※この作品はR-18です。

兎神伝〜紅兎   作:和心

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(21)恋敵(3)

(21)恋敵(3)

 

やがて、大きな鼾が部屋に鳴り響く。

「太郎の奴、もう眠ったでござるか。」

「相変わらず、寝るのと食べるのは、早いでごじゃるな。」

進次郎と朱理は、太郎の方を見ながら言うと、二人でクスクスと笑い出した。

「さあ、進次郎様、私達も寝るでごじゃるよ。」

朱理が、掛け布団を開けて進次郎を誘うと、進次郎は軽く頷いて潜り込んだ。

最初は、濃厚な口付けに始まり…

進次郎が、既に緩められた帯を解き、着物を脱がせながら、首筋から胸にかけて愛撫し始めると…

「アン…アン…アーン…」

朱理は、甘えるような声をあげだした。

進次郎は、朱理の乳首を吸い上げながら、股間に手を偲忍ばせると…

「大人になったでござるな。」

顔をあげ、爽やかな笑みを浮かべながら言った。

進次郎が、朱理を抱くのは、今宵始めてではない。

田打部屋で、菜穂が和幸に抱かれている間、参籠所の周りを寂しそうにウロつく朱理に、進次郎は声をかけた。そして、そのまま、ごく自然な成り行きで抱いたのだ。

「えっへん!どーじゃ、立派になったじゃろう。」

相変わらず赤面してる朱理は、あの時よりずっと膨らんだ乳房を揉ませながら、少し胸を張って見せて言った。

「ああ、立派になったとも。茜ちゃんより大きくなったではござらんか。」

進次郎が、だいぶ湿ってきた神門(みと)を、一層、指先細やかに撫で回してやりなごら、悪戯っぽく笑って言うと…

「もう!褒め言葉になってないで、ごじゃる!茜姉ちゃんと一緒は、酷いでごじゃるーーーー!!!」

朱理は、(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾←こう言う顔をして言った。

進次郎は、カラカラと爽やかな声で笑うと、朱理の神門(みと)が十分潤ったのを確認して、もう一度唇を吸い上げた。

そして…

「アッ…アッ…アッ…アァァーッ…」

ガッシリと抱きしめ、股間の間で、進次郎がゆっくり腰を動かすのに合わせて、朱理は声をあげた。

和幸は、何をするにも淡く、優しく、細やかであるのに対し、進次郎は力強いなと、朱理は感じた。

それは、四年前…

十二歳の時、一度だけ抱かれた時と同じ感慨であった。

進次郎は、和幸同様、穂供(そなえ)の最中、一切声を発しない。穂供(そなえ)参拝に訪れる男達のように、荒々しく淫らがましい喘ぎ声を出す事は全くない。

ただ、笑顔を傾けるのみであった。

その笑顔も、和幸のそれは、何処までも優しく柔らかいのに対し、進次郎のそれは、逞しく精悍であった。

比較するわけでもないが…

『カズ兄ちゃんは、肌艶がよくて滑らかで、女の子みたいに柔らかくあったかいけど…

進次郎様は、着物着てると細っそりしてるのに、着物を脱ぐとがっしりしてる…』

朱理は思いながら…

「アン!アン!アーーーーーン!」

進次郎が放つ白穂を、参道奥の御祭神いっぱいに受け入れた。

「赤ちゃん、できるでごじゃるかな?」

穂供(そなえ)が終わると、進次郎の分厚い胸に顔を乗せて、朱理は言った。

「拙者との子を産みたいのでござるか?」

「好きな人…優しくしてくれる人の子を産みたい…私達みんなの細やかな願いにごじゃります…」

「そうで、ござったな…」

進次郎は、朱理の肩に腕を回して言った。

「進次郎様の子って、どんな子かな?今度は、男の子が良いでごじゃります。」

「何故でござるか?」

「前に産んだ子、狸みたいな顔をしてたから…女の子があれでは、可哀想でごじゃります。」

「子は、育って見なければわからぬでござるよ。さっきも申したではござらんか。今頃、きっと綺麗で可愛い子に育ってござるよ。」

「そうね…あの時の子は、カズ兄ちゃんの子だったもん。きっと、物凄い美人に育ってごじゃりますわ。」

朱理は、天井を見つめて、クスクス笑った。

「カズ兄ちゃんに似て育って欲しいでごじゃるなあ。ナッちゃんと一緒に産んだ、カズ兄ちゃんの子…

私とナッちゃんを本当の姉妹にしてくれた、カズ兄ちゃんの子…

カズ兄ちゃんに似て育って欲しいでごじゃるなあ。」

「やはり、本当は、カズさんと寝たかったのでござるな。」

進次郎は、不意に、朱理の頭を優しく撫でてやりながら言った。

「えっ?」

「今も、本当は隣の部屋に飛び込んで行きたいのでござろう?」

朱理は、答える代わりに、進次郎の胸に頬ずりしながら、胸板に指先で円をグルグル描き出した。

「本当に、拙者で良かったのでござるか?」

「うん。とっても、気持ち良かったでごじゃりましたもん。

進次郎様は、お嫌でごじゃりましたか?」

「いいや、拙者もとても気持ちようござった。」

進次郎は、爽やかな笑みを浮かべて言った。

朱理は何も答えず、布団を閉じると天井を見上げた。

「相変わらず、優しいでござるな。」

