(7)逢瀬
くすぐったい…
富子は、また、肩を窄めて笑いを噛み殺した。
湯殿に篭る事、小半刻…
湯の中で、環奈が、また、乳房を揉み、乳首を口に含んで舐め出したのである。
『ねえ、お祖母様。気持ち良い?』
環奈は、もじもじと肩を揺する富子に悩まし気な眼差しを向け、満面の笑みを浮かべた。
『ええ、ええ、とーっても気持ち良くてよ。』
富子は、くすぐったさに笑い出すのを必死に堪えながら、優しく抱きしめ頬擦りすると…
『それじゃあ、もっともっと、気持ち良くしてさしあげてよ。』
環奈は気を良くしたように、より丹念に乳首を舐め回しながら、膨らみを揉んでいた手を股間に回して、
うわっ…
くすぐったい…
富子は、今度は腰を捩りながら、笑いを堪えるのも限界に近づいていた。
『どお?
環奈もクスクス笑いながら言うと、富子の
富子は、遂に堪えきれず、両脚を強く締め付け、クスクスと笑い出した。
環奈は、それをこそばゆさではなく、心地良さからだと、完全に勘違いしている。
しかし、それはそれで…
『ほら、ほら、お祖母様。もっと、もっと、もーっと気持ちよくして差し上げてよ。どお?どお?』
環奈が、富子のうっすらと若草の茂り出した
『ええ、ええ、とても…とても…』
富子は、更に声をあげて笑いながら、こう言うのも悪くないなと思い始めていた。
富子は、
当時…
門閥の対立を煽り、口実を見出しては取り潰して行く事で、
折しも、富子が産まれた年に、一つの事件が起きた。
当時、
容疑をかけられ、捕縛されたのは、
厳しい尋問の最中…
身に覚えがないのもさる事ながら、手中の玉のように愛しんでいた娘の美雪を、断腸の思いで、
しかし、同時期に美雪が産んだ真弓と言う娘に、
こと、此処に至り、
そうすれば、美雪の
そして、二人の娘婿にかけられたのと同じ容疑の目は、
幸い、天伏流剣術の同門にして、
特に、積年の恨み重なる
妹の咲良を人質に、陰湿な尋問を続ける中…
あくまでも凜然と自白を拒む
『証拠?そんなもの、必要あるのか?
と、答えると…
『それを言ったら、終わりだよ。』
と、笑って言い、容疑を自供したと言う。
しかし、
三つの時から始められた
和邇雨一族において、伴侶の良し悪しは、如何に
特に、
屈強な巨漢である上、性豪で知られる実の父と兄達は、連日、富子を丸裸にし、徹底的に扱き抜いた。
激痛に泣き叫ぶ富子の涙は枯れ果てたのとは真逆に、血塗られた股間が乾く事は全くなかった。
そうして、十二歳で御祭神が目覚めると、
厳しい仕置と陰惨な虐めが女や子供を鍛え強くすると言う持論を持つ
過去、有力門閥から人質に差し出させた
富子もまた、これまでの
正直…
死ぬのを怖いと思った事は一度もない。
二つか三つの時から、指や異物で参道を掻き回され続けてきた。
七つになるかならないうちから、まだ小指も挿りそうにない
それを少しでも拒み、抗えば、死ぬ程、殴られ蹴飛ばされもしてきた。
むしろ、一日でも早く死ねれば、どんなに楽だろうと思い続けてもいた。
しかし、いざ祝幣されて見ると、
『真弓…帰ってきてくれたのか!』
『真弓…真弓…よう帰って来てくれた…よう帰って来てくれた…』
それは、凡そ三十年に亘り、
思わず抱きしめる富子は、腕の中で打ち震え、泣き噦り続ける老人の
何とか、温めてやりたいと思い、気づけば小さくなった老人の背中を撫でさすり、頬擦りをしていた。
やがて…
『ささ、着物を脱いでおくれ。おまえの肌を見せておくれ。
約束をしたよな、子が産まれ、元気になったら、おまえの参道を通らせ、御祭神を詣でさせてくれるとな…』
顔をあげる
『はい、お父様…』
聞くところによれば…
真弓と言う娘は、拷問にも等しい責め苛み方で
しかし、今は、そんな事など忘れてしまったのか、ただ、愛しかった娘と富子を混同して、無邪気に喜びはしゃいでいる。
気づけば、富子も真弓と言う娘になりきって、優しげな笑みを返しながら、帯を解き、子供返りしている老人に身を委ねていた。
『ああ…真弓や…真弓や…』
