第一部、完結です。
「皆様、本日はご多忙の中、僕たちの結婚披露宴にお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。こらまでお世話になった方々の前でようやく挙式を執り行えた事を大変うれしく思います。」
カメラを構え、こちらを撮影するらいは。
俺はカメラに向かってウインクをして、話を続ける。
「本当に…長い道のりでした。」
☆★☆
「五つ子ゲームって、馬鹿か!」
「確かにちょっと複雑だけど…」
「思いついちゃったもんね…」
「それに、お遊びじゃないよ。」
「風太郎なら分かるよね?なんたって、外も中身も、性格も全部知ってるはずだしね。」
「…ったく馬鹿野郎。少しは分別のつく大人になったかと思えば。相変わらずのようで安心した。俺を舐めるな!」
☆★☆
宴は順調に進んだ。
まず最初にケーキを食べた。
五人分食べて腹いっぱいになったのも思い出だが、それよりもあのケーキの大きさの方が思い出だ。
ちなみに、差し入れ人は店長だそうだ。ありがたや。
その次は、前田のスピーチ。
俺への愛の篭った素敵な文だった。いやぁ、二人のキューピットだなんて、照れるね!
問題はこの次、歓談の時間だ。
「それでは始めましょう、カラオケ大会ーーー!!!」
四葉主催で始まったこの企画。
ルールは単純で、一番歌の点数が高かった人の勝ち。
優勝すると、『喫茶なかの」からお菓子セットが授与されるらしい。
「エントリーナンバー1!上杉未来ちゃん!」
「はーい!えっと、歌うのは、『明け星』です!」
「イイゾー!」「ミライガンバレー!」「カワイイヨー!」
「ミュージック、スタート!」
歌が流れ、何故か踊りだす未来。
相当御機嫌なようだ。しかし、ただ機嫌が良いだけでは無かった。
「点数はーー…出ました、92点!」
「「「えぇぇ!?」」」
もしかして、未来には歌の才能があるのだろうか。
…いやいや、親バカはしないと誓った筈だ。
落ち着け、取り乱すな。
「エントリーナンバー2!『こむぎや』の店長!」
「えぇ!?私名前登録した筈ですよね!?」
「申し訳ございません、無くなってしまいまして…」
「嘘でしょう!?もう、私の名前は…って、曲始まっちゃった!」
「イイゾー!」「ソノキャラキシカンアルゾー!」「オチツケー!」
やっぱり名前の分からない店長の選んだ曲は、「さそり座の女」だった。
あの人、なんてもんを歌うんだ。
おかげで三玖は、笑いすぎて床から立てなくなっている。ほら、起きろ起きろ。
「点数はーーー…出ました、87点!」
「うわ、普通」
「平凡だね」
「だから顔はいいのに読者からも作者からも忘れられがちなのよ」
俺の放った言葉に、一花と二乃が追い打ちをかけるように続く。
店長の顔は真っ赤で、もうすぐ爆発するんじゃないかとも思えた。
「エントリーナンバー3!上杉勇也!」
「悪いな、俺、優勝するから」
「言ってろ」
「カエレー!」「ソノサングラスゼツミョウニダサイゾー!」「クチクサイゾー!」
「聞こえませーん!だって耳にバナナ詰まってるモーン!」
そういった親父は、耳に手をあてる。
するとどうだろう。何も持っていなかった筈の手からバナナが出てきたではないか。
「あっれーーー?」
「どうだ、凄いだろ。」
「あぁ、凄すぎて気味が悪いわ。」
親父の良く分からない宴会芸を鑑賞していると、歌が流れてくる。
…なんだこの歌。
「どきぃどぉきぃ気持ぉち溢れてくぅ…」
☆★☆
「お前が一花だ。」
列の左端に目を向け、おもむろにキスをしてみる。
慣れた感触、やはり一花だ。
「んー、ぷふぅ。…まさか、君にこれをされるとはね。」
「…お前には随分と手を焼いた。クールビューティーなんて世間は謳っているが、俺は騙されねぇ。」
「な、何の事かな?」
「自堕落、鈍間、惰眠を貪る、怠惰だ!」
「そ、そこまで言わなくても…」
「だが。」
「…だが?」
「それでも強くあろうとする姿が俺には眩しく見えた。大した長女だよ、お前は。」
「…っ!」
一花は笑いながら涙を流す。
せっかく化粧をした筈なのに、これではぐしゃぐしゃだ。
「何だよーもう!」
「おいおい、ここでそういう気分は止せよ?」
「流石に分かってるよ。…風太郎君、」
「何だ?」
「大好きだよ。」
一花は、個性豊かな私たちを優しくまとめてあげるお姉さんです。
ご存じの通り大活躍の女優さんで、姉妹皆の、私の、憧れです。
☆★☆
「次はお前だ、二乃」
「…見分けれるようになったのね。」
「お前のその強さは、人一倍の弱さの裏返しだ。ジッサイアッチノホウハヨワイシ…」
「な、何か言った!?」
「いや、いやぁ!?何の事か…」
「ほんっとうにムード作る才能無いわね!」
「うるせぇ。…続きだ。詰まる所、俺が何を言いたいのかと言うと、謝罪だ。」
「…!」