今度は、進次郎が、朱理の背中に円をグルグル描きながら言った。

「えっ?」

「ずっと、自分の気持ちを何処かにやって、ナッちゃんに譲ってばかりだ。」

「私、一つも優しくごじゃりません。最初は、ナッちゃんに対抗心燃やしてたし、焼き餅も焼いてごじゃりました。」

朱理は、天井をみあげたまま、しみじみ言った。

「だって…カズ兄ちゃん、絶対に手が届かない高嶺の花だと思ってたのに、思いもかけず手に入ったと思ったのでごじゃりますもの…

誰にも渡したくなかったでごじゃるよ。」

美香の悲劇が起きたのは、朱理が兎幣されて二月も経たない頃であった。

当時…

話には聞いていたが、智子が、今の菜穂以上に、兎神子(とみこ)達の間で、和幸の公認の恋人だったなどと言う実感が余り湧かなかった。

和幸は殆ど、前の宮司(みやつかさ)の慰み者になっていたし、智子はむしろ、美香の優しいお姉さんと言う印象であった。

兎幣されたばかりの頃…

朱理も、菜穂がそうであったように、なかなか人前で裸にもなれなければ、男に身体(からだ)を触らせる事も出来ず、泣いてばかりいた。

眞悟宮司(しんごのみやつかさ)や神職(みしき)者達は、そんな朱理を、無理やり裸に剥いては、寄ってたかって乱暴に田打した。更には、慣れるまで着物を着る事を禁じて、美香同様に全裸で過ごす事を強いたのである。

そんな朱理に、そっと羽織で包む者がいた。

『これ、和幸、何をしておる?其奴は、田打中じゃぞ。』

『よう存じておりますよ、親社(おやしろ)様。』

和幸は、いつもの慣れたしなを作り、妖艶な笑みを浮かべて言った。

『なら、邪魔するでない。心配せんでも、おまえの事は、あとでたっぷり可愛がってやるでな。』

眞悟宮司(しんごのみやつかさ)は、白兎達に見せる残忍凶暴な顔と違って、和幸には、目尻をさげ、鼻の下を伸ばしきって、淫猥に満ちた甘い笑顔を傾けて言った。

しかし…

『親社(おやしろ)様、私にも少し楽しませて下さいませ。』

和幸がまた、妖艶な笑みを傾けて言うと…

『何だおまえ、儂を差し置いて、其奴に気があるのか?』

眞悟宮司(しんごのみやつかさ)は、忽ち嫉妬に顔を歪ませて、憎悪に満ちた眼差しを朱理に向けた。

『そんな…私が、親社(おやしろ)様以外の誰を慕いましょう。後生です、悲しい事は仰らないでくださりませ。』

『では、何故其奴を?』

『こんな面白い玩具、滅多に手に入りませぬ。私にも、少し楽しませて下さいな。』

和幸が、今度は妖艶な流し目を朱理に向けると、舐め回すように見つめながら言った。

『なーるほど…そなたの手で、田打してやりたいと言うのじゃな。』

眞悟宮司(しんごのみやつかさ)は、漸く機嫌をなおし、唇を舐め回しながら、淫猥な笑みを満面に浮かべた。

『とことん、嬲りに嬲ってやりますよ。』

『クククク…おまえの嬲り方は、鋭太郎とまた違って、凄まじいものがあるからの。次に田打部屋を出てきた時は、茜の奴のように、男なしではいられぬ身体(からだ)にされてると言うわけじゃな。楽しみにしておるぞ。』

朱理は忽ち震え出した。

眞悟宮司(しんごのみやつかさ)に囲われてる男…

鋭太郎の残忍さは、眞吾宮司(しんごのみやつかさ)に連日嬲りものにされてる間、嫌と言うほど思い知らされた。

それだけに、鋭太郎以上に寵愛されてる和幸に、恐れ慄いた。

しかし、和幸は予想に反して優しい男であった。

『酷い目に遭わされたね。』

和幸は、眞悟宮司(しんごのみやつかさ)に見せるのとは打って変わって、優しく気品に満ちた笑みを傾けた。

『トモちゃん、後、頼んで良いか?』

『ええ、良いわ。さあ、お風呂入りましょう。身体、洗ってあげるから。』

狐につままれたように、智子に、滅茶滅茶にされた参道の手当をして貰い、浴室で丁寧に身体を洗って貰った朱理は、この時、初めて、和幸と智子の関係を目の当たりにしたのである。

『さあ、ゆっくりお休み。ここで私といる間は、誰にも何もされないからね。』

和幸はそう言うと、朱理に着物を着せてやり、寝台の布団に優しく包んで寝かせてやったのである。

そして…

『それじゃあ、トモちゃん、また、いつものように付き合って貰える?』

『ええ、喜んで。これでまた、暫くはカズちゃんと水入らずでいられるのね。』

『そう言う事にも、なるかな?』

和幸は言うと、智子と二人でクスクスと笑いだした。

それから、二人は全裸になって隣の寝台に入ると、絡み合い始めた。同時に、外のかなり遠くまで聞こえるように、わざと大声で喘ぎだした。

どうやら…

雪絵と言い、茜と言い…

新しい白兎がやってくると、こうやって、前の宮司(みやつかさ)達に嬲りものにされてるのを連れ出しては、二人でこんな芝居をうっていたようであった。

ただ、芝居なのは、わざと大声を出すところだけで、絡み合うのは本気であった。それも、前の宮司(みやつかさ)達によって行われる田打とも、社領(やしろのかなめ)の男達によって行われる穂供(そなえ)とも違っていた。二人は、それを嬉しそうに、楽しそうにそうしていた。

