お金が…無いんです…(泣)
あともう少し、真面目な雰囲気にお付き合いください。
五月が無邪気な未来にやや太り気味な事を指摘され、半狂乱になりながら未来をくすぐり地獄へ誘っている中、ふと店のドアが開いた。
「…来たわね。」
「どーもぉ…皆さん、お集まりで…」
汗だくで、息を切らしながら入ってきたのは四女の四葉だ。
どこで買ったのか見当も付かない服と、トレードマークの白いリボンが特徴的だ。
「…これで、全員揃いましたね。」
「何で汗だくなのよ。」
「何だかジッとしてられなくて…合宿終わってからそのまま自転車で来ちゃった。」
「来ちゃったって…え!?あなたの合宿所って埼玉よね!?」
「うん」
当然のように言う四葉。
しかし、二乃が驚く方が正しい。
仮に出発地点を日本橋と仮定しても、自転車だったら7時間は必要な距離だ。
普通だったらもっと時間がかかってもおかしくない。
「式の直前に何してるのよ!」
二乃の言及に、四葉は文字通りタジタジだ。
「元気だねー。」
「あ、そういえば一花、
「もちろん。これでしょ?」
一花がポケットから取り出したのは、五つ子達の原点でもある母親の形見であるピアスだ。
「誰がつけるんですか?」
「…私がつけても、いいかな?」
立候補をしたのは、さっき来たばかりの四葉だった。
いつもののほほんとした雰囲気ではなく、その表情は真剣そのものだった。
「どうして?」
「今まで、私は一花達にずっと引っ張ってもらってきた。…だから、今度は私が皆を、支えたいんだ。このピアスは、その気持ちの表してるって事で…」
「具体的な方法は?」
「え、えーと…」
「どんな事をしてくれるの?」
「…あうぅぅ」
言葉足らずではあるがしっかりと意思は伝わる四葉の演説に、意地悪な二乃は質問を重ねる。
「二乃、あまり四葉を責めちゃ駄目だよ。」
「…だって。」
「二乃がつけたい気持ちも分かる。…でもさ、四葉がこんなに自分の気持ちを伝えてくれた事、今まであった?」
「…」
「せっかくだしさ。」
「…分かったわよ。そのピアスは四葉に譲るわ。」
一花達に窘められ、渋々諦める二乃。
「こういうのって、開けてすぐつけていいの?」
「どのみち、今日つけないと間に合わないもんね。…そんな事ないか。」
「何でもいいわ。…四葉、覚悟、出来てるわよね?」
「うん、お願いします。」
二乃がピアッサーを取り出し、四葉の耳たぶに近づける。
「…じゃあ、私達皆の結婚を祝して!」
「いっけー!」
手に力を籠め、押し出された針は四葉を貫く。
「痛った!!!」
☆★☆
「な、何か祝福以外の感情を受けた気がするんだけど!」
「さてね」
「もう片方行くわよ。一花、押さえてなさい!」
「はーい。」
「そろそろ、私達もご飯食べよっか。」
三玖がテーブルに目を向けると、黙々とサンドイッチを頬張っている風太郎が居た。
「あ、居たんだ。」
「俺ずっと居たよな!?…なぁ未来、父さんそんなに影薄いっけ…?」
「うーん、おじいさんになったら髪の毛薄くなるんじゃなーい?」
「…」
いまいち分かっていない未来に再度食べる事を指示し、風太郎はテーブルに向き直る。
そこには、既に一仕事終えた一花と二乃が、床にうずくまってるのは四葉だ。
「い、意外と痛い…」
「あっそ。…どう?ピアスをつけた四葉は。」
「…か、可愛いと、思うぞ。」
「本当ですか!?うわぁぁぁん風太郎!私耐えたよぉぉぉ!」
「お、おう…よしよし、頑張ったな。」
座っている風太郎の膝に泣きつき、物凄い勢いで頬をすりすりする四葉。
風太郎もまんざらでもない顔で慰めている。
「よし、取り敢えずこれで改めて全員集合だね」
☆★☆
「…疲れた。」
「ね。」
「お母さーん!見てー!バッタさん!」
「…取り敢えず、元の場所に返してあげようか。」
「えー!?私これ家でペットにする!」
上杉家のお姫様は怒り心頭だ。
それもそのはず、今の今まで予約が出来ず、最後の仕事として残っていたドレス決めがようやく出来る事になり、急遽店へ向かったのだ。
正直来週が式なのに今ドレスを決めるなど不可能に近く、どうすればいいいのか悩んでいた所での朗報だったため、泣いて喜んでも足りない程の安堵感だった。
しかし、店の子供コーナーで何時間もただ黙々と積み木を使って遊ぶくらいの事しか出来なかった未来は非常に退屈だったのだ。今は店先で偶然見つけたバッタに夢中だが。
「駄目だよ未来ちゃん!家のレナが興味深々で、食べちゃうかも~。」
「そ、それは…やっぱかわいそうだからやめる。バイバイ、みつりちゃん!」
レナとは去年の夏場に突如店に現れた野良猫で、家族会議で飼う事が決定した。
ずんぐりとした体形と、普段は物調面だが時折見せるプリティスマイルを駆使し、家のマスコットアイドルの座を欲しいがままにしている。
風太郎は「レナ」という名前に幾分かの皮肉を感じているが、今はそれよりも某鬼狩り系漫画に影響された名前の方が気になっている。「みつり」って誰だ。髪の毛がピンク色で巨乳?しかも原因が桜餅だと?