夢中になって、亡き娘の名を呼ばわる
『アン…アン…アン…アァァ…お父様…アァァ…お父様…』
富子もまた、娘の真弓として父と呼ばわりながら、無骨で不器用な愛撫に反応する。
『そうじゃ…そうじゃ…もっと呼んでおくれ…父の名を…もっと…もっと…』
『お父様…お父様…アン…アン…アァァーン…』
『富子や…富子…わしの…わしの…』
『アン…アン…アン…アァァーン…』
富子は、左右の小さな乳房を交互に吸われながら、次第に視界が真っ白にぼやけ、
そして…
乳房から、鳩尾、臍、下腹部へと、舌先でチロチロ舐めながら移動する唇は、やがて、股間の裂け目へと到達した。
『おう、おう…相変わらず、綺麗な色をしておるな。』
『アッ…お父様…ダメ…ソコは…』
御祭神が目覚めたとは言え、まだ十二歳前…
しかし、物心つくと同時に、父や兄達に蹂躙し続けられた参道である。
はみ出す
とても、綺麗だなどと言えたものではなかった。
にも、関わらず…
『何て綺麗なんじゃ。まるで、咲き初める寸前の蕾のようじゃよ。』
『アッ…アッ…アッ…アッ…』
富子はまた、視界が真っ白になると共に、宙に浮かび上がるような感覚に囚われてゆく。
そして、フゥーッと脳裏を過るのは…
『お母様…』
在りし日…
父や兄達の手で、散々に蹂躙され、血と白穂に塗れた股間を見るや、涙ぐむ母は、白い粉を舌先に載せると、チロチロと舐め出した。
『お母様…ソコ…汚い…』
朧に霞む意識の中で呟くと…
『汚い何てあるものか。おまえの
『でも、お母様…お母様…ソコは、お父様やお兄様達が…』
『よしよし、可哀想に…痛かったろう、こんなになるまでされて、痛かったろう。
今、楽にしてあげるからね。』
白穂と血に塗れた
『アッ…アッ…アッ…お母様…お母様…』
『どうだい?痛みは引いてきたかい?気持ち良いかい?』
『はい…お母様…とても…とても…気持ち…』
答えかける富子の
『アンッ…アンッ…アンッ…アンッ…』
富子は、舌先の動きに合わせるように、軽やかに腰を上下させて行きながら、微睡むように意識は遠のき、夢と現実の境がわからなくなってゆく。
『お母様…眠い…眠くなってきた…』
『良いのよ。さあ、おやすみ。母様、一晩中舐めていてあげるから…眠っている間、痛いのが治るように舐めていてあげるから。さあ、ゆっくりお休み…』
『お母様…』
富子は、次第に深まりゆく微睡の中…
『えっ…』
不意に、現実に引き戻されて、身を強張らせた。
『さあて、これだけ濡れれば良かろう。参道は、十分に開かれた証じゃからな。』
満足気に言う
『い…嫌っ…』
富子は、それまで夢心地だったのが一変し、震え慄きながら尻込みを始めた。
また、父や兄達に、連日これと同じものを捻り込まれた時の記憶が蘇ってしきたからである。
『真弓や、約束じゃったもんな。ようやっと、おまえの参道を通る事ができて、嬉しいぞ。』
また、釘を打ち抜かれるような激痛が始まる…
また、延々と身を引き裂かれるような、地獄の時が始まる…
『嫌っ…嫌っ…やめて…』
しかし、弱々しく首を振りながら、出掛かった言葉を呑み込んだ。
自分に拒む権利などありはしない…
少しでも拒めば、拷問にも等しい仕置きが待っている。
『真弓や、通らせて貰うぞ。』
言うなり、
『ウッ…!』
真弓は、思わず低い声をあげて顔を背け、身を硬らせる。
刹那…
『えっ?』
真弓は、思わず目を丸くして、
『どうじゃ?痛くないじゃろう。』
両頬に数多の滲があり、皺だらけの丸顔の老人が、満面の笑みで言うと、真弓も思わず笑顔で頷いた。
『そうか、そうか。約束じゃったもんな。おまえが産んだ子には、痛い思いをさせないとな。じゃから、拔や兎共を相手に練習したんじゃぞ。おまえが産んだ子に
小さな参道の中…
父や兄達のように、貫き抉るのではなく、滑るように潜り込む穂柱が、次第に膨張しながら、熱を帯びてくる。
その熱も、熱いと言うよりは、暖かい。
『アッ…アッ…アッ…アッ…』