和幸が、何度も何度も、智子の中に放つ時、智子は最高の喜びと幸せを噛みしめるように、満面の笑顔で、嬌声を張り上げたのである。

朱理は、二人の穂供(そなえ)を間近に眺め、良いなと思った。

自分もこんな風になりたいなと思った。

そう、和幸と…

しかし、それが大それた望みだと言う事も、思い知らされた。

二人について、兎神子(とみこ)達の語り草が一つあった。

眞悟宮司(しんごのみやつかさ)が自分に懸想し、自分が仲良くする白兎を見ると、嫉妬してその白兎を苛め抜く事を知った時…

和幸は、眞悟宮司(しんごのみやつかさ)が見てる前で、わざと白兎達に冷たく当たったという。

無論、智子には特に冷たくあたった。

智子は、最初、その意味が分からず、とても悲しんだと言う。

しかし、それが、自分を前の宮司(みやつかさ)の嫉妬から守る為だと言う事を知った時、実に大胆な行動に出た。

『カズちゃん、私はカズちゃんが好きよ。誰に何を言われても、されても構わない。私はカズちゃんが好き、愛してるわ!』

そう叫ぶなり、眞悟宮司(しんごのみやつかさ)達の見ている前で着物を脱ぎ捨て全裸になり、和幸に抱きつき唇を重ねたのである。

以来、智子に対する前の宮司(みやつかさ)の虐めは凄惨過酷を極めるようになった。

しかし、智子はどんな目に遭わされても、時に死ぬぎりぎりの目に遭わされても、言葉通り屈する事はなかった。

和幸への一途な思いを貫き通したのである。

朱理は、話にしか聞いてはいなかったが、目の前で愛しそうに絡み合う二人を見て、この間に入る事はむりだと思った。無理と思う以前に、自分も、二人の絆と関係を守ってやりたい気持ちになった。

それが…

美香の悲劇があって程なく、智子は打って変わって、和幸に冷たく当たるようになった。

後でわかった事なのだが…

『美香も可哀想にのう…お前なんかに可愛がられたせいで、あんな目に…可哀想にのう…』

眞悟宮司(しんごのみやつかさ)が、美香の死以来、毎日のように、智子の顔を見ては、嬲るように耳元で囁いた。

『あの子は、お前が殺したんじゃよ、お前が…』

智子が、目を見開いて慎悟宮司(しんごのみやつかさ)の顔を見返すと…

『さあて…次は誰がお前の犠牲になるのかな?お前が愛した者は、み~んな、美香のようになるでな。』

『それじゃあ…それじゃあ…美香ちゃん…美香ちゃん…』

智子は、その時になって、初めて悟った。

美香が絶え間なく虐め抜かれていたのは、赤兎だからだけでなく、智子を慕っていたからなのだと…

どんなに凄惨過酷に虐めても屈しない智子を苦しめる為に、美香を虐め抜いていたのだと。

『差し詰め…今後、和幸がどうなる事やら…鋭太郎の奴、和幸を痛めつけたくて痛めつけたくてたまらんでの…

あいつに、好きにして良いと言うてやったら、どんなに喜ぶかのう。』

眞悟宮司(しんごのみやつかさ)はそう言うと、ククククと笑いながら、意味深な眼差しを智子に向けたのである。

『カズちゃんまで…カズちゃんまで…』

震える智子は、この期に及んで、和幸との別れを決意したのである。

何も知らず、美香の事で打ちひしがれている智子を、必死に慰めようとする和幸に…

『いい加減にして!馴れ馴れしくしないで!あんたなんか、最初から好きでも何でもなかったの!汚ならしい爺いに玩具にされてるあんたが惨めで可哀想だから、私の身体を物欲しそうに見てるから、抱かれてやっただけなのよ!もう、勘違いしてまとわりつかないで!』

智子はそう言い放つと、二度と、かつてのように和幸と睦まじい姿を見せなくなった。

和幸が、どんな気持ちでそれを受け止めたのかはわからない。

『そうか…そうだったんだね。ごめんね、君がそんな気持ちでいたとも知らず、勝手な思い違いをしてしまって…

でも、君が、僕の恋人を演じてくれていた間、僕は幸せだったよ。』

そう言ったきり、二度と自分から智子に近寄らなくなった和幸は、特にこれと言って変わった様子は見せなかった。

当時…

元々、皆の前では余り表情を見せない彼は、眞悟宮司(しんごのみやつかさ)に媚びるような、妖艶な笑みを浮かべる以外、相変わらずの無口無表情であった。

ただ…

朱理には、和幸の後ろ姿が、とても寂しく見えた。皆を守る為、庇う為、本当は誰よりも中身が男なのに、女のように振舞って、眞悟宮司の慰み者になっていた和幸の心は、ボロボロだったのも知っている。その和幸にとって、智子は、この世で唯一の支えであったのだ。

