべて「咲が悪い」と言い訳してきた。あそこまで誘惑されて、むしろよく我慢したものだと自画自賛したぐらいだ。
そして今回もそうだ。言い訳ばかりが頭に浮かんでいる。
ここで咲を突き放すのは可哀想だとか、一度やったんだから二度やっても変わらないだろとか。
自分を叱りつける理性の声が小さくなっていくのを感じながら、白い膨らみを弄ぶ。けれど気が散っていて、まるで愛撫になっていなかった。
「蓮司くん……ひどく乱れた電波だわ」
咲は首をかしげて、乱れた髪を揺らしながら微笑んだ。
彼女は毛ほども悪びれる様子がない。吹っ切れている……そんな印象だった。少なくとも、僕にはそう見えた。
それが少し癪だった。
まだ迷っている僕を置いていこうとしているみたいで。
「キミはたぶん……こうすることで僕に罪悪感を植えつけて気持ちを縛り付けるのが目的なんだろう? 告白しようと思っても咲と透に負い目を感じることになるし」
「そうよ。だから……」
と、咲は僕の首に腕をまわして、ぎゅっと抱き寄せた。
耳に彼女の吐息がかかり、くすぐったい。
「……私はどんな手を使ってでも、透くんにあなたはあげないし、あなたに透くんはあげない」
「まるで透への告白が成功するみたいな言い方だね」
「するわ」
咲が身じろぎをしたかと思えば、彼女の立てたひざが僕の股間をぐいぐいと押し始めた。
すでに痛いぐらい固くなっている部分に刺激が加えられて、僕は「くっ……」と小さな快感に呻いた。それを聞いた咲は楽しそうに目を細めた。
「透くんも蓮司くんのことを憎からず思っているでしょうし、断る理由もないでしょう。過去のいじめの件は忘れたりしないでしょうけれど、いつまでも恨むような子でもないもの」
「そもそも、僕に透に告白する資格があると思うかい?」
叱られている子供のような気分で問いかける。
透が好きなはずなのに咲にも惹かれているうえに、こうして裸で抱き合っている。そのことに罪悪感があった。
そして、今日子からの許しは二度と得られないのだ。
「あら、逆になぜ“無い”と思うのかしら」
「……えっ?」
きょとんとする僕に、咲は言った。
「過去にいじめていたから? こうして私と裸で向き合っているから? それとも……透くんのおばさまに二度と許しを得られないからかしら」
「どうしてそれを……」
「いままでずっと電波がだだ洩れだったわよ。まあ、ひとつだけということはなくて、それらすべてが原因なのでしょうね」
「だったら分かるでしょ……」
「いいえ」
きっぱりと返されて、僕はまた戸惑った。
「……なんで?」
「いじめの件は透くん本人が許してくれたのでしょう? そして、私とこうしているからといって他の女の子を好きになってはいけないなんてルールはないもの。ダメだと決めつけているのは他でもない、あなた自身の感情よ」
「…………」
「おばさまのことについては不謹慎なのだけれど……考えるだけ無駄よ。それはあなたをその場に拘束する呪いでしかない」
呪い。
あの日、今日子は僕を「いつか許したい」と言ってくれた。その希望はとても明るくて、温かくて、心の中の暗雲をきれいに跳ねのけてくれたような気さえした。
まさに祝福だった。
けれど、いまはどうだろうか。
希望は絶対に届かない場所に行ってしまったと知ったいま、足場はぬかるんで前にも後ろにも進ませてくれない。
足元にある血の池から這い出てきた今日子の死んだような顔が告げる……絶対に許さない、と――違う、これは僕の顔だ。前に進もうとしている足を掴んでいるのは、僕自身だ。
「呪い……か。そのとおりかも」
「あなたは“告白しなくてもいい理由”を自分で探しているのね」
「キミはキミで、さっきから僕に透へ告白してほしいみたいな言い方だよね。さっきは告白してほしくないみたいなことを言ってたでしょ? この行為だって、僕に告白させないためにしてるはずなのに……」
「悲しいことを言われてしまったわ。質問に答えただけなのに」
「キミはいったいなにを考えているんだ」
「ずっとあなたのことだけよ」
