Arcadeからサーヴァントが出てきた件について 作:ボルメテウスさん
「むむっ、久し振りに会ったじゃないか」
「「げぇ」」
その日の講義を終えた俺達はそのままゲーセンへと向かおうとした時、後ろから声をかけられ、思わず振り返った。
普段は別の講義を受けている為にほとんど会う事はなかったはずだが、そこには俺達にとって最大の天敵がいた。
『彼女は一体誰なんだい?』
俺と東堂がかなり警戒している事もあって、出てきたマーリンの顔はかなり険しかった。
「奴の名は白銀駿河。
この大学で入学して以来の天才と言われている奴だ」
「そんないきなり褒めるなんて、嬉しいじゃないか」
白銀は俺の言葉を聞いて、笑みを浮かべるが、そんなのはどうでも良い。
「同時に俺達の天敵でもある」
『天敵?』
マーリンはそれに対して首を傾げるが
「それで、二人は今はどこまでいったんだ?」
「こいつは生粋の腐女子だ」
俺はそう言いながら白銀を指差す。
白銀駿河という女はその外見とは裏腹に男同士の恋愛を好み、その手の話を好むいわゆる"腐女子"と呼ばれる人種だった。
しかも、それを隠している訳ではなく、むしろ積極的に話してくるため、余計質が悪い。
さらに厄介なのは彼女がかなりの美人であり、スタイルも抜群なのだ。
故に彼女のファンは多いのだが、本人はそれに気付いていないのか、もしくは自覚した上であえてなのか分からないが、自分の性癖を包み隠さずオープンにしているのだ。
その事もあって、彼女にファンがいたとしても、それに近づこうとする奴はほとんどいない。ちなみに彼女から話しかけてきたのは、俺達がいつも一緒にいる事を知っているからだ。
「ん? どうかしたかい?」
「……なんでもねぇよ」
不思議そうな顔で見てくる白銀の視線から逃れるように顔を背ける。
「それで君は攻めなんだよね?東堂君は反対に受けなのかなぁ?」
「ブラザー、こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!
こんな腐女子には出会ったことがねえほどなァーーーッ!環境で悪人になっただと?
ちがうねッ!!こいつは生まれついての腐女子だッ!」
「いや、なにいきなりジョジョネタを出しているんだよ」
そう東堂は叫ぶが、お前も生まれついてのロリコンだろ。
「あ~もう最高だよぉ~。やっぱり私の目に狂いは無かったよぉ~」
そして案の定白銀は興奮して鼻血を流していた。
「それで何の用だ」
このままでは話が進まないと思った俺は仕方なく要件を聞く事にした。
「あぁ、そうだった。
いやぁ、私も最近になって、FGOアーケードを初めてね。
少し戦ってくれないかな。
私としては、君のマーリンと戦ってみたいと思ってね」
「っ」
その一言と共に白銀の後ろに現れたのは、一人の男だった。
まるで本から飛び出したと勘違いしそうな白い鎧を身に纏い、金色の剣を手に持った男。
それは、Fateの顔とも言えるアルトリアの原点というべき存在で、その名は
『久し振りじゃないか、アーサー』
その名をマーリンが呟く。
『久し振りだね、マーリン。
まさか君とこうやって会うとは思わなかったよ』
これは偶然と言うべきなのか?
俺達が戸惑っている間にも白銀はそのまま続ける。
「私としては早くアーサーにはプロトランサーとプロトアーチャーとのカップリングを見たい所だけど、今は彼がやりたい事に付き合いたいと思っているんだ。
良いかな?」
「まぁ別に良いけど」
それに対して、特に不満はないが、マーリンは大丈夫だろうか?
不安に思っていると、マーリンは
『心配しなくても大丈夫だよ、マスター。
例え敵がアーサーでも、私はマスターの為に戦うさ』
「分かった」
どうやら問題ないらしい。
そうして、俺達はその場から離れ、ゲームセンターにある機体に向かい、そのまま起動させる。
今回の戦いの舞台となる終わりの土地。
T字を横向きにした構造をしており、エリア中央部の広場はほとんど障害物がない。
戦闘開始時には、この中央部でお互いが見える位置から始まる。
俺が操作するマーリンと白銀が操作するアーサー。二人の距離は数メートル離れている。
「それじゃ始めるぞ」
「いつでもいいよ」
そうして、カウントダウンが始まり、ゼロになると同時に戦いが始まった。
先手を取ったのは、アーサーの方。
地面を蹴って接近してくる。
その動きはまさに神速。
そのまま少し踏み込んで手に持った剣で薙ぎ払いを行う。
対してマーリンはそれを避けると共に周囲に翼が付いた弾を浮かべ、相手に突進する。
だが、アーサーはそれを剣の一振りで吹き飛ばす。
『おやおや、随分と荒っぽい攻撃だね。
女の子らしくないんじゃないかな?』
そんな挑発の言葉に対してマーリンは特に反応する事もなく、逆に笑みを深める。
『何を言っているんだい?