その智子を失った和幸を見る時、朱理は胸が疼き、彼の代わりに大泣きしたくなる時があった。

そして、ある夜中…

朱理は、一人きりでいる和幸を見つけて、側に行った。

『アケちゃん、どうしたの?』

『一人で寝るの、怖いでごじゃる…』

『怖い?』

『お化けが出そう…』

『そうか、それは怖いね。おいで…』

貴之や政樹なら、お化けと聞いた途端、思い切り爆笑したであろうが、和幸は大真面目に聞くと、手招きした。

『大丈夫、お化けがでたら、僕が追い返してあげよう。』

すると、朱理は不意に帯を解き、着物を脱ぎ捨てて産まれたままの姿になった。

『抱いて…くれる?』

『抱く?』

『私、トモ姉ちゃんみたいに綺麗じゃないし、大人じゃないし、強くない…

でも…カズ兄ちゃん、寂しそうだから…悲しそうだから…』

首を傾げる和幸に、朱理が恐る恐る言うと…

『そう言う事か…』

和幸は、優しげな笑みを浮かべた。

『ごめんなさい…あの…』

朱理は、次の言葉に詰まり、涙を溢れさせた。

『ありがとう、おいで。』

和幸は、一層優しげな笑みを浮かべると、両手を広げた。

『実はね、僕も怖かったんだよ、お化けが出そうで。アケちゃん、僕のお化けを追い払ってくれる?』

『うん。』

朱理は、満面の笑みを浮かべると、そのまま、柔らかく暖かな和幸の胸に飛び込んで行った。

『ポヤー?アケちゃんったら、カズ兄ちゃんの恋人になっちゃったんだってポニョー…』

『あらあら、アケちゃんもとーんだ勘違いしちゃって…カズ兄ちゃんは、誰にでも優しいだけなのにね。』

茜と雪絵は、和幸にまとわりつく朱理を見てはクスクス笑い。

『おめえな、ちっとは鏡を見て言えよなー。おめえと、カズじゃあ、月とスッポンだろうが。どうイカれちまったら、そーゆーめでてぇ事を思えるかなー。』

貴之は、露骨に言って、ゲラゲラ笑い飛ばした。

そんな事…

言われないでも、自分が一番よくわかっていた。

口では、和幸を良い人、恋人、相思相愛だなどと言ってはいるが、自分なんか、智子の足元にも及ばない事、とても和幸の思い人に何かなれない事、分かりずぎるくらい、わかっていた。

でも、嬉しかった。

どんなつもりで自分を抱いてくれようと、構わなかった。

智子を失った穴埋めでも良かった。

ここは、兎神子(とみこ)に穂供(そなえ)する社(やしろ)。元々、白兎を仕込む為の練習台として囲われた黒兎。抱けと言われれば、抱いてくれと言われれば、何も考えずに抱くのが黒兎。

智子の穴埋めでさえなく、ただ、抱いて欲しいと言われたから抱いただけでも良かった。

毎日、気づけば和幸の側にいて、和幸の腕に抱かれて、その間だけは、寂しそうでも、悲しそうでもない和幸の笑顔が見られるのが嬉しかったのだ。

そんな時、菜穂が現れた。

美香の悲劇が起きてから、初めての年下の友達であった。

親友だと思った。何でも話せると思った。だから、和幸に対する本当の気持ちを話した。

すると…

『素敵だわ。アケ姉ちゃん、とても素敵。私、アケ姉ちゃんとカズ兄ちゃん、とっても似合ってると思うわ。』

菜穂は、朱理の手を取り、目を輝かせて言った。

『本当に、そう思うでごじゃるか?

私、トモ姉ちゃんみたいに綺麗ではごじゃらんよ。大人でも強くもごじゃらんよ。』

『でも、トモ姉ちゃんと同じくらい、優しいわ。

トモ姉ちゃんの代わりになろうなんて思わなくて良いじゃない。アケ姉ちゃんは、アケ姉ちゃんとして、カズ兄ちゃんの恋人になれるよう、頑張れば良いと思うわ。私、応援してる。』

『ありがとうで、ごじゃる…』

朱理は、(ू˃̣̣̣̣̣̣︿˂̣̣̣̣̣̣ ू)←こう言う顔して泣きじゃくると、菜穂を益々親友だと思い、それこそ、二人が恋人同士ではなかろうかと思える程、いつも一緒にくっついて歩き回ったのである。

ところが…

いつの頃からか、和幸は菜穂に思いを寄せるようになった。

菜穂は、初めて会った時から、和幸に仄かな思いを寄せていた。

そして、兎神子(とみこ)達も、朱理の事は露骨に笑ったが、兎幣された時から、美少女として皆から憧れられていた菜穂の事は、お似合いだと言った。

二人が、誰もが認める公認の恋人同士になるのに、時間はかからなかった。

『裏切り者!嘘つき!何が、私とカズ兄ちゃんは似合ってると思うよ!何が応援するよ!ナッちゃんなんか友達じゃない!大嫌い!絶交よ!』

朱理は、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせると、菜穂と口もきかなくなり、近寄ろうともしなくなった。

菜穂だけではない…

和幸に一方的な思いを寄せた挙句、振られた、菜穂に取られたと言って、冷やかしからかう他の兎神子達とも、口をきこうとしなくなってしまった。

朱理は、いつも一人ぽっちになった。

菜穂が、和幸と楽しそうに過ごし、皆がそれを見て、お似合いだ、素敵だと褒めちぎるのを見ては、隅でシクシク泣きじゃくるようになった。

そんな、ある時…

『ポヤポヤ…アケちゃんも困ったものだポニョ~。最初から、カズ兄ちゃんと何て不釣り合いだったポニョ~、分をわきまえるポニョ~。

マサ兄ちゃんのように、素敵な男をモノにできるのは、私みたいに、抜群の顔と胸と体型を兼ね備えた美女だけポニョ~。』

茜が得意げに言い…

『まあ…茜ちゃんの飲み尽くされた胸と幼児体形が抜群だと信じて疑わないのは、本人とマサ君の自由だとして…』

『何だポニョー!』

『まあまあまあ…

とにかく、アケちゃんが、カズ兄ちゃんにのぼせたのは、分不相応だったわね。それこそ、茜ちゃんのマサ君に飲み尽くしされた胸と違って、事実、抜群な胸をして、茜ちゃんの幼児体験と違って、事実抜群な体型をした私でさえ、カズ兄ちゃんには遠く手が届かなかったってのにさ…』