「もしかして、僕を怒らせようとしてる?」
彼女は前もこんなふうに僕から襲わせようと誘導していた覚えがある。
「怒らせたら、なにをされてしまうのかしら」
くすくすと笑う咲は、僕の鎖骨を指で挑発的にするっとなぞった。続けて、股間に押し付けていたひざをまたぐりぐりと動かし始めた。
快楽と苦痛のはざまで弄ばれている。
だんだんとむかっ腹が立ってきた。
いまの咲は誘い受けというやつだろう。怒りを煽り、本能のままにめちゃくちゃにされたがっている。僕に爪を立てられても、噛みつかれても、喉を絞められても笑っていそうな危うい興奮が、彼女の荒い吐息で伝わってくる。
だとするなら、ひとりでうだうだ悩んでいたのがバカみたいだ。
「……こうする」
僕は咲の秘所に手を添えた。
まだ二回目とあって要領は掴めていないが、感じる部分は覚えている。
やる気になった僕の顔を見た咲から余裕が剝がれた。待ち望んだ行為が訪れることへの喜悦、そのなかにかすかな怯えが垣間見える。
「んっ……んぅ……」
「台所で約束した、ふたりきりのときに敬語を使うって約束、覚えてるよね?」
「……はいっ」
「いいね。素直で」
「ぅ……っ」
咲は身を縮こまらせながらも、興奮で頬を上気させていた。
この子には前からマゾ気質があることはうっすら分かっていたが、こうして主従関係に持ち込むとその反応は顕著だ。
ぷっくりとした肉芽をピンッと指ではじいてやると、
「きゃうっ……!」
子犬のような悲鳴をあげつつも、すぐに期待に満ちている蕩けた眼差しを向けてくる。もっといじめてほしい、と表情だけでなく全身で伝えてくる。
「あっ……んくっ……はぁはぁ……んんんっ!」
クリトリスを指先で転がすだけで、面白いように喘ぎ声を引き出せた。
――乗せられちゃったな。と僕は心の中で独り言ちた。
僕がなまじ残っていた理性のせいで上の空だったのを、咲がうまく誘導して現在の状態に持ち込んだ。電波を使われたのだろうか。いいや、僕が単純すぎるからか。
そういえば前にシたときは中までは弄らなかったな、と思い出す。
「指、入れるよ?」
「…………入れ、て」
咲は空気の中に消えてしまいそうな小さな声で了承した。
濡れそぼった膣内に中指を挿入する。小さな凹凸のある柔らかい壁と、ぬめぬめした内部の感触はまったく初めてのものだった。
「女の子にこんなことした経験ないから勘で言うんだけど……すんなり指入ったし、結構自分でシてるよね?」
「~~~~~~~~ッ!」
カァーッと赤くなった咲は、少しだけ涙目になりながら「……はい」とうなずいた。
「何回?」
「わ、分からないわ……分かりません……」
「じゃあ、週何回ぐらい?」
「二回……たまに三回か四回ぐらい……」
「へぇ。誰かで妄想しながらシた?」
「全部……蓮司くんっ……です……」
聞いた瞬間、胸の高鳴りと下腹部のムラムラが噴火のように沸き起こった。この可愛い生き物のすべてを奪って手籠めにしてやりたいという強い欲求がうずまいて、暴虐の限りを尽くそうとしてしまうのを理性で抑え込む。
生唾を呑み込んで、抑え込む。脳内で彼女の声が反芻されては、鐘を打つように昂ぶっていく。
「僕以外では、したことないんだ」
「はい……んんぅっ……!」
我慢できずに唇を奪うと、咲は驚きつつもすぐに受け入れた。舌を口内に割り込ませると、彼女も遠慮がちに絡ませて、唾液を交換する。
数秒、けれど数時間にも感じられる行為から解放すると、お互いの口のあいだに銀色の糸が伸びた。それは照明に照らされてキラリと耀いたかと思うと、プツンと切れて虚空に消えた。
「指、二本目も入れてみていい?」
また咲がうなずくのを確認して、次は人差し指を入れる。
天井をこそぐように愛撫しながら、勃起してビーズのように固くなっている肉芽を親指で潰してこね回す。
「ひうぅっ」
僕がいじるたびに咲は腰を小刻みに動かしていた。快感に喘いでいるだけとは思えない意図的な動きだ。
「指が気持ちいいとこに当たるように腰を動かしてる?」
