しばらくして俺は団地の一室に入れられた.
部屋の窓は新聞紙で覆われ,その上にお札が貼られ,四隅にはローションが置かれていた.部屋の中央には寝袋が置かれていた.
あと,どこにあったのか「おまる」が二つも置いてあった.ここで用を済ませろってことか.
じいちゃんは真顔で
「もうすぐ日が暮れる.いいか,明日の朝七時までここから出てはいかん.
わしもばあさんも,決してお前を呼ぶことも,お前に話しかけることもない.
七時になったらお前から出ろ.家には連絡しておく.」
と言ってきた.俺は黙ってうなずくしかなかった.
管理人さんも
「今言われたことは絶対守ってください.
何か起きたら寝袋にこもるといいですよ.」
と忠告してくれた.
テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛れない。
部屋に閉じ込められるときにばあちゃんがくれたおにぎりやお菓子も食べる気が全くおこらず、放置したまま寝袋に包まってひたすら震えていた。
俺はいつのまにか眠っていたようで、目が覚めたときには午前3時すぎだった。
なんか嫌な時間に起きたなあと思っていると、窓ガラスが突然ガタガタと鳴りだした.俺はきっと風のせいだと思い込むことにした。
落ち着こうとお茶を一口飲んだが、やっぱり怖くて、テレビの音を大きくして無理やりテレビを見ていた。
するとガタガタという音がさらに激しくなった.
「HAHAHAHAHA」
ショウダの声だ.
「そこにいるのは分かっているぞぉ!
何だぁ?この鉄格子はぁ!
破邪ぁ!破邪ぁ!」
どうやらじいちゃんが窓に鉄格子をはめてくれたらしい.
俺は鉄格子を揺らすガタガタという音を聞かないよう,寝袋の中にこもって震えていた.
いつの間にかガタガタという音は消えていた.
どうやら諦めて去っていったらしい.
だが時計を見るとまだ午前4時だった.
俺はじいちゃんの言いつけを守り,7時まで部屋に籠ることにした.
「HAHAHAHAHA」
ショウダの声だ.まだあきらめていなかったのか!
俺はまた寝袋に潜り込んだ.
ギギギギギギ......
不快な金属音が鳴り響く.
すごく嫌な予感がする.
次の瞬間,何かが豪快に砕け散る音がした.
見ちゃだめだ.見ちゃだめだ.
そう思いながらも,俺は寝袋の隙間から外を覗いてしまった.
「正義マン参上~」
ショウダが俺の部屋の中で立っていた.
昼間とは異なり,ヒーロースーツのような奇妙な服を着ている.
ショウダは不自然に腰を曲げている.団地の天井がショウダにとって低すぎるためだろうか?
窓ガラスと鉄格子は粉々に砕け散っていた.
まさかショウダが叩き割ってしまったのか.
おれは恐怖のあまり寝袋に籠って震えていた.
「HAHAHA!お待ちかねの正義マンのお楽しみタイムだぁ!」
そういうとショウダは俺の籠っている寝袋に向かってきた.
「起きろぉ!ジャスティスブロウ!」
俺の体に強い衝撃が走った.どうやらショウダは寝袋を殴ったらしい.
だれか......助けて......
「HAHAHA.ジャスティスクエイク!」
再び強い衝撃が走る.
「ぐうぅ!なんなんだこの寝袋は!
私のパンチでどうして破れないんだぁ!破邪ぁ~!」
ショウダの悔しそうな声が聞こえる.
確かにショウダは鉄格子を砕くほどの怪力を持つのに,なぜか寝袋は破れていないようだ.
「HAHAHA~こうなったら寝袋ごと持ち帰ってやる~」
ショウダは俺の寝袋を持ち上げようとする.だが寝袋はピクリとも動かない.
俺は,ショウダが寝袋を持ち上げようとする気配を感じながら,何もできずに震えていた.
しばらくするとショウダはあきらめたようだ.
「HAHAHA.まあいいだろう.今日はこのくらいで勘弁してやる.
だが次こそ必ず破邪してやるからな~」
そういうと,ショウダが窓ガラスから外に出ていく気配を感じた.