雪絵が、側で頭から湯気出し、(ʘ言ʘ╬)←こう言う顔して、キーキー喚いている茜を尻目に言いながら…

『とにかく、ナッちゃん、気にしなくて良いのよ。カズ兄ちゃんにのぼせたのは、無謀とも言える、アケちゃんの一方的な片思い。そもそも、最初から、私でさえ手が届かなかったカズ兄ちゃん、不釣り合い何てものじゃーなかったんだからね。

あの子も、これで目覚めて、分をわきまえる事を覚えたら、私のリュウ君みたいに、素敵な人との出会いがまた見つかるわ。』

『ポニョポニョ。まあ、私のマサ君みたいに素敵な人は、無理だろうけどさ、ポニョポニョ…

でも、ナッちゃんなら、誰が見てもカズ兄ちゃんとは、お内裏様とお雛様みたいに、お似合いだポニョ。みーんな応援してるポニョ、勝手に無謀な片思いして、勝手にいじけてるアケちゃんなんか、気にしなくて良いポニョ。』

と、どう言う顔して聞けば良いかわからぬ慰めをかけられると…

『そんな事ないわ!』

当時は、大人しくて、余り感情をむき出しにする事がないと思われていた菜穂が、珍しくムキになって言い返した。

『アケ姉ちゃん、いつだって優しくて、思いやりがあって、カズ兄ちゃんの事、真剣に思っていて…

私、アケ姉ちゃんなら、カズ兄ちゃんとお似合いだと思うわ!カズ兄ちゃんを好きになったからって、恋人になりたいと思ったって、少しもおかしいと思わないわ!

ユキ姉ちゃんと茜姉ちゃんこそ酷い!アケ姉ちゃんの事笑うなんて酷い!酷すぎるわ!』

『ナッちゃん…ごめんでごじゃる…』

朱理は、たまたま側を通りかかって、三人のやり取りを聞き、思わず、その場に突っ伏して大泣きした。

そして、その夜…

『ナッちゃん…あの…その…』

境内を、和幸と仲良く歩いて星空を眺める菜穂の側によって、口籠らせた。

本当は、菜穂を思い切り抱きしめ、謝るつもりで来たのに、なかなか言葉が出てこなかったのだ。

すると…

『アケ姉ちゃん、ちょうど良いところに来てくれたわ。』

菜穂は、朱理の手を引っ張ると、和幸のところに連れてきた。

『ねえ、カズ兄ちゃん。さっき、私に話してくれた事、アケ姉ちゃんにも話してあげて。』

菜穂が言うと、和幸はあの優しげな笑みを満面に浮かべて言った。

『アケちゃん、僕は、トモちゃんの穴埋めで君を抱いたわけでもなければ、まして、田打で君を抱いたわけでもないよ。

僕は、本当に君が好きなんだよ。君が、僕の前に現れてくれて、慰めてくれて、どれだけ救われたかわからないんだよ。』

『カズ兄ちゃん…』

朱理が涙ぐむと、和幸は指先で涙をぬぐいながら、言葉を続けた。

『君に、ちゃんとした僕の気持ちが伝わらず、傷つけたり悲しませたりしたのなら、ごめんね。それと、叶うものなら、これからも仲良くして欲しい。

ただ…』

『ただ?』

『ごめん…これも、僕の身勝手な気持ち何だけど…ナッちゃんが好きなのも確かなんだ。

アケちゃんと、ナッちゃん、どっちがより好きかと聞かれたら、僕には選べないんだ。こんな僕だと、仲良くしてもらえないかな?』

『ナッちゃんと、同じくらい…で、ごじゃるか?私より、ナッちゃんが好きなんじゃなくて、同じくらい、私の事も好きでごじゃるか?』

朱理が目を丸くして言うと…

『実はね、私もなの。』

菜穂が、横から口を出し…

『私も、アケ姉ちゃんとカズ兄ちゃん、どっちがより好きか、選べないの。だからさ…』

朱理の手をとるや、和幸の手と握らせて、更に二人の手を菜穂が両手で握りしめた。

『ねえ、三人で仲良しにならない?』

『三人で…で、ごじゃるか?』

朱理が、目をまん丸くすると…

『そう。私、思うの。カズ兄ちゃんが、私かアケ姉ちゃん、どちらか選ばなくちゃいけない理由もないし、私も、カズ兄ちゃんかアケ姉ちゃんを選ぶつもりもないわ。

ねえ、カズ兄ちゃん。三人で仲良しで、良いわよね。』

『もし、そうして貰えるなら、僕は嬉しいな。

それとも、アケちゃんは僕の事、もう嫌い?』

『それとも、私の事、嫌いになっちゃった?それなら、寂しいな…』

二人は交互に言って、不安そうに朱理の顔を見つめた。

『そんな…嫌いだなんて…嫌いだなんて…

二人とも好きでごじゃるよ…大好きでごじゃるよ…』

朱理が言うと…

『良かった。』

菜穂はニッコリ笑いながら、さりげなく和幸の袖を引くと、和幸は静かに頷いて…

『アケちゃん、好きだよ、大好きだ。僕が一番辛かった時、悲しかった時、寂しかった時、支えてくれて、ありがとう。』

そう言うと、朱理を優しく抱きしめた。

「三人で仲良しでござるか…

でも、結局は、ナッちゃんとカズさんがより強く結ばれるよう、アケちゃんはもっていった。そうで、ござろう。」

進次郎は、話を聞き終えると、また、朱理の背中に円をぐるぐる描き回しながら言った

「そんなつもりは、ごじゃりません…私、本当はカズ兄ちゃんを独り占めしたかったでごじゃる。ナッちゃんに取られて悔しかったでごじゃる。いつか、奪い返したかったでごじゃる。」