「んっ……ぅん~~~~~ッ……!」
「ここ?」
「ひゃぁぁ~~ッ! そ、そこっ……きもちぃ……」
「僕の手でイキたい? それとも自分で……」
「蓮司くんっ……蓮司くんがいいっ……」
食い気味に請われた。懇願するような声色で言われては、やるほかあるまい。
前回のことを思い出しながら、カリカリカリカリと指先で腟壁を優しく掻く。反応のいい部分を重点的に攻める。ぎゅっぎゅっと指を求めるように内部が激しく収縮を始めた。
「イキそう?」
「んっ……んんん~~~ッ!」
咲の声は必死すぎて肯定しているのかどうかも怪しいが、様子を見る限り萎えているわけではないはずだ。
「んっ……れろ」
僕は咲の汗ばんだ首筋に舌を這わせると、彼女は震えて喘いだ。
咲は限界とばかりに舌を突き出して喘いでいた。眼も快楽に集中していて虚ろだ。
愛撫にスパートをかける。
彼女の出たままの舌を吸って、また口内に迎え入れる。
「んんんんんっ~~~~!?」
驚く咲に構わず、上に続いて下も本気を出した。
空いていた左手の指先でクリトリスを激しくこする。こびりついた小さな汚れを指で取るような左右の反復動作で、グリグリといじめ倒す。
腟内をいじっている指がぐちゅぐちゅと卑猥な音を鳴らすのを聞いていると、我慢できなくなった様子の咲がおもむろに抱き着いてきた。
瞬間、
「ン゛ぅ゛~~~~~~~~~~~~っっっっ!!」
腰をガクガクと痙攣させて、秘所からプシャッと半透明の汁が噴き出した。一瞬おしっこだと勘違いしてしまそうな勢いで飛び出した液体は、僕のベッドのシーツにシミを残した。
泡立って白くなった本気汁が、パクパクと呼吸している膣口から溢れている。前に見たときよりもかなりの乱れっぷりだ。
「うわ、すご……」
「ふぅ……ふぅ……りぇ……りぇんひ……くん……」
呂律も回っていない咲は、涙目になりながらこちらを見つめていた。
かわいい……。
余韻が収まっていない様子の彼女の頭を優しく撫でながら、びしょびしょになった彼女の秘所とふとももを拭う。その有様だけで、どれだけ乱れていたのかがよく分かる。
「よくイケたね、咲。気持ちよくなれたね」
「はぁ……はぁ……」
「どう? 満足した?」
「んっ……次……私が蓮司くんに……するから……」
抱き着いたままの咲が、膨らんだ股間を撫でてきた。
いやらしいとは言えない不慣れで下手な触り方だったが、この状況ではそれだけでも十分すぎるほどに扇情的だった。
「ちょっ……それマジで理性が飛ぶ……」
自分が引いた線引きとかすべて投げ出して、この少女の初めてを奪って僕の存在を永遠に刻みたい衝動に駆られる。
脳内を行き交う血液が減少し、全身の熱が下腹部に集まるのをしっかりと感じていた。
僕は立ちあがるやいなや、急ぐようにズボンとトランクスをずり下ろした。
「…………っ」
痛いぐらいに腫れあがった
前は手でするだけで直視はしていなかったから、こうして眼前に出されて衝撃だったのか。
僕はこの期に及んで恥ずかしいという気持ちがありつつも、彼女に口でしてほしいと伝えようとして……、
「……ぺろっ」
「ッッッ!」
その前に、咲の小さな舌が先端を軽く舐めた。
人生で初めての感触に、僕は背筋を震わせた。
チロチロと子猫のような舌使いで、モノを確かめるように味わっている。
「さ、咲……けっこうノリノリだね……」
「こうしてほしいって……電波で読んだからっ……んっ……」
なにもかも筒抜けというわけか。
僕がなにかしてほしいと考えるたびに、咲は手を変え品を変え、パンパンになっている肉の棒を舐めまわす。なにをすれば僕が気持ちよくなるのかを電波で読みながら、一心不乱に奉仕している。
「ちゅっ……ちゅっ……」
まるでバードキスをするかのように先端に唇をつけては、傘の裏まで舌を這わせた。
続けて、本格的にモノを咥え込んだ。
「じゅるっ……んっ……じゅぷっ……」
モノを半分まで飲み込んだストロークが繰り返されるたびに、卑猥な水音が静かな部屋に響く。快感とくすぐったさが同時にやって来て腰が砕けそうになるが、なんとかこらえた。
