皆さんの投票から選ばれたのは…?
「赤ちゃんの名前は…未来だ。」
☆★☆
「あちゃー、選ばれなかったかぁ。」
「そんな…いい名前だと思ったのに。」
「わっはっは!やっぱり私の名前が勝ったのだぁ!」
「うーん、ちゃんと考えたんですけどね…」
四人がそれぞれ思った事を口にする。
今回、特に迷ったのは『美麗』と『未来』だ。
『玖瑠美』も悪くないとは思ったが、やはりこの二人の案の方がしっくりきた。
『昴』は無いな。
「ちょっと、あなた今私の案を侮辱しましたね?」
「時々思うんだが、お前らテレパシーかなんか持ってるのか?」
「愛の力です。」
「うんそーだねー」
半年前に車と正面衝突したとは思えない話し方だ。
正直ちょっと憧れる。
これは言って無かった事だが、実は半年前に五月は事故に巻き込まれていた。
一発で死んでもおかしく無かったのだが、奇跡的に無傷で生還、生命力の違いを見せられた。
「もう、これ以上私にトラウマを増やさないでください!」
「分かってるって。」
「だからあなたにも極秘で免許を取るよう頼んだのですよ!?」
「今言ったから極秘じゃねぇじゃん」
「あ」
おいおい、誰だこいつの頭のねじナマコに取り換えた奴?
「え、そうだったの、五月?」
「あんなにお金の事怒ってたのは、演技だったんだね…」
「手口が汚いわね」
「お礼はちゃんとしたんですか?」
次々と言葉攻めを受ける五月の精神はもう爆発寸前だ。
このままだとまたふぅぅぅぅとか言って抱き着いてくるに違いない。
家だったら喜んで受け入れるのだが、流石にこんな公共の場でやられるのも恥ずかしい。
「分かった。家でたっぷり絞っとくから、静かにしよう。」
「それ、恥ずかしい事言ってるって自覚あります?」
☆★☆
その後、一週間ほど経過した。
入院期間も明け、いよいよ未来のお披露目だ。
病院を出ると、そこには親父と…
「お、お父さん!」
「君にはまだお父さんと言われる筋合いは無いね。」
俺にとっての二人目の父になるであろう人、親父がマルオと呼んでいる人がいた。
「今回はこのような事になってしまい、大変申し訳…」
「いや、謝らなくていい。こちらとしても想定していた事だ。」
「と、言うと…?」
「家の子達は少々独占欲が強くてね。君は知らないと思うが。」
「おいマルオぉ、せっかく孫を見に来たってのに、そんな大人げない事言わなくてもいいんじゃねぇか?」
「…失礼、確かにそうだね。」
「お父さん…」
「よしてくれ。…慣れてないんだ、父と呼ばれる事に。」
「…」
「フータロー、他の人もいるから。」
「あぁ、分かった。…えっと」
「行きたまえ」
「…はい。」
俺は一礼をすると、その場を去った。
☆★☆
「あ、店長だ!」
「おぉ、店長!」
「や。」
「やっほー三玖ちゃん!出産おめでとう!」
ゆるゆると気だるげに歩いてきたのは、昔働いていたスイーツ店の店長さんと、三玖が働いていたパン屋の店長だった。この人達いつも一緒だな。もう一周回って仲いいだろ。
「君たちはまだ若い。この先、色んな苦労が待ち受けているだろう。だが、君たちには沢山の仲間がいる。あまり頼りがいも無いかもしれないが、きっと力になるよ。」
「…ありがとうございます。」
「あと、これは僕達二人からのご祝儀。」
「大切に使ってね。」
おぉ!金だぁ!
やっぱ世の中金なんですよ!