朱理も、寄りかかる進次郎の胸に円を描きながら答えて言った。

「当然ではないか。人を本気で好きになるとは、そう言うものだ。男が女に、女が男に、とことん惚れるってのは、そう言うものだ。拙者とて、同じにござる。惚れたら、相手を独り占めしたい。相手が別の誰かを好きになれば、別の誰かに好きになられたら、拙者はそいつを切って捨てたい。」

「本当で、ごじゃりますか?」

朱理が首を擡げて、目を丸くした。

「本当にござる。だから、ずっと…拙者はカズさんを切りたいと思ってござった。隙あらば、今この瞬間も、あの男を斬り殺そうと思ってござる。」

進次郎は、それまでの何処か戯けた笑顔とうって変わって、済んだ真剣な眼差しを向けて言うと…

「えーーーーーっ!!!!」

朱理は、Σ('◉⌓◉’)←こう言う顔になった。

「だって、カズ兄ちゃんと大の仲良しでは、ごじゃりませんかーーーー!!!!」

「それは、もし、カズさんを本当に切ってしまったら、惚れた女が泣くからだ。惚れた女が、拙者を憎んで泣くなら、恐れはせぬ。惚れた女は、自分のせいで、拙者がカズさんを切ったなら、自分を責めて苦しむ子だから、拙者はカズさんを切れぬ…

いや、違う。

拙者は、どう頑張っても、カズさんには勝てぬ。男として、人として、全てにおいて…」

進次郎は言うなり目を瞑ると、瞼の裏に、初めて朱理と出会った頃の光景が浮かび上がってきた。

あの頃…

鱶見本社領(ふかみのもとつやしろのかなめ)では二つの不良組が幅を利かせていた。

一つは、言わずと知れた、河曽根組頭鋭太郎の弟である苨四郎率いる春秋組、もう一つは、進次郎率いる真誠組であった。

進次郎には、二つ上の異母兄、孝太郎がいる。

父・純一郎が愛人に産ませたと言う孝太郎とは、幼い頃から中が良く、悪ガキだった進次郎が、母に叱られては、よく庇ってくれていた。

遊び好きで暴れん坊だった進次郎は、生真面目で学問熱心な兄を尊敬していた。いつか、父の跡を継いで河泉産土宮司(かわいずみうぶすなつみやつかさ)となるのは、兄だと信じて疑ず、その時には兄の力にも支えにもなろうと考えていた。

しかし、父より産土宮司(うぶすなつみやつかさ)の後継を意味する河泉組組頭に推されたのは、進次郎であった。

兄の孝太郎は心から祝福したが、進次郎の方が納得行かなかった。優秀な兄を差し置いて、自分が推されたのは、兄が愛人の子だからだろうと思った。

進次郎は、母親の身分で跡目が決められた事に反発と怒りを覚え、荒れた。

何としても兄に跡を継がせたく、背中一面に桜吹雪の刺青をして町中をのし歩き、博打と喧嘩に明け暮れる日々が続いた。

いつしか、進次郎は、遊び人のシンさんと渾名されるようになった。

ところで、同じ頃…

河曽根組組頭鋭太郎の弟、苨四郎と飯五郎率いる春秋組の不良達が、町中に出歩いては、乱暴狼藉の限りを尽くしていた。

兄・鋭太郎が眞悟前宮司(しんごのみやつかさ)と失踪し、新任の宮司(みやつかさ)は河曽根組を社(やしろ)の警護職から外した。以来、河曽根組の権勢は失墜したが、父である康弘連(やすひろのむらじ)の権勢は未だ健在であり、その威光で、苨四郎と飯五郎は羽振りをきかせていたのである。

いや…

本来であるなら、社(やしろ)警護である河曽根組の予備軍として頭角を現し、ゆくゆくは父や兄と共に、社領(やしろのかなめ)の中枢を占める輝かしい未来を約束さる筈であった。

それが、兄の失踪と新任の宮司(みやつかさ)奉職…更には、前の宮司(みやつかさ)と共に行われた兄の非道の数々が、新任の宮司(みやつかさ)の後押しもあって、中小商工座衆・笑点会によって明るみにされた事から、河曽根組の失墜を招いた。結果、既に河曽根組予備軍である、春秋隊長苨四郎と副隊長の飯五郎の将来も絶たれる結果となった。