富子は、自身の参道の中も熱を帯び出すのを感じると、無意識な喘ぎを漏らし始めていた。
『どうじゃ、心地良いじゃろう。』
緩やかな腰の動きを続けながら、目を細めて言う
『よしよし、わしも心地よいぞ。』
参道の中で発した熱は、下腹部から全身へと広がってゆく。
やがて、
『オッ…オッ…オッ…』
『アッ…アッ…アッ…アッ…』
無意識に漏らす、富子の喘ぎ声は、更に大きくなってゆく。
やがて…
『オォォォーッ!』
『アァァァーッ!』
二人が、同時に一際大きな声を上げた瞬間…
下腹部の中に、暖かなものが放たれ、注ぎ込まれるのを感じた。
それが、何なのか、富子はよく知っている。
参道の奥に宿る御祭神に、白穂が浴びせられたのだ。
小さな頃から、富子の御祭神は、数えきれぬ程、父や兄達の白穂を浴びせられ続けていた。
それは、一つの激痛の時を終わらせる、束の間の息をつける瞬間…
同時に、新たに次の激痛が始められようとする、合図の瞬間。
この瞬間が訪れ、放った者が離れると、次に誰が自分の中に挿ってくるのかと、居並ぶ父や兄達に、怯えた目を向けたものである。
しかし、この時は違っていた。
二人は、あげた声がやむと同時に、動きを止めた。
富子は、弓形となった腰を、極限まであげたまま…
延々と放たれ続ける白穂が、御祭神に浴びせられ続ける間、その制止は続いた。
それは、時が止まったようでもあり、二人の
『真弓や…』
『お父様…』
漸く、意識が現実に引き戻された時…
富子の顔を覗き込む
『漸く、おまえの御祭神を詣でる事ができたの。嬉しかったぞ。』
『私もです、お父様。』
『でも、それ以上に…こうして、また、わしの所に戻ってきてくれたのが嬉しい。
環奈が生まれて、長い眠りについたのを見た時…もう、会えぬと思っていたからの。』
『お父様…』
富子の胸の中に、何か底知れぬものが広がると同時に、これまで感じた事のない不思議な思いを抱き始めた。
それは…
もう一度、迎え入れたい…
もう一度、一つになりたい…
永遠に…
それは、自分でも信じられないような、不思議な思いであった。
一応…
かつて、
七年前…
実の娘の真弓に、
同時に、
最早、形ばかりの
今、彼の頭の中にあるのは、真弓に産ませた環奈と言う
寝所に毎日訪れる事ができない本当の理由も、環奈の暮らす裏屋敷に通い詰める為であり…
寝所を訪れても、話す事の多くは、環奈の話ばかりであった。
実際…
当然、
しかし、形ばかりの
今、実際に
そんな、富子のする事と言えば、寂れた宮司屋敷で、
身の回りの世話をする者も、警護の
考える事と言えば、次に
どんな御膳を出そうか…
どんな話をしようか…
どんな舞を踊り…
どんな曲を奏で…
どんな歌を歌って聞かせよう…
生前…
未だに、その真弓と富子を混同している。
それだけに…
『真弓や、おまえは何を着ても似合うのう。着物の選び甲斐があると言うものじゃ。』
そう言って、訪れる度に持ち込む、雅な着物を着て、舞を踊る富子を見るのを、何よりの楽しみにしていた。
富子は、次にどんな着物を携えてくるのか考えながら、様々な着物に合わせた舞の稽古をするのが、日々の楽しみとなっていた。
何を踊っても喜んでくれる事はわかっている。
シミと皺だらけの顔をクシャクシャにし、幼児の如く手を叩いて大はしゃぎするのもわかっている。
そして、どんな御膳を出しても…
『うーん、旨い!真弓の手料理が、どんなご馳走より、この世で一番旨いぞ。』
そう言いながら、やはり、幼児のように、富子に口まで料理を運ばせ、食べさせて貰って、満足そうな笑みを零すのもわかっている。
そして…
『環奈、また、大きゅうなったぞ。数も百まで数えられるようになって…
字も平仮名と片仮名は全部読み書きできるようになった。』
『まあ、何てお利口な…』
『でもな…まだまだ、甘えん坊じゃ。すぐ、膝に座って、わしの手を胸や股座の
『あらあら…』
『それで、なかなか弄ってやらんとな、すぐにぐずるは、拗ねるはで…
結局わしは、着物を脱ぎ捨てて、素っ裸になってのう。
