方法(プラン):大規模演習時の事故
報酬:NK-12Mの研究データ
(NK-12……ソ連の戦略爆撃機「Tu-95」に搭載されるエンジン)
「それで……彼は成果を上げてる?」
『はい。監視対象の部下としての立ち位置を維持していますし……執務室への盗聴器の設置作業も成功したようです。』
「そっちじゃなくて、監視対象の方。」
『はい……あ、すいません。監視対象の方も成果を伸ばしています。』
「わかった。」
慣れない作業。監視対象は赤色十月同盟学連の代理人。通称「T-34代理人」。私の夫も代理人だけれど彼は「F4G代理人」とは呼ばれない。ただ「ストーカー」か「彼」としか呼ばれていない。
私達は整備会から依頼を受けて内部調査を行っている。
「コルセア大尉殿!お疲れ様です!」
『あぁ……お疲れさま。』
「隊長の
『まあ……あの人だもの。』
「隊長がいないと少し寂しいですね。」
『……えぇ。』
「こちらビースト。休憩時間は終わったのに執務室からずっと喘ぎ声しか聞こえないのだが。」
「こちら
「……ビースト、了解。」
無線越しでもわかる不満。
「監視対象から補給支援の要請が出ています。」
『今度は何を融通してやれば良い?』
「……コンドームだそうです」
『……コンドームか。わかった用意しよう……ちょっと待て。あいつら生でやってたのか?』
「わかりません!」
『くそっくそっくそっ!見せつけやがって!』
「大尉、落ち着いてください!」
『ただでさえ、コイツラのせいで一緒にいられないのに!』
「大尉!机をこれ以上破壊しないでください!経費が!経費が!」
『この!この!この!』
「へールプ!誰か!大尉を止めて!誰か!誰か!」
「大尉!机をこれ以上破壊しないでください!経費が!経費が!」
「この!この!この!」
「へールプ!誰か!大尉を止めて!誰か!誰か!」
何をやっているんだ君たちは。ファングといい、
『はぁ……それにしても執務室に入れないとなると……なかなか困るな。書類……副官じゃない私がやるのもおかしな話だがな。』
(ノックの音、3回。規則正しい)
「失礼します。同志Il-10Mさん、ここに居たんですね。」
『うん?あぁ……同志TB-3。どうかされましたか?』
重爆撃機Pe-8の実用化によって代替わりを迎えた旧世代機のTB-3。
「同志代理人のことで相談が。」
『何でしょう。とりあえず、椅子をどうぞ。お座りください。』
「失礼します。」
物腰の柔らかい重爆撃機。長身の彼女は眼鏡を少し曇らせながら座る。
「単刀直入に質問します。」
『はい。何でしょうか?』
「同志代理人が何を考えているのかわかりませんが、私を出撃させるよう同志代理人に助言してほしいのです。」
『……はて?なぜ新米も新米な私に?』
「同志Il-10Mは同志代理人との距離も近い、問題ないと思うのですが。」
『同志TB-3。お言葉ですが、私の手には余り余る大仕事のように思えます。それに、同志T-34の言う事なら確実に聞くと思うのですが、そちらに掛け合われてはいかがでしょうか?』
「今日の休憩時間を迎えてから同志Il-10Mは同志T-34を見かけられましたか?」
『う……見ていません。』
「お願いします……何でもしますから。」
『……わかりました、考えてみます。どう近づいて良いものかわかりませんが。』
「それはそうと……同志Il-10M。星屑連邦学連の
『無いですね。』
「意外とあっさり。」
『ええ。許容と主張……全てはバランスだと思うのです、同志TB-3。』
「そうですか……」
『ええ。そうだ、同志TB-3。今日、訓練飛行の予定はありますか?』
「え、確か……あるね。これから。」
『私も飛ぶのでご一緒させて頂いても?』
「え、えぇ……と、嬉しいのだけれども……飛行速度が流石に違い過ぎるし……」
『失速速度は把握しておりますので随伴飛行は可能だと判断していたのですが……やはりいけませんか?』
「うー……同志Il-10Mと仲良くなるチャンス……わかった、飛ぶ。ついてきて。」
『了解です。エスコートはお任せを。』
「うー……同志Il-10Mと仲良くなるチャンス……わかった、飛ぶ。ついてきて。」
「了解です。エスコートはお任せを。」
机を叩き割った。私だって
「コルセア大尉殿……少し休まれますか……?」
『いえ、続けるわ。彼が頑張っているんだもの。私一人休めない。』
「わかりました……無理はなさらないでくださいね。」
ファングが別の部署に絡みに行く。
「極東急行のニュースが今更流れるとは……かなーり横の情報の連絡が遅いんだね。」
「遅いというより、隠蔽されていたんじゃない?」
「混乱を防ぐためとか?」
事務員達が騒いでいる。まあ、広報部に関しては誰かが口止めしていたのだろう。
しばらくしてから仮眠室で一人ぼーっとする。極東急行で彼を失った時を思い出し、同時に組み直したときを思い出す。指が濡れる。
「大尉、感傷に浸るのはお勝手にどうぞですが……仮眠室の掃除はお願いしますね。」
『……ごめんなさい。』
「寂しいのはみんな一緒ですから。」
『……。』
「では、失礼。」
ファングも嫌なやつだ。私と彼の関係について知っているのに彼に言い寄ろうとする。もっとも夫は夫で、ファングに関して単なる部下としてしか見れていないようだけれど。
この仕事が終わったらいっぱい可愛がってもらおうと思いつつ、後片付けをする。手は洗い、窓を開ける。頬が熱い。愛でて欲しい。
『はぁ……寒い。』