その事で、苨四郎と飯五郎は荒れに荒れ、タチの悪い不良達を取り巻きにして、好き放題をしていたのである。

殊に、赤兎の美香を町中で凌辱する味をしめ、十代半ばにして色気付いた彼らは、目に留まる娘を見つけては、これを弄んで楽しんでいたのである。

これを見て、逆に弱い者虐めが大嫌いな進次郎は、親友である萬屋錦之助(よろずやのきんのすけ)を連れ立って、年中喧嘩を挑んでいた。

やがて、町の弱い者達を守り、春秋組と喧嘩を繰り返す二人は、桜吹きのシンさんと、美空雲雀のキンさんと慕われ、義侠に燃える不良達の頭となった。

そして、ある日…

春秋組に絡まれていた朱理を助けた。

その時、朱理は着物を剥ぎ取られ、傷だらけにされた事よりも、買ったばかりの反物を泥の水溜りに投げ込まれた事に泣いていた。

何でも、和幸と言う好いた男と、彼の恋人である菜穂と言う少女の為に、着物を縫いたかったのだと言う。

進次郎は、新たに反物を買ってやり、社(やしろ)近くまで見送る道すがら、和幸と菜穂との経緯を聞き、何と意地らしい少女なのだろうと思った。

以来、ずっと朱理の事が頭から離れず、度々、社に足を運んでは、朱理の様子を見に行った。

すると…

最初は、菜穂と一緒に、和幸と寄り添う朱理は、そのうちさり気なく二人の側を離れ、遠くから優しげな眼差しで二人を見守っていた。

進次郎は、そんな朱理の姿に、胸が熱くなるのを覚えた。声をかけ、抱きしめてやりたい衝動に駆られた。

そして…

参籠所に篭り、裸で絡み合う和幸と菜穂を、優しくそれでいて切なげな眼差しで見つめる朱理見て、遂に堪え切れなくなった。

進次郎は、朱理に声をかけた。

二人の間に多くの言葉はなく、ごく自然な成り行きで肌を重ねた。

数日後…

『貴殿が和幸殿でござるか?』

境内裏手の川原にて、神楽舞の稽古をする和幸に声をかけた。

『はい。確かに和幸は私ですが、貴方様は?』

『河泉組頭の進次郎。巷では、桜吹雪のシンで通ってござる。』

『ああ、桜吹雪のシン様ですか。いつぞやは、妹の朱理が世話になりました。』

和幸が優しげな笑みを浮かべて答えると、進次郎は訝しそうに眉を顰めた。『妹』と言う言葉に反応しての事である。

『妹…で、ござるか?』

『はい。私共の間では、年下の兎神子(とみこ)を弟、妹と呼んでおります。』

『妹…なので、ござるな。その妹と、貴殿らはいつもあの場所であのような真似を?』

進次郎が、益々眉を顰めて言うと…

『見られておられましたか、お恥ずかしい。白兎は、穂供(そなえ)されて赤子を産み、皇国(すめらぎのくに)の血を残す事が役割。黒兎の役割は、その田打をする事にございます。』

和幸は、相変わらず優しげな笑みを浮かべて答えた。

『では、菜穂殿…朱理殿を抱かれるのも、役割故と申すか?』

『それは…』

和幸が少々困った顔をして押し黙ると、進次郎はムッとして、木刀を一振り差し出した。

『和幸殿、一太刀立ち会うていただけぬか?』

『立ち会うって…ご冗談を…』

和幸が驚いた風に目を丸くして言うと…

『冗談ではこざらん!拙者、貴殿と立ち会いたい!』

進次郎は、いよいよ目を怒らせて言った。

顔は紅潮し、息が荒くなっている。

『どうか、その儀ばかりはご容赦を…私共は、男と申しましても、その…幼き頃より、色の道しか仕込まれておらず…その…特に前の親社(おやしろ)様はその…あの…つまり、私共は、男でありながらその…』

『えーいっ!立ち合わぬか!』

進次郎は、もう我慢ならんと言わんばかりに、和幸に差し出す木刀を和幸に押し付けると、いきなりもう一振り握っていた木刀で切りつけてきた。

和幸は、手にする扇子を広げて一差し舞うと、進次郎の木刀は軽く交わされ、滑るように地面に打ち込まれた。

『どうか…どうか、ご容赦くだされ。私共は、日夜、白兎達の稽古台となるか、男色の皆様方のお相手をさせて頂くばかりで、武芸の心得はございませぬ。』

言いながら、更にもう一差し舞うと、またしても進次郎の振りかざす木刀は軽々交わされ、空を切り裂いた。

『もし、房中の武芸にてのお立ち合いでしたら…』

また一差し舞い、軽々交す和幸は、不意に開いた扇子を閉じるや…

『不詳和幸、喜んでお相手いたしましょう…』

扇子の先を、進次郎の首筋に突きつけた。

相変わらずの笑顔だが、和幸の眼差しは青白い眼光を放っていた。

進次郎の額から汗が流れ落ちる。

『矛鎮一刀流(ほこちんいっとうりゅう)…剣聖と謳われた斎珠潔咲(さいたまけっさく)が、これまた伝説の剣客、鐘河陀策(かながわださく)の振鎮一刀流(ふるちんいっとうりゅう)を破る為に編み出した剣…』