環奈を思い切り抱きしめた後、湯殿へ連れてゆくんじゃよ。
この前も、環奈の
そうしたら、すぐに機嫌を直して、『アーン、アーン…』と、可愛い声を出しおったわ。
でもな…
『まあ、本当、困った子ですこと。』
『真弓、おまえも早く会いたかろう。死に物狂いで産んだ子だものな。』
『はい、早う会いとうございます。いつ、合わせて頂けるのですか?』
『それはな…』
寝床の中…
ここぞとばかりに、
『もう一人、産んでからじゃよ。環奈を姉様にしてやってからじゃ…』
『ア…アァァ…お父様…』
富子も自ら帯を解き、忽ち産まれたままの姿になると、まるで、三つの幼児が母にそうするように、胸の中に顔を埋めてくる。
『オォォ…真弓や、また、胸が膨らんできたのう。』
『アァァ…アァァ…だって…私…アァァ…もうすぐ…十三になるのですもの…』
『それに、
『アン…アン…だって…アン…アン…もう…もう…大人ですもの…アァァーーーン…』
『そうか、そうか、そうじゃったのう…おまえは、もう、立派な大人じゃからのう…』
富子は、更に胸の膨らみと
何とも小さな肩…
何とも細い
甘えるように胸を埋める…
子供帰りしたような顔…
自分を娘と重ねて見ているが…
こうしていると、彼こそが赤子のように思われる。
そうして、富子の
『さあて、参道は、もう開かれておるかの?』
『はい、十分に…いつでも、お通りくださりませ。』
『では、今宵も、御祭神を詣でさせて貰うぞ。』
『オッ…オッ…オッ…』
『アン…アン…アン…』
二人の喘ぎが交差する中…
富子は、参道を行き来する穂柱の更なる膨らみを、下腹部に感じてゆく。
それは、何とも優しく、心地よく…
最早、幼い頃、苦痛でしかなかった
今はただ…
早く…
早く…
早く、御祭神様の元に来て…
『オォォッ…オォォッ…オォォッ…』
『アァァッ…アァァッ…アァァッ…』
やがて、二人の声が交差した刹那…
暖かなものが、御祭神に向かっていっぱいに放たれ…
その温もりは、下腹部から全身に広がってゆく。
『アァァ…お父様…』
『アッ…』
と、一声漏らして、立ち尽くした。
同時に、股間に手を伸ばすと、赤面しながら辺りを見回した。
無論、見ている者など誰もいない。
此処は、今や名ばかりでしかない
警護もつかなければ、身の回りの世話をする者もいない…
だから、こうして、
富子は、ホッと息をつくと、もう一度、着物の裾から手を忍ばせる。
やはり、
そうして、長い一日を何日も一人で過ごしていると、
しかし…
ある日を境に、
美しい着物と化粧でめかし込んでも…
どんな舞を踊り、曲を奏でても…
どんな料理を勧めても…
殆ど反応を示さず、何処か遠くを見つめて、溜息ばかりつくようになった。
何より…
寝床の中、どんなに擦り寄り、誘いかけても、富子の
『お父様、どうなされたのですか?何か、気に掛かる事でもありまして?』
富子が意を決して尋ねると…
『真弓や…
いや、富子…』
『えっ?』
不意に、娘の名ではなく、本当の名で呼びかけられ、富子は戸惑いの色を見せた。
『いや、すまぬ。長い事、真弓になりきってくれて、礼を申すぞ。』
『そんな…私は、真弓でようございます。お父様の愛しい娘の真弓で…』
『愛しい…』
『そう、愛しい娘の真弓にございます。』
『愛しい…か…』
今度は、
『お父様?』
『いや…昔、わしに生まれて初めて、愛しいと言う言葉を教えた男がおってな。其奴の事を思い出したのよ。』
『愛しい…と、言う言葉を…』
『わしは、この歳になるまで、愛しいと言う言葉の意味も、そもそも、そのような言葉がある事も知らなんだ…
それを、其奴はわしに教えおったのじゃ。
名を忘れた故に、名無しとも呼ばれておった。』
『
『フッ…いけすかぬ奴じゃったわい…』
『富子、やはり、一人は寂しいかの?』
漸く口を開いた
『環奈は、寂しかったようじゃ。そりゃ、そうじゃろうな…まだ七つかそこらで、ずっと一人ぽっちで過ごしておるんじゃもんな…
そんな事にも気付いてやれだなんてな…』