僕もただされるがままではつまらないな、と全身を使って彼女の体を抱え込み、重力に従ってぶらぶら揺れている巨乳へと手を伸ばす。
「んんんっ!? んっ……んちゅっ……」
「あ……それやばっ……」
僕が咲の両方の乳首をいじると、口内で動き回る舌も激しさを増した。本気で腰砕けにさせられる勢いだ。
彼女は空いている両手で秘所の肉芽と穴を同時にいじりだした。あれだけ盛大にイッたばかりだというのにまだ足りないなんて、ほんとうに淫乱かもしれない。否定しなかったのも、自覚があったからか。
とはいえ、僕もそろそろ限界だ。
「んっんぅっんっふぅふぅっ」
ぐぽっぐぽっといやらしい音を鳴らしながら夢中になっている咲に、僕は声を震わせながら言った。
「ごめんっ……そろそろ出そうだから……口を離して……」
「んっ……らめよ……」
加えながら、咲は拒否した。
「こんろは……のむわ……ちょーらい……」
「汚いしマズいって……ちょっ……ほんとにっ……!」
さきほどよりも激しいストロークと、舌使い。先端が喉の奥をゴツゴツと突いていてもおかまいなしだ。息ができているのかも怪しい勢いだし、音も「がぷっごぷっ」と呼吸と水音が混ざった感じで危ない気がする。これは本気でぜんぶ飲むつもりだ。
離そうと思えばいくらでも抵抗できたはずだが、咲に自分のものを飲ませたいという欲求に逆らえない。頭はくらくらしていて、いまの僕はほとんど獣だった。
「さ……さきっ……出っ……!」
射精の寸前、理性がかすかに戻ってきて彼女の頭を掴んで離そうとしたが、骨抜きにされた僕の弱々しい抵抗ではまるで歯が立たなかった。
咲はさらにスピードを上げる。
瞬間、
どぷっ!
という音が聞こえてきそうなほどの大きなかたまりが抜けていくのを感じていた。同時に襲ってくる快感で、意識が弾け飛ぶ。視界が明滅して、弛緩しきった口からはよだれが落ちそうになった。
どぴゅっどぴゅっ、と止まらない射精を、咲は目を閉じながら恍惚の表情ですべて受け止めていた。
「んっ……ふぅー……ふぅー……」
彼女は鼻で荒く息を吐きながら、あごをもごもごと動かしている。と思いきや、口をすぼめてズゾゾッ下品な音をたてて吸いあげ始めた。
「おぅっ……!?」
尿道の中に残った分まで吸われる異常な感覚にすっとんきょうな声をあげてしまったが、おかげで意識が戻ってきた。
その後、咲は物足りないとばかりにちゅうちゅうと吸っていたが、一分ほどたってようやく解放された。
「はぁっ……」
僕は尻もちをついて、ため息をついた。
咲はというと、まだ精子を口に残しているらしく、頬を膨らませている。眉間にシワを寄せているところを見るに、マズくてしかたないのだろう。
「んんーっ! んっ! んぅっ!」
「ごめん、最近抜いてなかったからめちゃくちゃ出ちゃった……汚いし、ティッシュ取るからそこにペッしなさいペッ」
「……………………ごくんっ」
「あっ!」
「……おえっ。すごく飲みにくかったけれど、全部飲めたわ。ほら」
べーっ、と空になった口内を見せた咲に、僕は呆れて言葉が出てこなかった。とりあえず、彼女の唾液で汚れた口周りをティッシュで拭う。
「ったく……おなか壊すよ」
「平気よ。愛があるもの」
「…………こわ~」
理屈を超えた返答をされて恐怖を感じていると、ゴトッ、という固い音が廊下から響いた。
僕らがビクッとして扉を見ると、かすかに開いている。
「……うわ、ちょっ」
小声でなにやら大騒ぎしているのが聞こえてきて、僕は恐る恐る扉を開いて外を覗いた。
「…………なにをやってるんだ魚谷」
「違う! 違うからな!!」
半脱ぎになっているズボンをあたふたしながら履いているありさは、顔を熟したりんごのようにして、首を横にぶんぶんと振っていた。
「あたしは覗いてない! ちょっと通りかかっただけだ! って、うぎゃーっ!?」
奇声をあげりなり、今度は顔を背けて手を振り回した。
「おまっ、下! 下を履けよ!」