『和幸殿…拙者の太刀筋を読まれておいでか…』

『太刀の切っ先をユラユラ揺らし、相手を幻惑するは、矛を鎮め、太刀を収めて、心穏やに相手と向き合わせる為…

兄弟のように育ってきた鐘河陀策が、勝利に溺れ、命の奪い合いに捕われるようになった事を嘆き、自らの命を張って諫めるべく編み出した剣術と聞きます。

しかるに、今の貴方様は、斎珠潔咲の意に反し、正しく剣に勝つ事の鬼と化しておられる。』

和幸はそれだけ言うと、扇子を下ろして背を向けた。

『和幸殿、今一度聞く!朱理殿をどうお思いか!』

『私の大切な人…心の拠り所…我が命…』

『菜穂殿がおられてもか?』

『菜穂もまた、同様…』

進次郎は、一度は下ろした木刀を握る手に、今一度力を込めた。

『理解、して頂けぬかも知れませんね。我々のように、幼い頃から身体(からだ)を開き、慰みとなって生きてきた者の生き方は…

されど、礼を申します。高貴な神職家(みしきのいえ)に生まれたお方で、一人の女として朱理に…私達に心を掛けて下されたのは、貴方様と今の親社(おやしろ)様が初めてにございます。』

和幸は、それだけ言うと颯爽とその場を去って行った。

「シンさん、何を笑ってごじゃりますか?」

不意に、朱理が沈黙を破るように首を傾げて尋ねると…

「いや、何…和幸は拙者の惚れた女を玩具にする許し難い奴。打ちのめして、根性叩き直してやろうと思うていたら…

逆に拙者がバッサリ斬られた時の事を思い出したのよ。」

進次郎は、カラカラと声を上げて笑った。

「拙者は、負けた!拙者はどう足掻いても勝てぬ!だから、あいつを切れんのだ!」

「そうで、ごじゃったか…」

と、今度は急に朱理が難しい顔をして俯いた。

「アケちゃん、どうされたでござるか?」

「ところで、進次郎様が、カズ兄ちゃんを斬り殺したい程惚れた女って、誰でごじゃるか?トモ姉ちゃんでごじゃるか?それとも、別の人?」

「えっ?」

「トモ姉ちゃんだったら構わないけど…他の人だったら、カズ兄ちゃんを許さないでごじゃる…

トモ姉ちゃん、ナッちゃん、私がいるのに、他所にそんな女作ってたなんて…私がカズ兄ちゃんの根性、叩き直すでごじゃる…」

朱理が益々難しい顔…いや、怖い顔をして言うと…

「さあ、誰でござるかのう。」

進次郎は、朱理の頭を優しく撫でながら、また声を上げて笑い出した。

「気になるでごじゃる。教えて欲しいでごじゃる。」

朱理は言いながら、進次郎が他所に女作った和幸ででもあるかのように睨み付けて言った。

「まあ、まあ、良いではござらぬか。拙者が誰を惚れたかなど、どうでもようござるよ。

それより…

アケちゃんは、切ろうと思えば切れた、奪おうと思えば奪えた、でも、ナッちゃんを切りもしなければ、カズさんを奪いもしなかった。しようとも思わなかった。」

進次郎が、愛しそうに朱理を撫で続けながら、話題を逸らせるように言うと…

「だって、ナッちゃん、大好きでごじゃるもん。」

朱理は、忽ち満面の笑みで言った。

「それでござるよ!その心が、素晴らしゅうござるよ。

でも、今宵は少し残念でもござったかな?」

「残念?」

「カズさんに惚れてるのでござろう?本当は、今だって、カズさんに抱かれたいのでござろう?だったら、抱かれたら良いではござらんか。

ナッちゃんとカズさんを応援する気持ちも、自分がカズさんに抱かれたい気持ちも、どちらも大事にすればようござる。

ナッちゃんは、母上によう似てござる。三人共に仲良くしようと無邪気に言うナッちゃんは、母上によく似てござるよ。

で…アケちゃんは、拙者が産まれて初めて愛した女によう似てござる。そう、兄上の母上に…

兄上の母上は、先に父上の子を産みながら、母上に父上を譲られた。父上が、自分よりも母上に心を傾けるよう、仕向けられた。父上の本当の気持ちが、母上にあると思われたから。でも、父上を慕う気持ち、父上に抱かれたい気持ちは捨てられなかった。

ただ、束の間、父上に抱かれるその時その瞬間を、何よりも大事にされていた。

そんな、兄上の母上を、拙者は人生で初めて愛し、妻にしたいと心底願った。」

「そうでごじゃったか…」

朱理は言いながら、益々、難しい顔をした。

「でも、私は、進次郎様のお兄様のお母様とは、違うでごじゃるよ。」

「そりゃあ、そーだ!」

進次郎は、また、カラカラと爽やかな笑い声をあげた。

「それより…

何か、また、もようしてござる…」

進次郎が言いながら、朱理の手を自分の股間に導くと…

「あー、本当でごじゃる。」

朱理は、クスクス笑い出した。

「私、ナッちゃんやトモちゃんみたいに、美人でごじゃらんよ。ユキ姉ちゃんみたいに、胸も大きくないし、体型も良くないでごじゃるよ。」

「でも、茜ちゃんより胸は大きく、体型は大人でござる。」

進次郎が悪戯っぽく言うと…

「だからあ、茜姉ちゃんと比べられても、褒め言葉にならないよー!」

朱理はまた、(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾←こう言う顔をして言った。

「ごめん、ごめん…

それより…

アケちゃん、もう一回して良いでござるか?」

進次郎が、頭を掻きながら言うと…

「うん、良いでごじゃるよ。」

朱理は、頬を赤くして言った。

進次郎は、早速、朱理と唇を重ねて、舌を吸い、茜よりは豊かだと言う乳房を揉みながら、朱理の股間の間にのしかかり、腰を動かし始めた。

「アン!アン!アン!アーン!」

朱理は、進次郎の穂柱が、参道の中で熱く滾り出すのを感じながら、また甘えるような声をあげた。

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