そうして、やはり何も言わず、ジッと聞き耳をたててこちらを見続ける富子に話して聞かせたのは…
つい先日、環奈が弥助と与助なる
美穂と言う乳母の猿女が屋敷を去って以来…
一人寂しく過ごす事の多かった環奈は、ずっと遊び相手が欲しかったのだと言う。
そこへ、庭掃除として現れた
環奈は、無邪気に二人に懐き、毎日、彼らの訪れを楽しみにしていたのだが…
ある日、二人は本性を剥き出しにして、環奈に乱暴を働こうとした。
幸い、間一髪、
以来、もう一月近く経っているのに、環奈は毎日泣き続けて過ごしているのだと言う。
それも、乱暴されかけた事ではなく、今でも友達だと思っている二人が、訪れなくなってしまった事を嘆いているのだと言う。
この事があり、
『そこで、なのじゃがな…
裏屋敷で、環奈と一緒に暮らして貰えんかの…』
環奈の事を話し終えた
『裏屋敷で、環奈様と?』
『いやな…わしの
すまぬ事じゃとは思うとるよ。
じゃがな…
本来、忌む子である環奈は、裏屋敷を出る事は許されぬ。裏屋敷におると言う条件で、形だけでも
それにのう…』
と、今度は急に富子から目を背け、眉に皺を寄せながら、忌々しげな物言いで言葉を続ける。
『わし自身、
『まあ…
それまで、一言も発さなかった富子が、急に目を丸くして尋ねると…
『何と言うかじゃな…』
『わしも、もうすぐ八十になる。そろそろ、跡目を睦夫に譲ってな、身を引いてはどうか?と、言われておるのじゃよ。
まあ…わしも、もう
ただ…
まずは、屋敷だけでも、睦夫に明け渡してはどうか…
とな…
睦夫自身は、まだ、
睦夫の
それで、
既に、睦夫が
と、まあ、そう言うわけじゃ。
それで、一応、隠居所の用意もされるとの事じゃが…
間に、他の
今までのようには、環奈の元に通えなくなる。
ならば、一層…
わしも、裏屋敷に住もうかと思うての…
富子は、嫌か?
兎共や
日陰者の暮らす境内裏に押し込められるのは、やはり…』
富子は、そこまで話を聞くと…
『嬉しゅうございます。』
満面の笑みを浮かべて言うなり、
『富子、良いのか?裏屋敷住まいで、良いのか?』
『住む場所など、何処でも…
それより、これからはずっと、お父様とご一緒に…』
『勿論じゃよ。
『それでしたら…私は、坂者や河原者の集落でも…よしんば、座敷牢や地下牢でも、何処へでも参ります。』
『そうか、そうか…嬉しい事を言うてくれるの。そうと決まればな…』
『アッ…アァァッ…お父様…』
富子が、思わず声を漏らすと…
『富子や、久々に、参道を通らせて貰おうかの。わしのもほれ、この通り、御祭神を詣でたがっておるぞ。』
『お父様ったら…』
富子は、思わず赤面しながら、さりげなく帯を解き、
『また、胸が膨らんできたのう。』
『私もあと僅かで十三歳になりまする。』
『
『もう、大人ですもの…』
『富子や…オォッ…富子や…』
そして…
『アァァーッ…』
富子がまた、思わず声を上げた時…
『わあ!お祖母様の御神門(おみとが濡れて参りました。』
ケラケラ笑いながら言う、環奈の声が聞こえ、現実に引き戻された。
『お祖母様、やはり、此処が一番気持ちようございますか?』
『ええ、ええ、とっても…』
『それでは、もっと気持ちよくして差し上げてよ。』
環奈は目を煌かせて言うと、湯殿の床に仰向けて寝る富子の股間に顔を埋め、
『うわっ…』
富子はまた、くすぐったさに、クスクス笑いながら、身を捩らせる。
『ほうら、お祖母様!お祖母様ったら!ちゃんと脚を開いてくださらないと、舐めて差し上げられませぬ。』
『だって…だって…環奈様…』
口を尖らせる環奈を前に、富子はいよいよ我慢できぬと言う風に笑いながら、更に脚を閉じると…
『お祖母様…嫌い…』
環奈は、不意に富子の股間から顔をあげ、鼻を鳴らし始めた。
『環奈様?どうなされたのですか?』
富子が思わず首を傾げて尋ねると…
『お祖母様の意地悪…せっかく、気持ち良くして差し上げようとしてるのに…そんなに脚を閉じてしまわれては、舐めて差し上げられませぬ…』
