(5)再会
いつの間に、そこに控えていたのか、小銃を抱えた百人近い男達が、木陰から姿を現した。
皆、それぞれ、農夫や漁師と言った
更に、彼等の間から…
『辰三!』
『平次!』
『ドブ、来てたのか!』
『伝七、久しぶりだな!』
『サブ、イチは元気か!』
『奴は殺されても死なねえよ!』
そして…
『右門、飯伍、駿介…』
『お目当ての連中がやってきたな…』
私は、二人に何も答えず、黙って見知った顔を見つめていると…
『おおっ!名無し!』
考え深げに黙り込む右門の傍で、駿介の方から気さくに声を掛けてきた。
『やはり、お前達が弐十手衆に加わったと言う噂は、本当だったのだな…』
私が言うと…
『俺は、奥平殿が貴様達を此処に呼んだと聞いた時は、度肝を抜いたぞ。何しろ、北天の明星国と結ぶ注連縄衆を情け容赦なしに殺しまくった貴様だからな…
だが…
強いて聞かぬぞ、注連縄衆の事は和邇雨上層部以上に嫌悪してきた貴様が、何故、同盟紅軍の誘いに乗ったのかはな。
ただの殺戮集団に過ぎぬ注連縄衆とは、根本的な志が違う。だろう?』
駿介は、漸く何か探し求めてきたものに辿り着けたような、晴れやかな顔をして言った。
霞衆は、和邇雨一族の信奉する
霞衆、風間組組頭の娘と、和邇雨一族名門の
殊に…
障害を負った
霞衆によって生きながらに鱶の餌食にされた。
その事が、私と彼との人生を、大きく変えてしまったのかも知れない。
『私は、強いて聞く。何故、北の楽園に逃れなかった?何故、此処にとどまった?』
『軽信殿に感銘したからだ。彼女は、
常に、未だ圧政に喘ぐ他国に渡り、その国々の為に戦う勇姿に打たれたのだ。
どんなに歪み汚れきっていても、
彼が、双眸を輝かせて熱く語る傍で、右門は考え深げにむっつり黙り混んでいた。
右門…
昔から、殆ど言葉を発する事なく、常に考え深げに、周囲の言葉に耳を傾けている男であった。
私の母の出自である朧衆の者であり、私が兄のように慕っていた男である。
朧衆近藤組若頭筆頭であった彼は、
その彼が、
右門同様、顎鬚を撫で、煙管を吹かせながら、沈黙を守り続ける義隆が、思慮深く見つめるのは、飯伍であった。彼は、かつて、鱶見総社領大岡町産土宮司忠高(ふかみのふさつやしろのかなめおおおかまちうぶすなつみやつかさただたか)に仕える、町与力組組頭であった。忠高の息子にして、
その昔…
飯伍の父、源次郎が
この事件が引き金となり、後に飯伍は同盟紅軍と接触し、弐十手衆となった。更に後、
『飯伍…』
義隆が、漸く重い口を開きかけるより先に…
『右門、お前には、わかってるな。これは茶番だ。手を引け…』
勇介は唐突に言った。
『何だと!』
いきり立つ駿介を、右門は軽く手で制すると…
『弾頭型原子爆弾…』
胡乱な眼差しを俯かせたまま、一言呟いた。
『やはり、わかっていたんだな。』
勇介が言うと、右門は哀愁漂う笑みを浮かべて大きく頷いて見せた。
『何だ、そんな事か。』
駿介は大きく息を吐いて言うと、カラカラと笑い出した。
『洋上帝国が、
洋上帝国は、かつて
『右門、これは、弾頭型原子爆弾の争奪戦だ。楽土は…
勇介は、相変わらず、駿介を無視するように右門に言うと…
『黙れ!楽土を…
駿介は、今にも掴みかからんばかりに激昂した。
『黙るのはおまえだ!俺は、右門に話してる!』
勇介は、駿介を一括すると、更に言葉を続けた。
『美香と言う赤兎の一件、おまえも知ってるな。智子と言う白兎に頼まれ、義隆が隠れて法被を着せてやった事が発覚し、拷問じみた仕置を受け、死んだ赤兎だ。
かねてより、和幸と言う黒兎に、救いを求められていたのを黙殺見殺しにしただけじゃない。法被の件、
『貴様…弐十手衆を抜け、裏切ったばかりか、そこまで…』
駿介は、歯軋りしながら、腰の刀に手を掛けた。
勇介は、構わず話し続けた。
『
そして…
『話はすんだ、切りたければ切れよ。』
愛刀・鬼殺しを振り上げる駿介に、勇介は振り向きもせずに言った。
『目明組…ここの紅兎達を、そう名付けたのは、お前だそうだな。彼らに、自分達と同じ同心の証しとか言って、弐十手を持たせたのも、お前だそうだな。』
『だったら、何だ…事実、あいつらは、俺達の仲間…同心だ。』
『いつか、
俺は…
美香ちゃんの笑顔を忘れられん。だから、早く、あの子の側に行って謝りたい。
さあ、切れ!さっさと切れよ!』
と…
駿介が、まさに鬼殺しを振り下ろそうとした時…
『やあ、やあ、みんな、よく来てくれた!』
奥平が、大仰に手を叩きながら、そこにやって来た。