「まさか、三玖ちゃんに子供なんて…人生何があるかわからないものだね」
「何だか、勝った気分です。」
「本当だよ、人としても、女としても、一歩負けてる気がする…」
「君の場合、一歩どころか百歩負けてると思うのだが。」
「あ、あなたに言われたくありませんよ!」
「私は君と違って認めているからね。」
「…はぁ。」
何だか険悪な雰囲気だ。
だが、こんな感じでお互いに高め合ってきたから、いいお店が生まれるのだろう。
「では、私達はそろそろ帰るよ。」
「東京生活、頑張ってね!」
そう言い残して、二人は去っていった。
あの二人がくっつくことは…まさかな。
☆★☆
夜。
二人の新米おじいちゃんは、料亭で仲良く飲み明かしていた。
「けけけ。…マルオよぉ、俺らも老けたもんだな。」
「一緒にするな、僕の方が見た目年齢が五歳は若い」
「んだと!俺だってお肌ピチピチじゃい!」
「うるさい。ここは腐っても高級レストランなんだぞ?身分を弁えたまえ。」
「おい、誰がレストランが似合わない奴だこら」
「呑み込みが早くて助かるよ。…君、何をしているんだい?」
「この料理、一泊付きなのか?」
「馬鹿も休み休み言ってくれないかい?」
「うっせ。…酒は祝い事にしか飲まないんじゃなかったのか?」
「あぁ、だから飲んでいる」
「へっ。」
「何が可笑しい。」
「何でもねぇよ。…なぁ、あいつら上手くいくと思うか?」
「そんな事、僕に言われても分からないよ。なにせ、日本初の多重婚だ。しばらくは世間からの批判もあるだろうし、政府からの監視もあるだろう。だが、彼らはそれを承知の上で臨んだんだ。きっといい結果になるはずだ。…これが僕の表向きの意見だ。」
「ほぉ?」
「本心で言うと、そんな事は親が判断できる事柄では無いと思っている。ただし、一筋縄ではいかないことは確かだ。何しろ相手は、僕の娘だからね。」
「…くふっ、うはっ、ははははは!」
「あのー、お客様、店内では静かにして頂けると…」
「あ、わりぃ。」
「だから言った。」
宴はこの後二度場所を変え、朝まで続いた。
☆★☆
同じ時刻、バイトに向かった五月は、恩師の下田に洗礼を受けていた。
「おぉ、五月ちゃん!姪っ子はどうだい?」
「それ、私に聞きます?」
「ははっ、悪い悪い。…なに、年上叔母さんの若いリア充への僻みだ、気にするな。」
「あなたも変わりませんね。」
「当たり前だ。一年やそこらで人がコロッと変われてたまるか。」
「確かに、そうかもしれませんね…」
「真に受けるなよ。…なぁなぁ、まだ授業まで時間があるだろ?」
「え?あ、はい」
「いつもどんな風に×××して×××してんのか教えろよ!」
「デリカシーもくそもないですね!」
「…それで?」
「入ってきたら、後はもう何も考えられなくなって…」
「ほうほう」
「必死になってしがみついてしまいます…」
「…まさか、本当に話してくれるとは思わなかったが、いや、イイ話が聞けた。五月、今夜のオカズをありがとう。感謝するぜ。」
「あなた、教え子になんて事を!」
「もう遅いやーい。」
「…ふぅぅぅぅぅ」
「お前も十分変わんねぇな。」
「うるさいです!…ん?一花からメールですね。何でしょう?」
☆★☆
家への帰り道。
助手席には二乃、後ろには三玖、三玖に抱えられた未来、四葉が座っている。
一花はそのまま先輩女優と飲み会、五月は塾でバイトだそうだ。
「次は、私かしらね。」
「そうか。だが、こればっかりは授かりものだ。俺にはどうしようも無いな。」
「いや、あるわ。…沢山、スればいいのよ?」
「_っ!お前、そういう事言うと俺が止まれんくなる。やめろ。」
「あら、こっちとしては大歓迎よ。」
運転中に気を乱すような事を言うのはやめてほしい。
少し蛇行運転気味になりながら、ゆっくりと、ゆっくりと、夕焼けに染まる町を走った。
「たっだいまー!」
「んん、んぎゃぁぁぁ」
「あぁ、四葉うるさい!未来が泣いちゃったじゃん!」
「ごごごごごめんなさい!ほ、ほら、いないいなーい、ばぁぁぁ。」
「…」
「なんで無言なんですか!せめて泣くか笑うかしてくださいよ!」
すげぇ、未来は分かってる。
この子は期待の大物の予感だ。
「まぁ、フータローの子供だからね。」
「おい、俺だけじゃないぞ?この家族、皆の子供だ。」
「…ふふっ、素敵な考えだね。」
「あぁ、お前たちとじゃなきゃ、こんな話もしなかっただろうな。」
☆★☆
「さぁさぁ、今夜はまだまだ飲みますよぉ!」
「いいから寝ろ!おい四葉!悪いが五月を風呂に連れて行ってくれ!」
「了解しました!」
「あはは、五月は相変わらずお酒に弱いね」
「お前が飲みに誘ったからだろ!」
「てへぺろ☆」
「捻り張り倒すぞ?」
「待って、一旦落ち着こう?」
ズルズルと風呂に引きずられて行く五月を横目で見ながら、いつもの雰囲気で怒った。
三玖に子供が出来て、この関係が崩壊しないか心配だったが、その心配は杞憂だったみたいだ。
やっぱりこいつらは、どこまで行っても五つ子だ。
「さぁ、早くご飯食べて寝よ?」
「今日はお前の番じゃ無かったのか?」
「だからだよ。」
「そうかよ。積極的で、こっちとしても愛情でいっぱいって感じだ。」
「フータローはやっぱりいつも通りだね。ほら、お父さん!手伝って!」
「了解。」
俺は人参の皮むきを開始するのだった。
ちなみに、指を2回切って皆を呆れさせた。
円満な解決で助かりました。
これで、昼ドラみたいな物を書かずに済みそうです。
感想など頂けましたら、一日一万回感謝の五つ子ゲームを忘れません。
それでは!