「あっ……ほんとにごめん。無理なこと言うけど、忘れて」
「目と鼻の先だったんだぞ!? 忘れられるか! 親父のも見たことなかったのに!」
「ガンダム?」
「ちげーよ! っつーか、よりによって初ちんこが未来の彼氏じゃなくておまえかよ!」
「女の子が下品なこと言うもんじゃないよ」
「未だにフルチンのおまえにだけは言われたくねえよ!? さっさと履け! って、また見ちまっただろうがテメェ!!」
「ちょっ……チョークスリーパーはやめてっくるしっはっ履けないから……!」
このまま首を絞め落とされるのかといったところで、
「深夜に騒ぎすぎよふたりとも。持ってきたわ、蓮司くんのパンツ」
咲が助け舟を出してくれたことでようやく解放された。
トランクスとズボンを履きなおす。やっと現代人らしい恰好に戻った。これで文句は言われまい。にしても、咲は素っ裸なのに僕だけ怒られるのは理不尽だ。
「魚谷さぁん。いけませんねえ、覗いたりなんかしたらぁ」
僕の追及に、ありさは脂汗をにじませながら、舌を噛みきるか窓から飛び降りるか考えていそうな顔をしていた。
「の……覗いてねえよ……」
「だ、そうですよ、咲さん」
廊下で検分していた咲が、フッと笑った。
「嘘はいけないわね」
「嘘じゃねえって!」
「あら、ではなぜ先ほどズボンが半脱ぎになっていたのかしら」
「そ、それは……」
「そして、これが動かぬ証拠よ」
と、咲はわずかに濡れている人差し指を突きつけた。
「あなたの座っていた床がちょっと湿っているわ!」
「がっ…………」
「あなたはひとりでシていたのよ! 私たちの行為を見ながら!」
「う……ご……がが……ぎ……」
魚谷はさび付いたロボットのような歯ぎしりをしたかと思ったら、
「うぎぎぎぎいいいぎぎぎぃ!!」
頭を抱えて地面をジタバタと転がり始めた。悪魔に憑りつかれたような暴れっぷりだった。
「あーシましたよ! シましたとも! 悪いかよ!? こちとら花島が蓮司にシた話をちょくちょく聞かされてたんだぞ!? 気になって気になってしかたなかったんだよ!! 思春期だぞこっちは!! 覗けるチャンスが来たんだから覗くだろフツー! っていうか、きょういろいろあって死ぬほどストレス溜まってて魔が差したんだよ!! そんで見てたらちょっとムラッと来ただけであたしは悪くねーよ!!」
「かわいそうね。相手がいない人は……」
「マジでぶっ殺すぞおまえ!!」
「どうしてもと言うのなら見るぐらいはいいけれど……」
「見ねえよ!」
「ちなみに見物料は一万円よ」
「金とんのかよ!? しかもバカ高ェ!」
ツッコミ疲れてゼーゼーと呼吸しているありさは、ずれていたズボンを履きなおして立ち上がった。
「あ、あたしは戻るからな! もう寝る!」
「そう。その前にトイレにいってスッキリしておいた方がいいわよ。ムラムラしてると眠れないから」
「余計なお世話だ!!」
バタン、と乱暴に扉を閉めて出て行ったありさを見送り、僕と咲は顔を合わせた。
「咲はどうするの?」
「私も戻るわ。目を覚ました透くんのそばにいないといけないもの」
「そっか。安心させてあげてね」
「えぇ。きょうはありがとう。無茶を聞いてくれて」
「たしかに無茶だったけど、嫌ではなかったよ。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
◇
一方そのころ。
大蔵晴香……父が蓮司の母親と再婚した関西弁少女は、険悪な雰囲気を察してリビングを覗き見ていた。
深夜にこうしているのは、トイレに行きたくなって目が覚めたところ、かすかに物音が聞こえてきたせいだ。部屋に明かりがついているのを認めた晴香は、そこで父親が顔全体にシワが寄るほど険しい表情をしているのを盗み見た。
彼の手元には、あの女がいつも使っているスマホが握られている。
「…………あちゃー」
なにが起きているのかを察した晴香は、きびすを返して本来の目的であるトイレへと向かった。
「これはもう時間の問題やな……一応、伝えておいてあげんとなぁ」