早まるな!待ってくれ!
明日からは日の出祭りだ。
五月を家まで送りながら、俺は明日のプランについて考える。
15時までに仕事を終わらせるには…
「上杉さん、聞いていますか?」
横で問題集を見つめながらうむむと唸っているのは、俺が教えている五人の生徒の内の一人、中野五月。アホ毛とお母さん口調が特徴で、どんな事でも真面目に取り組む事が出来るいい奴だ。だが馬鹿だ!
「…本当に大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。なんだ?」
いかんな、どうにも気持ちが高揚してしまっているな。
「あの、ここの問題を教えて欲しくて…歩きながらでも大丈夫ですか?」
「もちろんだ。…分かった。ここの式じゃないか?」
「あ、本当ですね。」
俺たちはしばらくの間、夜風に吹かれながら勉強を進めた。
「…上杉君」
ふと、五月が俺に聞いてくる。
「何だ?」
「この国の憲法と法律が改正される事、知っていますか?」
「あぁ…。確か、多重婚が認められるんだっけか。ま、俺には関係ないけどな。」
「そ、そうですか…。まぁそれはいいとして。…何故でしょう、私、凄く嫌な予感がするんです。」
「…」
確かに、その予感は完全に否定できる物ではなかった。
最初の頃の関係のままだったら、こんな事も考えずに済んだ。
だが、今はどうだ?
こんな俺でも、少なからず慕ってくれる人達がいるのも知っている。
…流石に、無いよな?
☆★☆
学園祭の一日目が終わった。
少し遅れてしまったが、取り付けていた約束通り、俺は教室へと向かう。
「…誰もいないのか?」
教室には、誰の気配の無かった。
誰か一人くらいは遅れるやつもいるだろうとは思っていたが、流石にこれはちょっと
傷つく物があるな。と風太郎は思った。
しばらく待っていると、五月と四葉が揃って入ってきた。
続けて、二乃、三玖が遅れてやって来た。
「お待たせっ」
「三玖おっつー」
「遅いっ、遅刻よ。」
「私達だって時間を過ぎていましたが…」
「ともかく、これで全員揃ったね。」
五つ子の内の四人が、思い思いに口を開く。
「いや、まだ一人。入ってくれ。」
俺が廊下に向かって呼びかけると、ガラッとドアが開く。
「一花!」
「や。」
手を振って返事をしたのは、女優業の合間の時間で来てくれた彼女らの長女、一花だ。
「これで本当に全員集合だ。」
☆★☆
その後、しばらく俺達は屋台で買った物を食べて過ごした。
何だか言い出しにくい雰囲気だが…。
それでも、俺は答えを出さなければならない。
俺は腹を括って話し始めた。
「…俺は、お前たち全員の事が好きだ。」
五つ子達は、突然の事で何を言われたかわかっておらず、
面食らったような顔をしている。だが、俺は構わず話を続ける。
「だが、答えを出さなければいけないとおm」
「それ、本当!?」
「え?」
いきなり、一花が大声で叫んだ。
「う、嬉しい…フー君は、私達全員の事を考えてくれたのね。」
「ん?ん?」
おかしい。状況が分からない。
だが、確実に何かまずい地雷を踏んでしまった事は分かる。
「フータロー。…ぎゅって、してもいい?」
「え、あ…」
「いいの?ありがとう。」
「ちょ、まっ!」
待ってくれなかった。
まずい、これは…。
「う、上杉さん…私も、う、嬉しいです!」
「うわぉ!?」
四葉も勢いよく抱き着いて来る。
だが、威力が強すぎてもはやタックルだった。
「ま、まさか法改正の初日に決めるとは…そ、そんなの、不純ですぅ!」
「ほ、ほうかいせい…?あ、あったなそんなの!」
しまった、まさか本当に悪い予感が当たるとは!
「じゃあ、五月はフータローの愛、受け取らないの?」
「うえ、そ、それは…。」
「もういいんだよ。いつも勉強頑張ってるんだし、今は風太郎君に甘えたら?」
「…んっ。」
恐る恐る、と言った感じで五月が腕に抱き着いてくる。
割と強い力で抑えつけられているので、腕が痛くなってくる。
ちょ、痛い痛い。
「じゃあ、これで決まりだね、風太郎君。これから、私達をよろしくお願いします。」
「んなぁぜぇだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺の渾身の一声は、青い空の彼方へと消えていった。
期待しないでくれ。