環奈は、感極まったように、本泣きし始めた。
『申し訳ありませぬ。環奈様…環奈様…』
富子が慌てて宥めようとすると、環奈はますます首を振って、大泣きした。
『環奈様…』
富子は、暫し途方に暮れたように環奈を見つめた後…
『環奈様、そこに寝て、脚を拡げて下さりませぬか?』
環奈の垂髪の頭を撫でながら言った。
『お祖母様?』
環奈は、忽ち涙を拭って顔を上げると…
『環奈様、今度は、私が環奈様の
『はい!お祖母様!』
優しげに微笑みかける富子に、環奈は満面の笑みで頷くと、その場に仰向けて寝そべり、大きく脚を広げて見せた。
『今日は、お漏らしをされませぬよう、お願いしますね。』
『はーい、お祖母様。』
富子は、一段と大きな声で返事をする環奈に、もう一度笑いかけると、小さな股間に顔を埋め、まっさらな
『アン…アン…アン…』
湯気の立ち登る湯殿に、緩やかに腰を上下させながら漏らす環奈の喘ぎが、静かに鳴り響く。
毎日、
遠く離れていても、いつも
むしろ、離れてる時間があるからこそ、数日に一度会えた日々は濃厚であり…
自分以外、誰もいない屋敷だからこそ、一人待つ時も、待ち人が帰って来た時も、水入らずに過ごす事ができた。
一人を寂しいなどと思った事はない。
富子は、生まれて来た時から、ずっと一人と同じであった。
父や兄達からは、絶え間ない
それで、少しでも痛がって泣いたり、されるのを嫌がれば、情け容赦なく殴られ蹴飛ばさられてきた。
むしろ、一人でいる時は、僅かにその苦痛から免れられる時であった。
この世で唯一、優しく接し、抱きしめ共に泣き、短い間に、歌舞音曲、読み書きと計算、炊事と洗濯、何より女の子らしい遊びを教えてくれた母も、九つになるのを待たずに逝ってしまった。
その時も、涙を流しもせず、悲しいと思いもせず、ただ、股間以上の痛みを胸に感じるばかりであった。
その痛みこそが、悲しみや寂しさである事…
そもそも、悲しみや寂しさと言う言葉も意味も、分からなく過ごしてきた。
初めて、その言葉を教えてくれたのは、
『いつも、寂しい思いをさせて、すまぬのう…』
『そんなに、わしに縋りつきおって…わしが、なかなか帰ってきてやれ何で、一人きりにさせられて、悲しかったんじゃのう…』
そう言われて、この胸の痛み…
母が逝ってしまった時の胸の痛み…
それが、悲しみであり、寂しさだと言う事を、初めて知った。
しかし…
悲しみや寂しさの意味を知ってから、むしろ、悲しみや寂しさを感じなくなった…
いや…
辛くなくなったと言う方が、正しいであろうか…
一人で悲しく寂しかった分…
そう思えば、一人待つ時もまた、心ときめくものがあったのである。
しかし…
こうして、もう一人、誰かと一緒に待っていると…
『あーっ!環奈様、また、御粗相を…』
『お祖母様、申し訳ありませぬ…』
富子が
思わずまた、思い切り放尿してしまった環奈は、肩を窄め、恥ずかしげな笑みを浮かべて見せる。
『しょうのない方…あんなに、御粗相はなさらないお約束でしたのに…約束を守ってくださらぬのでしたら、もう、お慰め致しませぬ。』
『お祖母様、申し訳ありませぬ…申し訳ありませぬ…お祖母様、許してたもれ、許してたもれ…』
『どうしましょうかしら…そう仰られて、私の顔に何度、御粗相あそばされたか…』
『お祖母様…』
わざと怒った顔を見せて言う富子は、いよいよ環奈がメソメソ泣き出すのを見ると…
『それでは、次は、もう御粗相なさらないのですよ。良いですわね。』
『はい、お祖母様…』
どうせまた…
次もまた、
変な癖をつけてしまったのは…
困ったものだと思いつつも…
守られぬであろう約束を信じた風に、抱きしめてやる温もりは暖かい…
この温もりを抱きながら、あの人を待つ…
もうすぐ帰って来る予感のする、あの人を待つ…
こんな日々も良いものだ…
やはり、裏屋敷に来てよかった…
富子は、そう思いながら、まだ胸の中でメソメソ泣く環奈を抱きしめ、頬擦りをし続けた。