「お前の厳しさには、それだけ大きな愛情があるからなのだろうな。あの頃の未熟な俺は、この答えにたどり着けなかった。すまん。」
この数年間、ずっと思っていた事を話し終える。
すると、二乃も一花と同じように泣き出した。
「いいのよ…。今に至る過程はどうであれ、今が最高に幸せだもの。」
そして彼女は満面の笑みで言う。
「ありがとうフー君。これからも、ずっと一緒よ。大好き。」
次女の二乃はちょっぴり怒りん坊だけれど、
強くて厳しくて、私たちの背中を押してくれるお姉さんです。
女子力抜群で、私も見習わなきゃいけません。
☆★☆
二乃に話し終え、他の3人の方を向き直る。
真ん中を見据え、ゆったりと話し始める。
「三玖だな。」
「うん。」
返答が返ってき、正解に安心する。
すると、突然三玖が抱き着いて来る。
「たまに不安になる…私…上手くやれてるかな…」
「俺が答えるまでもない。お前はそうやって常に自分の不安と戦ってきた。そうして勝ち得た結果は間違いなくお前の戦果だ。更に、お前はこの家族で初めて母になったからな。…恥ずかしいが、これからも先輩として皆をフォローしてくれ。自分を信じろ。お前は昔から出来る奴だ。」
「…うん、フータローはそう言ってくれると思った。ありがとう、フータロー。ずっと傍にいてね。大好き。」
そういって、屈託のない顔で笑った。
三女の三玖は、不思議とお姉さんという感じではありません。
同じ立場で接してきた親友に近いかもしれません。
だからこそ、自分の夢を叶えた三玖を尊敬しています。
☆★☆
「残るはお前だ、五月」
「えっ」
「えっ」
「私が四葉だけど…」
「…?????????????」
嘘。
あんなに啖呵切ったのに、間違えたのか?
思わぬ事態に、脳がフリーズする。
「…なーんて」
そう言って、四葉?が髪を解く。
すると、星形のアクセサリーが見えた。
「じゃーん、五月でした!どう?上手くないたたたた!ほっへはほひっはははいへふははひ!」
「お前今日の夜覚悟しとけよ。」
「そんなぁ!…興奮しちゃいます。」
「分かった、もういい。…本当に、焦らせやがって…。この際だから言わせてもらうが!」
「!」
「お前に会ってからだ!俺の人生が狂い始めたのは!諸悪の根源!妖怪カレー喰い女!家でカレー食う時お前何合食うんだよ!夜も引っ搔いてくるし!」
「…っ。わ、私だって!あなたと会うまでこんなにデリカシーが無い人がいるなんて想像も尽きませんでした!頭でっかち!天然キス魔!あなたみたいな人は、私に拾われなければどうなっていた事か!」
「他の4人に甘えてたからいいですー!そして俺は天然キス魔ではありませーん!君たちがキスをせがんでくる側だろう?煽るの下手かwwwwwwwwwwwww」
「ふぅぅぅぅ、むきぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ヤバい、
五月は、私が唯一お姉さんを出来る可愛い妹です。
実際は、私なんかよりずっとちゃんとしてるんですけどね。
私がどうしていいか悩んでいる時、背中を押してくれたのも五月でした。
☆★☆
お父さん、
そして、天国のお母さん。
私達が今日この日を迎えられたのは、二人がいたからに他なりません。
お母さんは私達が小さな頃にいなくなってしまいましたが、
その教えと愛はいつまでも私達の中に残っています。
「で、余った四葉がお前。はい全問正解。」
「あ、あっさり!」
そしてお父さん。
幼い私は突然の事に気持ちの整理がつかず、反抗してしまう時もありました。
あの時はごめんなさい。
ですが、時間をかけてお父さんの気持ちを知る事が出来ました。
お父さんが私のお父さんになってくれて良かった。
今ではそう思います。
改めて、家族に感謝します。
「当たり前だ。これだけ長く付き合ってりゃ、嫌でも覚える。」
「毎晩いっぱい見てるしね♪」
「一花、お前もムードって知らないのか?」
「おや、これは失敬。」
今日の私達があるのは、父、母のおかげ。
そして何よりも、私達姉妹の皆でいたからです。
「五人でいることが大切」
この言葉が本当だった事を、最近は強く実感します。
姉妹で風太郎のお嫁さんになれてなかったら、姉妹の皆がいなかったら、
私の人生は全くの別物になっていたでしょう。
五つ子という事に負い目を感じた事もあったけど、
その何倍、何百倍、風太郎が来てからは何千倍も楽しいです。
「俺は家庭教師だったが、お前たちからも多くの事を教わった。お前たち五つ子に出会えた事、数少ない俺の自慢だ。」
私は皆と五つ子の姉妹として生まれる事が出来て幸せでした。
他の家とちょっと違って、人から見たら奇妙に見えるかもしれないけど、
私はそんな家族が大好きです。
___新婦代表 四葉
☆★☆
「あー…疲れた…」
「お疲れ様。スーツ返してくるね。」
「サンキューらいは。」
披露宴が終わり、スーツも着替えてさぁ休もう。
これ、何時間ぶりの休憩だ…?