「…あり得ない。桜餅の成分は…」
「予想して聞くけど、それってかなり下らない事だよね?」
「何故分かった」
「…いつもフータローと思考を共有しているから?」
「おい、ここは夕暮れ時の街中だ。発言には気を付けような。」
「てへへ。」
「お父さん!お父さんも、お母さんに説得して!」
「何だ、まだ諦めて無かったのか?」
「そういう所、ほんと三玖にそっくりよね。」
「う・る・さ・い!」
二人の子供「乃愛」と「朝陽」をベビーカーに乗せ、それでも昔のように三玖をからかう二乃。
そしてこちらも昔のような反応を返す三玖。
何年経っても、風太郎と五つ子達の関係はさほど変わらないのであった。
☆★☆
いやぁ、今日も頑張った。
最近ドレスやら仕事やらで全然寝れてないからな。
よし、今から飯までちょっくらねr「お父さぁぁぁぁぁん!!!」
…寝たかったのに。
「ど、どうした未来。お父さん、ちょっとばかし眠くてな。」
「おぉぉねぇぇむぅぅりぃぃ!!」
何かよく分からんが、手の甲を俺の鼻に押し付けながら寝る事を指示してきた。
なるほど、これは俺にしっかり休養を取ってくれという事か…!
「ぐー」
「寝ちゃ駄目ぇぇぇぇ!!」
「うぐぶふぅあぁ!?」
未来が誕生日に買ってもらってた「DX日輪刀(しのぶさんバージョン)」で思いっきり腹を叩かれた。
こ、これが円舞か!
「お父さんは炭治郎だから寝ちゃ駄目なの!」
「じゃ、じゃあどうすれば…」
「んーと、首を刀で切るの!はい、ハサミ!」
「出来るかぁぁぁ!」
子供ならではの純粋な目だ。
まったく、子育て舐めてたぜ。
「…そういうのは、ツキママにやってもらえ。」
「いや無理ですよ?あなた今私に死ねって言ったようなものですよ!?」
「五月なら、ワンチャン何とか耐えるかなって…」
「耐えるってか命が絶えますよ!」
どこから聞いてたのか分からないが、いきなり五月が乱入してきた。
いやでも大丈夫だろ。こいつまた去年も事故った癖に無傷の生還だし…
「まぁ、正直自分の生命力には私自身驚きを隠せませんけど…」
「否定はしないんだな」
「ツキママー、お腹ぶにょってしてるよー?」
「未来ちゃんは私のお腹しか見てないんですか!?」
「触り心地がいいからねー♡」
「…」
「良かったじゃん、褒められてるぞ。」
「…ふぅぅぅぅぅぅ」
「あぁ、また
いじけた五月を慰めてるうちに、結局飯が出来てしまった。
くそ…
☆★☆
「今日はピーマンの肉詰めだよー。」
「わーい!偽ハンバーグだー!」
「うげ、私ピーマン嫌いですぅ…」
「お前、4歳児に負けてるぞ…」
「やーい!ポンママの負けだー!」
「何をー!?私だって、ピーマン食べれますぅ!…はむっ」
「さぁ、どうだ…?」
「…むぐぅ!むぐぅ!」
「あ、止めろ、吐くな!あぁぁぁ…」
本当にこんな事で式を終えれるのだろうか。
不安しかない。
真面目…?