それは、あるなんてことない朝だった。
☆★☆
「おい、三玖起きろ、おーい。」
「…あ、おはようフータロー。」
朝目覚め、隣で寝ていた三玖も起こす。
少しボサッとした寝癖がある長い髪の毛を梳かしながら、はにかんだ笑顔を見せる。
こんなにも可愛くて美人さんだと言うのに、三玖は俺の腕に抱かれて眠っている。
出会った時から何も変わらない、あの頃に笑顔のままだ。
「フータロー、寝ぼけてるの?」
「ん?あ、いや、何でもない。」
少しだけ記憶のタイムスリップを敢行していたのだが、引き留められてしまった。
仕方がないので、三玖の顔を胸に抱き寄せ、そのまま二度寝を開始する。
「…フータロー、おっきくなってるよ。」
「あぁ、すまんすまん」
駄目だ。もう何年も彼女達の奥底にマグナムをトリガーしてきた歴戦の深夜兵団の一員の筈なのだが、欲の抑え込みだけは上手くいかない。
まったく、朝から発情なんて猿じゃあるまいし。
「あ、その…フータローがどうしてもって言うなら…スる?」
「喜んで。」
「キャッ」
その目線からは誰も逃れられない。
そうして己の欲望に負けた結果、夫婦の営みが始まるのであった。
☆★☆
三玖から俺のモノを引き抜き、汚れた三玖の体を優しく拭う。
トリガーされた弾が彼女から少しづつ垂れてきていて、余計に情欲を煽る。
やめろやめろ。流石にこれ以上はお互いの体が持たん。
「なんか、いつもより元気だったね。」
肩で息をしながら話す三玖。
心なしか、肌が先ほどよりツヤツヤしている。
「そうか…?」
「うん。フータロー、いつもより勢いが違った。いつもは、何か、こう…味わってるって言えばいいのかな?でも、今日は沢山動いてた。」
「なるほど…流石三玖だな。」
「そ、そうかな?」
「あぁそうだ。三玖はいつでも可愛いな。」
「もう、フータr」
「あんた達、いつまで寝てるのぉぉ!」
「のぉぉぉ!」
あまりに起きるのが遅かったため、二乃に怒られてしまった。
何故か未来も便乗してる。
「…起きるか。」
「うん。」
早々にベットから離れ、服を着てリビングに向かった。
☆★☆
「ねーねーお父さーん」
「ん、どうした?」
「何でさっきすっぽんぽんだったのー?」
「え?そ、それは…」
「ねぇ何でー?」
「…さ、さぁ未来ちゃん!私と一緒にお着換えをしましょう!」
「えー、ポンママはポンコツだから、服が爆発しちゃうかもしれないから、やだ」
「何で私がポンコツなんですか!それに、ポンコツだからって服は爆発しませんよ!?」
☆★☆
一花をテレビ局、五月を塾、未来を保育園へ送るミッションを終えた後、毎朝スマホに送られてくる武田からの意味不明なポエムを評価(大抵0点)しながら店兼家に戻る。
「お、帰ってきたわね。お帰りなさーい」
「おう。…って、なんだソイツ!?」
二乃の腕に抱えられていたのは、乃愛でも朝陽でも無く、見知らぬ猫だった。
「おい、乃愛たちはどこに…?ハッ、まさか、融合カードで…?」
「乃愛と朝陽を生贄に、猫ちゃんを特殊召喚!!…違う、そうじゃないわ。」
「あ、そう?」
「乃愛ちゃん達は奥で寝てるよ。」
そうか、それなら安心だ。
さて、猫について考えよう。
これは、ブサカワというヤツだろうか。
最近ドラマでたまに見かけるようになったが、俺はそもそもそこまで動物が好きじゃない。
まぁ、別に経済的に余裕が無いわけでも無いし?
この家の癒し担当になってくれるのなら吝かでも無いし?
どうしてもって言うなら?
飼ってあげなくもないけど?
そんな事を伝えようと、猫の方を見る。
「…にゃあ」
そこには、トロンと蕩けた表情の猫がいた。
鳴き声も嬉しそうだ。
「…二乃、夕飯の時に家族会議だ。取り敢えずケージ買ってこい。」
「任せなさい。通常の4倍のスピードで買ってくるわ!」
「惜しい、1多い!」
「えぇ!?」
どこが間違っているか分からない為、後ろ髪を引かれながらも二乃はペットショップへ足を進めた。
☆★☆
俺は猫だ。
名前はまだ無い。
昔からこの地で生きてきたが、その生活も終わりそうだ。
なにせ、縄張り争いに負けたのだから。
餌を探し、ひたすら地位奪還を虎視眈々と狙う。
プランは完璧だ。
アイツがいつも寝てる場所へ上から飛び降り、そのままズドンよ。
フッ…完璧すぎる。
その時はすぐに来た。
建物の屋根の下、日陰になるが暖かいという、野良猫なら誰しもあこがれる特等席だ。
さぁ、飛び降りるか。
と、ここである事に気が付く。
…高すぎて飛び降りれない。
しまった!その事も計算してここを縄張りにしていたんだった!
不味い、このままだと、ただ屋根から降りれなくて干からびたただのアホになる!
それだけは避ける!
☆★☆
三玖は買い出しに出かけようとした時、聞きなれない音を聞いた。
…鳴き声だ。それも猫。
「どこにいるの…?」
辺りを探してみるも、見つからない。
ふと上を見ると、そこには一匹の猫がいた。
「ありゃ、降りれなくなっちゃったのかな。…ちょっと待っててね。」
☆★☆
俺は猫だ。
名前候補は「レナ」、「ヌケ」、「ポンコ」だ。
どうやら後ろ二つの案は良くない意味らしい。
名前を付けていただくのはありがたいのだが、せめてまともな名前を付けてほしい。
「____」
「____!」
何を言っているのかは理解出来ないが、少なくと分かるのは俺の事を話しているであろう事だ。
ニンゲンの内の一人が、こちらを向いた。
朝に俺を抱き上げていた女によく似ていて、恐らく何か不味い事をしていそうな男にもどこか面影がある。
もしや、こやつらの子供であろうか。
繁殖など数回しかした事が無いが、もうその事を考える必要は無いだろう。
オババの話によると、ニンゲンに捕まると「キョセイ」という儀式を行われ、繁殖が出来なくなってしまうらしい。聞いた時は恐ろしいと思ったが、今はそれもアリだと思っている。
あれは確かにイイ物だが、言ってしまえばそこまでだからな。
それと、快感を求めて繁殖を行うのはニンゲンと「イルカ」という生き物だけだそうだ。
俺もそうはなりたくないものだな。全く、ニンゲンは愚かだ。
「_____、___。」
チビのニンゲンが、微笑んだ顔でこちらを見てくる。
…愚かなだけでは無いのかもな。
ここで大事なお知らせです。
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