マスターに良い所を見せるならば、これぐらいしないとね』
マーリンはその言葉と共に杖を回転させて渦を放つ。だが、アーサーは難なくそれを切り裂いて、再び距離を詰める。
「やはり強いな」
予想していたとはいえ、これは結構やばい。
白銀は簡単に言うバランス重視の戦いができる奴だ。
遠近どちらにも対応ができ、俺のように近接が特化している訳ではなく、東堂のように遠距離からの攻撃に特化している訳ではない。
だからこそ、どのような状況にも対応ができる為、先程から互角の戦いを繰り広げる事ができる。
だが、アーサーは違う。
確かにアーサーは万能ではあるが、それはあくまでもオールラウンダーなだけでしかない。
どちらかと言えば、接近戦が得意であり、一撃は重い。
このままではじり貧になってしまう。
何か手はないのか。
『マスター、一つ提案がある』
「なに?」
『遠距離での攻撃のタイミング。
僕に任せてくれないか?』
「マーリン」
『このままでは負けてしまうだろう。
だからこそ、遠距離での攻撃は僕に任せて欲しい』
俺はマーリンの提案を聞きながら考える。
正直言って、マーリンがここまで焦るなんて珍しい事だ。
普段から余裕ぶっているマーリンにしては珍しく、本気で勝ちに来ているのは間違いない。
しかし、それで勝てるのだろうか?
『マスター、頼む』
だが、マーリンからの声を聞き、俺は
「だったら、信じるぜ、相棒!」
それと共にマーリンが攻撃を避けると共に離れる。
同時にマーリンの言葉に合わせるように、ボタンを押し、彼女の杖から小さな弾を3連射する。
「あれは、遠距離攻撃!」
「ブラザーが、遠距離攻撃を、しかも当てるだと!」
俺が行った行動に驚きを隠せない二人を無視し、そのまま複雑な軌道の弾を4発、アーサーに向けて放つ。
アーサーは迫りくる弾丸に対して、手にした剣を振り回し、全て叩き落とす。
そして、そのまま一気に駆け抜け、マーリンに攻撃を仕掛けようとする。
しかし、マーリンにはまだ最後の一手が残っていた。
『今だ!』
その声に合わせて、アーサーの頭上に剣を出現させて、突き刺すように落下させる。
アーサーはその攻撃を受け、地面に倒れ込む。
だが、まだ勝負はついていない。
マーリンの最後の攻撃である剣の射出により、アーサーは倒れた。
「ふぅ、勝てたか」
『そのようだね』
同時にゲームが終了すると共に、俺はゆっくりと座り込む。
『まさかマーリンがここまで信用しているとはね』
そうしていると、先程まで対戦していたアーサーが来ていた。アーサーは少し悔しそうな表情を浮かべながらも、どこか嬉しそうだ。
「そうなのか?」
『あぁ、私が知る限り、マーリンがあそこまで信用している人物は見たことないからね』
「でも、マーリンは確かアーサーと『マスター、はいそこまでぇ』うわっと」
俺が言おうとしたら、マーリンが止めてきた。どうしたんだろうか?
「どうかしたか?」
『いや、まぁ、ちょっと、ね』
何故か言葉を濁すマーリン。
なんだ、一体何を隠しているんだ?
『とにかく、今回は僕の負けだよ。
そして、これからも僕のマスターとよろしく頼むよ』
「えぇ」
アーサーのその一言に俺は思わず驚く。
「俺、まだチームを組むとは『締め切りはもう、今日だけど』なっ」
それじゃ、ここにいるメンバーでやるしかないのかっ。
「クズ、ロリコン、腐女子。
最悪なチームじゃないか」
『自分の事をクズだと自覚しているマスターはさすがだなぁ』
マーリンからの一言をスルーしつつ、俺は改めて覚悟を決める。