「しっかり旦那さんしなきゃ駄目だよ?お兄ちゃん。」
「…五年か。これでようやくひと段落だな。」
「まぁ、その前に色んな順番すっ飛ばしてましたけどね。」
語るのは五月。
何を偉そうな。一番最初に順番すっ飛ばしたのお前だろうが!
「何を偉そうに、あんたが最初に抜け駆けしたんでしょ?ま、そのおかげで全部有耶無耶になって、ここまでこれたものね!よくやったわ!」
「そ、そそ、そうですよね!」
過去の過ちを掘り返され、顔が真っ赤な五月。
ニ乃、絶対分かって言ってるなこれ。
「そうだ、上杉君、ちょっとついて来て下さい。」
「上杉君、じゃもう通用しなくないか?」
「あ、そうでしたね。…風太郎君、来てくれる?」
「可愛い。」
「ふぇ!?」
思わぬ可愛さに驚きながらも、言われた通りについていく。
そこには他の3人と、子供達も全員揃っていた。
「お、風太郎君遅いよー?」
「フータロー、早くおいで。」
「風太郎、こっちこっち!」
「お父さん!はーやーく!」
「あー!」
「だー!」
「おう、今行く。」
何とも幸せな光景だ。
つくづく、俺は幸せ者だと思う。
そして、これはもしかしたら夢なんじゃないかとも思う。
「何してんだお前ら?世界地図なんか見て。」
「何って、新婚旅行の計画よ!」
「はぁ!?」
おいおい、少し気が早くないか?
というか、嫁5人(内4人は英語力0)と子供3人(内2人は乳児)を連れて海外旅行?
吐き気がする。
「めちゃくちゃだ…。」
「行きたい所指差そっ」_。
「四葉がそう言うなら。」_ん。
「何か前も同じことで揉めなかった?」_ぎ君。
「あー、高校の…」_え杉君。
「じゃあいくよ、せーのっ!」_上杉君。
「上杉君、起きて。」
「…えっ」
☆★☆
「風太郎君見てたら、私も眠くなってきちゃったよ。」
「そんな所で寝てないで、早く起きなさいよ。」
「風邪、ひいちゃう。」
「おはよーございまーす!」
「結婚式は…?」
「えっ何?」
「えええっ!?」
「気が早いねー」
「…?」
おかしい。
「いつまでも寝ぼけてないで、さっさと決めるわよ。」
「何を?」
「卒業旅行。フータローが提案してくれたんでしょ?」
「そ、そうだったな。」
「と、とりあえず、五人で指差ししよっか。」
「俺の意見は?」
「結果は知れてるけどねー。」
「俺もやめといた方がいいと…」
「じゃあ、せーのでいきますよ!」
「お、おい!」
「「「「「せーのっ!」」」」」
そうだ、あの時も同じ事を思ったんだ。
全く、結婚しても、子供が出来ても、どんな関係になっても変わらないな。
「五つ子って、めんどくせー…。」
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
最初は軽い気持ちで投稿した物が何故かサイト内一位になり、
ここまでの応援もあり、何とかたどり着けました。
風太郎と姉妹の馴れ初めは、ここで一旦終了。
ここからは、新婚生活です。
本格的にエロくします。お前ら、抜いていいぞ(最低)。
くどいようですが、もう一度お礼を。
ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました!